(これまでのあらすじ)
ムサシ・アリアダスト・スクールの手練れ、キンパツキョニュウスキーとアネフェッチャー。
囚われの身となったメアリ=サンを救いに向かった二人のうち、空を飛んでいたアネフェッチャーは我慢できなくなったゲドウスレイヤーに撃墜された。
しかしキンパツキョニュウスキーはパートナーの犠牲と引き換えに、ゲドウスレイヤーの魔の手から逃げおおせたのだ。
急がなくては、メアリ=サンはイングランド・マジヤバイ・レーザーのエネルギーにされてしまう。
もはやメアリ=サンの命運はロウソク・ビフォア・ザ・ウィンドである。
果たしてキンパツキョニュウスキーは彼女を救えるのか!?ワッショイ!
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イングランドの夜の闇の中を一人のニンジャが疾走していた。
彼が目指すのは、イングランド・スゴイ・タカイ・タワーの最上階である。
ぞっとするほど冷たい夜気を全身で味わいながら、キンパツキョニュウスキーは過去を思い出していた。
新発売のエロゲ・プログラムを購入せんがため、ウシミツ・アワーから同志と二人でエロゲ・ショップへと走っていた。
そして今、彼の横にアネフェッチャーはいない。
キンパツキョニュウスキーの体をイングランドの霧がしとどに濡らす。おお。おお、アネフェッチャー。
しかしこの霧は天の計らいだ。ニンジャに涙は許されぬのだから。
キンパツキョニュウスキーは目を閉じた。脳裏に浮かび上がるのは、アネフェッチャーの撃墜の瞬間である。
「サヨナラ!」アネフェッチャーはそれだけ言うのがやっとだった。ハラキリの時間すら与えられなかった。
ゲドウスレイヤーの無慈悲な一撃は、バイオ装甲板でくまなく覆われたアネフェッチャーの体の隙間を縫って、
隠し持っていたエロゲを爆発四散せしめたのだ。
許さぬ。そして、安らかに。....キンパツキョニュウスキーは顔を上げた。
彼が生存したのは、アネフェッチャーもよく知っている秘密のジツ。「ソンザイカンノナサ」によるものだ。
ゲドウスレイヤーはキンパツキョニュウスキーに気付く事無く、去ったのだ。
まぁ、それはそれとして、早くメアリ=サンを救いに向かわねば。
さっさと気を取り直したキンパツキョニュウスキーの前に現れたのは、インペリアル・マッポ軍団であった。
「ダッテメッコラー!」「ザッケンナコラー!」
警備の任務に就いている彼らは、見るからに怪しいニンジャに対して警告を発した。
キンパツキョニュウスキーは素早くスリケンを放った。
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
スリケンの鋭い刃は、彼らの肩口に突き刺さり、武器を持つ為の筋繊維を切断した。
インペリアル・マッポ達を無力化した勢いで、キンパツキョニュウスキーは一目散にタワーへと向かう。
しかし、彼は焦りの為に、周囲に気を配るのを怠っていた。ウカツ!
その油断を狙いすまして、隠れ潜んでいた者のアンブッシュの一撃が迫る!
「イヤーッ!」
キンパツキョニュウスキーに向かって振るわれたカタナには、刃が存在していなかった!
これこそはイングランド・ニンジャ・クランが作り出した、ジュウリョク・カタナである。
キンパツキョニュウスキーはニンジャの直感で、紙一重でその致命的な一撃を避けた。タツジン!
改めて、二人のニンジャは向かい合った。
「ドーモ、キンパツキョニュウスキー=サン、トライデントです」
「ドーモ、トライデント=サン、キンパツキョニュウスキーです」
アイサツはニンジャにとって神聖なものであり、欠かす事は出来ない。
アイサツ終了から0.02秒後、トライデントは驚くべき行動に出た。
「イヤーッ!」
「!?」
なんと、彼は自らその不可視のジュウリョク・カタナを突き立て、セプクを始めたのである!
だが驚くのはここからだ。如何なるジツの成せるワザか、セプクをしたはずのトライデントが、二人に分身しているではないか!ゴウランガ!
二対一の戦いを強いられるキンパツキョニュウスキーに勝機はあるのか!?
(スシ・ナイト・アット・ザ・イングランド#2へ続く)
「──ネシンバラ殿?ネシン、バラ、殿…?あの…ネシンバラ…殿…?」
点蔵はあまりの不条理な内容に、ツッコミどころすら掴めず、目の前の相手を、思わず三回疑問系で呼んだ。
「あー、うん、まぁ言いたい事は大体分かる。新大陸の方に住んでるっていうナルゼ君のファンの子が送りつけてきた、
『浅間様が射てる』の二次創作らしい。いやー、当時の内容の再現がだいぶ大雑把だけど、オリジナリティ溢れる表現方法だよね?」
「な、なんで山中殿は『トライデント』って呼ばれてるのに、自分は『キンパツキョニュウスキー』なんで御座るか!?
この話だけで常人の『キンパツ』『キョニュウ』の年間使用量超えて御座るよ!御座るよ!あと山中殿喋って御座るし!」
…冒頭で浅間君が我慢できずに撃墜した、ってのはスルーするんだ…。
点蔵が混乱して喚く声を聞きつつ、シェイクスピアに見せたらどう思うだろう、と考えるネシンバラであった。