「伊達・成実。貴方に聞きたいことがあるわ」
休み時間の教室で、白魔女が成実の席の前に立った。
「Jud. ――何かしら?」
「もうウルキアガから攻略された?」
浅間が思い切り噴き出す音が聞こえたが、ナルゼは気にしない。そして東がきょとんとした顔をしているので、後であることないことを吹き込もうと決める。
成実は眉をひそめた。
「悪いけど何を言っているかわから――」
ガシッ
成実の頭がウルキアガによって力一杯ホールドされる。
「ちょっとキヨナリ?!」
音が聞こえなくなった成実は驚き、抗議の声を上げる。
「いいか、ナルゼ。貴様同級生の誼で異端審問せずにいてやるのに、何を貴様夫婦の営みを邪魔しておるのだ?!」
「アラ、まだ童貞だったの?」
ナルゼがニヤリと笑う。このヘタレ、と顔に書いてあるようだった。
「否。名実共に既に夫婦である」
おおっ、とクラス全体にどよめきが走る。聞こえていない成実はウルキアガの手をはがそうと必死だ。
「じゃあどうしてそう取材を拒むのよ。ちょっと同人誌に描くだけじゃない」
「うむ。描いても構わんが一つ大きな問題があるのだ」
「え? ナニナニ? その否定の仕方新しいじゃん、ウッキー!」
「トーリ様、黙らないとこちらの“憤怒の閃撃”でズドン致しますが如何なさいますか?」
トーリは黙った。
「この伊達・成実。武蔵には存在し得ないレアキャラなのだ」
「武蔵にしか存在しないレアキャラならたくさんいそうだけれど、――どういうこと?」
「何と、成実はセックス等々の一々を中等部の保健体育の教科書レベルでしか知らん。こんなにエロエロボディーなのに初心なのだ!」
メアリ以外の全員がどよめいた。ナルゼは素早くネームを切り始めている。
「つまり拙僧これから調教し放題。お楽しみタイムを邪魔しないでもらおうか」
「――ウルキアガに対する取材をさせてもらえるならいいわ。美味しいわねこの女!!」
ウルキアガが頷き、ナルゼが親指を立てる。
「いい?! 面白味が無くなるから暫く武蔵汚染禁止ね? 破ったら同人誌!」
嬉しそうにクラスメイトに宣言するナルゼに本気を感じ、全員が頷く。ウルキアガが成実から手を放した。
「ちょっともう、何だっていうのよ?!」
「いや、生活向上のための取引をしていただけだ。気にするな」
「というかナルゼさん? “攻略された”って、何?」
ナルゼはチラリとウルキアガを見た。彼は両手でバツ印を作っている。
「つまり、ウルキアガ色になったかしらということを聞きたかったのだけれど、そこの馬鹿が教えたがらなかったのね。ケチ臭いわ」
成実の頬が少し赤く染まる。
「と、特に変わりはありませんからっ」
既に非処女であることを旦那にバラされているのも知らずに、成実は必死に抗弁した。