火神戦後に迷子になってしまったレオンを見つけるため、フィール、アルミラ、ガルムの 
3人は時折オルドを破壊しつつ暗がりの中を走り回っていた。先頭を行くのがフィールだ。 
いくらか遅れてアルミラ、ガルムと続く。3人はもうしばらく行けばヴィティスに落とされた 
大穴のある場所へと着く、という所まで来ていた。 
フィールはずっと考え深げな表情をしていて先の戦闘のことや実験台にされたカテナ、 
人間達のことを考えているだろうことは想像に難くない。 
そんな彼にアルミラは敢えて声を掛けようとはしなかった。 
しもべとなった彼らを敵とする事が出来るかどうかはフィール自身の問題だからだ。 
まだ若い所為か自分達と違って簡単に割り切ることができないらしいが、そうしなければ 
妹を助けるための道は拓けない。 
ジレンマが彼の判断、行動を鈍らせるのではないか、とこれから先に待ち受ける戦闘の 
ことを心配に思った。 
だから今はまだ悩めばいい、迷った末の決断に責任を持てるのは自分だけなのだから。 
それを考えると迷わず、悩まずに先に進めるのがありがたい。このあたりに詳しいガルム 
が助力を申し出てくれたことは思わぬ幸運だった。 
 
その彼から方向指示以外の声が掛けられる。 
「アルミラよ」 
「何だ?」 
少し速度を落とし、ガルムの横へと並ぶ。敵陣の中なので二人とも声を抑えていた。 
「俺は以前から貴様に言いたいことがあったのだ」 
「どうやら良い話ではなさそうだな。長くなるか?」 
「すぐ済む。折角の機会だ、走りながら話すが……その格好のことだ」 
「服装?……ははぁ、察しがつくぞ」 
と言ってアルミラは苦笑する。 
「露出が過ぎると言うのだろう?」 
「その通りだ。と言うか貴様!分かっていてそのような格好をしているのか?あの小僧 
だって男だ。年頃の子供の前でその胸が半分こぼれたような服装は刺激が強すぎる。 
教育に良くないだろうが!」 
 
 
 
「………」 
これでは既にいろいろと手ほどきをしましたとはとても言えない。 
「別に私はフィールを教育しているわけではない。せいぜい戦いにおいて助言をする 
程度だ」 
知らんふりをして肩をすくめる。彼女にしてはかわいらしい仕草だった。 
「それが年長者の言うことか。嘆かわしい!」 
私にそんな事を言うのはお門違いだと答えるアルミラに、至って常識人(?)のガルムが 
唸った。 
「小娘がな…」 
「ジュジュが?どうかしたのか?」 
「小娘が貴様の真似をするのだ。あの服装…若い娘がはしたない…貴様への対抗心 
から来るものであろうが、後輩にそんなまねをさせていいと思っているのか」 
「そんなことを言われても困る。お前の仲間なのだから、格好が気に食わなければ自分で 
説得すればいいだろう?何故私に言う」 
まったくの正論にガルムは首を横に振った。 
「おとなしく俺の話を聞くような娘ではない」 
「確かにな。お前こそジュジュをなんとか教育したらどうなんだ」 
「うむむ…あれはな、そっちの小僧と違って礼儀も道理もない、任務にもやる気が無い、 
どうしようもない娘だ。俺の手に余る。注意を促すといつも喧嘩になるしな。ヴィティスに 
言われても直らんのだ」 
半分娘の悩み相談のように語る彼に、アルミラはつい笑みをもらした。 
こんな時にする話ではないと思ったのかもしれない。 
「あのな…無理なんだ」 
「何がだ? …む、その格好を止める気がないということか?」 
「私は今のところこの服と…もう二枚、トト――フィールのレクスの猫だが――が生成して 
くれた服と、それにウサギの着ぐるみしか持っていないんだ」 
「十分だろう。それに着替えれば良いではないか、何故そうしない?」 
「その服は異世界の衣装らしいのだが、上下に分かれているのは良いとしても下が短くて 
とてもこんな時に着られる物ではない」 
「短くても裾があるだけその格好より良いのではないか?」 
そう彼が言うのは付け根までむき出しの彼女の右脚のことだ。 
 
 
 
「いや、具合が悪い。必殺技を使うときにな…こう、脚を上げて飛び上がると中が丸見え 
になるだろう?さすがにそれは間が抜けているしみっともない」 
「………」 
どうやら下着を穿いてないと言いたいらしい。 
ガルムは思わず天を仰いだ。ため息をついて次善の案を出す。 
「ではその着ぐるみを着ては」 
「アレは周りの指示が聞こえにくいんだ。人が着ていても自分が着ていてもなんだか 
モゴモゴ言っているようにしか聞こえないし、それでは的確な行動が取れん。フィール達 
にもなるべく着て欲しくないと思っている」 
「では小僧にマフラーでも借りるがいい」 
「マフラー?」 
思わず聞き返す。 
「そうだ、あのくらい巻いておけ。どうせ小僧にとっては飾りだろう、何もせんよりいい。 
…俺の服も前が閉じられる作りだったらこれを貸してやるんだが」 
ガルムは指で自分の服を示すようにした。 
「フィールはあのマフラーを随分大事にしているみたいだから、貸してくれるかどうか…」 
上の空で答える。 
多分言えば喜んで貸してくれるだろうが、今はそれよりガルムのしつこさが気になった。 
いつもなら『無理だ』『そうか』で済む話のはずだ。 
「………」 
アルミラは横目で隣を走る彼を見やる。 
「どうもお前の話は…」 
アルミラはそう呟くと立ち止まり、ガルムが振り返るのを待った。彼女はただ立つ時は 
いつも腕組みをするので一層胸が強調される。もちろん彼女自身はそんな事を意識 
してはいない。 
少しの距離をおいて前を走る彼も足を止めたので、彼に歩み寄りつつ疑問を投げかけた。 
「どうした、小僧が行ってしまうぞ」 
「どっちだ?」 
「ぬ?」 
 
 
 
「私を見ないようにする為の言い訳に聞こえる」 
「なんだと?」 
「本当に彼らに悪いと思ってやめさせたいのか?本当はこの胸や脚がお前の性的衝動を 
突き動かすからなんじゃないか?」 
「何を言っている、貴様…俺をからかっているのか?」 
顔をしかめ、近寄ってくる彼女の肩を押すと、ふい、とガルムは横を向いた。とても相手に 
出来ないと思ったのだろう。 
「真面目だよ。お前と同じくらいな。どうなんだ?フィールやジュジュとは関係なく、本当は 
『お前が』私から目を逸らしたいんじゃないのか?」 
「馬鹿なことを言うな。俺はそんな目で貴様を見たりしない。だいたい何年も見てきて 
今さらどうにか思ったりするものか」 
ふん、と鼻をならす彼の仕草にアルミラの目が鈍い光をもった。 
急にフィールの後を追って走り出す。 
話をしながら走っていたので大分距離が開いてしまったが、もともと足の速い彼女はあっと 
いう間にフィールとの距離を詰めた。 
「フィール、出口までもうそろそろらしいぞ」 
「分かった。急ごう!」 
すると意外なことにアルミラが首を横に振った。 
「アルミラ?」 
「この先休む場所と余裕があるかわからない。ここでいったん休息にしないか?」 
「でも…」 
「心配要らないさ。あれでレオンも元はOZの一員、戦闘好きだが無茶な戦いはしない。 
それに我々が先に疲れたら探せるものも探せなくなってしまうだろう?」 
レオンの事はやはり気にかかるものの、アルミラの言を信じて頷いた。 
「ああ、そうだね」 
「聞きわけがよくてなによりだ。…お前はここで休んでいろ。私はガルムと話がある」 
「話?」 
「込み入った話だ。ヴィティスの狙いも分からないしな。奴なら何か知っているかも知れん」 
「ああ…」 
 
 
 
最初にヴィティスに会ったとき様子が変だったとアルミラは言っていた。神からの任務を 
執行するのに躊躇いのない男だと。その彼が自分達を見逃すようなことをしたので気に 
なっているのだろう。 
「そっか、そうだね」 
「ああ、後で声をかけるからそれまで横になっていろ」 
「わかった」 
「よし、ガルム。おまえはちょっとこっちへ来い。話がある」 
アルミラはそういうなり後から来たガルムの袖を掴んでぐいぐいと違う道へと引っ張って 
いった。 
「おい…なんだ、何処へ行く」 
話を聞けなかった彼が当然の疑問を口にしたが彼女は答えない。 
 
この辺りは明るいところと暗いところがあり、ちらほらと暗闇のオルドが光っていた。 
互いのかたちがやっと見えるほどの暗がりへ連れてくると、ガルムに向き直る。 
おとなしくついてきた彼は急に立ち止まった彼女の体にぶつかりそうになり、反射的に 
後ろに下がった。 
しかしアルミラは素早くその足をつま先で引っ掛け、さらにバランスを崩した彼の胸を突き 
飛ばす。 
「ぬをっ!?」 
急にこんなことをされて耐えられるはずはない。ガルムはみっともなく尻餅をついた。 
「く…何をするか貴様!」 
「当ててみるか?」 
暗闇の中、自分の腹にいくらか重量のあるものが載った、と思う間もなくやわらかい掌が 
ガルムの顔を撫でてきた。 
「お前いつまでこんな格好をしているつもりだ?」 
「ふん、そっくりそのまま貴様に返すわ!おい…そこをどけ」 
アルミラの手はやさしくやさしくガルムの毛の流れに沿って動きつづける。その手が喉に 
きて暫く、上から不満そうな声が降ってきた。 
 
 
 
「ごろごろ言わないのか?気持ちよくはないのか?」 
「馬鹿にしているのか、俺は猫ではないのだぞ!いい加減にそこをどけ」 
「それは悪かったな」 
彼の話を聞いていないのか馬鹿にしてるとしか思えない答えを返すと、彼女はいきなり 
ガルムの鼻に口付けてきた。 
そこは少し湿っていて、またも余計なことを聞く。 
「これは明日が晴れとか分かったりするのか?」 
そう言いながらその長い鼻の先を指でつついた。 
「きさ…!」 
いい加減我慢できなくなったガルムの口をアルミラの両手が上下から抑える。そのまま 
彼の頭を胸元に抱き寄せるとその耳のあたりで囁いた。 
「フィールが寝てるんだ。静かにしてやれ」 
「貴様が俺を怒らせるんだ!」 
「すまんな」 
律儀に小声で怒鳴る彼にアルミラはまったく悪びれずに答える。ガルムの唸り声も意に 
介さないようだ。 
「いきなり人を突き飛ばしたり…」 
アルミラは大きな口元を覗き込むように首を傾げた。 
「そうでもしないとお前は大きすぎて押し倒せなかったんだ」 
言うと鋭い牙の間に臆することなく舌を忍ばせ、彼のそれにそっと触れさせてきた。 
「!?」 
ガルムはいきなりの彼女の行動に驚きを隠せなかったが、うっかり傷つけたら事だと 
渋々彼女の顔が離れるのを待った。 
ちゅ、ちゅっ、と暗闇に音を響かせた後、彼女は顔を上げた。 
「お前は舌を入れるなよ?窒息死は御免だ」 
今のままだとお前の舌が大きすぎるから、とアルミラは微笑んだ。そして再び顔を近づ 
ける。 
 
 
 
「よせ…!」 
ガルムは自分にはりつくアルミラの肩を掴み引き剥がした。ひとつ息をつくと言い聞かせ 
るように言う。 
「貴様、一体何がしたいのだ……こんなことをしている場合ではないだろう。それが分から 
ん訳ではあるまい」 
いや、何がしたいのかは分かっている。 
彼は『何故』と聞くべきだっただろう。何故この状況で、と。 
「お前が悪いんだ。私のことを女として見れないようなことを言っただろう?挑戦されたと 
しか思えんぞ、あの台詞は。少なくとも女性に言っていい台詞じゃない…相手がよぼよぼ 
のお婆さんでもな」 
彼を非難するような言葉にガルムも思わず反論しようとしたが、その口を彼女の両手が 
塞いだ。 
今のは冗談だと半ば本気で怒っている彼に謝る。 
彼とて遊びでフィールたちに協力しているわけではないのだ。 
「分かってるさ、ちゃんと。早くレオンを探さないといけないことも。神をこのままにして 
おけないことも…神に挑んで――死ぬかも知れないこともな」 
闇に響く彼女の声には厳しさが混じっていた。 
「だからか?胸だの脚だのとあんな話をして、なんだか無性に…したくなったんだ。こんな 
時だが子を残したいのかもしれん。産んでる時間も無いというのに。済まないな…、自分 
でもよく分からないんだ。諦めてくれ」 
台詞はあっけらかんとしているがその声色は自分に対して困惑しているようだった。 
「……!」 
ガルムは彼らが死も厭わず本気で神に立ち向かっているのだという事実に、胸を打たれ 
た。しかしそれとこれとは話が別だ。 
苦い顔で答える。 
「聞け。いいか、俺は……ああした行為は、愛情の延長であるべきだと思っている。それ 
なしに女を抱く気は無い」 
 
 
 
一瞬の沈黙。 
彼女が自分の上で震えているのが伝わってきた。笑っているようだ。 
「…まったく……頑なだよ、お前は。こんな時まで。まぁそこがいいところだと分かっては 
いるが」 
いつも静かに微笑むだけの彼女には珍しく、くすくすと笑っている。 
「いいんだ。お前はじっとしていろ。私が好きにするから。お前が私を抱くんじゃなく、私が 
お前を抱くんだ」 
そう言って彼の大きな体を抱きしめると再び顔に手を伸ばす。 
「うーん、どうもしにくいな…もとの顔に戻らないのか?」 
よく見えないガルムの顔を撫でると体毛がふかふかと掌にやさしく感じられた。しかし 
ちゃんとした口付けを交わすにもこれでは相手の口が大きすぎる。 
「まぁ、気持ち良いし暖かいし、それでもいいか…」 
さっさと諦めるアルミラは案外大雑把な性格なのかもしれない。 
彼に比べて大変小さな口を寄せると、彼女の唇が触れたのはやわらかい唇。先ほどまで 
顔を覆っていた毛皮は跡形も無い。 
ガルムは身動きせず彼女のするに任せている。 
「…あのままでも背徳感があって良かったかもな」 
「馬鹿を言うな。貴様の要望だぞ」 
アルミラは小さく笑う。 
「お前の素顔は何年ぶりだ?この暗がりで見えるわけじゃないが…相変わらずのようだな」 
楽しそうに言うと暗闇の中、彼の顔の輪郭をたどっていった。指先でその顎を、耳を、唇を 
なぞっていく。本来の姿に戻った彼はまだ納得がいかないのか、眉を寄せているのが 
分かった。 
こんなときでも変わらない性格に彼女は、ふふ、と笑むとガルムの下半身へ手を延ばした。 
細い指で愛しげにそこを撫でる。 
「元気になっているぞ」 
「嬉しそうに言うな。当たり前だ、そういう風に触られてはな…。俺とて何をされても分か 
らぬ朴念仁ではない」 
「知っているさ」 
 
 
 
笑みをたたえてガルムに触れるとレクスを解いても彼の肩や背中は力強く、その逞しさを 
アルミラに示していた。彼の胸元に手を滑らせ、そのまま前を開くように掌を下ろす。 
触れるように唇を重ねると男の口が動いた。 
「いいのか?」 
「なんだ……?」 
「これ以上されたら理性が飛ぶ」 
アルミラに確認するように言う。 
「今更…お前な、これ以上女に言わせる気か?」 
少し憤慨したようだ。いや、呆れているといったほうが正しいだろうか。 
「お前の信念にもとる、というなら」 
彼の額に自分のそれを密着させ、闇を透かすように正面を見つめる。 
「お願いだ。今だけ、私を愛せ。今だけでいい」 
そう言ってガルムの額に小さく口付けた。 
「アルミラ…」 
「…それにお前の理性が飛んだところを一度見てみたい」 
からかう様に言うので思わずガルムはアルミラを振り落とそうとした。しかしそう思い通り 
にはならず彼女はするすると彼の足元へと下がっていく。 
「言ったはずだぞ。じっとしていろと…ただ私を感じていればいい」 
囁くような声が聞こえた。 
 
前を開き、彼の本能を解放する。 
指で触れるとそこは熱く、上を向いてアルミラを求めているのが分かった。 
自分から仕掛けたことではあるが、こんな風に反応してくれるのを単純に嬉しいと思った。 
喜ばせたいと。 
彼を両手で包み込み、その先端に口づけると唇に彼の熱を感じる。自分をあんな風に 
言っていたのにこんなに反応するなんて、となんだか愛しくなった。 
「ん……んんっ、…ちゅっ」 
舌でなぞりながら時々触れるだけの口付けをしてその付け根へと下がっていく。そこに 
ある柔らかな部分へもそっと指で揉むように刺激しながら唇を落とした。 
 
 
 
アルミラの手はその部分を構ったまま、彼のそそり立った部分に舌を這わせた。 
今度は根元から先端へ、じっくりと唾液を十分に絡ませるようにして舐め上げていく。 
「ぁん…ちゅ…っ…ん…」 
くちゅくちゅと粘ついた音を立て頂上まで行けばそこは先走りに濡れていて、アルミラの 
欲求をいよいよ煽った。 
かさの部分だけそっと銜えてみると、唇を窄めればぷるんと弾いてしまう。 
その感触を楽しむように彼女はしばらく舌と唇だけで彼を弄んでいたが、真上から 
焦れったそうな声が聞こえてきた。 
それは吐息に混じって聞き逃してしまいそうなほど小さな声で。 
「…っ…アルミラ…」 
「ふふ、…ン…ちゅ……ッ」 
彼の反応に満足したのかやっと彼女の口が彼を包み込んだ。 
先端からだんだんと奥まで咥えてゆき、頭を上下させ始める。 
行きつ戻りつ動く彼女の舌使いに、彼は体中の熱がそこに集中するような錯覚を覚えた。 
漆黒の中、足元に居るはずの彼女。 
視線を感じるのは、愛撫しつつ上目遣いにこちらを見ているからだろう。 
アルミラが身動きするたびにガルムのそれは彼女の口腔に応えて硬さを増してゆく。 
彼は思わず大きな手をアルミラに伸ばした。 
その頭を押さえつけるようにするのは自身を襲う快感に耐えられなくなってきたからだ。 
それを感じた彼女は目元に一瞬笑みをひらめかせると口内を彼に密着させ、震えるほど 
に吸い立てた。 
「ん…ちゅ…っ…」 
「…!」 
 
 
 
先程まで己のものをねっとりとしゃぶっていたのと同じ口の動きとは思えないほど鋭く、 
吸い込む力も段階的に強くなってゆく。 
ガルムは反射的に彼女の顔を自身から剥がそうとしたが、奥底から押し寄せる波に 
体が動かない。 
喉の奥に届くほど激しく吸われ、彼はとうとうその奔流に屈服した。 
どくん!というひときわ大きい脈動と共に、アルミラの口中が彼の悦びで満たされる。 
「ん…っ」 
ごくん。 
アルミラは彼の感情を取り込むようにそれを飲み下した。 
「アルミラ…」 
彼女の唇に手を伸ばせば下唇を舐めているところで、彼の指がその舌に触れた。 
「吐き出してしまえばよかったものを…」 
彼女はその指を吸うように口に含むと、ちゅ、ちゅっと音を立ててねぶった。 
「っは…ん…ちゅ……飲みたかったから飲んだんだ、気にするな」 
こんな時さえ話し方は普段と変わらず、色めいた時間を過ごしているとはとても思えない。 
「ふ…、まだまだ元気だな…」 
彼の硬さを確認し呟くと、ずりずりと前進し彼の胸に寄りかかった。体重を預けガルムを 
跨ぐように座り直す。正面にいる彼の頬に軽く口付けた。 
「…ガルム、動くなよ」 
衣服を除けるとむき出しになっている右足の付け根から、弄ったわけでもないのに既に 
十分潤っている場所へと彼を招き入れた。 
「…んっ……っ…」 
「くっ…」 
アルミラの手が彼を支え、己のなかへと導いてゆく。 
ゆっくりと、粘液に溶けた内壁を押し開いていくその感触が、先刻とは違った悦びがこれ 
から来ることを彼に予感させた。 
 
 
 
彼女はそのまま彼の存在を確認するかのようにゆっくりと腰を落としていく。 
体内の彼がさらに力強くなっていることに、きっと気付いているだろう。 
「あ…っは、ぁ…じっと…してろ、よ」 
重ねてそう告げると、アルミラは彼の体を支えにゆっくりと体を動かし始めた。 
彼は緩急をつけて時にはきつく、あるいは優しくなる彼女の体に、徐々に二人の境界線 
が無くなってゆくような感覚を覚えた。 
隙間を埋める蜜が、彼女の動きに合わせて音を立てる。 
互いの吐息が耳に響きそれによってさらに一体感が増していく。 
「んっ……ふぁ……あぁ…っ」 
「アルミラ…」 
締め付けが良くても、焦らされても、全て彼女任せというのがもどかしい。 
彼は快感に流されそうになりながら、声をあげた。 
それは上で動いている彼女も同じようで、息つく合間にやっと声を出す。 
「ぁあ…ん、なんだ…っ」 
なんと艶かしい声か。 
普段との差が、ガルムのような男にすらもっと啼かせてみたいと思わせる。 
「いいかげん、好きにさせるのも…限界だ」 
「な、にっ?……!」 
そういうと繋がったまま彼女を抱えあげ、仰向けに押し倒した。 
「まてっ…ガル…っ…あっ…!」 
アルミラの腰を掴むとぐんぐんと奥に突いていく。 
彼女は自分で動いていたときとは違う部分を刺激され、たまらず喘ぎ声がもれた。 
「あっ、ガ…ぁ……ガ、ルム…っ……ぁあっ、話が、ちが…」 
「話?十分好きにした、だろう、くっ…」 
「や……ぁっ…ん…んんっ……あぁ…!」 
アルミラは苦情を言いながらも彼にしがみ付いていた。 
その間も浅く、深く口付けを交わすことを忘れない。 
 
 
 
二人の体はまるで対に作られたかのようにぴったりと重なり、悦びを高めあった。 
すでにアルミラは足を彼の背へと回している。 
彼女はガルムの動きがもたらす快感から逃れたい、逃れたくないという相反する二つの 
衝動にかられていた。 
彼の律動にそって言葉の形をなさない音が唇からもれる。突き上げを受けきつくなる 
彼女の体が彼を煽り、そしてその彼の反応が彼女をまた高みへと追い詰めていった。 
「…ぁっ、はぁっ……は…!!っああああっ……駄目…っ…!」 
彼女は体の芯がしびれたような感覚に腰が震え、それと同時に上で動いていたガルムも 
同じところへと達したのがわかった。 
アルミラを引き寄せ、僅かに腰を反らす。 
 
 
(駄目、だ…) 
彼女はとろりとした意識の中でぼんやり考えた。 
 
 
「おい…お前な」 
呼吸を整えると、なんだか剣呑な雰囲気を漂わせて彼女が下から話しかけてきた。 
彼女は我を忘れる程の快感に流されたかと思ったが、存外冷静だ。 
「ちゃんと人の話を聞いていたのか?私の好きにさせる約束だっただろう!」 
何故こんなことを怒るのかは分かっている。 
多分彼女はガルムに対して『自分が強引に行為にもっていった』という形をとりたいの 
だろう。彼に、自分の信念を貫けなかったという罪悪感を持たせないように。 
こんな時でさえそういう気遣いの出来る女だった。 
そうでなければ誰が相手をしても良いなどと思うだろう。 
彼は苦笑しつつ体を起こすとアルミラを抱き上げ、太腿の上に乗せ先ほどのように跨ら 
せた。 
ふん、と鼻を鳴らして彼女の首に手を掛ける。 
 
 
 
「俺は料理が好きだ」 
唐突な話に彼女の眉が上がる。 
「? 何だ、いきなり。そんなことは」 
「知っていると?なら分かるだろうが、料理好きは食べるのも好きなものだ。目の前に 
熟した果実が差し出されたのを」 
アルミラの服の襟元を緩め、肩をむき出しにする。 
「ただ見ているだけで済ますと思うか?」 
目が利かない分指先の感覚が鋭敏になっている。肩に触れると滑らかな肌は吸い付く 
ようで、彼の下半身に凝る欲望を刺激した。 
彼女の顎に指をかけ自分のほうを向かせると薄く開いた唇を舐めてやった。入り口で 
アルミラのそれとあたり、ねっとりと絡ませる。 
「っぁ…んん…ガルム…」 
「なんだ」 
「食べたい、か?私を」 
誘うようなその問いかけにガルムは答えなかった。 
アルミラの服をさらに肩から下げていき、袖を脱がせてゆく。 
 
この果実の熟れていることと言ったら触れただけで果汁が滴ってきそうなほどだ。 
そうっと丁寧に皮を剥いて、目が眩むような香りを楽しみ、差し出された全てを味わう 
べきだろう。 
 
「全部脱がせる気か?ん…ちゅっ…は、ぁ……面倒だろう、止せ…」 
話している途中にも彼が唇を求めてくるのは、話を聞く気が無いからだろうか。指先まで 
抜くと反対側の腕をとった。彼女の服を右脚からすっかり抜き左脚は膝までむき出しに 
すると、彼は初めてその大きな胸に手を伸ばした。 
 
 
 
最初は軽く触れるだけ、その量感を楽しんでいるようだったがだんだんと周りからその 
先端へと優しく撫で始める。 
「やっと構う気になったか。いつまで放って置かれるかと思ったぞ」 
彼はアルミラのからかいに噛み付くような口付けで答えた。 
髪を引くと彼女の顔を反らせ、そのまま唇から顎の先端、首筋と胸の谷間に向かって 
舌を滑らせてゆく。 
胸があまりに大きくて、顔が少しきつかった。 
感度は良いようで彼がもたらす少しの刺激にもぴく、と身動きする。その反応が可愛らし 
くて、ガルムは舌先で、指で存分に彼女を嬲った。 
「ぁ…っ、ん!お前、興味ないような顔をして、いて…ぁぁ…あっ!」 
「興味ないなどとは一言も言って、おらん…。それにこういった行為は互いに協力して 
行うべき事だ」 
片手はすでに細くくびれた腰へと回されやさしくその曲線を撫でている。武骨な指の 
かすかに背を、太腿をなぞってゆく感触が彼女の性感帯を増やしていく。そのまま 
花弁へと指を伸ばすとそこは蜜で溢れていて、彼の愛撫を歓迎しているかのようだった。 
それに応えて彼は指を進める。 
内壁を掻きまわし、擦るような動きにまたも向かい合っている体が揺れ、乳房が彼の 
鼻を撫でた。そのままそこをやさしく舐め、銜えるとその胸の先端がいよいよ硬くなる。 
秘所の手前の硬くなっている蕾を捏ねる様にしてやれば彼女は切なげな声をあげ、更に 
上半身をくねらせた。 
「ふ…良いのか?」 
「や、っあ…、そんなこと…聞くな……」 
深く口付け離せば唾液が彼女の唇から垂れる。 
体の中心をじっくりと責められて、口を閉ざすことも出来ないらしい。それでも何とか彼を 
抱きしめて動きをとめる。 
「さっきの仕返しか…?焦らしすぎ、だ…こんなこと、何処で憶えるんだ、まったく…… 
んっ、…あぁっ」 
「そうか?貴様の体はこうして欲しいと言っているぞ」 
彼女の力ない拘束を解き、言ったそばから指の動きを再開した。 
 
 
 
「んっ、あぁっ………ふぁ…」 
再びの絶頂を求めている彼女からもう苦情は出なかった。 
ガルムの指は暫く彼女の中を泳ぎ良いところを探っていたが、不意にアルミラの顔を 
引き寄せた。そしてその耳元に囁くように注文をだす。 
かかる吐息に彼女は身を震わせた。 
 
 
「もとの姿、に…戻ってやろうか…?」 
「…!…あぁぁっ…やっ…」 
後ろから幾度と無く貫かれ、アルミラは弓のように背を反らしていた。 
彼はその細腰に手を掛けさらに自身を突きこみ、彼女の中をかき回す。 
二人の繋がった部分からいやらしい水音が響いた。 
こんな体位には獣の姿こそ似つかわしい。 
締め付けがきつくなるのを感じては突く部分を少しずつずらしてゆく。 
一方、果て無き道の先が見えては遠ざかるような感覚に、彼女はもう限界を感じていた。 
「ぁあ……も…、も…だめ、ぁ…ん!…いか、せて……」 
それを聞いた彼は腰を掴んでいた手をその大きな胸へと回し、後ろからアルミラの上に 
覆いかぶさるようにする。 
「まだだ…、まだ、こらえて見せろ」 
胸と秘所とを刺激され、快感がいや増したようだ。ひときわ大きな嬌声が響いた。 
「ん…っ、あっ、は…ぁあん…!!」 
「小僧に聞こえるだろうが、大きな声を上げるな」 
口を塞ぐようにまわした手を、その艶やかな唇の中へと忍ばせる。太い指で舌に触れる 
と物欲しそうに絡ませてきた。 
快感に喘ぎながらも男の体を求めるアルミラは、普段の冷静な女とは別人のようだ。 
今の彼女はただ本能のままに喘ぐ、美しい獣。 
「ぁんっ!……ガ…ム、お前…」 
「いい香りがするぞ」 
彼女から立ち昇る、汗の匂いすらかぐわしく感じた。 
 
 
 
「くたくただな」 
「っん…、はぁ……はぁっ…さすがに、な…」 
アルミラはガルムの腕に抱かれて荒く呼吸を繰り返した。 
「そんな様子で神を倒したり出来るのか?」 
「やるしか、ないだろう…」 
必ず倒すなどと言い切らないのが彼女らしい。 
「ふ…少し休むがいい。このまま側に居よう」 
そういうとガルムは体をずらし、彼女の体を自分の胸に寄りかからせてやる。大きな 
胸もこういう時は邪魔そうだ。 
「暫くしたら起こしてやる。安心して眠れ」 
薄桃色の髪をそっと撫でてやるとだんだんと彼女の呼吸が落ち着いてくるのが分かった。 
アルミラは男の胸に顔を乗せたまま話しかける。 
細い指が彼の顎を撫でた。 
「ガルム…」 
「何だ?」 
「気持ち良かったぞ」 
指を追って唇が触れる。 
彼女の余りにもあけすけな物言いに、思わず笑いがもれた。 
「くっくっ…そうか。……気が済んだか?」 
「ああ、満足、だ…」 
 
言いたいことを言って意識を手放した彼女に、ガルムはそっとため息をついた。 
「やれやれ…。気を使うことだ」 
自分や小僧に比べ体力が無いのだ。性欲などにかまけてないで睡眠をとったほうが 
良かろうと思うが、彼女があれ程わがままを言うのだからそうもいかなかったのだろう。 
いつも冷静な彼女には極めて珍しい事だったので相手を勤めたが、相手の望むように 
するのはやはりくたびれる。 
こんな美しい体を抱けたのだから役得と言えば役得なのだろうが、素直に喜べない。 
呆れるほど融通の利かない自分に苦笑した。 
レオンが聞いたらさぞかし文句を言うだろう。 
そんなことを思いながら彼の意識もゆっくりと闇の中に落ちていった。 
 
 
〜おしまい〜 
 
 

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