「じじじじ女王陛下?」
エリザベスの甘く熟れた思考は、賢臣の呼びかけにより中断された。
「――すまん、聞いていなかった」
「ごごごご気分が優れぬようでしたら、ききき今日の会議はこれまでとしたほうが…」
「いいとおもうのー」
毎日開催される少人数での会議だ。出席者に視線を巡らせれば、トランプの面々は皆一様に心配そうな顔をしている。
自らの頬が紅潮しているのを自覚し、エリザベスはため息をついた。
「…そうだな、今日はもう自室に下がるとしよう。ダッドリー、今日の続きは明日に持ち越してくれ」
「てててTes.」
いつにない様子のエリザベスに、ダッドリーは不安そうな視線を向ける。
それもそのはず、エリザベスは妖精女王だ。少々の不調ならば、精霊術で何とでもなる。
それをしないのは、今エリザベスが感じている快楽が、姉・メアリの感じている快楽に相違無いからだった。
先ほどから、感覚共有でメアリが送ってくる快楽は強くなるばかりで、このままでは皆の前で醜態をさらしてしまう危機感を覚えていた。
流れ込んでくる淫蕩な感覚と幸福感に、快楽を覚えたばかりの身が疼いて仕方がない。
陶酔したような頭を叱咤して、自室のベッドに倒れ込んだエリザベスを待っていたのは、それまでの何倍もの強烈な快感だった。
「あぁ…っ!」
遂に襲った絶頂に、声を抑えられなかった。
身の裡から貫くような快感は、つい昨日、エリザベスも知ったばかりだ。
――極東弁で、「イく」って言うんですよ。
姉が無邪気な声でそう教えてくれたのを思い出す。あの忍者に与えられた初めての快感に、身も世もなく乱れたのだ。
知らず、エリザベスの指は自らの下腹部に伸びていた。服の上から、クリトリスにそっと触れる。
そこは既に熱く熱を持っていて、少し触れただけでもどかしい快楽がエリザベスの背をふるわせた。
服の合わせをはだけ、エリザベスはおそるおそる下着の中に指を進める。
柔毛をかき分ける間もなく、そこは既にしとどに濡れていた。
既に息の荒いエリザベスは、指で優しくなでさする。
「ン…」
昨日の忍者が、どう触っていたかを思い出す。膨らんだそれをなぞるように、こりこりと爪先で強く。ぬめりを帯びた指が、もっと強い快楽を求めて更に奥へと進む。
「あ、あ、」
出来たばかりの破瓜の傷みに、ぴりりと疼痛が走るが、構わない。
姉を通じて先ほど感じた快楽を、自分も感じたくて、エリザベスはためらわなかった。手が止まらない。
けれど、自分でこんな場所をいたずらするのは初めてで、よく勝手が分からない。
確か、こう…と思い出しながら、エリザベスは胸にも指を伸ばした。
「ふ、…んぅ」
胸を柔らかく揉みしだきながら、秘所をかき混ぜる指は一層速さを増した。
…足りない…。
ぼうっとした頭で、エリザベスは素直にそう思った。昨日、もっと奥に、もっと気持ちいい場所があったのに。指じゃとどかない。
「どうして…」
あの忍者の、熱くて固いあれが、痛かったけど、きもちよくて…。
あれなら奥までとどくのに。
また「イく」ことができるのに。
中をぐちゅぐちゅとかきまわされて、メアリの手を握りながら果てた事を思い出す。
「ん、あ、あぁ…」
もどかしさに涙で視界がにじむ。どくどくと熱くそそぎこまれて、ふるえるほどきもちよくて、こぼれた涙を姉が唇でぬぐってくれた。
きもちいい、きもちいいけど足りない、もっときもちよくなれるのに。昨日おしえてもらったのに。
かたいのでごりごりこすられてsage、いっぱい声をだした。
ねえさんが、すごくうれしそうで、私もすごくきもちよかった。
「ん、んん、」
声を抑えようとしても、鼻から抜けるような吐息が抑えられない。
解放の術を知らない熱が、エリザベスの全身を火照らせる。
「…お手伝いが必要で御座るか?」
突如かけられた言葉に、エリザベスはびくりと身を起こした。
「…どうしてここに!?」
声のした方向、居室の影に、武蔵の第一特務の姿がある。
扉の外には衛兵が、なによりここに辿り着くまでに多数の警備があったはずだ。
慌ててシーツで身を隠しながら、信じられない物を見る目つきのエリザベスに、第一特務は「自分、忍者なもので」と平然と告げた。
「あぁっと、光翼は無しで御座るよ!? 実は、メアリ殿が教えて下さってな」
「姉が?」
「Jud.、どうやらエリザベスが一人で楽しんで、でも苦しんでいるようだから、助けてあげて欲しいと」
「……!」
昨日の一件から、感覚共有がより強まっている実感はある。メアリの言も間違いではないが、エリザベスは猛烈な羞恥に襲われた。
「それに、実は昨日の媚薬には副作用が御座ってな? しばらくはエリザベス様の身体が疼くのも仕方ない事なので御座るよ」
「…副作用?」
「Jud.、特に初めて服用した御仁には、その影響が1週間は続くで御座る。なので、昂ぶりを静める為にも、自分が必要では御座らんか?」
「しかし…姉は…?」
「自分をここによこしたのがメアリ殿で御座るよ?」
こうして話している間も、エリザベスの息は上がったままだ。これが、あの媚薬の副作用というならば。
それを言い訳にして、エリザベスは忍者を呼び寄せた。
「…ここへ」
「Jud.」
忍者はすぐに昂ぶりを収めてはくれなかった。
左の指先を、まるでそこが唇だというように何度も何度も舌を這わせ、爪先を辿られる度に僅かに背が震える。
焦れたように身を寄せると、前戯もセックスの一部で御座るよ、と抜かしてエリザベスをベッドに横たえた。
そのまま、優しく秘所に触れられる。昨日散々いじられた場所だ。
「あ、んぁ…、」
新たな蜜が溢れ、シーツを汚していく。身をさいなむ快楽を早く静めたくて、あの快楽を早く感じたくて、エリザベスは忍者の股間に手を伸ばした。
「エリザベス様…姉妹揃って大胆で御座るなぁ」
ズボンを下ろそうとするエリザベスの動きを止めず、忍者は面白そうにこちらを見ている。
現れた剛直は既に天を向き、熱く高ぶっていた。
「…固い…」
そろりと触りながら、エリザベスはうわごとのように呟きを漏らした。
昨日、エリザベスを何度も貫いたもの。そして、つい先ほどまで、姉に快楽を与えていたもの。
エリザベスは知らず、舌で唇をなぞっていた。忍者のペニスは手の内で熱く、どくんどくんと鼓動を打っている。何度か手を上下に動かすと、先端にぷくりと液体が浮かんだ。
男の象徴ともいえるそれに見とれていたエリザベスの意識を、忍者の指が奪う。
「あああっ」
秘所の奥まで差し込まれていた指が、やや乱暴に中をかき回したのだ。
「妖精女王は悪戯好きで御座るな。…もっと、気持ちよくなりたいで御座ろう?」
忍者の手は休まない。
「あ、ん、ん、」
熱に浮かされた頭で、エリザベスはこくりと頷いた。
「どうして欲しいで御座るか?」
「これ、この、あつくてかたいので、かきまわせ…」
ペニスとか、そういう言葉が言えなくて、かえっていかがわしい物言いになった事にエリザベスは気づかない。
「Jud.」
忍者が答えるなり、足を大きく開かせられる。何もかもをさらけ出す痴態に身が震えた。けれど、それよりも快楽への期待の方が勝った。
「あああああっ」
腰を進めた忍者の剛直が、身を貫く。あつい。あつくてかたくて、さっきまでとどかなかった場所にとどいている。
「あっあっあっ」
忍者が腰をグラインドする度に、気持ちいいところにこすれて、声を出すのが抑えられない。
「は、や、ああ、あっ!」
「気持ちいいで御座るか?」
「きもち、い、い、!」
息も絶え絶えに、姉に教えられたとおり声に出した。きもちいい。さっきまですごく欲しかったもので、中をいっぱいかきまわされている。うれしい。
もっと。
もっとかき回して。
気持ちよくして。
もうちょっと、もうちょっと、
「あ、あ、くる、きちゃう、いっちゃ、いっちゃう…!」
「エリザベス様!」
「ああああああっ!いくぅ…っ!」
脳裏を焼くような強烈な快楽がエリザベスを襲う。
「ああああああぁ…!…は、ぁ…中…あつ、い……」
きゅきゅうと締め付けたエリザベスの中に、忍者がたまらぬといった様子で腰をふるわせ、熱い物を勢いよく叩き込んだ。
どくどく、どくどくしてる。これ、きもちいい。
そう、きのうもきもちよかった。
にんじゃが私にいれて、ねえさんが私といっしょにきもちよくなって。
さいごは二人でいっしょにきもちよくなった。
もっと、もっと欲しい。
どうしよう、きもちいい。
ねえさん、ねえさん、きもちいいの、つたわってる?
腰を引き、抜こうとした点蔵の身体を何者かが押しとどめる。…精霊術だ。
「…ぬくな、にんじゃ」
舌足らずに、快楽に溶けた瞳で妖精女王は命令した。
熱を持った吐息に、その大きな胸の双丘が上下する。
「もう一度、だ。できるな?」
「…Jud.。本当に、よく似ておられる」
姉と似ていると言われる事が嬉しくて、エリザベスは蕩けた笑みを返した。
姉との違いを見破った忍者が似ているというのだから、本当に似ているのだろう。
「忍者、いや、点蔵と言ったか。私は昨日と同じ、否、それ以上を求めよう。姉もここに呼ぶ。…私を、私と姉を、失望させるなよ?」
「Jud.、妖精女王の望むままに」
身のうちで再び固くなった忍者へ向かって手を伸ばす。
それを取った忍者は指に唇を寄せ、口づけでもって妖精女王に応えた。