「や、止めてよ! ナルゼ! なんでこんな……うっ!?」
「東……アンタの誤解を招く発言のおかげで、マルゴットの機嫌がしばらく最悪だったわ……その恨み今ここで晴らさせてもらうわよ!」
そう言うと黒髪の魔女は、床に倒れ伏した少年の股間に当てがった足を動かし始める。
「そ、そんな! だからってこんなひどいことっ……!」
「ふん! 何よ! 口ではそんな事言っておきながら、アンタのココはガチガチじゃないの……」
「そ! それは……」
己の敏感な部分に走る刺激に、思わず少年の口からうめき声が漏れる。
制服の上からでも解るほど、自分を擦り上げる彼女の足の感触は柔らかだった。
「あら……半神だなんてご大層な事言う割には大したことないじゃないの。しかも、足で踏まれてこんなにガチガチにしちゃってまあ……こんな中途半端なモノは、半端モノ同士ミリアムとあの子にでも面倒見てもらうのがお似合いね!」
「…………!!」
「え? きゃあっ!?」
ナルゼのその言葉を聞いた途端、東の纏う空気が一変した。
跳ねる様に立ち上がった彼の身体の勢いに負けて、ナルゼの身体が弾き飛ばされて床へと倒れこむ。
完全に攻守が逆転した状態だ。
「……つっ! な、何よ、いきなり……」
「ナルゼ、余の事は何と言われ様がかまわない……だがあの二人の事を愚弄すことは……」
「ひいっ!?」
「許さない……!」
床に倒れながらも悪態をつこうとした魔女の身体に震えが走る。
目の前に佇む少年の声に呼応するように、彼の纏う空気が変わっていく。
唯一無二にして絶対不変たる帝の血族の威。
愚かなる魔女は己が虎の尾を踏んだ事に気づく。
「ナルゼ……」
「な……なに、を……」
周囲の流体すら震わせる空気の中、いつもと全く変わらない微笑を見せる東の姿にナルゼは戦慄を覚える。
完全に腰の抜けた身体で、口からはがちがちと歯の根が合わない音が奏でられた。
笑いとは本来攻撃的なものであると語ったのは誰であったか。
「お仕置き、だね」
にっこりと微笑む東の姿に、ナルゼの口から僅かに悲鳴が漏れた。