* * *
「あの、点蔵様……子供って、どうやったらできるんですか?」
メアリの口から恥ずかしそうに発せられた質問に、点蔵は狼狽した。
現在地は教導院前の階段。授業が終わったばかり故、生徒の数も多く、たくさんの視線が刺さっているのを感じる。
――なんて答えるべきで御座るかー!?
相手は外道連中どもではない。穢れを知らないメアリであり、ならば、
「Jud.そ、それはコウ」
「私、てっきりコウノトリが運んでくるのだと思っていたんですが、違うと、ナルゼ様が言っておられまして」
――選択肢封じられたで御座るよ!!
魔女の非道な所業に、点蔵は額に冷や汗が浮かぶのを感じた。
「点蔵様に聞けばいいと言われたですけれど、ご存知ですか?」
「ju,jud! 勿論で御座るよ!」
「まあ、点蔵様はやはり物知りなのですね!」
きらきらと輝くメアリの瞳を見て、点蔵は後悔に膝をつきそうになった。これでは知らない振りなどもうできない。
なぜだか周囲の生徒たちも静まり返り、自分たちの会話に耳を傾けているようである。
逡巡し、視線を宙に泳がせている間も、メアリは手を胸の前で組み、こちらを見上げている。だから、と観念したように点蔵は息を吸い、
「だ、男女が深く愛し合った時に出来るので御座るよ!」
まあ、と呟きメアリがその頬を赤く染めた。その様子を見て、点蔵はひとまず己の回答が誤っていなかったことに安堵する。
周囲からは「つまらねぇ……」「ほんとがっかりだわ」「犬くせぇ……」などと聞こえるが無視。というか最後は関係のう御座らんか。
だがメアリはそんな声など聞こえていないかのように、やや潤んでみえる上目づかいで、
「えっと、点蔵様、深く愛し合うと、子供ができるんですね」
「Jud.そうなので御座るよ!」
「だったら……」
と、メアリは顔を赤くしたままうつむき、微笑みとともに己の腹部をやさしく撫でた。
「もう、名前考えておかないといけませんね」
点蔵は階段から転げ落ちた