「どうぞ召し上がれ?」
そう告げ、ディアナは肌を晒してソファーに身を横たえた。
豊かな胸の半ばと股の間を覆うのは、褐色の光沢あるチョコの彩りだ。
「ひとつ、ひとつ訊きたいのだが、どうして体温で融けてしまわないのだ?」
「術式に決まっているじゃありませんの。ちなみに唾液でしか分解できないので、食べて頂かないと困りますのよ?」
「ならば、ならば仕方あるまい。妻の苦境を助けるのは夫の務めだ」
「あっ……」
オドーは重量感のある膨らみを手に取り、肌との境目からゆっくりと舌を這わせる。
温かなぬめりを帯びた感触に、ディアナの肩が小さく震えを得た。
「む……。なかなか融けないものだな。特にこの先端が厚めのようだが」
「んふ、ぁ! そ、そんな風に口に含んで転がされると、あふ、ゾクゾクしますわ……」
「もし、もし不快ならば方法を変えよう。しかし広範囲に唾液を塗布するには、この方が効率的だと考えるが」
「い、いやではない、ですわ……。それより、ねえあなた、美味しい、ですか……?」
「それなりに美味ではあるな。たまにはこうした甘味も悪くない」
「んんっ……!」
コーティング越しの舌の動きが、次第に強く明確に感じられるようになる変化の妙に、ディアナの声も甘くなる。
熱心に胸を吸うオドーの姿に、母性にも似た喜びを覚え、その髪を優しく撫で付ける。
やがて全てのチョコが舐め取られ、両の乳房には薄い湿りと、先端を尖らす快い疼きだけが残り、
「さて、さて次は下のほうを対処しなくてはな。では失礼する」
「え、あ、ちょっと、いきなり開脚全開にされてはさすがに恥ずかしいというか……」
「だが、こうしなければ隅々まで行き届かないだろう。特にこのあたりなど」
「ひゃん!?」
腿の付け根、浅く窪んだ箇所に濡れた刺激を受け、子犬のような高い声が出る。
ディアナの脚を両手で押し広げたまま、オドーは褐色の部分を丹念に舐め溶かし始めた。
「んんっ、あっ! な、なんだかわたくし、身体の奥が、火照って、しまって……!」
「もう少し、もう少し我慢して欲しい。この部分がなかなか複雑なのでな」
「ひぁ! そ、そこは、痺れがっ……や、んぅっ!」
外側の襞を唇と舌で挟んでしごき、固まっているチョコをこそぎ取る。
深い亀裂に流れ込んだものは、時々顔を離して確認しつつ、舌を尖らせ探り出す。
その上部、小さな突起を覆った甘味を、口に含んで転がし溶かし、最後の一片を舐め取ると同時、
「ふ、ああぁぁっ!」
ディアナは身を震わせて背を反らし、オドーの舌に濃い潮の味が広がった。
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「ディアナ、ディアナ! どうしたのだ、急に叫んで脱力するとは。そんなにくすぐったかったのかね?」
「あ……。い、いえ、何と言えばいいのでしょうか……」
オドーの呼びかけに、ディアナは未だ定まらない思考の中、初めての感覚を持て余しつつ、
「頭の中が真っ白になって、とても心地良かったというか……。と、特に問題はないと思いますわ」
「ならば、ならば良い。チョコも無くなったのでこれで終わりだな。しかし……」
表情で強い怪訝を示しながら、オドーは妻に問い掛ける。
「……これで男がイチコロというのはどういう事だ? むしろ女のお前のほうが参っているようだが」
「そ、そうですわよね……? どこかで情報を誤ったのかも知れませんわ」
手渡された上着でとりあえず裸身を隠しつつ、ディアナは立ち上がった夫の姿に目を向けて、
「あらあなた、ズボンの前が大きくなっていますけど、それはどうされたのです?」
「うむ、たまに内部が膨張するのだが、こちらも特に問題はない。しばらく経てば元に戻るからな」
「そうですの。男の人もなんだか大変ですのね……」
互いの反応の意味を全く理解しないまま、魔女と悪臭の夫婦は同時に頷き合う。
二人にツッコミを入れる存在は、今この場所には存在しなかった。