ピピピピピピピピピピピピ、ピッ……
「……ん、……く、ふあぁ……」
六畳の室内に響くアラーム音を止めて、東は目を覚ました。
朝は弱いのか、体を半分起こすと目をこすり、にじんだ涙を拭う。
「…………着替え、ないと……」
“武蔵”内学生寮で生活する東の朝は、まず着替えから始まる。
寮は洗面所・トイレが共用で、朝は寝間着のまま利用する学生も少なくない。
しかし、帝の息子として、あるいは単に性格の問題で、東は着替えてからの利用を習慣にしていた。
寝呆けている、としか言い様のない状態の東だが、問題無くベッドから降りて服を脱ぎ始める。
上半身を脱ぐと服を横の机に載せて、続いてズボンに手をかけて――
「――おはよう東。朝から過激ね」
突然の女性の声。それを聞いて、東はやっと覚醒する。
一人部屋の頃の習慣で起きるなり脱いだ自分だが、今は異性のルームメイトがいると思い出した。
「うわっ! えと、その、ごめんポークウさんっ!!」
東は叫ぶと、膝まで下げたズボンを慌てて引き上げた。
ベッドに上半身を起こしたミリアムは、不満げな表情と口調で、、
「東、謝罪の前に挨拶は?」
「あ、……お、おはようございます」
「うん、それでいいわ。狭い部屋での共同生活、着替えを見たくらいのことで、いちいち謝る必要はないのよ?」
そこまで言って、ミリアムは口を抑えて小さくあくびをした。
……って言うか、見たじゃなくて、見られたなんだけど……。
東は心の中でだけ反論する。
そんな東の胸中を知らないミリアムは、目を軽くこすりながら、
「いつもはまだ寝ているのに、東に起こされちゃった。
それは仕方無いとしても、わざわざ私の目の前で脱ぎ出すのは予想外だったな」
「うっ、……やっぱりそれは謝るよ、ごめん」
二度目の謝罪を受けたミリアムは、眉尻を下げて、
「本当に真面目ね。……ところで東?」
脱いだ服を一旦着直した東は、「何?」と答える。
ミリアムは声を立てずに笑いを見せて、
「――男性の生理現象って、性格とは無関係に起こるものなのね」
「ど、どういうこと?」
「どうも何も、ほら」
つい、とミリアムの指が東に向けられる。
彼女の指と視線は東の腰の高さに向けられていて、その先には――
「――うわ、ご、ごめんっ!」
生理現象として、ズボン越しにも勃起と解るモノがあった。
東はミリアムに背を向けつつ、両手でそれを抑えた。
ミリアムは、今度はくすくすと声を立てて笑いながら、
「東、どれだけ謝っても私の記憶からは消せそうにないわ。そんなにはっきり見せつけられたら、ね?」
「……今度から、気をつけます……」
股間以上に、羞恥に顔に熱を持つ東だった。