「いいですか宗茂様。いくら夫婦といえど夫婦の営みを人様に明かされるのは恥辱です。ええ、愛してるって叫んだところで許しませんよ」  
 居室に入った二人は、畳に正座で向き合っていた。  
「すみません、つい嬉しくて」  
「何がつい嬉しくてですか。妻に恥をかかせる夫がどこの世界で評価されるとお思いなのですか」  
 完全に冷え切った感じのァに、宗茂は懐かしさを得る。現状が出会った頃のァより丸くても、出会った頃のァを彷彿とさせるには十分だ。――出会った頃なら有無を言わさず首を刎ねられていたはずだと宗茂は思考する。  
「宗茂様。お説教を聞かないとはいい度胸ですね」  
 広くは無い居室に十字砲が一門展開される。天井板などミシミシ音を立てているが大丈夫だろうか、と宗茂は汗をかいた。  
「ァさん。確かに私が悪かったですからソレは仕舞いましょう。ええ、ちょっと部屋に穴が開きますよ!?」  
「Jud. その気になれば宗茂様に穴が開くのが先ですが、しまうとしましょう。少し大人げなかったかもしれません」  
 或る意味では怒りを表現してくれるようになった妻が嬉しい宗茂ではあるが、――悦んでいるところはもっと嬉しい。  
 だから砲をしまった瞬間の隙に、宗茂は二つ名に恥じぬよう動作を作った。――ァの義腕を外す動きだ。そしてそれは通り、二つの義腕が床に転がる。  
 
 ァは頬を染め、宗茂を睨んだ。  
「宗茂様っ!」  
 ァの怒りの叱責を受けながら、腕を落としたその身を強く抱きしめて熱を持った息をつく。  
「すみません、ァさん。私も若い男なので、見た目も中身も行動も全部において可愛い妻がいれば当然サカります。――それに今日は、丁度良く訓練の日だったんですけど、お忘れで?」  
「――知りません!」  
 そっぽを向いたァの鼓動がそれでも高くなりつつあることも、体が熱を持ち始めていることも、宗茂は知っている。要は全部ァの意地だ。だが、どんなに面倒な人であろうと惚れれば全部が可愛らしい。  
 夫婦の営みを訓練だと言い出したのは宗茂だった。毒殺未遂後すこしだけ柔らかくなったァに対し、宗茂が提案したのだ。  
 
「聖譜記述によれば、今後も立花家は続くことになります。そうだとすれば子供が必要です」  
「Jud. けれど仮面夫婦であり不仲であったとも記されています」  
 ァの答えはセメントだった。譲る気が無い。  
「いいえ、神代の立花夫妻の間だけではなく、後妻をとっても宗茂は子を成すことができませんでした。――つまり、不仲を証明するものは残っておらず、そして後継ぎは血がつながっているのが一番良いと、私はそう考えます」  
 確かに解釈の範囲ではある。だからァは黙った。  
「私は形だけではなく、ァさんの夫となりたいと思っています。――受け入れては、もらえませんか?」  
 ァは俯いて、沈黙を続ける。嫌われただろうか、と思う一方でもっと欲しいと思う自分もいる。  
 ァを失えば、頂いた大罪武装の通り、自分は悲嘆に暮れます。  
「……極東の女性は慎み深いのです」  
「え?」  
 落とされた言葉を拾い損ねる。前髪の隙間から垣間見えるァの表情は、恥じらいと戸惑いに満ちていた。  
「ですから、ええ、……妻となった以上強引にして頂けると私は“恥”の感情を得ずに済みます。正直そちら方面の興味も知識もありませんから、――ですから」  
 恥じらいで頬を染め、けれど不機嫌に顔を歪めてァは言った。  
「強引な方が助かります」  
「Jud. では、慣れないことに立ち向かうのですからコレは訓練だということにしましょう。最低でも週に一回、できればもう少し回数重ねたいですがァさんの体に合わせる感じで」  
「訓練、ですか?」  
 ァの表情が困惑にシフトする。  
「ええ、夫婦になるための訓練です。歴史再現のためにも、きちんとした夫婦にならねばならないと思いますよ?」  
 訓練、という言葉に当時日常を持たなかったァが素直に従ったのを覚えている。  
 
そして今手肌に感じるのは、インナースーツの僅かな湿り気だ。  
「腕がある方が色々楽かと思うのですが。……生体式の方で。そちらなら少しずつ教えて頂いているものも手習いできますが」  
「我ながら変態なんですけど、ァさんの腕が無い方が萌えるんですよね。せっかく浅間さんに良い物もらいましたから、最近我慢していた分ちょっと無理させるかもしれません」  
 ァがこちらを半目で見る。  
「声を殺したり工夫した上ではありましたが、私確か宗茂様はコチラに来てからも結構やりたい放題だった気がするのですが」  
「我慢がオーバーフローして急に襲うよりマシじゃないですか?」  
「……好きになされば良いかと。私今日、このままじゃ何もできませんし」  
 ァの言葉に宗茂が笑みを得る。  
「ァさんから許可下りましたね?! 仕事に差し支えない程度にまぁ、楽しみましょう」  
「……Jud. とは言えませんよ。恥ずかしい」  
 その唇を塞いだ。  
 
「んっ……。宗茂様っ、そこは、だめ……っ」  
「でもァさんがイイ声出すから、つい」  
 言いながら宗茂はァの露出された胸を揉むことを止めない。ついには先端を舐めて吸い上げる始末だ。  
「〜〜っ!!」  
「ァさん、声ガマンしないでくださいね? 私、もっと過激に攻めなくてはならなくなりますから」  
「ちょ、卑怯ですっ」  
 いつもの訓練用ジャージの裾をまくりあげて胸を露出させるのは、或る意味で全裸より破壊力のある光景だ。  
しかも、今日はァさんの声聞きたい放題! ちょっと武蔵に来て残念だった部分完全解消ですよ!!  
「あ、それともやっぱり胸だけじゃご不満ですか?」  
「ふぁ……っ!」  
 右胸はホールドしたまま、右手をァの尻に這わせて揉みしだく。ぞくぞくとした震えが、伝わって来た。もっと、と宗茂は思う。これではまだ足りません、と。  
 それは妻だってそうであるはずだ。全く、極東系の女性は慎み深くて非常に攻め甲斐があって困ります。ええ、ァさんの理性ふっとぶまでが理想ですから。  
 しかし、そうは言ったところで幾度も“夫婦の訓練”を重ねてきたが、ァが己の恥じらいを超える程に感じさせられたことは少ない。  
 ですが今日、ァさんの恥じらいを緩和する術式を有難くも頂いたので、本気で行きますとも。  
 胸も相当にボリュームのあるァだが、尻も捨てがたいほどに弾力があり、宗茂の感触を楽しませる。むっちりとした尻肉が、ジャージ越しであってもその質量と柔らかさを訴えてくる。あ、やっぱり脱がそうと思い、宗茂は一息にジャージのズボンをひきずりおろした。  
 あとはショーツだけが下半身に残る。しかもあえて膝までしか下ろしてない。義腕を外し、足まで動きにくくされてはァには成す術がない。  
 
 しかし、宗茂が攻めれば攻める程、ァは身悶えを激しくし、段々とプライバシーが護られていた頃のように開放的になっていく。  
「おやおや、ショーツが濡れていますよ、ァさん。感じて頂けましたか?」  
「Jud. 宗茂様、そうですから、これ以上辱めないでください……!」  
 現状のァは本来隠すべき部分だけ曝された破廉恥な状態だ。  
「Jud. ……でもぶっちゃけ恥ずかしがってるァさんで、私たぎりっぱなしなんですよ。……責任とってもらえますよね?」  
「え?」  
 宗茂はショーツの上からクリトリスを撫でた。途端にァの嬌声が上がる。  
「は、あ、そ、そこはぁっ、らめです……っ」  
「違いますよね。ァさん、大好きですよね、コレ。ほら、こんなに濡らして」  
 ショーツがぐっしょりとァの愛液でしめっていく。水分を蓄えきれなくなった布地から、滴るほどに。  
「やあっ、ダメですっ、あ、あああっ!!」  
 押しつぶすように攻めてやると、ァの背筋がそりあがった。絶頂ですね、と宗茂は判断し、胸にかぶりつく。クリトリスと胸を、同時に攻める。  
「むねしげさまぁっ! らめぇっ、ゆるし、て……っ!」  
 二度目の絶頂だ。そろそろかな、と完全に蕩けきった妻の顔を見て宗茂は判断する。普段はセメント無表情な彼女が自らの与える快感に溺れ、狂っていく。それは何より最高のエンターテイメントだ。  
「む、宗茂さまっ」  
「言いたいことがあればどうぞ、ァさん」  
 胸の先端を軽く甘噛みしながら、クリトリスを押しつぶす。当然ァは言葉を紡ぐことができない。  
 目に涙を浮かべながら、言葉を紡ぎたいと視線で懇願する。  
「……しかたありませんね。どうぞ、お願いなら何でも聞きますよ」  
「もう、だめなんです。お腹の中がさみしくて……っ」  
「お腹の中って、どこです?」  
 半泣きの表情が、本当に涙をためる表情に変わる。虐めすぎたかな、と思いながら宗茂はクリトリスを刺激していた方の手をァの濡れそぼった秘所に勢いよく突きいれた。  
「やああああっ!!」  
 またも絶頂を迎える羽目になったァは悲鳴に近い嬌声を上げる。じたばたと足を動かしてしまうのは、反射だ。  
 
「ああ、ジャージ邪魔ですね」  
 ハーヂポイントの接続を外して一気にジャージを下ろし、ショーツも外してしまう。あとに残るのはエロい下乳とマロい体だけだ。  
 ぐちゃぐちゃと、あえて隠微な音を立ててァの中身をかき回す。つまりそれはァの喘ぎを生む行為だ。  
「宗茂様ぁっ。私、も、ダメ……っ」  
「何がダメなんです? ちゃんとしてほしいことは言わないといけませんよ、ァさん。ほら、教えた通りに」  
 ァの言葉を待つために、宗茂は一旦手を止めた。  
「もう、私、ダメで、あの、……私のいやらしい所に……っ、宗茂様の、立派な物を頂け、ないでしょうか」  
 勿論望むところだ。宗茂はジャージを手早く脱ぎ捨て、ァに正常位で向き合う。  
「……あの、避妊はどうされますか?」  
「Jud. 私は前も言った通り子供が欲しいのでそのまま行きます」  
 言葉が終わらないような性急なタイミングで宗茂はァの秘所に己を突きたてる。  
「……っ!!」  
 それだけでァの体が跳ねるのは、これでも長年の訓練で慣れてきて、より快感を享受できるようになったからだろう。  
「ちょっとァさん力入れ過ぎです。私、早漏になっちゃいますよ?!」  
「だ、ダメなんれす……っ! あ、私、もう我慢できな……っ!!」  
 足を床に付け、踏ん張るように持ちあげてァが腰を振る。  
 積極的なァさんですと?!  
 今すぐにでも搾り取られそうな快感が宗茂を襲う。しかしそこは男としての矜持に関わる。ァの腰をつかんで止め、更には覆いかぶさるようにして両の義腕の接続部に触る。  
 それがいけなかった。  
 ァの締まりが一気に強くなり、そして宗茂の肉棒から精液を搾り取るようにうねる。そして宗茂は自身の限界を迎えたことを知り、抵抗しながらも抗することができずにためらいなくァの体内に自らの精を注ぎ込んだ。  
「……情けないですね、こんなに早いとは」  
 しかし、それを唯一聞くことができるァは半ばの放心状態だ。絶頂を迎えすぎて意識が朦朧としているらしい。  
 しかしその意識が朦朧としている中で、ァはゆっくりと起き上がり、宗茂の股間に顔をうずめた。  
「宗茂様? 私、もっとしたいです。おかしいんでしょうか?」  
 荒い呼吸でそう言われながら男根を舐めあげられて欲情しないおとこがいるなら見てみたい、と宗茂は素直にそう思った。  
「いいえ。もっとしたいと思ってください。――それが夫婦というものです」  
「Jud. では二回線を始めましょう」  
 ァの蕩けきった笑みに、宗茂は言いようのない満足感を得た。  
 
 その後、いつもより遅い銭湯行きに二人は不振がられたが、常時桃色夫婦に突っ込める人材は存在しなかった。  
 
 

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