尊秋多学院の衣笠書庫前。  
 春はまだ盛り前だと言うのに、身体を突き刺す風は未だに冷たいままだ。尊秋多学院子弟の制服に身を包んだ灰  
色の紙の少女は、何かを思案しながら扉の前を行ったり来たりしている。何度か扉の前で立ち止まって、覚悟を決  
めたように取っ手に向かって手を伸ばすものの、最後の最後で踏ん切りがつかないのか、取っ手に触れる直前で手  
の位置を元に戻し、彼女はまたうろうろと扉の前を右往左往し始める。  
 ポケットから折りたたみ式の手鏡を取り出し、自分の顔をチェックする。髪に乱れはなく、服のほうも目に見え  
る範囲に妙なところはない。食事は済ませたし歯磨きも問題はない。顔は先ほど洗ったばかりだし、目の下に隈も  
ない。  
 不自然なところがあるとすれば、自分の表情ぐらいか。  
 呼吸音が聞こえるほど大きな深呼吸を二度。険しい表情になっていた自分の顔を、いつもの無表情に戻してみせ  
る。  
 目と閉じ、再度開いてみれば、鏡に映るのは余所行き用の自分の顔。  
 これなら大丈夫、とツインテールの少女は今度こそとばかりに書庫の扉の前に陣取った。よし、と心の中で一喝  
して自分自身を鼓舞し、ブレンヒルトがゆっくりと書庫の扉へと己が手を伸ばす。  
 そこで、聞き慣れた声による不意打ち。  
 
「――ブレンヒルト?」  
 不意に背後から自分の名を呼ばれ、うひゃあ、と盛大な悲鳴を上げると同時に、慌てふためきながら声のした後  
ろを振り返ろうとした少女は、足をもつれさせてそのまま勢いよく背中からコンクリートの床に激突した。背中が  
衝撃によって圧迫され、激しい痛みとともに呼吸が一瞬だけ停止する。  
 頭を打たなかったのと、周囲に人影がなかった事が救いか。命に別状はないが、こけた勢いで空へと両足が放り  
出され、学校指定の制服の短いスカートが捲くれ上がって、黒タイツの下に穿いた漆黒の下着が露わになる。  
 それはチラを遥かに通り越してモロ。  
 たっぷりと五秒は空に投げ出されていた、上履きを履いた足がゆっくりとコンクリートの床へとおろされる。恥  
も外聞もなく開かれた美脚の間からは、まだ漆黒の下着がこちらに挨拶でもするかのように覗いていた。  
 仰向けになってしばし薄明るい電灯を見上げていたブレンヒルトは、腹筋運動の要領で上半身を起き上がらせる。  
視界に移りこむのは、忌々しくも忌々しい黒猫が一匹。完全に据わった目で見つめられ、黒猫は蛇に睨まれた蛙の  
ようにその場に硬直する。  
 重苦しい沈黙の中、苦し紛れに、やあ、と右前足を上げて挨拶し、黒猫は平静を装って喋り始めた。  
「君、チラリズムが分かってないねー。Low−Gの人間ってのはわずかに覗く下着にこそエロスを感じるんだ、  
って前に読んだ本に――ああ駄目です駄目です冗談ですごめんなさいごめんなさい! アイム・ソーリー、ひげそ  
ーりー! 変な快感がまロくてオルガズムでデンジャラスな感じとか言う前にに千切れちゃうでございますわよー  
ーー!!!」  
 いつもならばこの辺りで終わるはずの制裁に終わりが見えず、黒猫はいまだかつてない恐怖を覚えた。尻尾を掴  
まれ、尻を掌で圧迫されながら股を床に擦りつけるようにシェイクされ、黒猫のあまり覚えたくはない痛みとあま  
り分かりたくない快感がどんどんと高みへと押しやられてゆく。  
「……見たわね」  
「見たって言うか見えたって言うか見せられたって言うか見ざるをえなかって言うか、今のは不可抗力ですからー  
ーー! って言うか不可抗力にしてーーー!」  
 
 素敵にシェイクされる黒猫の瞳から徐々に理性の光が失われていくのに気づいて、さすがに不味いと思ったのか、  
ブレンヒルトは慌てて彼の身体を解放する。  
 解放された黒猫は腹を見せるようにして、そのままぐでんと大の字に寝転がる。  
 静寂はたっぷりと三十秒ほど。ほどなくして理性を復活させた黒猫がのそのそと起き上がり、ぽつりと呟く。  
「で、ブレンヒルト、ここで何やってたのさ?」  
「別に。たまたま通りかかっただけよ」  
「ウッソだー。だって君、恋する乙女みたいに十五分もこの部屋の前でうろうろうろうろ――」  
 自分の短所は口にしなければいい事を口にする事だとは分かってはいるのだが、直せないものは直せない。ずっ  
と見られていた事と図星を指された事から来る羞恥に、耳の先まで紅く染めたブレンヒルトが表情だけはいつもの  
ポーカーフェイスを保ちつつ、猫の股を開いて攻撃を開始する。  
 ぎゃーぎゃーと泣き叫ぶ黒猫の声を聞いたり、悶絶する姿を見て少しばかり興奮を覚えてしまうのは、なぜだろ  
う。  
 
「ブレンヒルト・シルト君?」  
 黒猫を調教している最中に不意に名を呼ばれ、ブレンヒルトは思わずその身を震わせる。聞き慣れた声のしたほ  
うを見てみれば振り返れば、白髭を蓄えた長躯の老人が、分厚いハードカバーの本を小脇に抱えながら、開いたド  
アから身体を半分だけ覗かせてこちらを見ていた。  
 にゃーにゃーと甘えたような声を出しながら、呆然とするブレンヒルトの腕から逃れた黒猫が、ジークフリート  
の足へ擦り寄ってゆく。  
 彼は黒猫の黒手袋をはめた手で軽く撫でてやると、衣笠書庫の中へ入るようにと促した。犬のようにパタパタと  
尻尾を振る仕草を見せ、黒猫は扉の奥へと身を翻す。  
「ジー……ゾーンブルクさん……」  
「何か騒がしいと思えば、君か」  
 言うジークフリートは、何も変わらぬいつもの服装。白のシャツに黒のベストにトルーザー。他の服は持ってな  
いのかと問い掛けたくもなるが、何年も同じ服装を着ているところを見ていれば、疑問に思うと事さえ失ってしま  
う。彼がこの服装以外を身に纏うのは、それこそ日常が非日常へと変化した時のみだろう。  
 互いに何も言えず、微妙な沈黙による静寂があたりの空間を支配する。  
 何を言うべきか、と互いに思考し、思い至らずにただ無意味な時が刻々と過ぎる。  
 待ちきれなくなったのか、先に書庫へと入っていた黒猫がひょっこりと顔を出し、にゃあ、と一声鳴いた。  
 
 その声に、ジークフリートとブレンヒルトはほぼ同時に反応を示した。ブレンヒルトのほうは気まずそうな表情  
でジークフリートから視線をそらし、ジークフリートもジークフリートのほうで、表面上は普段と変わらない様子  
ではあったが、己が心得られるほどにその心中は穏やかではない。  
 とりあえずなにか言わねばと、ジークフリートは平静を装いながら言葉を紡ぐ。  
「ここへは、何か用事でも?」  
 あると言えば、ある。正確には衣笠書庫にではなく、ジークフリート自身にだが。  
 全竜交渉部隊との一件以来、初めての対面だが、ブレンヒルトから見て彼に以前と比べて変わった様子はない。  
青い瞳の奥にはわずかに悲しみを落としたような色が揺れ、他の人間よりもほんの少しだけ距離を空け、同時に一  
歩だけ近づくような雰囲気を見せながら、自分を見つめてくる  
 実際は、他にもっと気の聞いた台詞がなかったのかと自責していたのだが、ブレンヒルトが鈍いのかそれとも彼  
のポーカーフェイスが見事なのか、彼女がジークフリートの心中を察しているような様子はない。そらしていた視  
線を戻し、ブレンヒルトはどこか不機嫌そうに呟く。  
「……用がなければ、来てはいけませんか」  
 どうして自分は、素直な物言いが出来ないのだろうと自問した。姉が生きていて、まだ自分が幼かった頃、自分  
は今と比べれば遥かに素直だった気がする。子供だったあの頃は、もっと素直に甘える事もできていたはずなのに。  
長寿とは言え、もう五十や六十はとう超えているはずなのに、なぜ自分はいつまで経っても反抗期の子供のように  
振舞ってしまうのだろうか。  
 
 だが、自分の突き放すような対応にも、ジークフリートは怒った様な素振りも、気分を害するような素振りすら  
見せなかった。  
 彼女の突き放すような言い方をされ、ジークフリートは安堵すら覚えたのだから、それは当たり前の事だ。彼自  
身に罵倒される事を快楽とする妙な性癖ではなく、ただ彼は、少々キツい物言いのほうが彼女らしいと思っただけ  
の事。  
 どこか怒っているようなブレンヒルトのいつもの視線が、ジークフリートを思わず安堵させる、  
 いつもの自分を取り戻し、ジークフリートは落ち着いた様子で唇から言葉を紡いだ。  
「いや、そういうわけではない。ただ少しばかり疑問に思っただけだ。気分を害したなら、謝ろう」  
 そのようなつもりで言ったのではない、と、ブレンヒルトがクチにするより先に、書庫から完全に姿を現したジ  
ークフリートが、前方斜め45度ほどの角度で見事なまでに美しい礼を見せた。その様子に、ブレンヒルトは何も  
言えずに思わずうろたえる。  
 顔を上げたジークフリートは何かを思案するように、唐突に視線を宙へと泳がせた。右手の脇に整理中だと思わ  
れる本を抱えつつ、ジークフリートは開いているほうの左手でブレンヒルトに向かって手招きをした。  
「そこでただ立っているのもあれだろう。折角だ。コーヒーでも飲んでいかないか?」  
 
 座らされたカウンターは相変わらずで、必要最小限の物しか置いていなかった。  
 本の貸出票に書き込むためのシャープペンシルやら鉛筆が数本刺さったペン立てと、本日の日付を示す小さな卓  
上カレンダー。さすがに殺風景だと思ったのだろうか。等身大食玩シリーズの『寝込んだ猫』が三種類ほど飾られ  
ていた。左から順に、骨折した三毛猫、風邪を引いた白猫、失恋したシャム猫、と続き、その隣では本物のバカ猫  
が興味津々にマスコット人形にじゃれている。  
「すまないが、あと五分ほど待っていてくれ。整理してしまわなければならない箇所があるのでな」  
 ことっ、と静寂が満たされていなければ確実に聞き落とすであろうわずかな音を立て、カウンターにあの時と同  
じ白い紙コップに注がれたコーヒーが差し出された。鼻腔をくすぐる独特の酸味も、以前と全く同じ物。ただ以前  
と違うのは、スティックシュガーとそれをかき混ぜるための小さなプラスティックのスプーンが添えられていた事  
と、自分にそれを差し出した長躯の老人も同じようにコーヒーを手にしている事だった。  
 自分に差し出された紙コップとは違い、黒手袋つきのその手に収まっているのは、彼の身体とは不釣合いなほど  
小ぶりな、取っ手つきの白いカップ。注がれたコーヒーはおそらく同じ物だろう。彼のカップには、銀製の小さな  
スプーンがコーヒーに半分ほど浸かっている。  
 
 どこからともなく取り出したコーヒーミルクが、ジークフリートのカップの中へと注がれていく様子を、ブレン  
ヒルトは黙したまま、ただじっと見つめていた。ブレンヒルトは沈黙を保ったまま、彼の淹れてくれたコーヒーに  
スティックシュガーの袋を開けて注ぎ込む。スプーンで掻き混ぜてから、紙コップを持ち上げると、容器越しに掌  
へと伝わるコーヒーの温度はやや熱い。気をつけながら一口だけ含み、若干の甘みを含ませたコーヒーの味を確か  
める。悪くは、ない。  
 どうしたものか、とブレンヒルトは思考する。  
 何を言うかは色々と考えていた。  
 
 今は亡き姉の事。  
 1st−Gの事。  
 預けてた鳥の事。  
 己の事。彼の事。  
 彼の罪。彼の罰。  
 己の罪。己の罰。  
 
 練習も嫌と言うほどしたし、言うセリフをわざわざ紙にだって書き起こした。けれど、いざ本人を目の前にして  
も、言葉は形をなす前に無残にも消え去って言ってしまう。礼を言うつもりだったのか、謝罪をするつもりだった  
のかも既に曖昧で、ランダムに掻き混ぜられた感情がぐるぐると頭の中で大回転している。  
 見れば、一口だけコーヒーを楽しんだジークフリートが、こちらに背を向けて本整理を再開している。  
 
 ジークフリートの背が、本の整理に勤しむ両手に合わせて揺れていた。彼の容姿は、昔から随分と変わってしま  
っているが、あの背中と性格だけは変わらないな、と紙コ  
 
ップのコーヒーを口にしつつ、ブレンヒルトは思考する。  
 思い出す。初めて会った時からしばらく、彼に近づくのにどうにも踏ん切りがつかず、あの背中ばかりずっと眺  
めていた事を。  
 思い出す。まだ姉が生きていた頃、眠ってしまった自分があの背中に抱かれていた事が時折あった事を。  
 思い出す。あの背中の感触が大好きで、時々眠ったふりをしたり、無理にせがんで背中に抱いてもらっていた事  
を。  
 思い出す。頭を撫でられる事の次ぐらいに、あの背中に抱かれる事が好きだった事を。  
 思い出す。あの背中の温もりを。  
 思い出す。あの背中の優しさを。  
 思い出す。あの背中の大きさを。  
 思い出す。あの背中の大切さを。  
 
 締め付けられるかのように、胸の奥が難とも形容しがたい不可思議な痛みに疼く。心臓の鼓動が早いわけでも、  
息苦しいわけではない。ただ一途なまでに純粋なもどかし  
 
さが、ブレンヒルトの中の感情に存在している。  
 静かに紙コップを置き、ブレンヒルトは音を立てぬように気をつけながらそろそろと立ち上がった。  
 彼との距離は五メートルもない。  
 一歩、二歩と進み、ブレンヒルトは彼との距離をゆっくりと縮めてゆく。  
 ジークフリートの背までは、残り三歩。一瞬だけ立ち止まり、あ、と一音、空気に溶けてしまうような囁きを呟  
いて、ブレンヒルトは何かを求めるようにそろそろとその  
 
右手を伸ばした。  
 小さく一歩進めば、彼はもう手の届く距離。  
 小さく二歩進めば、彼はもう息の届く距離。  
 小さく三歩進めば、彼との距離はもうない。  
 背後まで迫るブレンヒルトの気配に気づいたのか、ジークフリートは片膝を立てた姿勢のまま、ぴたりとその手  
を止める。同時にブレンヒルトの動きも止まり、伸ばした右手が、彼のその肩に触れるか触れないかの距離を保っ  
たまま静止する。黒猫は身体を小さく丸めたまま、カウンターの上で身動ぎすらしない。  
 
 静止が書庫の中を支配したのは、ほんの一瞬だったのか、それとも数秒だったのか。  
「――ナイン?」  
 静の中に動の波紋を広げたのは、やはりジークフリート。  
 自分の名を昔の“それ”で呼んだのは、無意識なのか意識してなのか。  
 後ろを振り向かぬまま、禿頭の老人から紡がれる、疑問詞を含んだ声はひどく懐かしく、優しい。  
 紅い唇の間から漏れる吐息と伸ばした右手の指差しが、緊張と安堵から震えているのを自覚する。  
 指先がジークフリートの肩に触れ、彼の両肩に己が掌が乗せられる。その行為に彼からの拒否の意はなく、ただ  
沈黙だけが、彼に触れるのを許されているのだと知らせてくれる。  
 ブレンヒルトの両腕は彼の首元に周り、そのまま自分の体重を預けるようにもたれかかった。彼がこれぐらいで  
バランスを崩したり重みを感じたりしない事は、ブレンヒ  
 
ルトもジークフリート自身もよく知っている。軽くしゃがみ込み、己の顔はジークフリートの顔の真横へ。プラチ  
ナブロンドのおさげの片方が、ジークフリートの首筋に優しく愛撫するかのように触れる。  
 
 あ、と言う単語だけで形成された短い詞が吐息を含み、ジークフリートの耳朶に触れる。彼は手にしていたハー  
ドカバーの本を邪魔にならぬ場所へ置くと、黒手袋をした  
 
ままの手で、自分の真横にあるブレンヒルトの頭をそっと撫でた。  
「昔……もう随分と昔に、やたらと私の背中に抱きつくのが好きな娘がいたな」  
「たぶん、その娘、今での好きよ。あなたの背中も、頭を撫でられるのも」  
 羞恥で顔が耳の先まで紅くなる事を自覚し、見えていないのは分かっているはずなのに、ブレンヒルトはジーク  
フリートの肩に顔を埋めた。  
 己が両腕に込める力はさきほどよりもより強く、より優しく。  
 ジークフリートの胸の前に重ねられた自分の両手を、自分の頭から離れた彼の手がそっと包み込んでくる。  
 黒手袋越しに伝わる彼の温もりを知覚しながら、ブレンヒルトは瞼を閉じる。胸を打つ心臓の鼓動は、不思議と  
ひどく冷静だった。  
「ジーク、フリート……」  
 ジークフリートの肩に顔を埋めたまま、独り言のようにブレンヒルトは彼の名を呼んだ。  
 吐き出された吐息は、ただ冷たい空気の中へと消えていく。  
 
「どうした、ナイン?」  
 嗚呼、また自分を昔の名前で彼は呼んでくれる。  
 そして、それを自分は赦す事ができる。  
 自分が彼を昔のように呼ぶ事もできるし、それを彼は拒否せずに受けて入れてくれている。昔と同じようにはい  
いかないけれど、それに近く振舞う事ができる事に、ブレ  
 
ンヒルトは身震いするほどの歓喜を覚える。  
 自分はこうしたかったのかもしれない、ずっとずっと前から。  
 彼と戦場で刃を交わした時からずっと。  
 彼と再会した時からずっと。  
 1st−Gが滅んだ時からずっと。  
 まだ姉が生きていた時からずっと。  
 ずっとずっと前から、自分はこうしたかったのかもしれない。  
「なんでもないわ……ただ、ちょっとだけ呼んでみたかっただけよ」  
 
 自分はきっと、ジークフリートの事が好きだったけれど、でも、自分はその頃はあまりにも子供だった。  
 彼と大好きな自分の姉との間に入る事もできず、ただ子供の特権を使って、一緒に居る事を望んでいた。  
 そんな時が永遠に続くわけはないと、子供ながらに心の中で思ってはいたけれど、それでも一緒に居る事を望んだ。  
 いずれ自分が邪魔になるであろう事も、もしかしたら、すでに邪魔だという事を知っていても、それでも好きな  
人の傍に居たかった。  
 やがて、彼女の世界は滅びを迎えた。  
 姉に嫉妬し。彼を恨み。自分を嫌悪し。この世界を拒否し。  
 すべてのわだかまりなくなり、こうして再び彼の傍に居てもよくなった今、自分は何を望み、何を求めているの  
だろう。  
 そして、自分はジークフリートにどんな感情を抱いているのだろう。  
 ブレンヒルトがジークフリートから身を離すと、彼はゆっくりと立ち上がって背後の彼女を振り返った。  
 長躯のジークフリートと小柄なブレンヒルトの身長差は頭一つと半分ほど。  
「ねえ、ジークフリート?」  
 疑問詞を含んだブレンヒルトの呼びかけに、ジークフリートは何も応えぬまま佇んでいる。  
 ただ彼の蒼い双眸が、彼女の紫色の瞳を真正面から射抜くように見据え、ブレンヒルトの次の言葉を待っている。  
 

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