「さて、新庄君。君に話があるのだが……」
布団を敷き終わったところで、佐山が新庄に尋ねた。
「ん?どうかしたの、佐山君」
ここは、田宮家離れ、時刻は夜10時過ぎと行った所である。
「うむ、そろそろ枕を3つにしないかね?」
さらっと凄まじい発言を受けた新庄は、一瞬言葉の意味を理解できずに固まるが、すぐに復帰し、
「ちょ、ちょちょちょちょっと待ってよ佐山君!?」
「うむ、流石に事が事だからね、いくらでも待つよ新庄君」
返した言葉はあっという間に返ってきた。色々な思いがごちゃ混ぜになって心の中を回るがとりあえず、
「その……あの、と、突然何っ!!」
うむ、と頷きを入れて佐山は
「あちらもこちらも、色々と余裕が出来て安定してきたみたいだからね、どうだろうか」
そう言って、指差すのは壁に掛けられたUCATの制服と、机の上に置かれた小説を書く為のPCだ。
確かに、UCATの仕事も、自分の小説もかなり安定して進むようになって、余裕も出来ているが……
――こ、心の準備が……
「え、えっと……その、答えるのは今じゃなきゃ駄目かな……?」
「そうだね、出きれば今が良いよ、新庄君」
何故なら、と挟み
「今日は君の超危険日ぐふっ」
思わず膝が入った。その反射的に出した膝は、座った状態から放ったとは思えないほど、いい感じに佐山の顎を捉えて跳ね上げさせる。
「か、過激だね新庄君」
無視、尋ねることは一つだ、
「君がなんでそんなこと知ってるの!?」
「当たり前だろう、新庄君。何年一緒に居ると思っているのかね?君の生理周期も、性癖も性感帯もはあぽぁっ」
今度はいいフックがこめかみに入った。なかなかの一撃だと思う、が、佐山はまたも即復活し、
「も、もう、酷いね新庄君。膝と思えば次は拳かね!?」
「君が変なこと言うからじゃないか!」
まったくもう、と呟きながら、心の中でいつもと同じ呟きを繰り返す。本当になんでこんな人好きになっちゃったんだろう、と。
まぁ、既に自分でもわかっている問いなのだが……ため息を一つ吐く、それを見てか、佐山は、さて、と前置きをしてから
「私もいきなり聞いたのだし、無理強いはしない。まだ駄目なら駄目、答えられないなら答えられないでいいよ、新庄君。まだまだ機会は幾らでもあるしね」
真剣な表情で言われた。
――え、えっと……
先ほど口にした言葉が心に浮かんだ。そして、自分はそれについてどう思っているのだろうとも。
なんというか、そう、子供が欲しくない訳では無い、が……
――や、やっぱりその……早くないかなぁ
そんな思いが心を渦巻くが、逆に、別に良いんじゃないかという思いも浮かんでくる。
今みたいな余裕のある日が続くとも限らない、またいつかみたいに忙しくなって、そんなことを考える暇も無くなるかもしれない。
それに……いつも色々と我侭やお願いを聞いてもらっていたりするし、聞いてあげるのも良いかも知れない。
やっぱり、すぐに考えは纏まらない。そしてただ時間が流れていくが
「――駄目なら駄目で良いよ、新庄君。先ほども言ったが、まだ答えられなければ、それでいいよ」