「――ああ、大丈夫だぞ千里? 俺、別に気にしないし」
出雲の返答に、風見は本気の打撃をぶち込もうと拳を固く握り締める。しかし、
「だから、好きなだけ殴ってくれよ。
それで千里の怖かったり痛かったりする気持ちをちっとでも引き受けられるんなら、俺は幾らでも殴られてやるから」
続けられた出雲の言葉に、振りかぶられた拳が空中で止まった。
拳は空中で行き場をなくしたようにさ迷ってから、そのまま力を失ってほどけ、
そのまま平手となって、出雲の厚い胸板にぱちんと音を立てて落ちる。
そしてその平手の後を追うように、風見は出雲の胸へと己の体を投げ出した。
「……覚は、バカね」
ややあってから、出雲の胸に顔をうずめたまま、風見はつぶやく。
「今更なに言ってんだよ」
「私、初めてだから、、きっと痛がって恥ずかしがって滅茶苦茶するわよ?
叩くし、多分引っかいたり、噛み付いたりもするわよ?」
「かもな」
「終わった頃にはきっと覚ボロボロよ? 血まみれになってるわよ?」
「気にすんなって。幸い俺、頑丈だしさ」
「……嫌いに、ならない?」
「なるわきゃないだろうが」
出雲は風見の背へと手を回し、そのまま引き寄せるように強く抱きしめた
風見は瞳を閉じ、体の力を抜いて身をゆだね、そしてそっと出雲に唇を重ねた。