夏。  
 熱帯夜の暑さに掛け布団はとっくに蹴り落とされて床の上。  
 と、ベットの上に横になった私の上に彼が覆いかぶさってきた。  
「あ、ちょっ」  
 文句を言おうとした口がふさがれる。彼の体温に包まれる私。  
「んっ」  
 彼の固いものが顔に触れた。ちょっと待て、何する気だ。  
「うわっ、やめなさっ」  
 私の抵抗を軽くあしらい、彼は無理やりしてくる。神形具がないと自分はほとんど無力、か弱い女の子にすぎないんだと気づかされる。  
「ひゃ、だ、だからダメだって」  
 いっそう彼の力が強まる。こちらの抵抗すら楽しむかのように、彼はますます激しく動く。  
 もうダメ。そう思った時だった。  
 打音。  
 頭の上あたりから鈍いその音が聞こえてきた。  
 私の相棒、狐鬼のベレッタだ。私の上に乗る彼に体当たりをかましたのだ。  
 体格差はいかんともしがたく、彼は微動だにしない。でも彼の興味はベレッタに移ったようだ。私の上から飛び降りる彼。  
 お互いにらみ合う彼とベレッタ。  
 先に動いたのはベレッタだ。手に持った武器――卵焼き用の小さめのフライパン、を振り上げ特攻。  
 が、彼に一蹴。残念、おしい…と言えなくもない。またベレッタに連敗記録が増えたみたい。  
 逃げ回るベレッタと追いかける彼。夜だと言うのにドタドタドタドタ。  
 あー。  
「サンダーバードもベレッタも、夜ぐらい大人しくしてなさい!」  
 まったく、眠気が覚めてしまった。  
 このまま横になっても暑さで眠れそうにないし、夜風にでも当たってこようか。  
 
 

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