体を隔てる物はたった二枚の寝巻と毛布。普段抱きつかれたり抱きしめたりはするが、こんなに間近で体温を感じることは殆ど無い。
おびえさせないように、と点蔵は優しく口を吸う。
「メアリ殿、正直自分、貴方に新しい傷を生むような行為をしたいと思うでござる」
「点蔵様がなさるなら、私何でも受け入れますよ?」
――この御仁可愛すぎやしないで御座るかー?!
女性としての危機的立場に立たされているというのに、メアリは全く動じていない。
「何をされてもいい、と?」
「Jud. 好きな方には何でもされたいと女は思うものですよ」
「……メアリ殿、ぶっちゃけて言うと自分今からエロいことに及ぼうとしているでござるが、逃げるのなら今で御座るよ」
メアリが眉を立てた。
「何を仰いますか。ええと、確かえっちなことをすると子供を授かるんですよね? 子供を授かるのは大事な歴史再現ですので」
何と、保健体育の授業をメアリは受けているらしい。
「具体的な手順については?」
「Jud. ――殿方に全てお任せするのが良いと、何も聞いておりません。あ、エリザベスはお嫁さんに行く予定が無いので聞いたそうですが」
――英国式保健の授業完璧すぎやござらんか……!
点蔵は内心で戦慄を覚えながら、自分の寝巻を脱いだ。
「簡単に説明だけさせて頂いてもよう御座ろうか?」
「Jud.」
真剣な顔をするメアリにセックスの手順を教えるなどというシチュエーションは金輪際あるまい。
だがメアリと関係を持ったことがクラスメイトに知れたら大惨事になることは目に見えているため、点蔵は慎重に言葉を選んだ。
「メアリ殿。今から行う行為は夫婦の秘事として伏せるのが極東のしきたりでござる。ようござろうか?」
「Jud. 私も、その、恥ずかしいですし」
――頬を染めて目を逸らすの反則ー!!
「メアリ殿、子供ができる仕組みは御存じで?」
「Jud. 男性に子種を胎内に頂くということだけは伺っています」
点蔵は頷いた。
「その途中、痛みと快楽がもたらされる仕組みになっているで御座る。
……大変言いにくいでござるが、初めて女性がする際には痛みの方が圧倒的に強う御座る。それでもよろしゅう御座るか」
メアリが頬を膨らませた。
「点蔵様、少しくどいですよ。私、点蔵様の全てを教えて頂きたいと、そう思っていますのに」
点蔵がメアリのために負った傷に、メアリが指を這わせる。
「点蔵様の望むままになさってください」
ここまで言われてやらなければ男ではない。点蔵は毛布をはぎ取り、直に肌を触れ合わせた。
柔らかく、暖かい。これだけで達してしまいそうなほどに。しかしそれではあまりに不甲斐ない。
「失礼」
メアリの豊かな胸を揉みしだき、首筋を甘く噛む。ひゃん、と小さな声が上がった。
「す、すみません……」
「防音術式はあるので大丈夫で御座るよ。それより、もっと声を聞かせて欲しいでござる」
全身をゆっくりと撫でさする。その度に、メアリが震えを得て小さな吐息を漏らす。
「触られるのには慣れたで御座るか?」
「あ、Jud. でも、あの、私ちょっとおかしくて……」
点蔵は焦りを得た。
「どうしたでござるか? 不調や痛みなどあればすぐ言ってくれねば困るでござる」
「はい、あの、……お腹の中が熱いんです」
メアリの頬は上気し、目は潤んでとろりと蕩けている。
「私、おかしくなってしまったのでしょうか?」
「最高で御座る」
唇を塞ぎ、少し乱暴に胸をまさぐった。適度な弾力と、湿り気と体温。全てが心地良い。胸の突端部に触れてやると、メアリが悲鳴に近い嬌声を上げた。
「点蔵様、そこはダメです……っ。私、何だかおかしく……」
「おかしくなってほしいでござるよ」
嬌声を聞きながら、メアリの下腹部を探って秘所に至る。ビクリとメアリが震えたので、問いかける。
「痛う御座るか?」
「いいえ、ただ、お腹の熱いのがすごくなってきて、どうしたらいいか、わからないんです」
ここまでは成功しているようだ。淡く閉じられた太ももの間に手を差し入れて、秘所の入り口を撫でさする。
「ふぁ……っ」
とろり、とメアリが更に蕩けていく。ゆっくりと、人差し指だけを膣内に差し入れた。
「ん……っ」
途端にメアリの蕩けた表情が緊張に変わる。
「やっぱり痛いでござるか?」
点蔵は心配の視線を向ける。
「いえ、慣れないだけなので。ただ、……あの、何でしょう。点蔵様にそうして頂くとお腹の熱いのが熱くなるのにそれがいいんです。
私、おかしくなってしまったんでしょうか?」
「メアリ殿が自分を好きでいてくれるのならば、それは最高の反応でござるよ」
ゆっくりと指を押し入れていく間にも、メアリは堪えるように震えている。最奥までたどり着いてくるりと膣内を撫でてやると、メアリが、あ、と声を生んだ。
「点蔵様、これが、気持ちいいということです、か……?」
「Jud. そうに御座る」
「点蔵様は気持ち良くなって頂いています、か?」
快感に耐えながらも自分を気遣うメアリが愛しい。自分の発想をどうかと思いながらも、膣内に差し入れたのとは逆の手でメアリの手を握った。
「メアリ殿、あまり綺麗なものではないが触って頂いてよう御座るか?」
「Jud.」
メアリの手を自身にあてがう。それだけで、快感は一層強さを増した。
(自分コレ、今回早漏になる気がするで御座るが……)
それはもう諦めようと点蔵は思った。早ければ、メアリが痛みを得る時間も少なくなるのだからと自分のプライドに言い聞かせる。
「これが男性器でござる。……メアリ殿に興奮して、ここまで大きく硬くなっているで御座る」
「まぁ」
うっとりとした表情で、メアリはそれを撫でさする。
――それダメー!!
点蔵は焦ってメアリの手を自身から離した。
「もっと、触りたかったです」
「い、いずれお願いするで御座る。このままだと今回の目的達成できなさそうなので、今は勘弁で御座る。
ともあれ、さっきのアレがメアリ殿のここに入るわけで御座るが、――怖くは無いで御座るか?」
「少し。でも、点蔵様と繋がりたいと、今はそう思います」
点蔵は理性が弱まって行くことを感じながら愛撫を続けた。
指を増やす毎にメアリの嬌声が増え、体がくねる。メアリの目から理性の光が亡くなって来た頃、点蔵は口づけを落とした。
「痛い思いをさせると思うで御座るが、覚悟はようござろうか?」
「Jud. ……優しくしてください、ね?」
メアリの両腕を背中側に回させる。そっと己をメアリにあてがい、ゆっくりと腰を進めた。明らかな壁を感じる。そして、メアリの腕の力が強まった。
「……ゆっくりされるのと、一気にされるの、どっちがマシそうで御座るか?」
メアリは真っ直ぐな視線射抜くような視線で点蔵を見た。
「一気にお願いします」
「Jud!」
ぶつり、と何かがちぎれる音を聞きながら点蔵はメアリの胎内に押し入った。
そこは快感の坩堝。動かなくても搾り取られそうな錯覚に陥る。メアリにそんな余裕はないはずなのに。
「は、入りました、か?」
息も切れ切れにメアリが問うた。
「Jud. 最高に気持ち良いで御座る。もっと慣れてメアリ殿も気持ち良くなってくれたら、言うこと無しでござる」
「じゃあ、もっとしましょうね」
――今自分人生で一番幸せでござるな?!
その言葉だけでイきそうになる。メアリの体のことを考えればそれでいいのかもしれないが。それでも。
「少しだけ、動いてもようござろうか?」
「言ったはずですよ。点蔵様の好きになさってください」
明らかな強がりの台詞。けれど、それに甘えて点蔵はメアリを味わい、――精を放った。
「良く考えたら、避妊してないでござるな……」
行為が終わってぐったりしたメアリを自分の寝床に上げた後、後始末をしながら点蔵は己の失態に気がついた。
「あら、何か問題ありますか?」
「い、いや流石に学生結婚はちょっと……」
「学生結婚って、普通じゃないですか?」
ふと、極東とそれ以外では感覚が違うのに思いいたる。
「でも、卒業までに子供ができると任務に差し支えが御座るからなぁ」
「点蔵様、私一応精霊族なので、異種族間交配って結構難しいんですよ? できるだけ早くから準備をしないとエリザベスとの約束を果たせませんから」
「ああ、そう言えばそうでござったな……」
むしろ子供ができないと悲観する可能性の方が高いことに点蔵は思い当たる。
「まぁ、メアリ殿が身重になったら後方支援に回って頂けば十分で御座るか。――では今後も子作りに励もうと思うで御座るが、よろしかろうか?」
「Jud. そうしたいと思います」
メアリの花咲くような笑顔に、点蔵は未熟な父親になる覚悟を決めた。