廊下を全力で駆け抜ける二つの影。
一つは何かを抱きかかえ、もう一つは前を行く影を必死で追っている。
「さあ千里様! とろける様な蜜月を共に過ごしましょうっ!!」
「いやあぁぁーーっ! 監視カメラ様がみてるーーー!!」
「シ……シビュレさん…………待って…………」
前を走る影はシビュレと彼女に抱きかかえられる風見。
後ろを走る影は、必死で追走している新庄だった。
――にしてもシビュレさん、一体どこへ行くつもりなんだろう……?
既に訓練室からは大分離れている。しかし、高速走行に目を回す風見と
シビュレを見失わないことに必死だった新庄は、現在地がさっぱり判らなかった。
「さあ到着です!!」
シビュレはドアの前で急停止すると、脇のコンソールを素早く操作する。
逆の手に収まっている風見は、既に意識を失っていた。
遅れること十数秒。なんとか着いて来た新庄は、倒れるように膝を床に着き、酸素を肺に送り込む。
ふと周りを見渡せば、
――居住区?
日本UCAT内を自宅とする者達に用意された居住区画。
三人がいるのはその一角だった。
――まさかシビュレさん、風見さんを自室で手篭めに――!?
疲れに震える足を叱咤し、新庄は何とか立ち上がる。
コンソールに何やら入力を終えたシビュレは、開くドアの内へと踏み込み、
「御邪魔いたしまーす!!」
――あれ?
シビュレの言葉に違和感を覚えつつ、新庄も後に続いた。
靴を脱ぎ捨て一段上がる。玄関から続く短い廊下の終点は、扉ではなくふすまだった。
それをザッと勢いよく開き、中に入るシビュレ。
「ちょっと場所を借りに参りました。
よろしいですか? よろしいですね? 拒否権はありませんので」
不穏な言葉を口にするシビュレの後ろ、新庄は首を伸ばし室内を見回す。
UCAT内には珍しい、こじんまりした畳敷きの六畳間。
左手側には別の閉まったふすま。隅には畳まれた布団と小さな箪笥。
中央には丸ちゃぶ台が据えられ、ポットと湯飲みが置いてある。
そして、茶をすする手を止め闖入者を見据える部屋の主は、
新庄がよく知る赤毛に泣きぼくろが特徴の――
「シビュレ様に、風見様に、……新庄様ですか。
本日は来客が多い日だと判断します」
無表情で呟くメイド服の自動人形――
「八号、さん……」
新庄を見やる八号の表情のわずかな曇り。
彼女自身にも判らないそれを、シビュレだけは認めていた。
「御説明を要求します」
三人分の湯飲みが置かれた丸ちゃぶ台。
正面のシビュレに向けて、八号は詰問を始めた。
自分に掛けられた言葉ではないのに――そうなのかもしれないが――
シビュレの横に座る新庄は、緊張に身をすくめた。
ちなみに、失神した風見は布団に寝かされている。
「まず、部屋には鍵が掛かっていたはずですが」
「強制的に解除いたしました」
「何故私の部屋に?」
「かくかくしかじかというわけでレッツレクチャータイムです」
「そのようなこと、御自身の部屋でなされればよいでしょう」
「既成事実のために第三者に見てもらう必要がありまして。
それに千里様はシャイなお方ですから、
最初から二人きりだと緊張するかもしれませんし……」
「では何故新庄様が?」
「新庄様は、事情を知ってらっしゃいますし……」
「それならば、シビュレ様の部屋に三人で行かれれば良いではありませんか」
「……何か問題でも?」
――あれ? 八号さん?
八号が言葉に詰まる。その一言にどんな意味があるのか、新庄は疑問に思う。
「で、ですが――」
「例の件、自動人形達の共通記憶に流しましょうか?」
その一言で、八号は完全に動きを止めた。しばし後、
「……好きにして下さって構いません」
その一言に、シビュレは満面の笑みを浮かべる。
「有り難う御座います! では、早速準備をいたしましょう!」
「い、いいのかなあ……」
苦笑しつつ、シビュレの横顔を眺める新庄。
首筋に軽い衝撃を感じたのは、正にその瞬間だった。
「まず新庄様。少し眠っていてくださいね?」
畳に倒れこむ新庄の横目に、手刀を作ったシビュレの姿が見えた。
――あれ? いてて……。
「――んっ、はぁ……ダメ、痛いシビュレ……」
「何をおっしゃるのですか千里様。まだ第一関節までしか入ってませんよ?」
「だってお尻、ぐいぐいって…………ひゃあああっ!!」
――そうだ、シビュレさんと風見さんと、八号さんの部屋に来て……。
――それで、急に意識が遠くなって……。
「って、ええぇんぐっっ!!」
驚愕の叫びを上げる新庄の口は、すぐに背後からの手に押さえられた。
覚醒した新庄の視界に、記憶とは違う二人の姿が映る。
足が畳まれ隅に追いやられたちゃぶ台。広くなった部屋の中央に布団が二枚敷かれている。
手首を後ろ手に縛られ布団にうつ伏せになり、曲げた膝で腰を浮かせる風見と、
彼女の横に添うように体を倒し、耳元で囁きかけるシビュレの姿があった。
風見はシャツの前をはだけさせられ、腰までまくれ上がったスカートの下は、
――ぱんつはいてない!?
形良く締まった下半身が丸出しで、尻の谷間にはシビュレの手があてがわれている。
「ふぁ、んやぁ……シビュレ、これ絶対おかしいってばあ……」
「千里様が望んだことではありませんか。指一本くらいで音を上げるなんて、
……全く、だらしがありません」
シビュレは言葉を放ちつつ、風見の耳にその口を寄せた。
耳の形に沿ってゆっくりと周囲を舐め回し、耳朶に歯を立てる。
「やめてシビュレぇ……。こんなの、良くないよぉ……」
風見の涙声による哀願は、シビュレの喜悦を昂らせる結果しか生まなかった。
風見の蕾へと侵入させた中指を、回転させつつ無理矢理押し進める。
「んゃああああぁぁぁっっっ!!!」
「これで、第二間接……約七センチ弱です。
どうです千里様? 通常刺激とは無縁の直腸を荒らされる感触は」
「……ぁ……う、あぁ……」
目を見開き口を締まり無く開け、涙と唾液を布団へと垂らす風見。
一度体を離したシビュレは、指は抜かぬまま風見の体を横向きに直し、
彼女の顔を汚す液体を舐め取りつつ空いた手で胸を撫で回し、挿入した指を前後させる。
指の前後に合わせ、風見の喉から吐息が漏れる。
開きっぱなしの口に唇を重ね、舐め、口内へ舌を進入させるシビュレ。
卑猥な水音を立てて、シビュレは風見の口をむさぼった。
風見は抵抗すら出来ず、体と心を蹂躙されていた。