原川は目を覚ます前の独特の浮遊感の中にあった。
完全に覚醒していない思考の中、何故目が覚めようとしているかを考える。
すると、胸の上に圧迫感があるのに気づいた。
……誰かが乗っている?
誰だ。と考えるまでもなく、この部屋には彼以外には同居人一人しかいない。
「……原川さん、起きて欲しいんですの」
同居人の声が聞こえてきた。
目を閉じたまま原川は答える。
「……何の用だ、ヒオ・サンダーソン。俺の体内時計はまだ深夜を指しているが」
同居人の声が応える。
「原川さんの体内時計は正確ですの。
……それで、目を開けていただけますか?」
声に対して原川は目を開ける。
あたりは闇に包まれているが、その闇を透かして胸の圧迫感の原因を見る。
体にかかった布団と自分の間で、
ヒオと呼んだ同居人がこちらの顔をのぞき込んでいた。
「……それで、何の用だ?
俺は朝になったらバイトへ行く。そのためには今、睡眠を取る必要があるんだが。
こんな深夜に人の上に乗って睡眠を妨害する理由は何だ」
「原川さん、あの、前に覚悟を決めていたことなんですけど、
その、深夜でないといけないことで、いえ、深夜でもいけないことなんですけど――」
「用件を早く言え、ヒオ・サンダーソン」
ヒオの前置きを断ち切るように原川は言った。
「その……」
ヒオは大きく息を吸い込み、一気に叫んだ。
「ヒオを抱いて欲しいんですの!!」
その声の大きさに、原川は思考を停止し、しかし直後に復帰する。
しかし、その内容を反すうした瞬間、思考が再び停止した。
「あ、あの、原川さん?」
思考停止したこちらの顔をのぞき込み、ヒオは顔を赤くしつつ話しかける。
「その、そんなに、ハードにでなくていいですの。
原川さんの押し入れの奥にあった無修正な雑誌の十分の一くらいでソフトにお願いします。
あ、あれが、原川さんの趣味でしたら、ヒオ、頑張りますけど、その――」
「誰がいつあんな趣味を持った、ヒオ・サンダーソン。
あれは前に言ったように飛場の注文で渡す雑誌だ。誤解するな」
ヒオの言葉に原川は思考停止を無理矢理戻して、反論する。
しかし、ヒオは原川の言葉が聞こえていないのか話し続ける。
「――確かにあの『米国UCAT裏本、金髪!・巨乳!これぞ男の浪漫!〜勇敢なる撮影者に冥福を〜』
みたいなバインバインじゃありませんし、
あんな風に挟むのはヒオのじゃとても出来ませんけど、でも――」
話し続けるヒオに対して、原川は落ち着かせようと布団の中に手を伸ばして、
彼女の背に手を当てる。
しかし、手から伝わる感触がおかしかった。
「ヒオ……何故裸で俺の布団に入ってきている」
こちらの声にヒオが身を震わせて反応する。
「え、そ、その、やっぱり原川さんは着たままとかの方がお好みでしたの!?」
あえて無視して、原川はヒオに言う
「とにかく落ち着け。状況を整理しよう。
で、抱いてくれとはどういう意味だ?明確に言え」
こちらの言葉にヒオは身を大きく震わせて
「その!もちろんその、せ、せ、せせせせせせせ!」
「わかった。言わなくて良い。あと、声大きすぎだ」
「は、原川さんは意地悪ですの!」
どうやら、本当にその意味で抱いてくれと言う事らしい。
「しかし何故深夜にいきなり……」
ヒオは原川の言葉に答える。
「原川さん、私、ずっと待ってたんですのよ。
けど、原川さん、全然そんな素振りも無くって。
あの後も、キスもしてくれませんでしたし、
こちらから誘うのははしたないと思ったんですけど」
頬が熱くなっていくの分かる。
……でも、言わないと。
「ヒオの方は覚悟完了しておりますの。
原川さん、よろしければ、ヒオをお召し上がりください」
言い切って一息。
頬と言わず体全体が熱くなっている。
きっとこの暗闇の中でも原川に分かるくらい赤くなっているだろう。
「………」
原川は沈黙を保っている。
だが、ヒオには原川の理性が鉄壁なのは分かっている。
おそらく、内心で葛藤しているのだろう。
ヒオはさらに一押し。
「その、満足して頂けるか分かりませんが、早速」
そういって布団の中に潜り込む。
こちらが何をしているか分かると原川は慌てて叫ぶ
「おいっ、ヒオ、何故ズボンを脱がす、と言うかトランクスを脱がすな!」
無視して続行する。
トランクスをずらすと、まだ柔らかい状態の男根が現れる。
……落ち着いて、落ち着いて、怖くは……ありません。
内心でつぶやきそっと触る。
「……っ!」
原川が短く息を漏らした。
ヒオは、原川の男根をさすっていく。
徐々にそれが堅くなっていくと共に原川の息も荒くなっていく。
「ヒオ・サンダーソン、やめろ……くっ!」
予想していた言葉にヒオは用意した答えを返す。
「やめてほしければ、ヒオを引きはがしていただければ結構ですの」
赤い顔で言っても説得力無いなと思いつつも続ける。
「原川さん、正直じゃありませんから、行動をお願いします」
そういって男根を軽く握る。
「くあっ!」
その反応にヒオ悦んでくれているのだと判断する。
見ると目の前の男根は十分に硬くなっていた。
それを確認して。
「えーと、これ位になったら良いんでしたよね」
「ヒオ、どこでそんな知識を……」
原川が荒くなった息を整えながらで訪ねる。
「UCATの方達に聞きましたの。
原川さんに満足して頂くためにはどうしたら良いかと」
原川の顔がみるみるうちに青ざめる。
呆然としている状態の原川を見た後、
ヒオはいきなり亀頭を舌でなめた。
「……くっ!うぁ……」
原川が一気に顔色を取り戻し、反応する。
「やめろ…ヒオっ!」
布団を引きはがして原川は言った。
しかし、原川はこちらを引きはがそうとはしない。
だからヒオは続ける。
原川が自分の腰の方を見ると、ヒオはこちらの男根をぎごちなく舌でなめていた
裏筋をなめ、亀頭を舌先でつついていく。
「……っ……はぁっ!」
舌先が触れるたびに原川は息を荒げる。
「んっ、原川さん、……はぁ……悦んで頂けてますか?」
なめながら話しかける。
「全然……全く……悦んでなんていない。だから、今すぐやめ……くぅ!」
しかし原川はヒオを引きはがそうとはしない。
「では、もっと悦んでもらいますの」
そう言ってヒオはなめていた男根を一気にくわえ込んだ。
「くぅあ!!」
ヒオが口腔内で、舌を男根へ絡めていく。
「悦んでいただけているようで何よりです」
そう言って、今度は口で男根をしごく。
「ぐっ!!……は……うぁ……」
ヒオはぎごちなくだが、こちらの反応を楽しむように、一気に動く。
その動きに原川は耐えきれなかった。
「っ……うあぁ!」
普段なら絶対にあげない声をあげ、同時に男根が一段と大きく脈動する。
その拍子にヒオの口から男根が抜ける。
「え?きゃ!」
白濁とした液体が発射された。
液体がヒオの顔にかかる。
「は……」
射精が終わると、原川はようやく息を整えた。
ヒオの方を見れば、顔中に白濁とした液体が付いている状態で、こちらを半目で見ている。
「原川さん……いきなりだなんて……」
「まて、俺は悪くはないはずだ」
僅かに罪悪感を感じつつも原川は言った。
ヒオは原川にティッシュで顔を拭かれていた。
部屋には蛍光灯の明かりが灯っている。
原川がつけたのだ。
原川は無言で白濁液をティッシュで拭い取っている
沈黙に気まずさを感じヒオは言った。
「原川さん、その――」
「俺はやめろと言ったぞ」
その言葉にヒオはうなだれる。
ふるえる声で言葉を放った。
「申し訳ありません。
原川さんが嫌と思うことをヒオは――」
「勘違いするな、ヒオ・サンダーソン」
目の前の原川の顔が、拭き終わったこちらの顔に近づき、
いきなり唇を重ねた。
「……っ!」
いきなりの事にヒオは目を見開く。
だが、すぐに体の力を緩め、相手に身を任せる。
原川が唇を重ねたまま、こちらの身を布団の上にゆっくりと倒した。
「……ぁ」
唇を離し、上に覆い被さるようにして、こちらの顔を見て原川は言う。
「一度だけ聞く。
……いいんだな?」
その言葉にヒオはうれしさを感じ、答えた。
「……はい」
もう一度唇を重ねた。
再び唇を離すと、原川はヒオの体に触れた。
右手が首筋をなで、ヒオの左胸に達する。
視線をそこに移し、率直な意見を述べた。
「……薄いな」
「ど、どうしてこの状況でそんなこと言うんですの!」
「じゃあ、UCATの連中の前で言えと言うのか君は?」
「そ、そんな羞恥プレイ、ヒオは嫌ですのー!!
それに羞恥プレイは飛場さんの方があってますの!」
「何げに飛場の人格を否定してるぞ君は、事実だが」
そう言って胸を掴もうとする。しかし、
「………」
「………掴めないな」
「そんな……」
ヒオが顔に絶望の色を浮かべる。
だが原川は方法を変える。
指で摘んだ。
「あ、やぁ……」
突然の行動にヒオが身をよじる。
「安心しろ、これなら揉める」
「は、原川さん……」
先を言うのを迷ったのか、ヒオはしばらく黙り、言った。
「その、お願いします」
原川は顔を右胸の上に移動させ、右胸の先端をくわえた。
「ひゃ……ぁ」
同時進行で左胸も揉む。
「そんな……同時になんて……」
言いつつヒオがこちらの頭に手を置く。
しばらく、その状態が続いた。
不意に原川は右手をヒオ左胸の先端から離すと、下の方へとのばす。
「あ……」
へそを撫でる様にして、さらに下の秘所へ達する。
秘所に触れると、そこは僅かに湿っていた。
指で軽くなぞる。
「は、原川さん、そこは――」
ヒオが軽く抗議の声を上げるが、無視する。
「や、やぁ!!」
割れ目に指を沈めると、ヒオの声が一段と高くなった。
「うるさいぞ、ヒオ・サンダーソン。
ここはアパートだ、隣に響く」
こちらの言葉にヒオがはっとして、口を押さえる。
「で、ですけど、原川さんが……っ、ひゃぁ……!」
しばらく動かせば、指にやや粘着性の液体がつく。
それを見て、原川はヒオの両足をつかみ、横に広げる。
「ぁ……原川さん……もしかして……」
ヒオに言う。
「……ヒオ、もし痛ければ言え」
その言葉に、ヒオは顔を赤くする。
耳や首まで、肌を朱に染め、頬に手を当てる。
「原川さん、その、ヒオ、痛くて、泣いてしまうかもしれませんが、
その、原川さんなら、ヒオ、うれしいですから……」
答えに無言でうなずき、男根の先端を秘所につける。
「いくぞ」
言葉と同時、ゆっくりと挿入していく。
「……っ!!」
ヒオは自分の身体の中に、原川が入ってくるのを感じた。
こちらをいたわるように、原川はゆっくりと動く。
しかし、それ以上の侵入を拒むかのように、身体の中で、小さな抵抗が生じた。
そこで原川は一端動きを止め、言葉を掛ける。
「ヒオ」
「……大丈夫です。入ってきてください……」
その言葉に、原川は動きを再開する。
動きは先ほどよりも遅く、だが、確実に入ってくる。
そして、ついに抵抗が破れた。
鋭い痛みが来る。
「……っ!!」
目尻に涙が浮かび、流れるのが分かる。
しかし声には出さない。
代わりに、手を原川の背に伸ばし、強く抱きしめる。
やがて、原川の動きが止まった。
原川が口を開き、言葉を掛ける。
「しばらく、このままでいるか?」
こちらを心配する言葉に、先ほどとは違う意味を持った涙が湧く。
……ありがとうございます。
「あ……いえ、大丈夫ですから、動いてください」
そう言って、背に回した手の力を緩める。
原川がゆっくりとした動きで腰を引く。
「はあぁ……!!」
男根が身体から抜けていく感覚に、思わず声を上げる。
だが、完全に抜ける寸前でその動きは止まると、
今度は、先ほどよりも速く突き入れられる。
「ひゃ、やん!!」
突き入れ、引き抜く。
「や、ぁん……ふぁっ……」
原川はその動作をゆっくりと、速度を上げながら続けていく。
「く……はぁ、ヒオ……!」
「あ、や、きゃっ、は、原川さん……!」
たまにヒオの名を呼び、ヒオもそれに返す。
そうやってお互いに昂ぶっていく。
ヒオが背中に回した手に力を込めてくる。
「は、原川さん、ヒオ、なんだか……!」
こちらも強く抱き返し、
「大丈夫だ。抱き留めていたやる……!」
そして、一段と激しく突く。
その一突きで、ヒオは達した。
ヒオが身体を反らしてはねる。
「や、あ、あああああああああ!!」
それと同時にこちらの男根も強く締め付けられた。
「くぅっ!!」
男根が脈動し、大量の白濁液がヒオの体内に発射される。
「は、あ、熱い……!」
ヒオが荒い息でつぶやく。
白濁液がヒオの体内に注ぎ込まれていった。
「く……はぁ……」
二人はしばらくの間、無言で息を整える。
「あ……原川さん……」
ヒオの視線が原川の視線と合う。
「……ヒオ……」
二人は軽く口づけを交わした。
ヒオが目を覚ますと、外はすでに明るくなっていた。
時計を見ると既に11時を回っている。
「バイトには完全に遅刻したな」
先に起きていた原川が言う。
「原川さん、あの」
「今からでも一応行ってみる。
昼飯は適当に余り物で作ってくれ」
そう言って原川は着替えを始めた。
だが、いつもとどこか違う。
2度もボタンを掛け間違えているし、どこか落ち着きがない。
……原川さんたら、照れてますのね。
その仕草にヒオは苦笑し、自分も服を着始める。
「原川さん、ありがとうございました」
「何を言っているんだ、君は」
ヒオは答えず、昼食を作り始める。
昨晩の余り物を使ったため、数分で用意できた。
着替え終わった原川が掻き込むように食べていくのを、
ヒオはテーブルの向かいで目を弓にして見ながら自分も食事に手を付け始める。
早々と食べ終えた原川が上着を着込んで玄関へ行くのを見送り、
「それじゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃいませ」
ドアを開けようとする原川にヒオは笑顔で呼びかける。
「原川さん」
「何だ、ヒオ・サンダーソン」
ドアを開けつつ原川が聞く。
「今日の夕飯は御赤飯にしますねー!」
原川が盛大にすっ転んだ。