結果から言えば、ネシンバラとシェイクスピアの痴話喧嘩はすぐに終息した。  
 水を吹きかけられ泣きべそをかくシェイクスピアに、ネシンバラが上着を被せ、とにかく着替えられる所にと、  
シェイクスピアを連れ出したのだ。  
 ネシンバラもまた同じく濡れ鼠であり、上着もそうであったのだが、まあ、何の処置もなく服を汚された女性  
を外に連れ出そうとしなかった対応は合格点といえるだろう。  
「デート時に女性の服を汚すという時点で厳罰だともいえますが」  
「や、やっぱり、デートだったのでしょうか?あの二人」  
「少なくとも、痴話喧嘩時のシェイクスピアの発言から考えて、深い関係であることは間違いないでしょう。  
 武蔵書記は往生際悪く言い訳していましたが」  
「……誤解、ということはないのでしょうか」  
「あり得ないでしょう。英国のみならず欧州の文筆者の代表ともいえるシェイクスピアが、誤解を与える  
ような言葉選びをするとは思えません」  
 敢えて誤解を周囲に与えるような言葉選びをする可能性に言及せずに、ァは断言する。またメアリも  
シェイクスピアの普段の言動から踏まえ考えてみるが、  
 ――普段はあそこまで感情を露わにすることがない彼女が泣きながら言ったことですし…。  
 やはり感情任せに放った言葉である以上、言葉を選んで放った台詞ではないと判断する。  
 ともあれ、あの二人の関係についての疑問は尽き、次に思うのは状況に対する懸念だ。  
「…私たちの会話、聞かれていたのでしょうか?」  
 騒ぎの余韻が薄れつつある喫茶店でメアリは、その温度故に口をつけられずにいた紅茶の  
カップを手にしながらァに問いかける。不安そうなメアリに対し、ァはまだ熱い梅こぶ茶を、その義腕で器用に  
摘まんだ湯呑から啜りつつ  
「問題ないでしょう。武蔵書記はこちらと目が合った瞬間、驚きを露わにしていましたから。  
 ちょうど、襲名解除申請に三征西班牙に戻った時に、統合居室でフェリペ総長の上着を抱きしめ  
顔を埋めていたフアナ様と同じくらいの驚愕ぶりだったと」  
「上級者でありながら初心を忘れてらっしゃらないのですね」  
 流石、三征西班牙の政経の雄。油断ないものだと、二人は自分もそうあらねばと納得しつつ、茶をすすり――  
「あ…」  
 声を挙げたのはメアリ。  
 口から鼻に抜けるふくよかさ香り。形に例えるならどっしりとした円錐形。さりとて重鈍さが感じられないのは、  
香りと味の果実的な華やかさが故だろう。一杯加えた砂糖が逆に酸味を強調し、その華やかさを増している。  
「おいしいですね。ダージリンでしょうか?」  
「わかるのですか?」  
 ァはメニューを見るが、そこには紅茶(ストレート)という表記の他に、  
『武蔵さんからのおすそ分け!『酒井様では食紅を溶かした水でも反応に差がありませんでしたので』と大絶賛!』  
と、長めの手書きポップが書かれたシールが付いている。  
「ええ。歴史再現でいいますと先取り気味ですが、嗜みとして少々。興味がありましたら、教えましょうか?」  
「Tes,ありがとうございます。では一つ―――」  
 そう言ってァは、空になった湯呑を置いて  
「武蔵書記達の痴話喧嘩が始まる直前に言おうとした内容について、詳しくお願いします」  
 メアリの紅茶のカップと受け皿が、かちゃりと大きめな音を立てた。  
 
 
 
   武蔵デカメロン その4  
 
 
 
 ついに来たと、メアリは震える手でカップを置く。  
 心のどこかでこのままお茶を楽しんで解散、というのを期待していたのだが、そんな都合のいい展開は  
なかったようだ。  
 一度は覚悟を決めた身であるが、しかしネシンバラ達の痴話喧嘩によって――  
 …勢いが削がれてしまったのが痛いです。  
 だが、向こうが情報提供をした以上、こちらも開示するのが義務というもの。  
 おずおずと、白い頬を赤らめたメアリは、紅茶をスプーンでかき混ぜながら、  
「あ、あの…本当に、その、特殊なことはしてませんのよ?」  
「Tes,英国基準で特殊なことをしていない、ですね?」  
 
「Tes,英国基準で特殊なことをしていない、ですね?」  
「…何か祖国に対してとんでもない誤解が蔓延している気がするのですが…」  
 まあまあ、と、ァはなだめつつ、メアリを誘導するように質問を寄こしてきた。  
「では、具体的に、メアリ様からはどのようなアクションを、殿方にしているのですか?」  
「は、はい!Jud!え、っと…ちゅ、ちゅーしたり…、点蔵様の、傷などを舐めたり…やはりチューしたり…  
 そ、それから…その……」  
 メアリは紅茶をかき混ぜる速度を増しながら  
「お、お乳で…点蔵様の、逞しいのを、挟んであげたりしています」  
 
 
 ●  
 
 
「ほう」  
 ァが漏らした相槌には、納得と若干の驚きが含まれていた。  
 納得は、やはりジャンル的に胸ご奉仕かという推測の正解によるものであり、驚きは  
 ―――もしや完全な水揚げされた大型魚類系かとも思っていましたが…。  
 まあ、それならばあの不審者っぽい忍者がどのような技をメアリに施すかを聞き出すことで、  
提供した情報分の知識を得るつもりでいたのだが…。  
「それで、胸でのご奉仕とはどのような?」  
 ァ自身、宗茂を初めて受け入れ時は既に、生身の両腕は失っている。そのため、寄せて挟むということが  
できないために、行為中はその豊かな胸を遊ばせている状態だ。胸での奉仕は、未知の世界である。  
 知らないうちに身を乗り出して聞くァに、メアリは紅茶の拡販速度を中止し  
「は、挟むのです。こう、寄せる感じで」  
 と、メアリは二の腕全体を使うように、制服越し豊満な胸を寄せて上げる。  
 布越しにも分かる柔肌に包まれた豊穣のシンボルを見て  
 ――こ、これが英国王室の権威ですか…!  
 あるいはロイヤルおっぱいとでも言おうか?申し分ない重量と、完全な形体、そして視覚的に見ても分かる肉の張りと肌の艶。  
 女の身でありながら、思わず唾を飲んでしまう。いわんや男をや?  
 戦慄するァのようすに、メアリ自身は気付かず…  
「きっかけは、点蔵様のご要望です。  
 私の胸は点蔵様の信仰に叶う物であるらしく、良く…えっと、かわいがっていただけるのですが、ある時、  
 点蔵様が『挟んで欲しい』と」  
「ほう。それは忍びにしては珍しい正面突破ですね。男らしい」  
「いえ。ちょっと違うんです。あ、もちろん、点蔵様が男らしいというのを否定する気はありませんが…」  
 言葉を区切ってからメアリは、その時の光景を思い出してなのか、少し照れくさそうな、しかし嬉しそうな  
頬笑みを浮かべる。  
「…あの時、点蔵様はきっと『挟んで下され』『挟んで欲しいで御座る』のどちらかで迷ったんだと思います。  
 そのせいか『挟んでござさる』と思いっきり噛まれまして…」  
「それは……」  
 言葉を失うァ。噂によればあの忍者、倫敦塔での告白でも肝心の告白の言葉を、それも2度に渡って噛んだと言う。  
 フォローするべきか、一緒にバッシングに回るべきかの判断に悩むァだが、  
「…かわいいですよね、点蔵様のそういうところ」  
 うっとりとした表情で、頬に手を当てため息交じりに言うメアリに、ァは自分の悩みの無駄を悟る。  
「…それで、挟んで?」  
「Jud,挟んでからは、こう、体を前後させたり上下させたりしながら、絞り出すように動きます。  
 けど、一番楽なのは、点蔵様の体にお乳を擦りつけるようにしながらグラインドさせることですね。その  
状態で、はみ出した点蔵様を…く、口で…」  
「舐めたり、吸ったり?」  
「J,Jud。他にも変則的な方法として、し、シックス、ナイン…って言うんですか?その、上下互い違いになる  
方法なんですが、その時、胸の上の方から点蔵様の先端を挟みこむんです。そして…挟みながら…えっと…  
急所の方に…」  
「金的狙いですか?」  
 Jud,とメアリは身を小さくするように、うつむき加減で答えた。その表情はァからは見えないが、  
真っ赤になった首筋や耳から、大体の想像はつく。  
 ともあれ、睾丸への愛撫というのは、ァにとっては初耳だった。  
 確かに敏感な場所ですし、十分性感帯としての意義はありますね。  
 今夜にでも試してみようと思いながら、ァはさらなる有意義な情報を聞き出すために  
 
「他には?」  
「へ!?ほ、他に?あ、え…えっと…そ、そうですね。  
 ときどき…なのですが、仰向けに寝た私の上に、点蔵様が跨って、自分から動かれることもあります。  
 お乳を…犯すような感じで」  
 自分で言った犯す、という言葉に羞恥を示すメアリ。  
「自ら…」  
 一方のァは、これは自分たちにも応用できるのではないか、と考える。  
 自分の手で挟むのは無理だが、宗茂にセルフサービスで挟んでもらえば良いのだ。  
「…ちなみに、そのセルフサービスパイずりの時、メアリ様は何を?」  
「ぱ、パイず…!え、てっ、点蔵様が動かれる時のことですよね?  
 …その時はあまりすることはありませんね。せいぜい、お乳の間から飛び出る点蔵様に、  
 キスをしたり、舌を這わせたりするぐらいですが、動いているのでそれもしにくいですし…」  
「なるほど」  
「それに…打ち明けますと、あまり点蔵様に動かれるのは、好きじゃないんです」  
「…痛かったり、体勢が苦しかったりするのですか?」  
「いいえ。そうじゃないのですが……その、私の体で気持ち良くなっていただけるのは嬉しいのですが、  
むしろその嬉しさは、こちらが積極的にご奉仕している時により強く感じますので相対的に…」  
 それは理解できる気がする。例えば挿入された時の場合でも、相手が主体でがむしゃらに動く時は、  
強く求めらているという感覚が強く、逆にこちらが主体で動いている時は、相手に与えているという感覚が強い。  
 どちらも肌を重ねる時に得られる感情としては重要なものだが、きっとメアリとしては、胸での行為の持つ意味は  
後者の比重が大きいのだろう。  
 そう、納得しかけたァだったが、次のメアリの発言で、それらが一気に吹っ飛んだ。  
                     ・ ・ ・  
「それに―――点蔵様の先端が、おでこに当たるのは違和感がありまして…」  
「――――ちょっとお待ちを」  
 
 今、目の前の女性は何と言った?おでこ―――額に当たる?  
 ァは改めてメアリを見る。言葉を遮られたことで、首を傾げ、僅かに見開いた険のない目でこちらを見るメアリは  
小柄とは言えず、むしろ女性にしては背が高い方かもしれない。  
 そんな彼女の乳下から、額までの距離を考えると……  
「メアリ様。つかぬことを伺いますが……武蔵第一特務、あなたの殿方のモノの長さはどのくらいで?」  
「へっ?J,Jud、えっと…」  
 メアリは少し考えるそぶりをしてから、左手の手のひらを上に向けてテーブルに置き、右手をすっと上にやり  
「一番大きくなって、このくらいです」  
 その高さを見たァは胸中で  
 ――巨根!?  
 馬鹿な!あれでは宗茂様の二倍近くあるではないですか!  
 西国無双の三度目の敗北が認められず、ァは悪あがきをするように  
「ふ、太さは!?太さはどの程度で!?」  
「ふ、太さ、ですか?Jud,えっと…このくらい」  
 そう言って、メアリが指で作った輪を見て、ァは再び胸中で  
 ――鉛筆!?  
 いや、流石にそれは言い過ぎだ、とァはすぐに考えを改める。メアリが提示してきた点蔵の周径は、  
 宗茂のそれと同じ程度だった。  
 その事と、メアリが宗茂の連射性を讃えたことを加味すると…  
 ――総合成績一勝一敗一引き分け…!  
 それに、ァ自身は小柄であり、膣の深さもそれに相応だ。むしろ、長過ぎても痛いだけだろう。  
 つまり私的判定では二勝一引き分けで宗茂様が圧勝です。  
 どうにか内部で愛する夫の勝利を確定づけたァ。一方メアリは他にも聞かれるだろうと先回りをするように、  
「点蔵様はいわゆる、割礼はされてませんが、立てばちゃんと顔を出してくださるタイプです。  
 だから、最初に顔を出されたとき、ちょっと臭いこもってまして……」  
 するとメアリは、点蔵の噛み癖を評価した時と同じような表情をして  
「……男の人の臭いって…なんかエッチな気分になりますよね?」  
 いえ、宗茂様は常時キャストオフなので。  
 という言葉を、ァは飲みこんだ。趣味嗜好は人それぞれ。現に自分も、今、宗茂の劣勢を、その解釈で  
プラスに判定したではないか。  
 
「…確かに、後背位でシーツや枕に顔を埋める時など、宗茂様の臭いが残っていると倍プッシュですね」  
 無難な返答をすると、メアリは我が意を得たりという風にJudと言い、  
「口の中にお気持ちを射されたりすると、その臭いだけで果ててしまいますよね?」  
 いえ、そこまでは訓練されていませんので。  
 と、反射的に答えそうになるのをこらえるァだが、その様子の不審さにメアリは気付かない。  
 メアリは、自分の性癖を語ったことで、一種の開き直りが生じたのか、それとも羞恥によるストレス過剰によって  
脳内麻薬が安全域を超えたのか、赤面しながらもテンション高めで  
「胸で挟んで、飛び出た先端を口でご奉仕、というのが、点蔵様が一番お好みでして。  
 それに私も最近は、お乳の間を点蔵様で擦られるだけで果ててしまうようになってしまって…。  
 気付いたら点蔵様の種をいただく前に、二人とも満足していたり、そうでなくても、一度の逢瀬で満足となり、  
しかもその時の体液は、薄くなっていまして…」  
 メアリは少し悩ましげに  
「…子供を…なさなくてはいけませんのに、これでは…。  
 強いて悩みを挙げるとすれば、その点ですね」  
 そう言って、やや呆然とするァを前にして、メアリの語りは終わったのだった。  
 
つづく  
 
 

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル