気づけば風見は生徒会室へと連れて来られていた。
「……あれ?」
確か自分はブレンヒルトと一緒に保健室へいくはずだった。
はずだったのだが、今いるのは間違い無く生徒会室だ。
ブレンヒルトを見れば、ドアに鍵をかけしかも何かの符を貼っている。
「ちょっと、ブレンヒルト? 何で私をこんな所に、……きゃっ!」
疑問の声を上げた風見は、近寄ってきたブレンヒルトに壁へと押し付けられた。。
ブレンヒルトは風見の両手を押さえ、彼女の顔を覗き込む。
「……効果覿面ね。普段なら逆に投げの一つでも決めるでしょうに」
「へ? あんた何を」
言ってんのよ、という後半部は、ブレンヒルトの唇によって遮られた。
「んっ!? ふむっ……!」
突然の行為に風見はうろたえるが、ブレンヒルトは気にしない。
顔をそむけて逃れようとする風見に対し、あっさりと舌を侵入させる。
そのままたっぷり数分間風見の口内を蹂躙した後、ブレンヒルトは彼女を解放した。
「……ふぅ、可愛いわよ風見。『こうかはバツグンだ』ってやつね」
「えほっ……な、何のつもりよ一体……」
「あら、何のつもりとはご挨拶ね。あなたの体がうずいてるのが判ったから、
ちょっと処理を手伝ってあげようと思っただけよ?」
「ちょ、うずいてるとか何とか馬鹿なこと言わないでよ!!」
声を荒げる風見だが、彼女の頬にさす赤みは怒りのみが原因ではない。
それを見抜いているブレンヒルトは、
「そう? じゃ、教室出るのに何でわざわざ私の手を借りたのかしら?」
「それは、……たまたま! そう、たまたまよ!!」
「タマタマタマタマうるさいわねえ。もしかして、あの馬鹿のタマにしゃぶりつきたいって?」
「ばっ、誰がそんな……!」
「照れない照れない。それに――」
「んんっ!?」
風見の唇に、またしてもブレンヒルトの唇が重なる。
ブレンヒルトは軽く風見をついばみ、一旦離して上目遣いに見つめ、
「女同士の方が、色々と判り合えることもあるんじゃない?」
「……っ」
ブレンヒルトの眼差しから、風見は顔を背けて逃げる。
しかしブレンヒルトはその行為を気にせず、また声を掛けた。
「それに、……そろそろ限界なんじゃないの?」
その言葉を聞いた瞬間、風見はビクリと身を震わせた。そして横目でブレンヒルトを見る。
「な、何のことよ?」
「強がっても無駄よ。生理現象、でしょ? そんなの我慢するものじゃないわ」
それはそうだけど、と風見は心中で思った。そして、
「……判ってるなら、手ェ離しなさいよ。トイレ行くから……」
「あら、誰がトイレに行っていいと言ったかしら?」
「なっ……」
風見は絶句。そしてブレンヒルトは微笑みを浮かべ、、
「――ここでしなさい。私の命令よ」
「ば、馬鹿言うのもほどほどにしなさいよ!!
何で私がそんなことしなきゃいけないの!?」
「あら、もしかして大きい方? それだと後処理が面倒ね」
「や、そ、それは違うけど……」
ブレンヒルトから目をそらしたまま、風見はうなだれる。
その姿を見てブレンヒルトは、機嫌を更に良くしたような声で、
「じゃ、決まり。ここでしちゃいなさい。
大丈夫、どうせこの時間は誰も来ないし、跡が残らないように処理してあげるから」
「あ、ちょっと……」
戸惑う風見を椅子へと座らせ、ブレンヒルトは彼女の足元に座り込んだ。
そして風見のスカートへと手を突っ込み、
「ほら、腰上げなさいよ。パンツとストッキング濡らしたいの?
もしかしてビショビショにしたまま歩くのが趣味?」
「そんなわけ無いでしょ……何よ、さっきから変なコトばっか言って……」
「いいから、ほら」
「…………」
ブレンヒルトの手に促されるかのように、風見が椅子の端を掴んで腰を上げた。
それを満足そうな顔で見るブレンヒルトは、ストッキングと下着を一緒に引き下ろす。
「ぁん……」
椅子の冷たさを肌に感じ、思わず声を上げる風見。
ブレンヒルトは風見の足首あたりで手を止めると、目の前のスカートへと視線を移した。
「……ちょっと、そんな見ないでよ」
「ん? 私はただ、スカートそのままだとかかっちゃうんじゃないかって心配なだけよ」
「え、あ……」
そう言われた風見は、しかし逆にスカートを押さえ、
「ンなこと言っても、あんたがそこにいたら見えちゃうじゃない……」
「別に構わないわよ。私は気にしないから」
「私のほうが気にするのよっ!」
「落ち着きなさいよ。前がぐっしょり濡れたスカートで午後の授業受ける気?」
「うっ……」
風見は声を詰まらせ、そしてスカートの前をつまむとゆっくり持ち上げた。
「惜しいわね……もうすこし丈が長ければ口でまくらせるのに……」
「な、何か言った?」
「いいえ何も。……ま、これはこれでいい眺めよね」
ぽつりと呟くブレンヒルト。
彼女の眼前では、風見の持ち上げたスカートの奥、茂みが顔を覗かせている。
「ブレンヒルト、そんなに見ないでよ……」
「いいからいいから。それより、そのまま出したらお尻の方まで伝っちゃうんじゃない?」
あ、と声を上げた風見は、頬を赤く染めつつ、
「うー……さっきから注文つけられてばっかな気がするわ」
「注文とは酷いわね。私はあなたのためを思って言ってるのよ?」
言われ、風見はもごもごと何やら文句を言いながらも腰を動かした。
(うわ……何この焦らしアングル。ふざけてるの?)
風見がそっと持ち上げたスカート。薄暗いその内部は、茂みと更にその奥がわずかに見える状態だ。
もはや辛抱堪らんなブレンヒルトは、無意識に風見のスカートへと顔を突っ込んでいた。
その間実に0,7秒。某隊長が世界を救える時間と同等である。
「やっ、ちょっとブレンヒルト! あんたいきなり何やってんのよ!?」
「――――性欲をもてあます」
「はぁ!? あんたトチ狂ってんじゃな――っ、ぅあっ!」
ごく短時間でストッパーがぶっ飛んだブレンヒルトは、風見のスカート内部で舌をうごめかせていた。
「ブレンヒルト!? あっ、ちょっ、――くぁっ、や、止めなさいよ!」
風見の制止を右から左へ聞き流し、ブレンヒルトは一心不乱に舌を動かした。
「やだ、やめ、やめてよっ……ブレンヒルトっ……あっ……」
そう、自分が風見に対して何を仕掛けたのかすら忘れて。
「――や、もう、……我慢出来ない…………ぅあっ!!」
「……この私としたことが、つまらないミスをしたものね」
ハンカチで顔を拭きつつ、ブレンヒルトはそうぼやいた。
風見の方は、何故か荒い息をつきながら椅子に座り込んでいる。
そして、椅子の一部と下の床に水溜りが発生していた。
ちなみにブレンヒルトは第一波を喰らった瞬間我に返り緊急退避したため、被害は比較的軽微だった。
「さてと、まずは後始末ね……」
ブレンヒルトは未だ惚けている風見へと近づき、彼女の腕を掴んで立ち上がらせた。
と同時に、風見の股へとハンカチを持った手を押し付ける。
「……ブレンヒルト……」
「何?」
風見の股の余計な所まで拭くブレンヒルトに、風見が声を掛けた。
「……どうしよ、私、生徒会役員なのに……こんなこと……」
「こんなこと? はン、所詮“こんなこと”でしかないの。いいから私に任せなさい」
普段と全く違う態度の風見を、部屋の隅のソファーへと座らせた。
そしてブレンヒルトは窓へと向かい、開け放つ。
部屋へと入ってくる空気の流れを感じながら、ブレンヒルトはパチンと指を鳴らした。
――ヒュウ、と一陣の風が吹き、室内へと入り込む。
ブレンヒルトが窓を閉め後ろを向くと、そこには一匹の黒猫がいた。
黒猫はブレンヒルトへと疑念の眼差しを向け、口を開く。
「……確かまだ授業中だったと思うけど、何の用? ブレンヒルト。
UCATの方でも特に動きは無かったけど……」
「ああ、そっち関係の用じゃないの。アンタの仕事は――」
ブレンヒルトは指を立てると、ついと動かし黒猫の後ろを指した。
振り向いた黒猫は、水溜りと共に在る椅子を発見する。
そしてブレンヒルトが口を開き、
「――全部飲みなさい。もしくは舐めなさい」
「いやいやいやいやちょちょちょっと待ってよブレンヒルト!!?」
慌てふためく黒猫を、ブレンヒルトは冷酷な眼差しで見据える。
「アンタ、私に逆らおうっての?」
「逆らうとかそういう問題抜きに異常だよこの状況!!
ああっ!! 気づけば風見千里が下着ズリ下げたまま放心してるし!?」
「アレはちょっと『発情期』『尿意』『百合属性』『従順』って書いた紙貼っつけただけよ」
「それ犯罪だよブレンヒルト!? 一体何この概念空間! 僕未経験なんですけどうひゃひゃひゃひゃ腹は! 腹はヤメテ――!!」
ブレンヒルトはあっさりヤメタ。そして見上げてくる黒猫へ、
「――次は尻よ? しかも穴」
「それってcaved!!? ヤダよ僕ウホッ属性無いんだから!! 使い魔界隈でも比較的ノーマルで通ってるんだよ!?」
「たわけたこと言ってんじゃないわよ。根っからマゾのアブノーマルじゃない。
それじゃ、私は風見の世話するからちゃんとやっときなさい。い・い・わ・ね?」
その後、室内には風見の嬌声とブレンヒルトの責め台詞、
それに黒猫が泣きながら水を舐める音だけが響いていた。