「あの、原川さん?」
「どうしたヒオ・サンダーソン、風邪をぶり返したのか?」
「い、いえ…そうではなくてですね…」
ヒオは何やらもぞついており、一向に話を進めようとしない
これが一度や二度ならいつもの光景、そう思えるのだが今日はおかしい
風邪のウィルスが痴病になんらかの影響を与えたのか?やはり
「あの、何を虚空見てぶつぶつ呟いてるんですの?」
「戻ってくる時ラジオで聞いた新手の学習法だ、実証はされて無いから真似はするな、いいな?」
「あ、はい。わかりましたの。それで、原川さん……」
今回の痴病の発作は中々手強いようだ。
前回は風邪の影響でそんなに酷い症状にはならなかったが…いや、
前回は横田のキチガイどもがヒオの穴を埋める凶悪ぶりを発揮したのだったな…
「ヒオが、ヒオが風邪をひいたと?」
「Tes.本人の申告によりますと同居人がヒオ嬢の布団を盛大に濡らした状態のまま使わせたのだとか」
「恐ろしい、実に恐ろしい国だな日本は!一時期とはいえ本国に脅威を与えただけのことはある、そういうことか!」
「あらあら貴方。何処に行きますの?」
「止めるな、止めるな我が妻よ。これはヒオに風邪をひかせた愚鈍の輩に正義の鉄槌を下すための行進なのだから」
「いけませんわ、ヒオは今も原川少年の献身的な施しを受けられず、息を荒げておりますのに…」
「ディアナ君が言うと何処か卑猥な印象を受けるのでありますが…大佐、この国には人の恋路を邪魔する輩は馬に蹴られて死んでしまうそうであります」
「この国自体に呪縛的な概念が発動していると言うのか!流石はあの狂気の集団、日本UCATと全竜交渉部隊を生み出した国だな!」
この後酷い目にあったが思い出したくも無いことなのでやめよう…
かといって母が居る病院の世話になるという選択肢もそれはそれで惨事の予感がしたし…
「まともな選択肢が残されてないとは・・・不運なものだな…」
「原川さん、そんなに…そんなにヒオと結婚するのが嫌なんですの!?」
独り言に反応した馬鹿がとんでもないことを言い出した
「……脳はまともか?ヒオ・サンダーソン」
「私ちゃんと風邪も治りましたのよ?それよりどうなんですの!?答えて下さい!」
「ちょっと待て。」
頭痛がするので目頭を押さえる…
「ま、まさか…ヒオの風邪が感染って、お脳が!?」
「それは無いから安心しろ。」
「そうなんですの?でしたら何故目頭を押さえているんです?」
「お前の飛ばしっぷりに思考回路が混乱をきたしただけだ。直になんとかなる」
そうだダン、お前は常に冷静になってこの頭が行かれたヤンキー少女の痴病発作を抑えねばならんのだ。クールになれ。
「よし、確認しよう。何時俺がお前と結婚することになった?」
「ええと、この前、謝罪と責任と賠償を要求しましたら原川さん、言ってくれたじゃないですか。『風邪を治してからにしろ』と、ですのでこうして…」
「なるほど、お前の脳内がファンタジー満載で既成事実を作ろうとしていることは理解できた。戻って来い」
「な、なんですのその哀れみと悲しみが満ち溢れた視線は!?」
「諦観の目で見てるだけだ。もう手遅れだったのだな、と」
「私をこんぐ☆パンチャーや死亡フラグダダ流しダメ男や末期マゾ男や男色変態交渉役と一緒にしないで欲しいんですの!」
「改めて奴等の飛ばしっぷりを考えるとアレだが。お前もほぼ同列だぞ」
「身内からの厳しい評価!こ、これが…原川さんの愛情表現なんですのね!?」
この馬鹿は本当に、救い様が無いな
「まだ風邪が治りきってないようだな…明日までは家で寝てろ。お前の学校で妙な噂を立てられては困る」
「あの、それなんですが…夕方に御見舞いに来た方々にその…」
「…何を言った?」
「原川さんが看病してくれたことと、その、添い寝をしてくれた時に汗を一杯かいて…嬉しかったと…」
「方針を転換する。朝一で学校に行け。誤解が解けるまで此処には戻れぬと思え」
「えぇー!?」
こうして今日も原川さん家は平和なのでした。