この身体になってから初めての絶頂を経験し、風見は暫く飛ばしていた意識が戻ってくるのをぼんやりと感じていた。
姿勢は壁にもたれるように座り、腰周りを抱くように押さえられ、天井の照明を仰いだもの。
「ぁ……」
あまりの眩しさにうつむくと、脚の間、こちらを見上げている出雲の顔が見えた。
白く汚れたいつもより少し細い顔に、風見は一瞬どきりとする。
が、それと同時に覚えるのは一つの違和感だ。
「……覚……?」
まず、表情がおかしい。
行為の後にしてはあっさりしているというか、どこかあっけにとられているというか、そういう表情で出雲が軽く眉をひそめている。
「どうしたの……?」
問い掛けると、出雲は何やら珍しく視線を合わせないような態度でこちらの下半身に目を落とした。
そして、思わず、というように一言、ぽつりと、
「……早いなぁ」
「――――っ!?」
頭を砕かれたような衝撃が来た。
理性や感情というものではなく、生物レベルの理解不能な領域からの衝撃だった。
……早、い……?
その言葉が男にとって禁句だということぐらいは、風見も伝聞で知っている。
しかし、身体が男であるというだけでこうも無条件に反応してしまう程のものだとは思わなかった。
……な、何よこの未だかつてない敗北感!
風見は思う。大人しく女のままであったら、こんな感覚を味わうことなく済んだだろうと。
冷静に考えてみれば時間としては大体元の身体の時と同じくらいだし、更に言うならすぐイッちゃって可愛いぞーなどと睦言を言われるのもそれはそれでオツ私は一体何を言っているんだ。
第一、そういう一方的な状況を打開すべくわざわざこんな概念まで持ってきた筈なのに、現在のこの状況はどういうことだろうか。
そもそも男という時点でこちらにアドバンテージがある筈なのに、何故自分はシャワーも浴びさせてもらえずにそそくさ脱がされてこんなことになっているのか。
考えてみれば、いつの間にやら後ろのほうにまで妙な器具を突っ込まれている辺りが既に不公平の極みだった。
……いかん、なんか目潤んできた。
「……どうした千里? さっきから黙っちまって……」
こちらの思いを知ってか知らずか、出雲はこちらの下半身を眺めたままだ。
ただ白く汚れた顔を拭い、舐めてみて、うへえ、という顔をしたのが見え、
……何よその顔はっ……
自分だったら、そんな顔はするものか。いや最初のうちはしていたかもしれないが今は多分していない。
それをきっかけに全ての苛立ちを総合し、風見は言うべき言葉を選ぶ。
「こ……こ、こ、この……」
「こけこっこ?」
「――こっのメスゴリラがぁ――ッ!!!」
――かくして風見少年の一方的な言葉責め(?)は一晩続いたという。