白の通路がある。  
 そこを動く姿は、白を基調とした服装の人々。  
 白衣や装甲服と種類は様々だが、どれにもUCATのロゴがプリントされている。  
 だが、その中に動いていない人影があった。  
 壁により掛かっている姿は、小柄な少年のものだ。  
 少年はTシャツ姿で、額にバンダナを巻いている。  
 飛場だ。  
 ふと、彼が左手を上げ、手首に付けられた黒い腕時計を見て、  
「美影さん、着替えに時間かかってるんでしょうか……?」  
 視線を移動させて見るのは正面、向かい側の壁にある扉。  
 更衣室、と書かれた扉の向こうで現在、美影が着替え中だ。  
 訓練を終え、汗を拭きながら着替えている彼女を飛場は脳裏に描き、  
「ああ、覗きたいなあ……」  
 周囲、5メートル以内の人が一気にこちらから離れた。  
「いや、何でもないですよ!?」  
 飛場が慌てて笑顔を繕い辺りを見回すと、皆、視線をこちらから逸らしたまま動きを再開する。  
 そのことにため息をつくと同時、扉が開いた。  
「リュージ君。待った?」  
 出てきたのは私服姿の少女。  
 長い髪は漆黒で、しかし前髪の一房だけが金の色を持っている。  
「いえ美影さん、そんなには」  
 こちらの言葉に美影は笑みを浮かべ、  
「ん。じゃあ、帰ろう」  
「ええ」  
 こちらも笑みで返し、彼女と手を繋ぐ。すると、美影はこちらに身を寄せ、  
「帰ったら、また一緒に御風呂入ろうね」  
「いやあ、良いですね。楽しみだなあ!」  
 直後、額スレスレを銃弾が通過した。  
 
 銃声に、美影は眉をひそめた。  
 眼前、飛場が青ざめた笑顔のまま凍り付いている。  
 壁に当たり跳ね返った銃弾が、しかし何故か勢いを失って足下に落ちた。  
 銃弾を見れば先端の平らなUCATで使用される模擬弾。  
 しかし、その側面には”もぎ”とは別の文字が刻まれていた。  
「……きょせい?」  
 ”去勢”と刻まれた銃弾に、飛場が、ひ、と声を上げた。  
 その反応を見る限り、かなり恐ろしいものなのだろうと美影は判断する。  
「ははは!飛場ぁ!!貴様のイチャつきもここまでだ!」  
 と、銃弾の飛んできた方向から声が響いた。  
 振り向けば、額に”SIT”と書かれた覆面を付けたパンツ一丁の男を中心に、  
やはりパンツ一丁の男達が何故か床に体育座りのまま機殻された機関銃を構えている。  
「な、何者ですか!?」  
「UCAT内超特別班!SIT団!!  
我らはUCAT内でイチャつく恋人共に聖罰を下すために結成された部隊!!  
我らが出動したからには!!貴様に逢い引きなどさせるものか!!」  
 やたらと感嘆符の多い台詞に、飛場が反論を返す。  
「今日はクリスマスじゃ無いでしょうが!  
――それにほら、狙うんだったら佐山先輩と新庄先輩とかイチャつき度異常な人たちが!」  
「馬鹿者!既に佐山G作り上げている奴等に我らが手を出せると思ったか!?」  
「うわ話にならない!」  
 覆面男が体育座りのまま腕を振り、飛場を指差した。  
「飛場・竜司!貴様はこのSIT団特製去勢弾に当たって役立たずな夜を過ごすがいい!!――総員、構え!」  
「Judgement.!!」  
「それ軍ですよ――!!」  
 言いつつ、飛場はこちらの脇の下と膝裏に手を通してきた。  
 次の瞬間には一気に抱き上げられる。  
 さりげなく手が胸と尻に触っているが美影は構わない。  
「リュージ君?」  
「走ります!」  
 言葉と同時にスタートダッシュを切る。  
「逃すかあ!総員、――進めぇ!!」  
 飛場の肩越しに見る後方、SIT団の面々が座ったままの状態で、尻の動きだけで追いかけてきた。  
「リュージ君。すごい進み方しているよ」  
「どういう進み方ですかあ――!!」  
 叫びつつ、飛場が速度を上げた。  
 
 飛場は走る。  
 後方、SIT団の面々は座ったままで追いかけてきているが、何故かかなり速い。  
 更に、分岐などでは大抵待ち伏せが構えていて、  
「ははは!!おとなしく去勢されろ飛場!!」  
「男として絶対に嫌だあああ!!」  
 体育座りで機関銃を構えた男を跳躍一つで飛び越し、逃走する。  
 飛び越された男が後方からの追っ手に合流して、追撃は数を増す。  
 腕の中の美影が、追っ手を見て、  
「ん。リュージ君、荒帝出す?」  
「いや、さすがに建物内で音速超過は――うわ髪かすりましたよ今!!いえ、マズイんで大丈夫です」  
 こちらの言葉に彼女は頷き、首に手を回した。  
「貴様ぁ!!我らの前で逢い引きするとは良い度胸!!」  
 後方から、怒声と共に速度の上がった風が来るが、  
こちらも美影の身体が安定したことにより、速度を上げて逃走を続行。  
 と、前方に見知った顔を見つけた。  
「出雲先輩に風見先輩!ちょっと助けて――って何故あからさまに視線を逸らしますか!?」  
「覚、関わらない方が良いわよ」  
「分かってるって千里。俺だって猿も土下座して逃げ出すような集団には関わりたくねえよ」  
 風見は、しかしこちらの抱く美影に視線を向けて、  
「大変ね美影。安心しなさい美影。もしピンチになったら助けるから。」  
「僕は完璧無視ですか!?」  
 叫び、その叫びも無視され、飛場は走り抜けた。  
 
 その部屋は薄暗く、明かりは壁に取り付けられた非常灯のみ。  
 40メートル四方と、かなりの広さを持ち、様々なケースやコンテナが置かれている。  
 倉庫だ。  
 その一角、大きめのコンテナの影で、周りからは死角となる場所に、人影がある。  
 人影は少年と少女のもの。どちらもコンテナに寄りかかる姿だ。  
「なんとか逃げられた、みたいですね」  
「……リュージ君」  
「なんでしょう?」  
 聞き返した先、飛場の隣にいる美影は頷き、  
「あの人達は、あの人達の前でリュージ君と私が一緒にいるのが駄目だって言ってたけど……」  
 その言葉に、飛場は美影の言おうとする意味を理解する。  
「いや美影さんが気にする必要はないですって。多分あの人達は無差別にカップル狙ってるんでしょうし」  
 先を言う必要は無いと言うように放った言葉に、美影が振り返る。  
「そうなの?」  
「ええ」  
 即座の肯定に、彼女の顔に笑みが浮かんだ。  
「ん、よかった」  
 一息の間をおき、再び呼びかけが来た。  
「リュージ君」  
「はい?」  
 彼女はこちらに身を寄せ、  
「ん、けど、今は人いないから、追われることもないよね?」  
 こちらの手首を掴み、己の胸へと当てる。  
 頬を赤く染め、  
「だったら――」  
 先は言わせるべきではないと思い、飛場は彼女の言葉を唇で止めた。  
 
 美影は目を閉じ、唇へと意識を集中させる。  
 飛場の舌先が優しく、こちらの唇に触れた。  
 もっと深く、濃いキスを要求されている。  
「―――」  
 彼の舌を迎え入れた。  
 こちらからも舌を返し、お互いの口腔の形を調べるように舐めていく。  
「は」  
 息が続かなくなり、一旦唇を離し、しかし、  
「――ん」  
 息を継ぐと、すぐにまた重ねる。  
 重ねたまま、飛場の腕に抱き寄せられ、彼に身を預けた。  
 息継ぎを繰り返し、長い時間を掛けてようやく唇による応酬は終わる。  
 は、という息と共に唇を離せば、繋がっていたことを示すようにお互いの間に唾液の橋が架かかった。  
 彼がこちらを更に抱き寄せ、後ろから抱かれる姿勢になる。  
 そこで、美影は気付く。今の体勢は、  
 ……いつもと、逆。  
 普段、自分が彼を後ろから抱きしめている。今はその逆だ。その事実に気付いて鼓動が速くなる。  
 いつもは自分がしているように腕を回され、首筋に頬を寄せられる。  
 そして、彼の唇が首筋へと寄せられ、  
「あ……、リュージ君。御風呂まだだから、汗残ってて汚いよ」  
「美影さんなら一向に構いませんよ」  
 舌が首筋に這った。  
 くすぐったさに近い感触に美影は身を固くし、しかし肯定の声を出す。  
「ん……」  
 飛場は舌を這わせるのを続行したまま、こちらに回した手を動かした。  
 肩の上を手が通ったかと思えば、ワンピースの肩ひもが外される。  
 その下に着ているのはタートルネックの長Tシャツ。その裾へと、手が掛けられた。  
 
 徐々にTシャツがたくし上げられていき、それに比例して鼓動も更に高くなる。  
 飛場の手は胸の上で止まり、胸の下着と腹が露わになった。  
 薄暗い闇の中、身体が冷えた外気に震える。  
 その震えが伝わったのか、飛場が聞いてきた。  
「寒いですか?」  
「ん。平気」  
 頷きを返す。  
 胸の下着がホックを外さずに下へとずらされた。  
「あ……」  
 張りのある二つの膨らみが、外気へとさらされる。  
 左胸の膨らみ。その表面を撫でるように、手が触れた。  
 触れる動きは、やがて掴むような動きになり、ゆっくりと揉まれる。  
 その行為に美影は、頬を朱に染め、  
「リュージ君。――もっと大きい方が良い?ディアナ位に」  
「いや確かに美影さんがあのサイズになるのも大変よろしいですけど、今のままでも全く充分ですよ」  
「そう?」  
「僕の好みは美影さん基準ですし、どんな美影さんでも魅力的ですよ」  
 その言葉に、美影は安堵を得る。  
「ん。有り難う」  
 言って、身体の力を抜き、彼に任せた。  
 左右の胸の先端。その突起部を、人差し指と中指で挟まれる。  
 ひねるように刺激され、思わず声が漏れた。  
「はっ……、ん」  
 こちらの反応を楽しむように、飛場は緩急をつけて、刺激を続ける。   
 身体は火照り、既に寒さは感じられない。だが、  
「――ぁ」  
 不意に、彼の手が離れた。  
 
 唐突に離れた手に、美影は戸惑いを得る。  
「リュージ君……?」  
 こちらの胸から離れた手は、下へ移動して臍を撫で、下腹部を通り過ぎてスカートへとかかった。  
「脱がしますね」  
「……ん」  
 答えると、スカートを引くようにしてまくり上げられた。  
 そして下着へと手が伸びる。  
「んっ」  
 飛場の指が下着の上からそこをなぞると、小さくだが、確かに水音がした。  
「あ……」  
 その事実に頬が一気に熱を上げる。  
 彼の手が下着にかかり、ゆっくりと下げられていく。  
 自分の後ろから手を伸ばしているため、途中でこちらの膝を曲げさせて、足先まで下ろす。  
 片方の足先から抜き取り、しかしもう一方の脚に引っかけたままで止めた。  
 彼が脱がすときにいつもこうするのは、何かこだわりがあるのだろうかと美影は思う。  
 そして、そこが露わとなった。  
 指が表面をゆっくりとなぞる。  
 伝わる甘い刺激に僅かに身を固くし、しかし、その動作さえ彼に敏感に感じ取られる。  
「美影さん、痛かった……ですか?」  
「ん、――大丈夫。リュージ君が触ってくれて、嬉しいから」  
 こちらの背後、耳元で彼の安堵の吐息を感じた。  
 美影は笑みを浮かべ、  
「ん。だから、もっと触っていいよ。リュージ君になら、触って欲しいから」  
 耳元で小さく息を飲む音がして、僅かな間が空く。  
 見えない彼の顔も、きっと自分と同様に赤いのだろう。  
 動きが再開された。  
 
 ゆっくりと、優しい動きだが、飛場の指はためらいなく触れてくる。  
 表面をなぞる動きに合わせて、ん、と声が漏れるが、彼の動きは止まらない。  
 さらに、空いた手が再び胸へと触れる。  
「――んっ」  
 揉む動きと触れる動きの同時進行に、身体の熱は高まる。  
 冷えた空気の中、肌に汗が珠となって浮かび、吐息は白さを増した。  
「んんっ、リュージ君……」  
 指先がなぞる動きから、こちらに侵入する動きへと変わった。  
 既に十分な湿りを帯びている秘所は、彼の指を抵抗無く受け入れていく。  
 己の内側を優しく擦られ、くすぐったさにも似た感触に声が高まり、  
しかし無人の倉庫に予想外に大きく響いた為、思わず口を押さえる。  
 だが、飛場の手がこちらの手を顔からゆっくりと外す。  
「ぁ……。声、出ちゃうよ……」  
「それでいいんです。美影さんの声、もっと聞かせて下さい」  
 飛場の言葉と同時、彼の指が美影の中で動く。  
「ふぁ……っ!?」  
 上げた声が倉庫に反響し、美影は力を込めて声を堪えようとする。  
 しかし、首筋へのキスで、それは阻止された。  
「んあっ、リュージ君!?」  
 さらに強い刺激が来た。  
「っ!?」  
 今まで触れていた場所の上、その小さな部分へと指が触れている。  
 そこを摘むようにして与えられる刺激に、抑えを失った声は素直に反応した。  
「――っあ!!は、ひぁ……!」  
 自分の口から出る、自分でも驚くほどの甘い声に、美影の身体は一気に昂ぶる。  
 そこへ、不意に飛場の言葉が来た。  
「……とても可愛いですよ、美影さん」  
「――っ!あ、あああっ!!」  
 耳元で囁かれた言葉に緩んだ身は、一気に絶頂へと達した。  
 跳ねるように身を反らし、しかし彼に抱き締められ、汗が宙に散る。  
 反らし、硬直した身は、数秒の間をおいて、ようやく弛緩する。  
「は、あ……」  
 身体にも思考にも力が入らず、飛場に身を預けるようにして、ゆっくりと息を吐いた。  
 
 こちらに全体重を傾けてきた美影を、飛場は浅く抱くようにして支えた。  
「――っと」  
 息を整える彼女の、影色の髪が顔にかかる。  
 ……いい匂いだなぁ……。  
 ほのかな柑橘系の匂いと伝わる体温に、飛場はゆっくり息を吸う。  
「ん……」  
 と、髪が動いた。  
 腕の中。息を整えた美影が身を回す。  
「ん、リュージ君」  
 顔を向かい合わせ、頬を擦り合わせるように抱きついてきた。  
 応えるように彼女の背に手を回し、撫でる。  
 耳元。熱を持った息と共に、彼女が囁く。  
「ん。触ってくれて、有り難う……」  
 吐息混じりの言葉と共に、彼女の頭が下へ沈む。  
「美影さん?」  
「次は、私からするね」  
 言葉と同時、彼女の手がズボンのファスナーを下ろす。  
「あ、いや、ちょっと、その……」  
 どう答えるかを思案している間に、美影が半ばほどの大きさになったそれを取り出した。  
 細い手指が、さするように飛場自身に触れる。  
「っ!美影さん……」  
「ん、リュージ君のここ。凄く熱いね」  
 言って、彼女の唇が先端に軽く触れた。  
 続いて舌が表面を這うように舐める。  
 その行為に、背筋に震えが走った。  
「くっ、は……」  
「リュージ君、気持ちいい?」  
「ぅあ、いいですよ……」  
「ん。よかった」  
 美影が動きを続行する。  
 
「んっ、ふ、あ……」  
 美影の舌はこちらの反応を試すように、動きを変えていく。  
 どう動かせば一番良いのかを知ろうとする動きだ。  
 確実に高まっていく快感に、飛場は息を荒げ、  
「――ん」  
 髪の間に手を差し込んで、撫でる。  
 頭皮に触れるように手を動かすと、彼女はくすぐったそうに目を細めた。  
「――は」  
「あ……。美影さん?」  
 不意に、美影が舌を離した。  
 呆然とするこちらの前で、代わりというように己の髪の一房を掴む。  
 そして彼女は掴んだ髪を、男根へと巻き付けた。  
「なっ!?み、美影さん。どこでそんな知識を!?」  
「?リュージ君のPCにあったゲームだけど……」  
「わぁー!!」  
 慌てて叫び、そう言えば、と彼女に使い方を教えていた事を思い出す。  
 その時に、自分のPCを自由に使って良い、とも言ったが、  
「まさかハードディスクの奥に隠しておいたのを!?」  
「10th−Gの人達みたいな登場人物のゲームだったけど」  
「うわあぁー!!ご、御免なさいー!」  
 再び叫んで謝罪すると、美影は首を傾げる。  
「もしかして、やったら駄目だったの?」  
 飛場は彼女の不安げな声に慌てて、  
「そんな駄目とか言ったらむしろ駄目なのはプレイしていた僕の方でありまして  
いやさすがに全部長みたいに実名コンプリートまでしてはいませんけど  
そこで珍しいシチュだなとか思ってセーブしてたりなんかしちゃいまして御免なさい御免なさい御免なさい  
とにかく美影さんは全く駄目なんてことはなくむしろ最高でありますから!」  
 何か色々と暴露してしまった気もするが、美影にフォローを入れる。  
 彼女に向き直せば、笑みと共に言葉を返された  
「ん。有り難う。――続けるね」  
 言葉と共に彼女の手が、巻き付けた髪ごとこちらを擦るように動いた。  
 
 影色の髪の柔らかいとも堅いとも言えない感触に、息は荒くなる。  
「は、うぁっ」  
「ん。リュージ君の、大きくなってきているね」  
 美影は手の中で脈動する感触を楽しむように、手を動かす。  
 緩急をつけて擦りつけられる髪に、飛場のそこは熱を増していく。  
 彼女が上目遣いで聞いてきた。  
「どうかな?リュージ君」  
 快感に支配されつつある思考を急速に回して飛場は答えようとする。  
 ……こ、この天国状況をどう表現すれば!?  
「はぁ、う、も、もう何というか、ええと、うぁ、さ、最高以上ですよ!?」  
 何故疑問詞で放ったのかは自分でも解らないが、こちらの答えに美影は笑みを浮かべ、  
「ん。そうなんだ……よかった。」  
 動きをやや速める。  
 さらに先端に唇を付け、舌でつつくように刺激してきた。  
 追加での刺激に、思考は一気に塗りつぶされる。  
「っ!う、くぅ、美影さ、ん……!」  
「んむっ、はっ」  
 舌が、絡むように動いていく。  
 手も、片手でなく両手で触れ、髪を擦りつける。  
 まるで舌と手と髪全てで、それを自分のものだと主張するように美影は動く。  
「はぁ、んっ……ぁ」  
「くぁ、み、美影さん。これ以上は――!」  
 己の限界を告げる台詞に、しかし美影は笑みで返してきた。  
「ん。いいよ、リュージ君」  
 許可の声と共に、美影が強く動かした  
「っ!うあぁ!」  
 その動きに飛場は限界に達し、その感覚に意識は白く塗りつぶされる。  
 
 飛場が身を仰け反らすのと同時。美影の手の中、握っていたそれから、白濁とした液体が発射された。  
「は、……ぁ」  
 それは手や顔、髪に容赦なくかかる。  
 上から、復帰した飛場が慌てた声を掛けてきた。  
「あ、そ、その、美影さん、あの、すみません……」  
 謝ることはないのに、と美影は思う。  
 自分がこうして欲しいと思ったのだから、と。  
 だから、と言うように美影は白濁液にまみれた手を口へと寄せ、  
「ん……」  
「み、美影さん……」  
 舌で舐め取っていく。  
 顔に付いたものは指ですくい取って、髪に付いたのは唇で拭うようにしていく。  
 舌に感じるその味を苦いと思い、しかし、そう思っても嚥下する。  
 そうして飲み込み、飛場の方を向いた。気にすることはないと言うために。  
 しかし見上げた飛場の顔は、呆、とした表情でこちらを見ている。  
 美影は首を傾げ、  
「リュージ君?」  
 いきなり抱き締められた。  
 胸の下へと手を回され、再び後ろから抱かれる姿勢へ。  
「あ……」  
 下腹部、その先端へとそれが押し当てられる。  
「美影さん、……いいですか?」  
 背後、耳元で飛場が求める声を発する。それに対し美影は、  
「ん」  
 許可の声を発した。  
 ゆっくりと、彼を受け入れていく。  
 
 自分の中に入ってくる感触に、美影は息を詰める。  
 慎重、と言える速度で進む飛場の動きは、長い時間を掛けて止まる。  
 美影は軽く下腹部に手を当て、  
「んんっ、リュージ君の、入ってるよ……」  
 背後の飛場が、頬で頷きを伝えてきた。  
 一息の間をおいて、  
「――動きますね」  
「ん」  
 こちらの身体を回した手で抱き締めて固定して、腰を引く。  
 身体から引き抜かれていく感触は、完全に引き抜かれる寸前で止まり、  
再び、少しだけ速度を増して入ってくる。  
 美影の内側の動きは彼を締め付けるが、それは抵抗ではなく離そうとしない動きだ。  
「んっ、は……」  
 速度は徐々に増し、それに比例して身体の熱も上がっていく。  
 吐く息は熱を持って白く、肌に浮かんだ汗は揺れるたびに飛び散る。   
「んんっ、は、あっ、リュージ君……」  
「うあ、美影さん……っ!」  
 彼の動きに合わせ、自らも腰を動かす。  
 飛場の動かすタイミングに合わせ、自分の更に奥に彼を導いていく。  
 一段と強い突き込みが、美影の奥へと触れた。  
「ふぁっ!」  
 その刺激に身を震わせるが、動きは止めず、止まらない。  
 腰を浮かせ、落とし、飛場に突き上げられ、限界へと近づいていく。  
「っ!美影さん、もう――」  
「ん、リュージ君、いいよ、私に、頂戴……!」  
 抱き締めに力がこもり、身体が浮いた。  
 一瞬の後には強く突き込まれ、美影の奥が叩かれる。  
 そして、熱が弾けた。  
「くっ!!」  
「んっ、はああっ!!」  
 放たれた熱が美影の身体の最も奥へと当たり、美影は達する。  
 飛場の腕の中で身を大きく反らせ、彼へと寄りかかるように力が抜けた。  
 意識が白く、はっきりしない。  
 その中、飛場の声が耳元で聞こえた。  
「美影さん……」  
 直後、頬に唇の感触が来る。  
 美影の意識は、一言だけ答え、気怠い眠りに沈んだ。  
「ん……」  
 
 飛場は美影と共に廊下を歩く。  
 腕の時計を見れば既に帰る予定だった時間よりも3時間近く遅れている。  
「遅くなっちゃったね」  
「色々ありましたからね……」  
 言って、飛場は後ろを警戒するように振り向き、  
「……いませんよね?」  
 呟いて正面をむき直す。  
 と、隣の美影が一歩遅れた。  
「美影さん?」  
「ん……」  
 訪ねれば美影は僅かに顔を赤くし、  
「まだ、リュージ君のが中に残ってて……」  
 絶対零度。完全に周囲が凍り付く。  
 飛場は引きつった笑みで  
「あ、あの、美影さん?」  
「それと、髪にリュージ君の匂いがまだ付いてるの」  
 一気に周囲が爆発した。  
 周囲にいた装甲服姿の男達が一斉に銃を構え、  
 さらに何故か天井裏や床下からまでパンツ一丁の男達が現れる。  
「隊長!もう辛抱なりません!実弾の許可を!!」  
「ええい、飛場!!貴様には実弾でも生ぬるいわあ!!」  
 概念兵器その他もろもろの食らったらただでは済まないような兵器が飛場に向けられる。  
 そんな状況の中で美影は、  
「ん。リュージ君。帰ったらまた、御風呂で、ね?」  
「は、え、は、は、もちろんですとも!」  
 飛場は答え、周囲が攻撃を開始するのと同時に彼女を抱え上げて駆け出した。  
 

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