1997/05/18  
 
 午前の空気に、一つの声が響く。  
「参ったな」  
 声を放ったのは青年の姿。  
 右腕に紅い義碗をつけた彼は朝の空に舞っていた。  
 重力に引かれる身体は、地上へ落下を開始するのが世の理。  
 その中、落下中の青年、日阪・勝意は思考する。  
 ……ユーキはツッコミキツイよなあ。  
 首を動かし見るのは、自分が先程まで立っていた場所。  
 吹き飛んだ衝立の後ろにバスタオルを巻いた女性の姿がある。  
 彼女の眼はこちらを向いていて、その視線が表現するのは”殺”の一字。  
 殺意の視線を受けつつ、勝意は着地姿勢を取るために身体を動かす。  
 ――勝意・体術技能・発動・姿勢制御・成功。  
 地面に足がつく。  
 「――っと」  
 全身を縮め、衝撃を完全に逃してから立ち上がる。と、上空から威圧感。  
 ――勝意・視覚技能・自動発動・発見・成功!  
 脳天直撃の位置から氷塊が落ちてきた。  
 ――勝意・体術技能・発動・回避・成功。  
 「ぬあ! ユーキ本気ですか!」  
 回避して言ってる間に追加で氷塊。  
 ――勝意・体術技能・発動・回避・成功。  
 連続の回避は逃走の動きを生む。  
 自分と共に吹っ飛んだはずの少年を捜して辺りを見回すが、既に逃走したのか姿はない。  
 「……日本の将来は明るいなあ」  
 呟いている間に頭上に氷塊が来た。  
 「ってかホントに死ねますから!」  
 叫びつつ勝意は駆け抜けていく。  
 
 午後の太陽が御山の施設を照らす中、勝意は廊下を歩いていた。  
 彼は絆創膏を貼られた手で、やはり絆創膏の貼られた頬を押さえ、  
「イタタ、やっぱり大阪の時より頑丈さ下がってるんですかね……。  
 ユーキ、手加減無しだったからなあ」  
 今朝の惨状を思い出し、身震いする。  
 結局、射程外へ出るまで砲撃は続き、あちこちに傷を負う結果となった。  
 よく生きていたな、と自分を賞賛して立ち止まる。  
「……やっぱ、一つ頭を下げとかなきゃならんですよね」  
 ため息一つ、横を向けばそこにあるのは一つの戸だ。  
 その向こうにあるのは来客用の部屋。  
 今、夕樹はそこにいるはずだ。  
 深呼吸して、戸をノックする。  
「ユーキ、ちょっといいですか?」  
 しばらくの間をおいて、返事が来た。  
「開いてるで」  
 戸を開け、足を踏み入れる。  
 部屋は質素な作りで、広さは八畳ほどの和室。  
 その部屋の中央に夕樹はいた。  
 正座で座る彼女はこちらを向き、  
「で、ショーイ君。何しに来たん?」  
 言う夕樹の口調と視線は冷たい。  
 ……これは相当怒ってますか。  
 空気を暖めよう、と勝意は考え、  
「まあ、まずは小咄でも。……あるサラリーマンがシューマイを買って帰り、フタを開けると」  
「1個足りない言うたら鳳星な」  
「ぶ、物騒な!」  
「やかまし。さっさと本題だしぃ」  
 暖めるのは失敗した。  
 
 冷たい空気の中、勝意は話を切り出す。  
「……朝の件の弁明を」  
「別に怒ってないで。……いつもの事やし」  
 夕樹はそう言うが、本心が違う事は彼女の視線で解る。  
 凍てつく視線とはよく言ったもので視線を受けた部分に霜が降り始めている。  
 ……さすがは矛盾都市。洒落にならない。  
 凍死する前に謝ろうと慌てて弁明を始める。  
「いえ朝は本当にユーキの乳尻素晴らしくって違う!」  
 周囲の気温が一気に下がった。  
 ――勝意・心理技能・発動・衝動抑制・失敗!  
 心の平静を保つのも失敗。 豆腐で釘撃てそうな気温から打開するべく、乱れた精神状態で続行。  
「これには深いわけが在るような気がするんでほら東京圏来てから別室だったじゃないですか  
だからユーキ分と言うそれはもう僕的に無限を超えた絶対勝利の力な成分が不足してまして計画的出来心で!  
……ユーキ?」  
 見れば彼女はこちらに背を向け、窓の外、空を見ている。  
「どっち向いて……」  
「この時間帯、角度はこないやったか……」  
 漏らした夕樹の言葉で勝意は気付く。  
「ってそっち朱雀のある方角じゃないですか衛星砲撃は洒落になりませんよ!」  
 慌てて彼女の背中に飛びつく。  
 手を回してホールド。と、夕樹が振り向いて視線を向ける。  
「……コラ」  
「はい?」  
「手」  
 自分の手を見ればしっかりと彼女の胸をホールド。  
 さらに揉む動き。  
「いやこれは無意識というかもう条件反射で!」  
 裏拳の一つでも来るかと覚悟し、目をつぶる。  
 しかし、いつもの一撃は来なかった。  
 勝意は来ない一撃に疑問に思いつつ目を開く  
「しゃあないな」  
 代わりに来たのは夕樹の溜息と声。  
 彼女は体重をこちらへと預け、  
「……エエよ」  
「ユーキ?」  
 こちらの聞き返す声に、彼女は苦笑の声を漏らし、  
「足りないからあんな事したんやろ。だったらここでしっかり補充しとき」  
 唐突な台詞に勝意は応えられない。  
 彼女は更に言う。  
「イヤなんか?」  
 どこか笑みのこもった声で聞き返された。   
 その一言で、勝意は観念。  
 一息の後、応えた。  
「いえ、喜んで」  
 夕樹は再び苦笑。  
 衣服へと手を掛け、  
「っと、コラ」  
 こちらを睨んできた。  
「え?」  
「こっちが脱ぐ時くらいは揉むのヤメぇ」  
 
 傾いてきた日が和室を朱く染めていく。  
 その中、夕樹は脱いだ服を下に敷き、寝そべる姿勢。  
 本来は白い肌が朱く見えるのは、夕日の為だけでは無いだろう。  
「毎度毎度月並みな台詞ですけど」  
 と、前置きの後に勝意は言う。  
「綺麗ですよ」  
「……阿呆」  
 勝意は苦笑、眼鏡を軽くずらし、彼女の瞼へと口づけた。  
「―――」  
 見えない部分への感触に彼女は僅かに身を固くする。だが、それだけで抵抗の素振りは無い。  
 瞼から頬を通り唇へ、触れながら降りていく。  
 首筋まで移動したところで、夕樹が口を開いた。  
「ショーイ君、そこ、あんま吸わんといて」  
「解ってますよ」  
 舌を這わせる。  
「っ」  
 身をよじる夕樹に構わず、勝意は舌を胸へと移動させていく。  
 舌は胸の谷間近く、うっすらと赤くなっている部分へたどり着き、止まった。  
「吸って跡付けるならこっち、ですよね」  
 言葉通りに実行する。  
「は……」  
 間をおいて口を離せば、そこに新たな跡がある。   
「ショーイ君好きやね。これ」  
「ええ、まあ」  
 言いつつ苦笑。  
 それ以外の意味も在るのだが、と思うが口にしない。  
 再び彼女へと口づける。  
 
 勝意の手が、唇が、夕樹の身体へと触れる。  
 うっすらと汗の浮かんだ肌を、その吸い付くような感触を得ながら揉んでいく。  
 同時進行で唇で触れていくのも忘れない。  
「んっ」  
 くすぐったいのかその感触に小さく声を漏らす夕樹に、  
「声出してもいいですよユーキ。隣二部屋は誰もいませんから」  
「………」  
 そう言った途端に声を我慢するのが彼女らしいと思う。  
 だがさせない。  
「あ……」  
 口を押さえようとする手を押さえつけ、胸の突起を甘噛み。さらに手でもう片方を揉む。  
「っ! ひぁ……!」  
 強い刺激に声を漏らし、夕樹は逃れようと身をよじる。  
 しかし勝意は彼女の身体を抱き寄せ、  
「―――」  
 唇を重ねた。  
 互いの舌を絡め、より強く繋がろうとする濃厚なキス。  
 それは夕樹の身体が逃れようとするのを止めるまで続いた。  
「は……ぁ」  
 唇を離せば、荒れた息が漏れる。  
 上気し、息を整えることの出来ない夕樹は、荒れた息のまま勝意を見つめ、  
「は……強引やね、ショーイ君は」  
 そう言いながらも彼女の表情は笑み。  
 抱かれたまま、勝意ごと畳を転がって彼女は上にくる。  
「ちょ、ユーキ?」  
 笑みの表情のままで勝意のズボンへと手を伸ばした。  
 強めに擦るように手を動かし。  
「こないに大きうして……出したいんやろ?」  
「あー、いやその……」  
「イヤか?」  
「とんでもない!エロくて素晴らしいですよ!エロこそ正義!」  
 即答。こんな答え方では殴られるかとも思ったが、  
「ほうか」  
 と、彼女はファスナーをおろす。  
「うぁ」  
 勝意の漏らした声を無視して、細い指が開いたファスナーの間からそれを取り出した。  
 既に硬くなっているそれは、夕樹の手が触れると、勝意の声と共に小さく脈を打つ。  
「ハ……っ」  
 勝意の熱を持った吐息が、彼女へかかる。それを感じたのか、夕樹はそれに視線を向けたまま小さく苦笑し、  
「してやるさかい、おとなしくしぃ」  
 言って、それを軽く撫でた。  
 
「っ……」  
 夕樹の指が這う感触に、勝意は息を漏らす。  
 勝意は壁に寄りかかる姿勢。  
 視線を下げれば、うつむきでこちらの腰の辺りを見る夕樹の頭がある。  
 自然と手を彼女の頭へと伸ばし、撫でた。  
 髪の間に指を通し、地肌に触れるように手を動かせば、夕樹は目を細め、しかし手を動かすのを止めない。  
 その様子を見つつ、指に伝わる髪の感触を楽しみながら、勝意は呟いた。  
「なんというか、やけに今日のユーキは積極的ですね。こういう事してくれるとは……」  
「いつも人にさせようとしとるクセに」  
 半目でそう喋る彼女の吐息も、勝意にとって昂ぶる要素となる。  
 だが我慢。  
「積極的ついでに、やって欲しい事があるんですけど」  
 ? と疑問符を浮かべる彼女の耳元へ、勝意は囁く。  
「――!」  
 その言葉に夕樹は一気に沸騰した。  
 頬はおろか首まで、夕日の朱の中、尚映える朱に一瞬で染まる。  
「な……そ、や……」  
 切り返せず、一文字だけの発音を続ける夕樹に、勝意は  
……ちょっとやりすぎましたか。  
 あー、と間を稼ぐ声と共に彼女から視線を反らし、  
「まあ、冗談はおいといて、あとは普通に――うひぁ」  
 不意打ちで来た感触に微妙な声を上げた。  
 慌てて視線を彼女に戻す。  
「ユ、ユーキ?」  
 柔らかな感触をもたらす彼女は  
「特別やぞ?」  
 そう言って、両胸の膨らみ、その間に勝意のそれを挟み込んでいた。  
 
 夕樹はそれを包むように胸を抱えると、上下に動かし始めた。  
 彼女の汗と、自分の先走りによって、意外なほどにその動作はスムーズだ。  
「うわ……」  
「んっ……動くな」  
 その感触に、思わず腰を引きそうになるが彼女の言葉に静止される。  
 彼女の胸の中で硬さを増す自身に意識が持って行かれそうになりながら勝意は思考。  
 何故ユーキがこんな事を積極的にするとはいや嬉しいですけどなにか不自然なくらいに素直な  
 ユーキはこれはこれでいやいいけど何かすねているような柔らかい感触がっやっぱ大きいよなあ  
 ユーキの乳というか今自分の思考は下半身直結ですか?  
 まとまらず破綻。同時に、一気に意識が己の下半身に傾く。  
「っ! ちょ、ユーキそれ以上はヤバイですって!」  
「んー?」  
 どこか笑みのこもった、意地悪げな声で彼女は返してくる。  
「なら、もっとしよか」  
 言って、いきなり先端へと舌を付けた。  
 包み込むような感触に加えて、ざらりとした感触が脳を突き抜ける。  
「くぅっ!」  
 一気に限界突破した。  
 夕樹の胸の中でそれは脈動したかと思うと、白濁とした液体を出し始める。  
「!?」  
 いきなり起きた事に夕樹は反応しきれず硬直。  
 その顔に勢いよくかかってしまう。  
「うぁ……あ……」  
 胸は言うに及ばず、顔、髪まで汚して、ようやく射精は止まった。  
「……」  
 呆然とした表情で、夕樹は硬直している。  
 その顔にかけられた眼鏡に付着した白濁が、ゆっくりとしたたり落ちた。  
……エロい構図だなぁ  
 真っ先にそんな思考がよぎった後に勝意は慌てて  
「あ、えーととりあえずティッシュを……」  
 と、用意したはずのティッシュ箱を探す。  
 
 慌てた為か、すぐ近くにあるそれに気付くのに数秒かかり  
「あー、じゃあユーキこっちに顔向けて――」  
 しかし彼女は、胸に零れた白濁を見て、それを指で掬う。  
「ちょ、ユーキ……」  
 それを舌で舐めとった。  
 直後、彼女は顔をしかめ  
「……苦い」  
「当たり前ですよ」  
 半ば呆れ顔で、勝意は彼女の顔に着いた残りを拭き取る。  
「どうしたんです? 素面でここまで積極的なのは、初めてじゃないですか?」  
 相当焦らした時等はその限りではないが、彼女の方からここまでしてくるのは初だ。  
 その言葉に夕樹はうつむき、勝意から視線をそらす。  
「ユーキ?」  
「……」  
 彼女の顔を下から覗き込み、見つめてると、夕樹は観念したように吐息した。   
「……朝、見たんやろ」  
「え?」  
……夕樹の乳尻の事ならさっき白状したはずででは何を?  
 問い返しの視線を送ると、視線を反らし。  
「せやから……他の女の裸、見たんやろ?」  
「あー、もしかしてその事を気にして?」  
……だからこんな積極的に自分をアピールして?  
「うぅ……」  
 こちらの視線に耐えきれなくなったのか、顔を紅潮させた彼女は。  
「……」  
 無言で首を縦に動す。  
「覗きについては謝ります。けど、僕はユーキが一番ですよ?」  
「……浮気したら、嫌やよ?」  
「しませんって」  
「ホンマに?」  
「ええ」  
「そか」  
 言って、彼女はふっと笑みを浮かべた。  
 その笑みに勝意は、  
 
「あーもうかわいいなあ! もう、こう、カバッと!」  
 勝意は擬音付きで彼女を抱きしめた。  
「ショーイ君?」  
「何かもうこう健気なのがいやホントユーキ最高ですよ」  
 意味不明になっているこちらの言葉に夕樹は吐息。  
「阿呆」  
「いや、ですけど……」  
 そう言って勝意は手を下へ伸ばす。  
「ひあっ」  
 不意打ちで太ももの間に手を差し込むと、彼女が高い声を出す。  
 足のつけ根、そこに指を這わせれば、小さくだが、水音がした。  
「そういう風に考えながら、ユーキはこうして濡らしてたんでしょう?」  
 そう言って満面の笑みを彼女へ向ける。  
「そないなこと――」  
 ない、と言おうとした彼女の口を唇で塞ぐ。  
 舌を絡める深いキス。その行為の最中にも、足のつけ根、割れ目を指で触れていく。  
「んっ、んんっ! は……」  
 十分に触れた後、ようやく彼女を解放する。指を彼女の前へ持って行き、  
 指についた、やや粘着性の液体を彼女に見せ、  
「ない……だとしたら、これはなんでしょう?」   
 やや意地悪げに、笑みで勝意は聞く。  
「っ……」  
 彼女の顔が一気に羞恥に染まった。  
「さて、こんなにして、ユーキはどうして欲しいんでしょうか?」  
 追い打ちで朱に染まった耳に囁く。夕樹はその声を受け、さらに紅潮。  
 真っ赤、と表現できる程に肌を染めた彼女は視線をこちらから逸らし、言った。  
 高く、そして弱々しい声で、  
「ショーイ君……焦らさんといて……」  
 その声を聞き、勝意は応えたく思い、しかし同時にもっと聞きたいと考え、  
「んー?」  
 先ほど彼女がしたように、笑みのこもった、意地悪げな声で聞き返す。  
「はて、何をでしょうか?」  
 言って、すこしイジメすぎかとも思いつつも、彼女の反応を待つ。  
「っ〜!」  
 夕樹は息を詰め、うつむき、体を震わせる。  
……さすがにイジメすぎた?  
 何か声を掛けようとして、しかし先に彼女が動いた。  
 夕樹はこちらに身を預け、胸に顔を埋めると  
「……い…」  
「え?」  
 間抜けに聞き返す。  
 彼女は顔を上げる。目は潤み涙目。上目遣いに勝意を見つめ。  
「ショーイ君の……頂戴……」  
 ゆーき の はつげん! つうこんのいちげき!  
 しょーいのりせい に 999 の ダメージ!  
 謎のメッセージが頭に響いた。  
 
 カンスト? などという思考は一瞬で飛び、彼女を押し倒し、それに覆い被さるように手を突く。  
「可愛すぎですよユーキ。それじゃ、遠慮無くいきますよ?」  
 発言に彼女がコクリ、と頷くのを見て、勝意は自分のものを押し当てる。  
「ん……」  
 すこし我慢するような声を上げる夕樹の額へ軽く口づけ、挿入した。  
「んン……ッ!!!」  
 熔けるような熱をもった膣内を奥まで一気に突く。  
 勝意を全て夕樹が受け入れると同時、彼女が背を浮かせるように身を反らせて  
「ッ……は……あ……」  
 直後に弛緩、止めていたことにより乱れた呼吸を吐く。  
 頬を上気させた彼女と、そして入れた途端に強く締め付けた彼女の中から判断して  
「あー。もしかしてユーキ、今……挿入しただけでイっちゃいました?」  
「っ……」  
 答えは羞恥が隠せぬ顔を見せないように、こちらから視線を逸らす行為。  
 しばらく彼女の顔を観察するか、それともここから更に攻めるか、にやつき思案する勝意に、  
 しかしカウンターが来た。  
「私かて、無沙汰やったし……。ショーイ君が……焦らすから……」  
 拗ねるような彼女の表情と声が一撃で勝意の理性に致死ダメージ。  
「あ……ショーイ君の、中で大きく……」  
「何というかホント、歯止め効かなくなってきた感じで」  
 言いながら腰を動かす。  
「ひっ……! ショーイ、くんっ、は、や……っ!」  
 最初からフルスロットルで、接合部からの水音がたつ程に派手に動かしていく。  
 揺れる身体を安定させようと、夕樹がこちらの背に手を回してくる。  
「ああっ! はっ、ショーイくん……ショーイくんっ……!」  
 強く、深く彼女の膣内への突きに、しかし彼女は抵抗の声は上げない。  
 ただ甘い嬌声と共に、完全に勝意へと身を任せる。  
 そんな彼女を愛おしいと思い、しかしふと嗜虐的な考えが勝意の心をよぎった。  
 口元に笑みを浮かべて、勝意は彼女の唇へと軽く口づけ。  
 そのまま耳元へと唇を寄せ、そっと囁いた。  
 
「そういえば、隣二部屋は誰もいないといいましたけど」  
「あはっ……あっ……?」  
「ここなら誰もいない――nobadyがいるって事もありますよね」  
「――ッ!?!?」  
「もしかしたら、聞き耳立ててるかもしれませんねえ」  
「ひあっ! や、やあっ――!」  
 言葉は勝意の想像以上に彼女に影響をもたらした。  
「ショーイ、君、き、聞かれっ、てっ、――!」  
 彼女は言葉の意味を理解すると、瞬時に顔面が沸騰。  
 同時、彼女の中に入っているこれまで自身が強く締め付けられた。  
「――ッ! ユーキ、ちょっと今すごい――!」  
「やっ、やあっ……!」  
 聞かれているかも知れないという、新たな羞恥から彼女は身をよじる。  
「くっ、ちょ、ユーキっ!」  
 その動きはダイレクトに勝意へと伝わり、多少回復した余裕を一気に奪い去った。  
 だがここでイかされるわけには、  
「やっ、ショーイくん、ひあっ! あ、あああぁぁっ!!」  
 彼女へとさらに追い打ちスパートを掛ける。  
 先程の快感の波も引かないうちに更に来る波に、夕樹は突かれるたびに身体を浮かせた。  
「あっ、ああっ、ひあっ!! あ、んっんっ…んあぁ!」  
 おそらく、連続で絶頂をむかえているであろう彼女の内は熱く、痙攣してるかのように強く、細かに勝意を締め付ける。  
 腰を激しく打ち付けながら、その行為を終わらすべく勝意はその接合部へと手を伸ばし、  
「ユーキ……」  
「ショーイくん、ん……!」  
 強く彼女の唇を奪いながら、お互いの繋がっているそこの少し上、そこにある小さな突起をつまみ上げた。  
「んっ、んんんん――っ!!?」  
「ん、くっ……!」  
 夕樹の身体が一際大きく跳ねるのと、勝意が果てるのは同時だった。  
 熱を、彼女の中へと放つ。  
「っ……は、熱……ぅ」  
 彼女の膣内を、多量の白濁で満たしていく自身に満足しつつ勝意は彼女へと倒れ込んだ。  
「は……ショーイ、くん」  
「……ユーキ」  
 余韻と熱に浸りながら、どちらからともなくもう一度、唇を交わす。  
 
 醒めつつある余韻の中、勝意が、夕樹から自分を引き抜く。  
「んっ……あ……」  
 激しい行為の証として空気と共に音を立てて膣内から零れる白濁に夕樹は頬を染めた。  
 その表情や様子を見て楽しむ彼を意地悪と思いつつ、ティッシュへ手を伸ばす彼へ、  
「あ、ショーイくん、自分でやるさかい……」  
「いやあ、まだまだ頑張るわけですから、ここは僕がやらないと」  
 一瞬の間、思考停止。  
「……は?」  
 疑問を返す夕樹に構わず、勝意は白濁で汚れたこちらの股を数枚まとめて取ったティッシュで拭く。  
「っ……」  
 敏感な部分に触れる紙の感触をこそばゆく感じつつ、夕樹は聞いた。  
「まだ頑張るって……?」  
「そりゃもちろん、不足したユーキ分を補充するには、これくらいじゃ足りないですから」  
「なっ……!?」  
 思いっきり満面の笑みで返す勝意に、夕樹は固まる。  
 その間に勝意は、部屋にあるティッシュ箱だけでなく、  
 夕樹の荷物から、持ってきたボックスティッシュや携帯用のポケットティッシュ等まで全て取り出してきて、夕樹のそばに積む。  
 それはつまり、それだけの回数をこなすと無言で宣言していて  
「な、な……」  
 その事実に気がついて再び沸騰する彼女に、勝意が満面の笑みで囁いた。  
「もちろん、ユーキが嫌ならやめますけど……ユーキはどうしたいですか?」  
「っ――!」  
 顔を熱に火照らせて彼をにらみつけても、んー? と笑顔のまま聞き返して来るのみ。  
 夕樹は観念し、数呼吸の間の後、返事を返した。  
 ほんの小さく、顎を縦へ動かす返事を。  
 
 
 
 
 
 さて巡回の親父を迎撃してほとぼり醒めるまでと樹に登ったはいいがどうしたものか。  
 なにしろここから見える建物の一室では今朝方会った兄ちゃんが同じく今朝風呂場に居た女性と究極二神合体真っ最中だ。  
 僕としてはバカップル死すべしと石でも投げるべきだろうかと思案していると急に足下が大きく揺さぶられた。  
 慌てて脚で枝をホールド、逆さにぶら下がる姿勢で下を見れば  
「なんだ君か。人が登ってる樹を蹴るとは危ないだろ」  
「なんだじゃないでしょ。今朝ので懲りてないわけ?」  
 君があきれるように溜息。  
「もちろん懲りたさ。次は対岸の崖から覗くとする」  
「馬鹿につける薬は家にも置いてないわよ」  
 おいおい直接的に酷いこと言ってますよコイツ。  
「雪の字も貴方を見たら無意識レベルで斬り捨てるから死んでも私に罪はないとか言って徘徊してるわよ」  
「無意識レベルで逃げるとしよう」  
 君はまた溜息。  
「で、今度は何してるのよ?」  
「ああ、現在二神合体5ラウンド突入中の部屋に何を投げ込めば良いか思案中」  
 言い終わるより早く君が思いっきり樹を蹴り飛ばし、震動で脚が外れた僕は地上へ落下する。  
 

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