本田・正純は家に届いた差出人不明の小包の開封を行っていた。
調べてもらったところ、危険物でもなく、場所を複数経由して送り元が解りにくかったらしいが、K.P.A.Italiaからの物らしい。
正純に心当たりはなく、ある人物が脳裏をよぎったがおそらく関係ないはずだ。
が、そこまで解れば躊躇うものではない。本当に名前を書き忘れた可能性もあるのだ。開けないで礼を損なうよりも、確かめたほうが良いと思う。
……お中元かもしれないしな。ハム来いハム! 素麺でもいいぞ!
即・開・封……!
……女物の服だこれ――!?
「ほう、武蔵の副長に女物の衣類を送ったのか」
「女らしい格好をしろといった手前、こちらが手本を示すべきだろ。違うか。それに勝者は敗者への施しを行う余裕を見せ付けねばならん」
「未だに学生気分な若々しいおっさん教皇総長元少年に元教師として言うとだな。――好きな子をいじめるガキ大将のようだな」
「黙れガリレオ」
……誰が送ってきたかはわからないけど、無駄にはできんよな、うん。賄賂かもしれないけど、郵便事故という可能性は捨てきれない。保管しておこう、うん。
ものは放っておくとダメになる。乗り物など、放置しすぎてエンスト、ということもある。
だからたまに着てみるのは保管の一環であり、慈善事業だ。慈善事業……なんと政治家らしい行為か!
スカートだけでなく女物のズボンや上着までとは、なんと相手は気の効いた相手だろう。――郵便事故だけど!
……送られた相手は喜ぶだろうな。腹は膨れないが。うん、私のことではないぞ!
とウキウキしながら箱を漁るは本田・正純は何か別の感触を得た。
……?
「うちの女子生徒に匿名で送らせたんだが今頃届いているはずだ」
「ほう。元少年、だが服は自分で選んだと?」
「Tes.、商売人やってた身だからな、貧乏性で男子制服を着たままの副長より女ものを選ぶセンスはあるぞ。二連勝か俺」
「ん? まて下着も選んだのか?」
「そこは女子生徒に発送ついでに頼んだ。セクハラ教皇とか言われてはかなわんからな」
「はい、女子生徒艦橋組一同できっちりと選びました」
……ヒモだこれー!?
「何をきっちりと選んだ――!?」
「仕込みはバッチリです!」
ひょっとすると服紐やズボンのゴムが抜け落ちたのかもしれないと数分ほど粘ってみた正純であったが、
奥底より同時に発掘されたカタログが、無慈悲にもそれがK.P.A.Italiaブランドの下着であると告げた。
ヒモだけではない。エグイ感じの下着が何点もある。
……K.P.A.Italiaは情熱の国だと聞いたが!
あれ? 別の国だっけか? と、箱にのしかかるようにうなだれていた正純の指先に当たるものがある。
箱の底ではない。異なる感触だ。何かと箱を覗き込んでみれば、
手紙だ。
「だからきちんと仕込んでおきましたよ。“別の誰かが送ったであろう”と連想できる署名付きの手紙を」
「問題なければその内容と名前を聞いてもよいかね?」
“インノケンティウスとイトケンって結構似てるよね! あと淫蕩のインはインノケンティウスの淫!!”
・――“淫蕩なパパの人”より
「アホか――――!!」
同時刻異なる場所で二人は見事にハモった。