武蔵アリアダスト教導院、生徒会室。物置としての機能を存分と発揮するこの部屋には、現在二人の男女の姿だけがあった。  
 片や商人、片や一般生徒。  
「あー……む……れろぉ……じゅる、ん……れろ、れる……じゅるるっ……」  
 一見無関係そうな両者を繋ぐのはただひとつ。  
 金だ。  
 商人は消費者から指定の金額を受け取れば、その見返りとして商品を提供する。  
 その当たり前を商人は実行しているだけ。そして、この場合の商品とは性的行為のひとつ――フェラチオだ。  
 荷物の上に腰掛ける一般生徒の股座に顔を突っ込み、陰茎を口で慰めているのはハイディだった。  
 快楽のままに熱く、硬くなったそれを、ハイディは躊躇なく舌を絡ませ、唇と口内の柔らかな粘膜で扱き上げる。  
 時には口をすぼめて強く吸引し、時には優しく舌で全体を撫でるように舐めまわす。  
 緩急つけたテクニックに一般生徒はただ喘ぐのみで、彼女の頭を抑えながら自身も軽く腰を振っている。  
「んぐ、じゅるるるっ、れろぉっ、じゅぶっ、じゅるるるるるっ……」  
 唾液を絡ませて、精液全てを貪り食うように吸引する。  
 優しげな顔が自身を見上げ、男子生徒は溜まらず大きく震えた。  
 射精の兆候を感じ取ったハイディは、彼を見上げたままに深く陰茎を咥え込む。  
 鈴口が喉奥を突くほどの強烈なフェラチオ。  
 一切蒸せる事もなく、それを成し遂げてみせる武蔵の商人は、一体どれだけのフェラチオ経験があるのだろうか。  
 百戦錬磨。そう言っても差し支えないテクニックだ。  
「だ、だめだ……ハイディさん!」  
 限界を迎える。  
 ハイディの頭を強く抑えながら、まるで道具を扱うように一般生徒は腰を振るった。  
 突然の動きに流石のハイディも咽てしまうが、そんなのはお構い無しだ。  
 彼女は商品としてフェラチオを提供した。イラマチオというのはその商品についてくるオマケであり、商人からのサービスだ。だから抵抗はしない。  
 目に涙を浮かべながらも、ハイディは少しでも早く絶頂を迎えさせようと陰茎を刺激する。  
 わざと大きな水音を立て、唇で強く挟み込み、吸い上げ、飲み込むようなフェラチオを敢行する。  
「――くっ!」  
「んっ……!」  
 そして遂に快楽の限界に至った一般生徒は、容赦なく根元まで陰茎を呑ませながら喉奥へと射精する。  
 どくん、どくんと脈打ちながら、精液を吐き出す。  
「――――」  
 予め術式で精液量を増やしていた事もあり、一分近くもの間継続的に射精し続ける。  
 それでもハイディは途中で顔を離さず、こちらを見上げたままに精液を飲み干し続ける。彼女の身体に、自分の精液が飲み込まれていく。  
 その事実は彼の興奮を高め、射精が終わった後も陰茎は衰えずにガチガチに勃起していた。  
「あらら、まだ元気。でも契約分はお仕事したからねー、毎度ありー」  
 いつも笑っている気がするが、それでもより笑みを深めながらハイディが言う。  
「あ、あの。追加分を払うから続きを……」  
「延長戦は高いよー」  
「それでもいい」  
 ふうん、とハイディの目が光る。商人の目だ。  
 ハイディは何処からか取り出した算盤をパチパチと指で弾き、それを一般生徒に掲示する。  
「これぐらいでどう?」  
「――いや、俺、算盤分からない」  
「じゃ、これで」  
 と今度は表示枠に金額を書き込んで彼に見せる。  
 その額に、男子生徒は知らぬ間にごくりと唾を呑んでいた。  
「たけえよ……何本エロゲが買えると思っているんだ」  
 足元を見られている。  
 やはり商人だった。取れると思ったら強気の金額を掲示してくる。  
「いやいや、延長戦は本番ありだから、この金額は割りと安いと思うよ」  
「――え?」  
「というより、今晩の私の値段だねー。もちろん時価だけど、これだけ払えば今晩は存分に商品を使っても構わないよ」  
 それは――破格だ。  
 男子生徒は一回分の商品使用金額と思い込んでいたが、それは今晩というスケールの大きさだった。  
 何をしても、いい。  
「手でも足でも腋でも胸でもお尻でも。髪に絡めて扱いてもいいし、勿論私に中出ししても全然オッケー。アサマチんところの加護もあるし、妊娠はしないよー」  
「……」  
「今なら翌日朝のフェラチオつきー」  
「買った!」  
 ハイディの今こそ満面の笑みを浮かべた。  
「商品お買い上げ、ありがとうございまーす」  
 

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