風呂。
白い湯気に透明なお湯、どこからか桶を鳴らす音が聞こえてきそうな銭湯の一角。
二人の少女が向き合っていた。
方や黒髪をストレートに流し、左目に緑の義眼を入れた少女。
方や金髪をウェーブに溢れさせ、流し目で立つ少女。
黒髪の方、極東のズドン巫女こと浅間・智が金髪の方、自称賢姉こと葵・喜美の両肩に手を置き詰め寄っている。
湯船の熱か焦りか、極僅かの汗を額に浮かべた喜美をガクガクと揺すりながら、浅間は問いを放った。
「どどどどどどどどどういうことですか喜美!
ちょ、これ、札、股、術式」
「ん? 何、智。札股術式とかそんな卑猥なこと言って」
「誰のせいですかー!?」
叫ぶ浅間の顔の下、善良と邪悪の差はあれどどちらも豪華なクッションがぶつかり合い、ふにりふぬり、と形を変えあっている。
その更に下。
術式によってどの角度から見ても湯気に隠れる股間に有り得べからざるものが存在した。見えないが。見えないのが大人の都合である。
「新しい術式を見せてあげるとか言ってお風呂にまで呼び出して、なんてことをしてくれるんですか!」
珍しく、真剣に怒っている風な浅間の顔は真っ赤に染まっている。
これは湯船の熱ではなく、羞恥から来るものであった。
「フフフ、まさか適当に作った術式で“生えてくる”とは……さすが私ね!」
喜美の揺れ速度が一段上がった。
「ちょっと、智。少しは落ち着きなさいよ」
そう、声をかけて浅間の手から逃れた喜美は、そっと浅間に近付くと優しく右手を近づけた。
「あっ!」
思わず、といった風に浅間が声をあげた。
湯気の中へと伸びた喜美の腕がやわやわと動く。
「ほら、落ち着いた? この術式のすごいところはこれからなんだから……ちゃんと最後まで見ていってよね?」
腕の動きを止めることなく、喜美が話しかける。
しかし、浅間は答えを返すことができない。なぜなら、
――こ、声が。
口を開いたとたん、抗議よりも先に望まぬ声が溢れかねなかったからだ。
見えない湯気の中で、喜美の腕が縦横に踊る。
高嶺舞とは違う、どこまでも淫蕩さだけを求めたかのような、淫らな踊りだ。
「っ! はっ、き、喜美っ!」
足に力が入らず、半ば喜美にもたれかかってしまう浅間。
その顔は先程以上に朱に染まり、右の瞳は蕩けたかのようにぼんやりとしている。
無意識に浅間の腰が動いていた。
つられるように上体もうごめき、二つのクッションがむにゅり、むにゅりと捏ねまわされる。
もはや、浅間の瞳は完全に閉じられ、桜色の唇からは速い息遣いの吐息がこぼれるばかりであった。
そして、一際喜美の腕が速さを増し――
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