駒姫は、天に昇る間際、つかの間の夢を見ていた。
そこは、住み慣れた山形城のようであり。
つかの間を小次郎と共にした聚楽第のようでもあって。
ただ、ひどく安らかな、誰からも邪魔されることのない、穏やかな時間が流れているのを感じた。
「小次郎様」
呼びかけに応じて、ん、と片竜角の少年が微笑む。
呼びかければ、応えてくれる人がそこにいる。それだけで、駒姫は胸が一杯になるのを感じていた。
「そこに、いてくださるのですね」
駒姫がいうと、小次郎は、
「これからは、ずっと一緒だよ。残念なく、ただ叶った想いだけを共に、僕達はずっと一緒に生きていくんだ」
その言葉に、駒姫もそっと微笑む。その胸にふと、
――武蔵の人達は、大丈夫でしょうか。
小次郎が秀次と名乗り、しばしの間行動を共にしていたP.A.ODAの人達。強大で、そして常に全力で生きていた戦士達。その力強さを、意志の強さを、間近で見ていた駒姫は知っている。自分に呼びかけてくれた武蔵の総長や姫は、これから彼らとの戦いに臨むのだ。
「大丈夫だよ」
駒姫の心を察したように、小次郎がそっと手をとる。
「あの人達は強い。僕達が今こうしていられるのも、あの人達のお陰だ。そしてあの人達はもう絶対負けない。姉さんたちも、君の母様もいる。きっと、すべてがうまくいく」
――そうですね。
小次郎の正しさを、駒姫は認めた。彼らは、時代を切り開く者。彼らは、終わりある日々に続きをつける者。その彼らに、いつか来る終わりを目指して戦っている織田の者たちが、いかに強くとも敵う道理はないのかも知れない。
「何も、心配する必要はないのですね」
小次郎が頷いた。
「僕達は何も心配しなくていい。これからは、僕達だけの時間を過ごそう。共に。ずっと。永遠に」
「小次郎様……」
駒姫が、小次郎を見つめる。小次郎も、優しく、駒姫の目を見つめ返した。
どちらからともなく、自然に唇を合わせる。
「ん……」
ほのかな呻きをもらして、舌と舌がからみあう。小次郎の手が着衣にかかると、
「あ……」
駒姫はかすかに羞恥の声をもらすが、それでも小次郎の動きを拒みはしない。それは、優しく穏やかな、引き合う魂の触れ合いのしぐさだった。
「綺麗だよ、駒姫」
目と目を合わせてそう言われると、頬が熱くなるのを禁じ得ない。駒姫はたまらなくなって、小次郎に身を寄せる。
小次郎の指が、小ぶりな胸の先をもてあそぶ。
「……っ」
ぴくり、と身を跳ねさせ、駒姫は頬を紅潮させてあえぎをもらす。小次郎が胸を吸う。その手が股間をまさぐりにかかると、駒姫はたまらなくなって、自らも小次郎の足の間へと手を伸ばした。
「駒、ひめ」
今度は小次郎が身を震わせる。その動作を可愛いと思い、駒姫は、ふっくらと昂揚したものを優しく撫ぜ、もみしだいていく。はぁはぁ、と小次郎のあえぎが耳に伝わった。
くちゅ、と駒姫の股間から淫らな水音が響いた。
再び身を跳ねさせ、思わず逃れようとするが小次郎は許さず、片手で駒姫を抱きとめて片手でむき出しになった秘部に指を突き入れる。
「あ、――」
駒姫は甲高い声を上げ、身をよじらせる。その胸を小次郎が吸い、濡れそぼつ秘部を激しくかき回す。ほどなくして、駒姫の身体がびくんびくんと跳ね上がった。
「――――」
くたり、と力を失った駒姫の身体を、小次郎が優しく抱き寄せる。
「小次郎様……私も」
駒姫は、力の抜けた身体をそっと動かし、小次郎の下腹部に顔を近づける。形のよい、小次郎の牡の証にそっと口付けた。
「っ!」
小次郎が、身を跳ねさせる。そのまま駒姫は、小次郎のものを口に含む。小次郎は顔をゆがめ、太股をぞくぞくと走る感覚を味わった。少女の身からは想像もつかない大胆さで、駒姫は激しく舌を使った。
「駒……っ!」
小次郎の身体がぶるっと震え、白濁が吐き出される。口腔内に満ちる牡の味を、駒姫はいとおしげにたのしみ、舌でもてあそんだ。その淫らな牝の顔を見て、小次郎は再び熱を帯びるのを感じた。
とさり、と駒姫の身体が押し倒される。ほのかな不安を帯びて駒姫が小次郎を見上げると、小次郎は大丈夫だよと視線で言い、その額に優しくくちづけた。それだけで、駒姫は胸がいっぱいになるのを感じる。
小次郎が、駒姫の中へと押し入る。
「……ッ!」
ぶつり、と何かが千切れた感覚と鋭い痛み。目もとに涙の玉が浮かぶが、小次郎の心配そうな顔を見て、駒姫は健気に微笑み、小次郎の身体を抱きかかえる。小次郎が、ゆるやかに、そして徐々に激しく腰を動かす。
「あ……あぁ……あッ……」
身体を揺るがす激しい感覚に、駒姫は翻弄される。小次郎も、激情のままに激しく駒姫を貪っていく。心と身体がひとつに溶け合い、何もかもわからなくなっていく、真っ白な感覚。二人は、ただ夢中で抱き合った。
「――――!!」
やがて、小次郎が腰を震わせ、駒姫も全身をがくがくと奮わせる。駒姫が、けぇぇ……ん、と、窮まりの鳴き声を一つ放つ。かつて人類が昇ったというはるかな天を浮遊する感覚を、小次郎と駒姫は一緒に味わっていた。
「駒姫……」
「小次郎……様。私、幸せです……」
駒姫がほのかに微笑むと、小次郎も微笑み返し、そして唇を重ねる。二人は抱き合った。身体も心も、すべてが一つに重なり合う。そして、徐々に意識が白んでいくのを感じる。
「小次郎様……」
「ずっと一緒だよ。駒姫……」
愛しい人の体温を間近に感じて、至福のときが静かに流れる。
――母様。私、幸せになりました。
心の奥で母を思い、あとはただただ、満ちていく純白を静かに受け入れる。誰よりも大事な人とともに。
光が満ち、そして、二人は天へと昇って行った。
(了)