「そうせい、けいかぁくうううう─!」  
 
その言葉の後に、暗黒の空間に光が溢れ出た。  
その場を満たす、漆黒の闇を吹き飛ばす光の爆発だ。  
青が、赤が、それ以外が、様々な色彩の輝きが尾を引き、波打ち、爆発し、空間内を暴れまくる。  
不意に、その光輝の乱舞に、鉄の部品が噛み合うような音が加わった。  
それは何も無い空間に、突如出現した鋼の品々だ。  
何かを形作るように出現し、組み合わさり、先へ先へと伸びて行く。  
長い長いレールのような経路が全容を現したと同時に、そのレール上へと巨大な鉄塊が滑り込んでいく。  
次の瞬間、鉄塊の背後が爆発するような炎に覆われる。  
炎の正体は、その巨大な鉄の塊を前進させるための、推進力となる爆発だ。  
レールの上を滑るように、鉄塊はぐんぐんと加速していく。  
そんな世界の背後を彩るように、その場には歌声が満ちていた。  
 
通りませ 通りませ  
行かば 何処が細道なれば  
天神元へと 至る細道  
御意見御無用 通れぬとても  
この子の十の 御祝いに  
両のお札を納めに参ず  
行きはよいなぎ 帰りはこわき  
我が中こわきの 通しかな──  
 
歌声に合わせるように、鉄塊を推し進めていた背後の推進部が弾け跳んだ。  
次に、全体を包んでいた外装が、カバーのように剥がれ跳ぶ。  
カバーの内に秘められていた物は、推進部を失った状態でも勢いを殺さずに、猛烈な速度でレールの上を進んでいく。  
再び、鋼が組み合わさるような音が響いた。  
内部から現れた、奇妙な涙適型の中心部を持つ物体が、まるで直立するように立ち上がっていく。  
直立したその姿は、周囲に花弁のように展開した三本のスタビライザーも相まって、花のような印象を受けた。  
次の瞬間、まるで花弁が花開くように中央の機構が展開し、曲線を多用した純白の武神が姿を現した。  
純白の身体に黒いラインを持つ武神の胸部が開き、内部より一人の人影が躍り出る。  
 
「ホライゾ──ン」  
 
周囲に響き渡る声と共に、黒い帽子とドレスを纏った全竜の姫の姿がそこにあった。  
 
 
                 ●  
 
「きっと何者にもなれないお前たちに告げる」  
 
「「「「「え?え!えええ?!」」」」」  
 
いつの間にか、両の手を枷で拘束された姿でその場に佇むのは、武蔵生徒会と総長連合の面々だ。  
そんな彼らの前に、背骨を思わせる階段上の道を下りながら、彼らの姫が語りかける。  
 
「大罪武装を手に入れるのだ・・・」  
 
「おいおい、ホライゾン、いったいそんなとこでなにやってんだYO!」  
呆然とする面々の中、ただ一人いつものペースを乱さぬ全裸が声をあげる。  
 
「武蔵の姫では無い。わらわは、お前たちの運命の至る場所から来た」  
 
「・・・帽子だ」  
「「「「「え?」」」」」  
呆然とする面々の中で、本多・正純が彼女を見据えながらそんな言葉を呟く。  
「あの帽子が、ホライゾンを操っているんだ!」  
彼女の言葉に、周囲の驚愕の視線が集中する。  
「ちょ、ちょっと正純!あまりの超展開に気持ちは解りますが・・・一言で言って、気を確かに!」  
「あれは、このあいだ買い求めた黒藻の玩具の帽子ですわよ!?」  
「セージュン・・・オメエ、疲れてんだなあ」  
「そんな時にはカレーですネー」  
「お前ら・・・」  
正純を中心にぎゃあぎゃあと騒がしい面々を無視し、ホライゾンの姿をした何者かは、いつの間にかトーリの傍らにまで歩みを進めていた。  
そして、おもむろに彼に向かって一言、  
 
「創生計画、しましょうか」  
 
通りませ 通りませ  
行かば 何処が細道なれば  
天神元へと 至る細道  
御意見御無用 通れぬとても  
魂八つの 御祝いに  
両の御力 納めに参ず  
行きはよいなぎ 帰りはこわき  
我が中こわきの 通しかな──  
 
周囲を満たす歌声と共に、容赦の無い拳が、全裸の股間に向けて放たれた。  
 
 

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