逸ってる、とァは自分の精神状態を思う。  
 思考は清明だが一方向に固定され、勢いづいて流れている。  
 まるで急坂を走り下りるような感覚に、いろいろと危険を思うが、  
 しかし勢いづけなければ、流石にこの先を話すことはできない。  
 だからァは、転べば大怪我といえるような勢いのまま  
「ともあれ、その日の夜、私はついに決行したのです」  
 クライマックスへと語りを進める。  
 
 
 武蔵デカメロン その3  
 
 
「まず困ったのは、どのように宗茂様を誘うかでした」  
「トラウマ治療というのは秘密ですものね」  
 メアリの先回りに、ァはTesと頷き  
「宗茂様が総長―――フェリペ総長のように、未踏破領域の開拓に意欲的な、  
それこそ開脚や乳挟みキャバレーごっこを土下座で頼むような快男児(マスチモ)だったら  
話が早かったのですが、残念ながら宗茂様はこの方面には控えめ。  
 かといってこちらもフアナ様のような開脚誘いをするような思い切りもありませんし…」  
「三征西班牙は情熱的先進国なんですね…!」  
戦慄するメアリに、ァは頷きながら  
「私もあの方達のように、とまではいかなくても、もっと大胆な性生活をエンジョイしたいものです。  
 特に宗茂様には遠慮なく振る舞っていただきたいところです。」  
「それは…よくわかります」  
 思うところがあるのか、メアリも深く同意の態度を示す。  
 彼女も苦労しているのだなと思いながら、ァは話を戻す。  
「大義名分としては新生活の第一歩記念兼、関係の再構築ということで、  
宗茂様には納得していただきました」  
「再構築、ですか?」  
「Tes。なにせ、私と宗茂様が夫婦関係を持つに至った当初の理由は、歴史再現ということでしたから」  
 あ、とメアリが小さく漏らす。  
 立花・宗茂と立花・ァ。そもそもこの二人が夫婦なのは、歴史上の二人の立花が夫婦だったからだ。  
 メアリは、この二人の馴れ初めを詳しくはしらない。  
 だが、歴史上の立花達が夫婦であったことが、この二人が夫婦の関係を結んだことの、  
あるいは結べていたことの、大きな理由の一つであったのは、たぶん間違いないだろう。  
 だから改めて傷を欲したのではないか?  
 そんな、メアリの考えが表情から読み取れたのか、  
「襲名が解除され、私達が夫婦でいるための大義名分が弱くなったのが心細かった、というのも、  
小さいながらも理由の一つではあります。あくまで、小さな要素ですが」  
 ァは眼を反らし、少し早口でそう付け加えた。  
「…Jud」  
 そこはァにとって大事な部分なのだろうと思い、メアリは一言だけ返した。  
 一呼吸分の、居心地の良いとも悪いともいえない時間の後、ァは少し声を強く、空気を変えるように  
「いよいよ本番、となりました。  
 普段道理の愛撫の交換の後、ついに進水式とあいなりました。  
 武蔵教導院梅組のとある異族の生徒が販売元のローションを用い、準備万端となったのですが……  
実は、そこで幾つかの誤算が生じまして…」  
 
「誤算、と言いますと?」  
「一つは、アナルビーズを入れたままにしていたことです。  
 もっともこれは、挿入直前に宗茂様に引き抜いてもらおうという企画だったので、厳密には誤算とは言え  
ませんが…続く誤算の発生原因となりました。  
 二つ目は、宗茂様が肛門器具関係に全く知識がなかったことです。具体的には、私の直腸に入っている物が、  
それなりの長さのある数珠つなぎの物でなく、細いプラグかバイブのようなものだと思っていたことです。  
まあ、これは仕方ありません。私も通神帯で調べるまでは、アナルビーズなどという物の存在すら  
知らなかったわけですし…。  
 そして三つ目、これが最大要因なのですが、予想外に…その……が………です」  
 口の中で転がす様に、ァは最後の要因を言う。当然ながら、その不鮮明な声は、メアリには  
何を言ってるのかわからなくて  
「…?あの、よく聞き取れませんでしたので、もっと大きな声で」  
 メアリの促しに、果断なァにしては珍しく逡巡を滲ませてから、やがて意を決したように、  
一度深く息を吸ってから、はっきりとした口調で  
「アナルが、予想外に気持ちよかったのです」  
「ぇっ」  
 言葉を失うメアリに対し、ァは吹っ切れたように  
「開発のせいなのか、元々私にそのような適性があったのか、それは分かりません。  
 しかし、前の方と同様かあるいはそれ以上に、後ろの方でも快感を感じてしまうようになっていた私に、  
こともあろうか、宗茂様は、アナルビーズを一気に引き抜かれまして」  
「いっ…き、に?」  
「Tes。こう、すっと。時間にして一秒以内。私は後々不備がないようにと奮発して  
大玉16連の一品『擦り連射』なる物を求めていたため、擬音で言いますと、ズボボボッ、と。  
 キルレシオは一対一。一玉対一回。おかげで私、大変なことになってしまいました。」  
「ぐ、具体的には、ど、どうなってしまったんですか?」  
「…生まれて初めて、性的絶頂で全身痙攣という体験をしてしまいました」  
「ぜ、全身痙攣……!」  
 その現象に関しては、メアリも資料では見たことがある。点蔵が布団の下に秘蔵しているエロ草子にも、  
そのような光景が描かれていた。メアリ自身は、いわゆる漫画表現という奴だと思っていたが…  
「本当に…あり得る物なのですね…」  
「Tes、本当にあり得るのです。ですが、誤算はここでとどまりませんでした。  
 この絶頂全身痙攣という物は、どういうわけか快男児ゲージを数ゲージ一気に貯めることのできる大技  
だったらしく、宗茂様に快男児スイッチが入りまして…」  
「変身でもされたのですか?最近流行りのペンドラゴンボール的に」  
「外見上は、いいえ。しかし精神的にはTesです。いうなれば、あの時の宗茂様はスーパー宗茂様でした」  
 言いながら、ァはその義腕で体を軽く掻き抱きながら…  
「珍しいことに宗茂様は『お尻であんなに激しくイってしまうなんて、ァさんは悪い子ですね』などと  
言葉攻めをしてきまして。  
 夜の床では義腕を外している私は、ビーズを抜く際、こう、雌豹の構えとも言うべき、臀部を突き上げる  
ポーズをとっていたのです。  
 その状態で一気に16連絶頂地獄に叩き落とされた私は、そのままの格好で、抵抗どころか顔を隠す  
こともすらもで来ませんでした。  
 連続絶頂で、おそらく私はひどい顔になってましたので、布団に顔を押し付けているしかできないのですが、  
宗茂様はそれをいいことに、耳や首筋を集中攻撃しつつ、今だ衝撃冷めやらぬ私の裏門に、  
衝角による突撃を敢行しようとしたのです」  
「まぁ…!」  
 
「私は呂律も回らない舌で待って欲しいと哀願したのですが、スーパー宗茂様は  
『誘ったのはァさんですよ?しかもここだってこんなに欲しがってるのに…』と、アナルに指を  
先行突撃させて粘膜を容赦なく蹂躙したかと思えば、一転して背後から優しく抱きしめて  
『かわいいです』だの『もっと声を聞かせてください』だの卑怯な計略を放ちまくりで……、  
結果としては満足な防御も行えないまま、私のセカンドバージンは突破されてしまいました」  
「そそそその瞬間のご感想は?」  
まるでダッドリーのような吃音具合で聞くメアリに、ァは首を横に振り  
「感想を抱くことさえできませんでした、挿入と同時に再度絶頂状態に打ち上げられてしまいまして」  
「なんという…!」  
 言葉を失うメアリに対し、ァは山場は終えたとばかりに少しクールダウンした様子で  
「ともあれ、そこからはもう記憶が曖昧です。  
 宗茂様は、三度目の玉砕を迎えた後、裏門は正門攻撃に切り変えてきまして。どうやら、後方を開発すると  
前方の感度も引きずられて良くなってしまうようで、宗茂様が私を抱きしめながら、都合四度目の玉砕を  
私の中に放った時点で、完全に記憶は飛びました。」  
「よ、四度も…。連射性に優れていらっしゃるのですね」  
「Tes.アナル開発において、参考資料として調べましたところ、宗茂様の性能は、一回一回の継戦時間は  
若干短めなものの、連射回数で稼がれるタイプだと判明しまして。  
 戦闘スタイルに類似していますね。  
 ともかく、翌朝目が覚めた時の、陰部と肛門部の感覚や零れた精液、普段の宗茂様の平均スコアから考え、  
最終的には直腸で五度以上、膣内で三度以上の玉砕をなされたようです。  
 後は宗茂様が目覚めた後、アナルセックス後に通常のセックスに移行するには、感染予防のために  
しっかりペニスを消毒しなくてはならないことを言い含めて……」  
 ァは一度大きく息を吐いてから  
「終了、といったところです」  
 
 
  ●  
 
 
 全ての聞き終えたメアリは、足元の台地が砕け散ったような目まいを覚えていた。  
 心に思うことは一つ。  
 流石は情熱の国…!  
 もしもフェリペとの結婚が書類上の物ではなく、実際の物だとしたら、自分もやはりこのような  
体験をしていたのだろうか?  
 いいえ!ァ様の話を聞く限りフェリペ総長は常時スーパー快男児…!  
 ァの語った淫行がスーパー宗茂による物なのだから、常にスーパー宗茂と同等のフェリペが  
さらにスーパー化した、いわばスーパー三征西班牙人2による淫行はどのレベルの物なのか?  
 確実に、自分は壊れてしまうだろう。  
「点蔵様が貞操観念が厳しい極東人で良かったです…」  
「…武蔵総長の言動を見る限り貞操観念という言葉からは程遠いような気もするのですが…、  
まさか、メアリ様はまだおっとり系金髪巨乳手付かず若妻というジャンルを維持している、と?」  
 訝しげに問うてくるァに、メアリはジャンル?と思いつつも  
「あ、いいえ。手付かずというわけでは…」  
 と言いかけて、メアリは、自分が体験をあっさり語りそうになってることに気付き…  
 けれど、言わないわけにはまいりませんよね?  
 これを交渉とするならば、向こうは既に譲歩済みだ。ならばこちらも、同じだけの譲歩をしなくては  
ならないのが交渉の基本だ。  
 それに…新しい知識を得られるかもしれませんし…。  
 例えば、今のァの話によって、絶頂による痙攣が現実のものであることもわかったし、アナルセックスという  
名前だけ知っていた概念に、具体的なイメージが付加された。  
 新しい知識が手に入れば、点蔵様にもっと気持ち良くなっていただけますし…。  
 自分も気持ち良くなれるかも、という期待からは意識的に目を反らし、メアリは軽く咳払いをすると…  
「で、では…、私はまだ、夫婦としては日も浅く、ァ様には及びもつかないでしょうが…」  
 と、最近、個人的に気に入っている奉仕に付いて語ろうとした時だった。  
 
 コンパートメントの外。喫茶店の入り口側に並んでいる席の方から、何か霧状の物が  
噴出するような音がした。続いて、コップの水をぶちまける音と、涙声の  
「酷い!いきなり顔にかけるなんて!!」  
という少女の声と、上ずった風な  
「あ、いや、ごめん。…け、けどいきなり…!」  
 という少年の声がした。  
 少女の声はメアリにとって比較的聞きなれたものであり、少年の声はメアリとァの両者にとって、  
最近よく聞くようになった声である。  
「これは…シェイクスピア?」  
「それと、武蔵生徒会書記のようですね」  
 二人は顔を見合わせると、騒ぎのあった方を覗くべく席を立った。  
 ついでに、そろそろお冷で粘るのもまずかろうと、茶の一杯でもオーダーするつもりで。  
 
 
 
 
つづく  
 

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