「…」
「…」
小柄な眼鏡の金髪と、色黒でグラサンのヤンキーが、互いを見据えながら沈黙していた。
「…なんでこんな面倒な事になってンだよ…」
「じ、自分に言われましてもー…」
眼鏡が毒づき、グラサンが困惑する。どちらか片方にでも面識がある者なら、この状況の異常さが分かるだろう。
事の発端は──。
早朝。快晴の空の下、北条へと向かう武蔵を追撃すべく現れたのは、佐々・成政と前田・利家の艦であった。
しかし、その部隊は少数だ。先の大規模戦闘で、柴田・勝家が重傷を負うなど、P.A.Odaも少なからぬ打撃を受けている。
全体としては、今は態勢を立て直すべき時だが、
「手が届く内は、少しはやり返しておかねぇと気がすまねぇ…!」
「ナっちゃんえらくやる気だけど、今回の作戦、ぶっちゃけ、お勧めしないよ?この艦じゃ、滝川先輩のみたいに速度も出せないし、
撤退時の回収に手間取ると、本隊との合流も難しくなっちゃう。後の作戦に響くから、僕の加賀百万Gの戦士団も出せないし」
「Shaja、ある程度引っ掻き回したら、即撤収、でいいだろ?柴田先輩とお市様、それと聚楽第の分。借りは早めに返してやらぁ…!」
そうして、戦端は開かれた。隊員が後に続く姿も確認せず、成政は武蔵の街中を疾走していく。
「え、敵襲ですか、ヨシナオ王!?」
「しかも、ここからすぐ近くだそうだ。まだ機動殻の改修が万全ではないというのに…!」
「えぇと…奔獣は今どんな感じでしたっけ?」
「大まかな修繕は済んでおるから、動かすのに支障は無いが、頭部の装甲がまだ出来上がっておらん。仮のままだ」
「jud.!なら行けます!動かせるなら、副長や特務の皆さんが来るまで、少しでも時間稼ぎしてきます!」
「…うむ、分かった。気を付けるのだぞ、バルフェット君!」
そうして、従士は走り出した。丁度こちらへと突っ込んでくる黒い疾風の前に、アデーレは立ちはだかった。
「また出たか!根性のある機動殻!」
「え、あ、jud.!従士、アデーレ・バルフェット、壁役に徹します!」
「Shaja、上等だぁ!六天魔軍が四番、佐々・成政、押し通る…!」
激突した。
「…で、どうなったんだ?」
主要メンバーを医務室に集め、正純はナルゼに問う。
「グラサンヤンキーが『百合バナー!』って叫んでアデーレにレズカップルの話題を強要しながら突っ込んできて、
迎撃しようとしたアデーレが視界が悪くて足元の段差に気付かなくて転んで、それでお互いの攻撃が空振って、
体勢崩したヤンキーが頭突きかまして、機動殻の兜割って二人とも頭部を強打。治療はしたけど、今は意識を失ってるわ。
それにしても、戦闘中にまでレズ話で盛り上がろうなんて、ムラサイってそっちの自由度高いのねー…。
でも前に総長に衆道ネタ振られた時はキレてたけど…やだ、私達に興味あったりしないわよね…?」
「かなりの高確率でいろいろ間違ってますからねー?あと、少し問題が発生してまして…」
ナルゼに代わって浅間が告げる。
「上手く説明が付かないんですが、通神の設定や加護が一部おかしくなってるみたいで、」
そこで言葉を切って、アデーレに通神文を送付する。通常、通神文は、顔の近くに表示される。が、
…何故佐々の方に表示されるんだ…?
アデーレ宛てのものが、離れた位置に寝かされている佐々の顔近くに届いてしまっている。
その逆もまた然り。アデーレの元へと、前田・利家からの通神文が届いている。
「こんな感じで、本人認証が混神してるみたいなんですよ。通神帯そのものは平常通りなので、まるで、その…」
「まさか、頭を打った衝撃で、中身が入れ替わっている 、とでもいうのか?神代の伝承の創作草子じゃあるまいし…」
「二人とも、気が付いたみたいですわ!」
ネイトが短く警戒を促し、近接系が佐々の周りを囲む。
寝起きだからか、佐々には緊張感が見られず、何かを拾う仕草をした後、周りを確認し、自分の顔に触れ、
「あれ…?自分眼鏡かけてないのに、何故視界がクリアーに…?
あ、皆さん、お早う御座いま…な、なんでそんな臨戦態勢で自分を取り囲んでるんですか!?」
同時、もう一つのベッドの上では、目覚めたアデーレがベッドから跳ね起き、近くにいた全裸に飛びかかる。
「──お?」
「っは!捕虜にでもされたかと思えば、トップがのんびり敵の見舞いかよ!ナメてんのか!?」
空中で上半身を捻り、貫手を振りかぶる。
「殺ったぞ、武蔵総長…!咲け、百合花ぁ!」
全裸の胸板に当たり──、ボケ術式に阻まれ、盛大に突き指した。
「…おいコラどうなってやがんだ。きっちり説明しやがれ」
右手に治癒の術符を貼り付けられ、ベッドの上で胡座をかいた『成政』が、上から目線で逆ギレ気味に問う。
「えぇっとぉ…」
浅間が先の会話を、予測も交えて説明する。
「じゃ、じゃあ自分と、佐々…さん、入れ替わっちゃったんですかー!?」
裸眼では落ち着かないのか、サングラスをかけた『アデーレ』が、床に膝と手を着いた。
・お前田:『やれやれ、時間になっても帰ってこないし、連絡もないからおかしいとは思ったけど、なんだか面白…厄介なことになってるね?』
「おいトシ、テメエ今なんつったコラ」
通神で連絡を取った、前田・利家を交えての緊急対策会議だが、向こうは明らかに楽しんでいた。
「しかし、通神は使えるのに、何故百合花とやらは使えないんだ?」
正純が問うが、『成政』は目線を逸らす。答える気は無いらしい。
・お前田:『まぁ、種明かしは出来ないけど、それこそ本人じゃないと発動しないものとでも思ってもらおうかな』
「余計な事喋ってんじゃねぇよ」
・お前田:『ともかく、この件に限っての、一時的な休戦の申し出はありがたく受けさせてもらうよ。
ナっちゃんが無理矢理特攻かまして、こんな面白…由々しき事態に陥ったとなると、
こちらの体面にも関わってくるしね…そちらも、従士殿の防御力は必要なものだろうし、痛み分けかな?』
戦力バランスで言えば、明らかにP.A.Oda側の不利だが、アデーレをこのままにしておくわけにもいかない。
「jud.、佐々・成政の身柄はこちらで預かろう。回復し次第、引き渡すという事で──」
・お前田:『あぁ、その辺は状況によるかな。早めに治ったら、適当な陸地に放り出してくれていいけど、
長引くようなら…まぁ、その時考えようか。じゃあねナっちゃん、柴田先輩達には上手く言っとくから』
そこで通神は切られた。残されたのは、苦虫を噛み潰したような表情で、ケ、と呟く『成政』と、
膝を着いた姿勢で俯いて、胸板をぺたぺた押さえながら、
「あははー…ややHARDですけど、いつもの自分より胸がある気がしますよぉー…」
「アデーレ、オメエは今泣いていい、泣いていいんだ…」
と、虚ろな視線で呟く『アデーレ』と、よく分からないフォローを入れる全裸だった。
浅間が言うには、ある程度は自由にしていいが、機密保持と連絡手段の問題で、原因解明までは行動を共にするように、との事だ。
「まぁ、軟禁されるよかマシか。ランニングも暇潰しにはなる…が」
振り向く。犬達は、普段ならアデーレのすぐ後をついて来るが、今は何か違うのを感じてか、一定の距離を保ち続けている。
「なんなんだ、あの距離感は?ていうか、いちいちついてくんな!」
『成政』が追い散らそうとするが、外見はアデーレなので、遊びの一環だと思われているらしく、
少し散った後、じゃれつこうとして寄るが、やはり雰囲気がいつもと違うのを感じてか、再び距離を取る。
「ったく、ウゼエ…」
「あー…この子達も違いが分かるんでしょうねー。自分の方にも、離れようとして、やっぱり近づいてくるというか。
あ、そうだ。一緒にパンの耳あげませんか?そうすれば、きっと懐いてくれると思いますよ?」
「あ?別にそんな気は…おい、待てコラ、いらねぇっつってんだろ」
『アデーレ』が無理矢理パンの耳の入った袋を手渡そうとするが、『成政』がその手を払いのける。
その動きで中身が宙に舞い、飢えた犬達はそれに一斉に飛び掛った。
「「うわ、ちょ、ま、あああああ」」
結果、二人まとめてもみくちゃにされた。
「…これはアレか?嫌がらせか?」
「そ、そんなつもりじゃないんですけど、この子達もお腹空かせてたみたいで…」
『成政』が座り込んで青筋を立てていると、金色の毛並みの子犬が近寄り、匂いを嗅ぎ、手を舐めて、顔を見上げた。
ビビってねぇのか、コイツ…?
「わ、やっぱり懐いてくれましたよ!ほらほら、撫でてあげてくださいよ!喜びますよ?」
「──は、くだらねぇ」
「あ、待って下さい!勝手に動き回られると、その…」
立ち上がり、その場を去ろうとすると、『アデーレ』が慌てて後を追う。
「ンだよ、ちったぁ好きにさせろ」
「えーとですね…浅間さんが、いつ我慢できずに威嚇射撃を暴発させるか分かりませんので、無茶はされない方が…」
どうやら武蔵は思っていた以上に危険な場所だったらしい。映像は何度か見ているが、威嚇射撃で船を沈めるような女だ。無事では済むまい。
「…メシだ。どっか適当に案内しやがれ」
「あ、はい、jud.!勘定は生徒会持ちだそうなので、ご安心を!」
その足は、青雷亭へと向かっていった。
二人は裸エプロンの全裸に、容赦無く注文を連発していた。
「やっぱり男の人の胃袋は大容量ですね!どんどん入りますよ!あ、成政さんも、限界値まで遠慮無くどうぞ!」
コイツ、タダ飯だからって食い溜めしようとしてねぇか…?
確かに、戦闘系だから食事量は多めだ。だが驚いたのは、
「テメエの胃袋もたいがいだろ?俺の普段のペースで食っても余裕とか、こんな平坦な身体のどこにそんなスペースがあんだ?」
「ひ、ひどー!?自分の身体にダメ出しされましたよ!?」
「ウルセエ、俺の身体でクネクネすんな。そーいや、身体で思い出したが…やけ食いしてねえで聞けコラ」
『アデーレ』の椅子を蹴って暴食を止めると、くぐもった軽い悲鳴が上がる。
「ランニングの時、結構な距離走っても全く息切れしなかったな、速度も出るし…案外やるじゃねえか」
「ふも、ふもっふ!」
「食い終わってから喋れ」
再び椅子を蹴って、悲鳴を上げさせる。
「じ、jud.、自分、毎朝武蔵を3周走るのが日課でして、脚と持久力には自信があります!」
ほぉ、と呟き、脚に触れる。確かに、程良く引き締まっている。
「ひぁ、せ、セクハラー!勝手に自分の身体を撫で回さないで下さいー!!」
「ンなつもりじゃねぇよ馬鹿。だいたい、あんだけ速く走れるなら、機動殻脱いだらどうだ?」
「そ、それは、その…そうしますと、盾役が果たせなくなりますし、あの機動殻は…」
父の、形見ですから。
「形見、か…」
まったく、似たようなモン背負いやがって…。
「俺の『百合花』も…いや、いい。忘れろ」
話を切って、ピザとフライドチキンを頬張り、ビールで流し込む。『アデーレ』も食事を再開していた。
この全裸も、総長やってねえでメシ屋に専念した方がよくねえか…?
適材適所について考えていると、全裸の手伝いをしていた自動人形の姫が話し掛けてきた。
「お二人共、食欲旺盛で健康的であると、ホライゾンは判断致します。この分ですと、ウンーコの方もさぞかし健康的で──」
「おいおいホライゾン、食事中なんだから、その話題はいけねえよ」
同時、暴食していた二人の動きが止まる。視線が合った。
「──我慢して下さい」
「あぁ?ざけんなコラ!こんだけ飲み食いしといて、全部エネルギーに転換出来るか!」
・未熟者:『あー、お二人さん、食事中らしいけど、いいかな?』
ネシンバラから通神が入った。
青来亭に、再び約全員が集まる。
「──さて、各種文献を漁って、症状の確認と解決策を探ってみたわけだけど、よもや創作草子でしかお目にかかれないようなレアな──」
「「いいから早く言え」」
「ひぃっ」
二人揃って睨みつける。
「ん?今の…?」
二人以外の全員で『アデーレ』を見るが、目を逸らして口笛を吹いて誤魔化している。
「ククク、この歴史オタク、ついに眼鏡仲間にすらウザがられたわね?素敵!」
「く、くそ!負けないぞ!?とにかく、該当する話を片っ端から調べた結果、解決策は──互いの頭を強打することだ」
それを聞いたほぼ全員が顔を見合わせる。
「そんだけ…?」
「他の手段も考えたんですけど、下手に術式でどうこうしようとするのは、逆に危険なんです」
浅間がフォローに入る。
「そもそも、精神に干渉する術式は難易度も高いですし、肉体と精神を入れ替えようだなんて試みは前例が無いんですよ」
「だからこそ、原因となった現象を再現した方が、同じ結果を導き出す可能性も高い、という事なんだ。
他には一緒に階段を転げ落ちる、なんてのもあったけどね。最悪、入れ替わったまま生き別れなんてケースもあったんだよ?」
「んじゃ、話は速ぇ。──動くなよ?」
「うわ、即断即決すぎませんか!?機動殻の兜割るような頭突きダイレクトに食らったら、頭部にゴッドモザイクかかりますよ!?」
「ウルセエ、いつまでもこんな面倒な状態続けられるか、さっさと終わらすぞ」
喚く二人を見て、正純が呟く。
「なるほど、佐々だけに、さっさと決めるわけだな」
空間が凍りついた。
「あー…コレが武蔵副会長の滑り芸か…至近距離で直撃食らうと流石に堪えるな…」
「回避不可能で防御力も無効ですからねー…」
『さしもの我が輩も、凍結するところであった…!』
「こういう時は、カレーを食べれば温まりますネー」
「あぁもう、悪かったよ!つい言いたくなったんだよ!」
「…まぁいい。ほら、加減してやるから、構えとけ」
「え、あ、jud.…!」
『成政』が立ち上がり、椅子に座ったままの『アデーレ』の頭に手を添える。
その姿は、まるで、
「──なんか、これからキスするような構図よね」
喜美が呟くと同時に、ナルゼが無言で素描を開始する。
先程とは違う意味で、再び空間が凍りつき、一瞬の沈黙の後、
「きゃあー!見た感じアデ成ー!」
女衆がアチョー入って騒ぎ出した。
「フフフ、これはアレね、朴念仁のヤンキー相手に強硬手段に出たって感じね?素敵!」
「百合バナじゃなくてノーマル!?こんな形でネタ提供があるとは…!」
「な、何言ってんですか皆さんー!? 」
「だから俺の身体でクネクネすんな気持ち悪い。テメエらも、勝手なことほざいてギャーギャー騒ぐな」
「あら、鬼の副長との方が良かった?いや、相方の幽霊のが妥当かしらね…」
この匪堕天、次に会った時は必ずブチ墜とす…!
入れ替わったままのこの状態では、百合花も使えず、まともに戦うことができない。一刻も早く元に戻らなくてはならない。
だがこの身体、ポテンシャルは悪くない。持ち主も、前向きで根性がある。お節介を焼きたがるところは、アイツに似て無くも無い。
そういえば二人とも眼鏡だ。なんとなく既視感を覚えるのはそのせいか。だがコイツは仲間ではない。倒すべき、敵の一人だ。
敵だが、面白い連中だ。自分達とは違う方法で、世界を相手に喧嘩を売るような馬鹿共だ。
あぁ、これ以上はマズい。短い時間だったというのに、武蔵の居心地が、悪くないと思い始めている。改めて『アデーレ』と向き合う。
グラサンに映った、アデーレの顔を見つめる。これ以上はマズい。短い時間だったというのに、こいつと一緒にいるのが、悪くないと思い始めている。
だから、思いっ切り、
「あいたぁ──!!」
●
「うー…あいたたたぁー…」
「あ、アデーレ!大丈夫ですか!?アデーレ!?…アデーレ、ですよね…?」
「え、えぇと、自分は…?どうなって…成政さんは…あ」
呟いた声と、身体全体の感覚で理解した。元に、戻ったのだ。
「うわー、まさか、本当に頭突きの衝撃で入れ替わるだなんて…ぶっちゃけ眉唾ものな方法で──、勿論、信じてましたよー?」
浅間が営業スマイルで不穏な発言を誤魔化し、ネシンバラが文献における成功率を語り始め、戦闘系の者が外へ飛び出した。
周囲が慌ただしくなる中、一人、呆けたように座るアデーレの目尻に光るものが浮かぶ。身体の痛みによるものではない。
インパクトの瞬間、眼鏡に映った成政の顔と、別れ際に、彼が耳元で短く囁いた言葉を思い出す。
「…あれ?自分、なんで…あれ?あれれ…?」
次々と零れ落ちる雫の理由は、別れの悲しみか、また会えることへの嬉しさか。それに答えられる者は、この場にはいなかった。
・お前田:『…え、もう治ったの?長引くかと思って引き返したとこなのに…で、どうやって…はぁ?頭突きして入れ替わった!?
まったく、そんな出鱈目な方法で入れ替わるだなんて、ナっちゃん、頭の構造が単純で良かったね?あぁ切らないで切らないで、合流地点は──』
建物の上を走りながら通神を切る。高く跳躍して、俯瞰から現在位置と陸地の方向を確認する。
…陸の上を低空で飛んでやがったのか。
いつ戻ってもいいように、という配慮だろうか。これなら高い木々を足場にしていけば、着地出来るだろう。
“武蔵”の外縁部が見えてきた。速度を緩めて立ち止まる。あとはタイミングを合わせて飛び降りるだけだ。
振り返る。特務級の連中が、こちらを遠巻きに警戒しているのを無視し、駆け抜けてきた方向を眺める。
足元に気配を感じて目線を向けると、先程と同じ、金色の毛並みの子犬が、こちらを見上げていた。
身体のサイズといい、毛並みといい、誰もが恐れ、忌避する自分に対し、臆することなく近付くその姿は、まるで。
「──ふん…」
腰を落とし、その小さな頭を撫でると、目を細めて、尻尾を控えめに振り、感情を伝えてくる。
頃合いだ。元に戻った時、こちらの懐に力無く倒れ込んだアデーレの耳元で、短く囁いた言葉を繰り返した。
「──またな」
黒い疾風は、武蔵から跳び去って行った。金色の毛並みの子犬は、それをいつまでも見送っていた──。
<了>