「えっと、こういう場面初めてでユキさんちょっと緊張してるかも」  
 
夜の寝所で布団を前にしてユキさんが呟く。  
 
「夕飯にスッポンの生き血まで用意しといて今更何言ってるんですか」  
 
「でもユキさんキスもまだしたことないんだもん」  
 
「なら最初から無理しないで下さい。夕飯もメニュー見られただけで  
『これからそういうことをします。』って感じの内容だったじゃないですか」  
 
「形から入んないと止まっちゃいそうだったんだもん。  
‥‥‥年下君、優しくしてくれる?」  
 
ユキさんが顔を赤らめながら、しかし不安そうに聞いてくる。  
とりあえず僕はその口を優しく塞ぐことにした。  
 
 
 
キスしたまま目を開いてみる。  
よほど驚いたのかユキさんが目を丸くしてこちらを見ていた。  
固まっているユキさんを見ながら珍しい姿を見た、なんてどうでもいい事を考えつつ少し唇を吸ってみる。  
一瞬驚いてかたを震わせた後、恐る恐るといった感じに弱く吸い返してきた。そこで一度唇を離す。  
 
「僕はユキさんを置いて居なくなったりしませんよ。  
戦国の時代は終わり、穏やかに生きられる時代になったんです。焦らないで、ユキさんのペースで行きましょう?」  
 
言い終えてから一拍間を置いてユキさんの表情が安堵の色に変わり、すぐに微笑みに変わる。  
 
「ん、ユキさん年下君に諭されちゃったね。  
これってやっぱりユキさんすごく大事に想われてるって自惚れていいのかなっ?」  
 
「自惚れじゃなくて事実ですけどね。家族になるならご両親への挨拶とか色々有りますし、ゆっくりといきましょうよ」  
 
「わあ、年下君色々ユキさんの為に考えてくれてるんだぁ  
そんな年下君に一つお願いがあるんだけど、」  
 
言いながらユキさんの顔が真っ赤になっていく。  
 
「びっくりしてて良く覚えて無いからもう一回キスして欲しい、って言ったら年下君、またしてくれる?」  
 
 
 
 

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