薄く開いた唇から普段は聞けないような切なげな吐息がもれた。  
「ん……っ、どう……想像以上、だった……?」  
「そうだな……こうして触ってみると思った以上の大きさだし、弾力がある。……形もいいん  
だろうな。早く脱がしてぇ……が、まぁ、それはぼちぼち」  
アルミラの顎、正面からは見えない部分に赤く跡を残し、肌を味わいながらもう一度深く  
彼女の口中へと侵入する。  
「……っ、ん……ちゅ……」  
 
彼女の背後についていた手を離すと背中から布越しに腰を撫でてゆく。ずっと手を置いて  
いたくなるようなくびれだ。  
そのまま尻を下って大腿まで行くとようやくなめらかな肌に触れる。風呂を上がって大分経つ  
せいか、それとも冷え性と言っていたのと関係があるのか、そこはやはりひんやりとしていた。  
裾の下に手を潜り込ませ、下って来た丘を再び上る。と、彼の動きが止まった。  
唇を離すと眉をあげてアルミラを見る。  
「何を驚いている?」  
「や、なんもはいてねぇからよ……驚くだろ、普通!」  
「必要ないと言ったろうに。人の話を聞いてない奴だ」  
「誰がそこまで想像するよ……」  
「そう言われれば、そうか」  
苦笑するアルミラに彼は頭を振った。  
まったく徹底している。  
約束した通り彼を受け入れるのに、余計なものは最初から身に着けていなかったのだ。  
「効率的だろう?」  
「ばっか……効果的、の間違いじゃねえのか?」  
彼女の無意識の挑発に鼻の頭をがぶりと噛んで正す。  
脱がせる楽しみがないと言えばそれまでだが、推奨すると先に述べたようにそんなことは  
問題にならないほど、その服装は彼の欲望を煽った。  
 
桃の形をした肌の上で指先が円を描くように動く。わずかに身動きするのを今度は大きな手で  
こねまわした。指が食い込むほど握りしめる。ひんやりした肌の下から伝わる彼女の体温が  
心地よくてレオンは目を瞑った。  
耳朶を舐め、首筋に跡を残しながら丸く開いた胸元へ舌を這わせてゆく。  
布の上からも胸の先端がつんと上を向いているのが分かり、そこをそっと唇で挟んだ。  
「――!」  
胸へのやわやわとした刺激に、そのたび彼女は肩を震わせた。  
立ち上がった部分を舌先で弾くようにされ、大きく体が揺れる。  
レオンの肩に置いた手に力が入った。  
「……っは……お前、大きい胸が好きなのか?」  
「あぁ、まあな。けど好きな女だったら巨乳だろうが無乳だろうが構わねえよ。大事なのは  
中身だ……そうだろ?」  
「ン……ぁ……」  
薄い唇から声をもらし、彼女は完全にレオンに身を委ねていた。  
尖ったところに歯を立てられて肩を縮こまらせる。  
 
大木に寄りかかっていた体を引き寄せ、また押しつける。  
自分に対して背を向くよう彼女の体を返すとうなじに唇を押しつけた。ちゅ、と音をたてて  
少しずつ下へと降りてゆく。  
後ろから服をたくし上げるように手を滑り込ませ、抱えるように胸を掴むとその尖ったところ  
まで遠慮なく愛撫していった。  
「ぁあ、……ん」  
体の中心を指がなぞれば感触がくすぐったいのか腰を突き出すようにしてくる。  
レオンは手を下へと滑らせたがまっすぐ降りてゆくようなことはせず、焦らすようにそこを  
よけて内腿へと手を伸ばした。  
吸いつくような肌の感触も、彼の手に対する反応も最上級だ。  
跪いて臀部に口付けながら目の前にある彼女の秘所へ指を這わせた。  
初めは入口の感触を確かめるように動かすだけだったが、思いのほか溢れているのに遠慮なく  
さらに深くと指を沈めた。  
 
「……ん……っ」  
しっかりと濡れていて、指を増やしても動かすのに支障はない。  
左脚に手をまわして抑えると右脚は開かせるように向こうへ押した。  
広くなった局部へはさらに小さくほころんだ蕾にも刺激を与える。  
反射的にだろうレオンの手を止めようとするが、その快感に抗えず、彼女はただ小さく声を  
上げるばかりだった。  
 
「――!やっ、あ!あぁ……ん……」  
白い丘の上を谷に沿って舌が下がってゆく。  
後ろの門を舌先でくすぐるようにされて、アルミラは思わず腰をくねらせた。  
「そんなとこ……、や、だめ……やぁ、あっ……止せ、レオッ……」  
気持ち良さそうに喘ぎながらの言葉になど従うわけもなく、レオンはなおも舌を動かした。  
普段の彼からは想像もつかないような繊細な手の動きがアルミラを翻弄し、体の芯を貫く  
ような甘やかな感覚に、小さく開いた唇からは言葉にならない声がもれた。  
それに力を得たのかさらにレオンの手が彼女の中をかき回す。  
「ふぁ……あぁああ――!」  
正面の木に力なく寄りかかったまま、アルミラは体を引きつらせた。  
 
レオンは彼女の反応に満足してにやりと口元を上げた。  
立ち上がると、後ろから手を回して釦を下から一つずつ外してゆく。  
まだ息を弾ませているアルミラの首筋に吸いついて、肩の方へと口付けを繰り返しながら服を  
下へ落とした。  
胸と一度達してくっしょりとなった場所へ再び手を伸ばす。  
彼女の特徴である豊かな胸は後ろから揉むといよいよその大きさに驚かされる。だがとても  
敏感で爪の先で先端をつ、となぞるだけでも背中がぴんと伸びた。  
「や……あっ……ぁ」  
引っ張ったり擦るようにしてやるとその感覚に逃げ場が欲しくなるのか、レオンの手から  
逃げるようにつま先立ちになった。  
 
下へ向かった手は柔らかな毛の流れを撫でている。  
中をかき回しながら小さな突起にも刺激を与えてやる。とアルミラは後ろ手にレオンの  
下腹へと手を伸ばしてきた。  
される一方ではないということらしい。  
服の上から撫でるとそこはすでに彼女を欲しがっているのが分かり、アルミラはその先と  
分かるところを指で扱くように触れた。  
「おい、いいんだぞ?」  
「何が……?」  
アルミラの背中から顔を上げずに答える。  
「適当にしたら入れても」  
「なんだって?」  
「それとも……口でしてやろうか?お前、が……んんっ……気持ち良くなれば、いいんだから」  
「馬鹿言え。てめぇ一人だけいい気持になってどうすんだよ。大体俺は……っていうか男って  
もんはな、女が気持ちよさそうな顔してるとますますやる気が出るもんなんだよ。だから  
黙ってな」  
大きな手も唇も彼女から一瞬たりとも離したくないのか、肌という肌を撫でまわす。  
意外な物覚えの良さを発揮して、敏感に反応した部分を重点的にせめた。  
 
「……っ……レオン」  
「なんだよ」  
「お前……、もしかして焦らしてるんじゃ、ないのか?」  
後ろを振り返っての台詞に彼は面白そうな顔をした。  
「なんでそんなことを聞く。焦らされてると思ったか?」  
「嬉しそうに……。もう十分……だろう」  
「適当にしていいんだろ?」  
からかうような口ぶりに彼の意図を察して不満をもらした。  
「私の口から……っ、ふぁ……言わせたい、のか?ひどい男だ」  
「なんとでも。――どうして欲しい?言ってみろよ」  
     
「あ、あぁっ!駄目、だめ……」  
途端体内にあるレオンの手が激しく中をかき回した。  
彼女は堪らず手をついた部分を掴もうとするが木肌は滑らかで堅く、爪を立てることも  
ままならなかった。  
何となく温かさを伝える大木にただ寄りかかる。  
「やぁっ……ば、かっ」  
「どうして欲しいんだ?」  
向こうから顎を捕まえて深く口付ける。  
唇が暗闇にも赤く濡れて美しかった。  
 
「お前の口から聞きてえんだ」  
いつもなら素直な反応を返すばかりでないアルミラも、この時はあっさりと彼の求めに応じた。  
既に彼女には上手く切り返す余裕がなかった。  
「レオン、のが……欲しい……ぁあっ!焦らすな……」  
声も切れ切れにせがまれ、ずっと秘所をまさぐっていた手が大腿へ動きアルミラの腰を引き  
つけた。  
自分に対していよいよ突き出すようにさせると、下ばきを緩めて滾ったものを濡れた部分に  
あてがう。  
薄く開いた唇から小さく声がもれた。  
「それがなんにせよ、誰かに求められるっていうのはいい気分だ。……普段こっちばっかり  
欲しがっているならなおさらな」  
「え――?」  
思わず彼に視線を向けた瞬間自身を押し開いてくる剛直に、アルミラは木についた手を握り  
しめた。  
「ぁ……!」  
「逃げんな……っ」  
口では求めながらもレオンのものから体を引くのに、しっかりと細い腰を掴んで自身を沈めて  
ゆく。  
隙間がなくなるほどに密着させればなるほどすでに限界が近かったらしく、アルミラの体は  
自分を突き刺す男を心地よい温度と圧倒的な快感で持って締め付けてきた。  
それこそ余裕がなくなってしまいそうで、彼は己をごまかすように腰を動かした。  
動けば動いただけ貫いている女の口から喘ぎが漏れる。なおも逃げようとする体を後ろから  
大木に押し付けて何度も突き上げた。  
ちょうどいい位置にきた胸をつぶれるほどに捏ねたが、感動的な弾力を持つそれは彼の手を  
難なくはね返した。  
 
二つの性感帯を刺激され、あらかじめ昂ぶらされていたこともあって、彼女はそれから時間を  
置かずに高みへ昇りつめた。  
「あっ、ぁあぁ……は……!んっ――」  
脳髄を焼くような感覚に脚ががくがくと震える。  
レオンが掴まえていなかったら崩れ落ちてしまっていただろう。  
彼は彼でアルミラが自分との行為で達したことに改めて満足した。  
挿入しただけでも良くなってしまいそうな彼女の体とは、自分は相性がいいのかもしれない。  
頭の片隅でそんなことを考えながらもレオンの体はすでに本能によって動かされていた。  
くたくたになった彼女を抱えるようにしてさらに抽迭を繰り返す。  
ぬるぬると擦れ合う感覚によって彼女のなかをいよいよ圧迫し、新たな反応を誘った。  
達した直後の締め付けにやっと耐えればまたも自分を追い上げてくる彼女の体に、レオンは  
ぐっと息を詰めえる。  
アルミラを貫きその先端から迸るものが、彼女の体内を熱く、熱く濡らした。  
 
「っくそ……!」  
ずる、と彼女と繋がっていたものを引き抜くと、アルミラの肩を掴んで振り向かせた。  
地面に落ちていた服を拾って彼女に放ってやる。  
余韻も何もないレオンの行動に彼女は目を丸くした。  
 
「なんだ……気が済んだのか?」  
少し傷ついたような表情と声に彼は気付いたかどうか。  
 
「済むわけねえだろ!?ちくしょう……」  
何故か悪態をつきながら衣服を整え、さらにはアルミラが服の釦を閉めるのにまで手を出して  
くる。  
「さっさと着ろ、戻るぞ」  
「戻る?」  
 
反射的に問い返した。  
自然訝しそうな顔になる。  
フィールの家のどの入口も、窓すら鍵が掛って出入りは出来ないと言ったはずだ。そう彼女の  
目が言っている。  
それに薄桃色の髪をぽんぽんとやさしく叩くと、行動とは裏腹に忌々しそうな顔になった。  
「いいから!外でするなんざ、やっぱり落ち着かねえんだよ!――刺激的ではあるがな」  
彼女を抱きしめてついばむように口付ける。  
 
「戻ろうぜ。部屋で――たっぷり愛してやる」  
 
青い月の光に彼の表情が映る。  
自分に向けられた眼差しにその台詞が嘘偽りのないものだと分かり、アルミラは彼に対して  
初めて緊張した。  
 
 
 
窓を叩く音に気がついたのはどれほど経ってからだろうか。  
夢から覚めて、はっきりと物音を認識する。  
「……」  
フィールは一瞬青ざめた。  
幽霊の存在はテオロギアの中で確認していたし、昔から『いるのかな、いたら嫌だな、でも  
いるんだろうな』と内心苦手に思っていたのだ。  
等間隔にこつん、こつんと叩かれる窓のそばに寄る。  
開けるべきか、開けざるべきか。  
カーテンに手をかけしばし悩んだが、ちらりと人影が映ったのに思い切って、窓の外へ目を  
やった。  
 
「レ、レオン!?」  
 
思わず大声をあげたのを窓の向こうからレオンとアルミラが身振りで静かにしろと言っている。  
慌てて鍵を外すと半ば責めるように尋ねた。  
 
「二人とも一体外で何をやってるんだい!?こんな夜中に!」  
「おう、ちょっと月見をよ……ほら見ろよ、ボウズ。いい月夜だろ」  
その言葉に誘われて思わず空を見上げる。  
「あ、本当だ……綺麗だね」  
「フィール、寝ていたところを済まないが、玄関の鍵を開けてくれないか?」  
「そうだ、ちょっと待って。向こうに回るよ」  
いったん部屋の窓を閉めて玄関先に回る。金属音は響くのでドロシーが目を覚まさないように  
そっと扉を開いた。  
「悪りいな」  
「それはいいけど……どうやって出ていったの?玄関の鍵も持ってないのに」  
「それは秘密だ。でもちゃんと戸締まりはしていったから安心しろ」  
「ま、そのせいで部屋に戻れなくなっちまったんだけどな」  
レオンは肩をすくめる。  
だが冗談めかした仕草にもフィールはごまかされなかった。  
自分の家に起居する者に責任を感じているのかもしれない。  
「夜出歩くなんて危ないよ。二人でもさ」  
「心配すんなって。今度は大人しく寝るから」  
レオンはいつものように余裕のある笑みを浮かべ、アルミラはその隣でやれやれという顔を  
していた。  
     
「あ……んンッ……」  
 
寝台の上で二つの影が揺れては重なり合った。  
白い肌、大きな胸と意外なほどの可愛らしさを主張する先端へ、レオンは思うままに舌を  
這わせる。  
同じように挟み、捏ねるような動きでも、指先でされるのと唇を使ってされるのではまた  
違った刺激があって、しかしどちらも甘美で意地悪なものだった。  
もっともっととアルミラの心を女にしてゆく。  
 
「まったく、大人しく寝るが聞いて、呆れる……!」  
「さっきまでに比べりゃ大人しいだろ?外を出歩いているわけでもないし、ちゃんと寝てる」  
『寝る』という言葉の解釈にフィールとレオンは大分隔たりがあると思ったが、彼女は口に  
出さなかった。  
下半身に伸びてきた手に言葉にならなかった、というのが正しいだろう。  
「あっ、あっ、あ……んんっ!」  
「すげえとろとろになってるぜ……ホント感じやすいんだな」  
途端にレオンの背を鋭い痛みが走った。  
「ぃてえっ!」  
アルミラの手が引っ掻いたのだ。それも両手で。  
「そう言うこと、は……言わないで、っ……もらいたい」  
「悪りいな」  
くっくっと笑いながらその場所に硬くなった自身をゆっくりと押し込んでゆく。  
細い腕でぎゅうと抱きしめられるのがこの上なく嬉しかった。面映ゆいから口に出したりは  
しなかったが。  
喜びが余程顔に出ていたらしい。下から艶めかしい喘ぎに交じって指摘を受けた。  
「ぁ……お前こそ……よほど嬉しそうだぞ――っ、ん」  
「そりゃあな、アルミラをこうやって抱ける日がくるとは実際考えてなかった……にやけも  
するぜ」  
「お願いする先がある程度の年頃の女なら、誰でも良かったんだろう?」  
動きを止めた男に今度はアルミラも落ち着いた言葉を返す。  
 
相手としてはありなだけで、ほかに候補がいればあえて自分を選ぶとは思っていなかった。  
そんな考えが彼女の口をついて出た。レオンとのやり取りに、彼女の中で引っかかるものが  
あったのだろう。  
だがそれは言い出した側が言うべきことではなかったと、アルミラはすぐに己の失言を悟った。  
「……済まない、今の言葉は忘れてくれ」  
上にいる男が首を横に振った。  
怒っているわけではないらしい。  
「だから……そりゃあ誤解だ。俺は遊びでこういうことはしねえ。ある程度の感情がなきゃな」  
そこで言葉を区切ると彼女の口中を探るように口付けをしてきた。  
舌の付け根に届くほど、深く入り込んでゆく。  
「ん……ちゅっ……少なくともお前くらい大事でなきゃ……」  
 
包むように揉んでいた胸が大きく揺れるのを感じ、彼は顔をあげた。  
「どうしたよ、んな顔して」  
彼女の顔はほんのりと染まっていた。  
行為に上気しているというのとはまた違って、まるで感情を隠すことを知らない少女のような。  
そんな印象を持ったのは彼女の表情のせいだ。  
驚いたような目で彼を見ている。  
「お前……もしかして口説いてるのか?」  
面白い台詞に彼は額へと唇を落とした。  
「まったく、そういうことを直に言ってくるところがらしいよな。順序が逆だと思うが、まあ  
そういうこった」  
逆、というのは告白が行為と前後したことについてだろう。  
くったくのない笑顔で、もしかしてからかっているのかとさえ思えるような迷いのなさだ。  
「……」  
「なんとか言ったらどうだ」  
口ではそう言ったが、彼はすぐに答えを聞くつもりはないのだろう。  
     
掌の中で硬くなった部分を口に含むと舌先で転がす。  
「ん……ンっ、だって……お前っ」  
張った腰から尻へも手を伸ばした。  
「いつから……」  
「さてなあ、俺もちょっと憶えてねえ」  
胸元で呟く彼と目が合ってアルミラは戸惑った。  
いつものように伝法な口調で話している彼は今までに見たことのないような――真面目で  
誠実な――顔をしていたからだ。  
それが寄って来たかと思うと頬へ、鼻へと口付けられる。  
眼帯の上にも。  
「いつか、これの理由を聞いてみたいと思ってた」  
再び両手が彼女の胸の先端を嬲る。  
「ぁ……ぁああっ、興味……ないのかと」  
「少年少女みたいな甘ったるいやりとりは苦手なんだ。それにあんまり突っ込んだこと聞く  
のもな」  
誰にだって言いたくない過去はあるもの。話してくれれば嬉しいが、だからと言って強引に  
聞こうとは思っていなかった。  
 
アルミラは長い脚を彼の腰へとやった。後ろで交差させるとひと息に締め付ける。  
「うぉっ……!何すんだよ」  
「お前、人の話を聞いてるのか?」  
「んだよ、ちゃんと聞いてるぜ、お前の話は。……だいたい俺がどうとか言うけどよ、お前の  
方はどう思って――」  
はっとレオンは迂闊な発言に口を閉じた。  
こんな女々しいことを言うつもりはなかったのだろう。  
小さく舌打ちするとこれ以上余計な発言をしないよう、再び豊かな乳房に舌を這わせた。  
 
「レオン」  
「だから……何だって」  
みっともない自分に苛立ちを覚えぶっきらぼうに答える。  
「好きだぞ?」  
彼は目を丸くした。  
丸い半球から顔を上げる。  
「甘いものが大好きだと以前話しただろうに」  
甘ったるいやりとり、という言葉にかけての発言らしい。  
レオンは彼女の胸の上に突っ伏し肩を震わせて笑っている。いつものように大笑いしないのは  
彼なりに状況を考えてのことだろう。  
だが必死に堪える様子がアルミラのお気に召さなかったようだ。  
「くすぐったいな……おい、人が真面目に言ってるのに、なんだその態度は」  
胸元にかかる彼の前髪をよけるように、かきあげながら額を押して自分へと向かせる。  
 
「……っくく、そりゃこっちの台詞だ……。まったくよ、愛だの恋だの関係ねえって顔して  
るくせに、いきなりそういうことを言いやがる。まったくビックリ箱みてーな女だよ、お前は。  
大体なんで疑問文なんだ……こういう時ぐらい言い切ってくれよ……」  
そう言ってなおもひぃひぃと笑っている。  
「愛の告白をした女性に向かってなんだ、その態度は。失礼だと思わないのか?」  
「いや、悪かった」  
強引に彼女の脚を開かせ拘束から抜け出すと自身の顔をアルミラの真上へともってゆく。  
「言わなくても分かるだろ、っていうのは甘えかね?」  
「あぁ。そういう事を言う男は女に逃げられる」  
彼はその台詞に肩をすくめた。脅されてると思ったのかもしれない。  
「伝えたい気持ちがあるなら口に出して形にしないとな」  
「いいぜ」  
アルミラの腰をしっかりと抱え、繋がったままの部分へさらに腰を押しつける。  
「……ぁん……」  
「何回でも百万回でも言ってやる」  
一度自身をぎりぎりまで引き抜くと再び彼女の中心に突き立てた。  
「あぁっ……!」  
     
「愛してるぜ」  
顔を反らし喘ぐ女の喉に噛みつくように口付けをする。  
下の方からは中をかき回す動きにぐちゅぐちゅと音が聞こえた。  
「愛してる」  
「あっ、あぁ……!レオン、レオン……レオ……ッ!」  
「あんまり呼ぶな、我慢出来なく……なっちまうだろ……」  
 
切なげに自分の名を呼ぶ声に自然、レオンの動きは勢いを増した。  
抽迭を繰り返しても弱まることのない圧迫感。かさばった先端の形にぴったりとなじむ膣内は  
彼の出し入れに快感を得、そして与えるためだけにくっしょりと濡れて温かく締め付けた。  
アルミラが男にしがみつく。  
ややあってその手から力が抜けるのが分かった。  
「や、っぁ……あぁ――」  
直後にアルミラの体が大きくのけ反り、それを追うようにレオンも絶頂を迎えた。  
 
しばらく抱き合ったままじっとしていたが、レオンがアルミラの肩口に顔を埋めたまま変な  
声を上げた。  
「ふえー……」  
「レオン?」  
訝しむ彼女に顔だけ向ける。  
「マジ気持ち良かった……なんだこれ……」  
余程気持ち良かったのだろう、力ない笑顔だ。  
アルミラの横顔に口付けると彼女からも同じものが返ってきた。  
「何よりだ。私も――非常に気持ち良かったぞ」  
非常に、とはまた堅苦しい表現だが、特に言うほど彼女にとってもレオンとの行為は快感  
だったのだろう。  
 
彼女の中から出て隣に寝転ぶと仰向けになり腕で顔を隠すようにした。  
「あーもう……」  
レオンはまだ肩で息をしている。  
「OZだった頃にお前と関係持たなくて、ほんっとーに良かったぜ」  
「何故」  
当然の質問にアルミラを優しく睨むと次いで困ったように笑った。  
「もしあの頃お前としてたらな。絶対に任務を疎かにしてた自信がある」  
「仮定でも私のせいにされるのは気に入らないが……相性がいいってことかも知れんな」  
「色気のねえ台詞だ」  
レオンは吹き出した。  
 
細い指が男の上半身に触れる。  
「きれいな体だ」  
彼はさて、と首を反らした。  
斜めに彼女を見やる。  
そっと触れる指先に、レオンは照れを隠すように言い返した。  
「きれいとはとてもじゃないが言えねえよ。でかい傷がある」  
「傷……?勲章だろう、これは」  
上からつ、と横に走る傷痕をまたいで指を下ろしてゆく。へその下で動きを止めるとそのまま  
脇腹を撫でるように手をまわした。  
「良く鍛えられてる」  
「まぁ、体を使う仕事だったからな。ヴィティスもカインもこんなもんだったし、ガルム  
なんかはもっとすごいぜ」  
「こんな時にほかの男を引き合いに出すか?さっきはぶつくさ言っていたくせに」  
彼女は半ば呆れながらそっと厚い胸板に寄り添った。  
ほんの少し顔をあげ、目の前にあるレオンの顎に軽く口付ける。  
 
「生き物と言うのは結局こういうものなのかも知れないな……」  
「うん?」  
「命がけの行為の後にはこうして誰かにそばにいて欲しくなる。温もりが――欲しくなるんだ。  
それだけが生きている証しというわけでもないのに」  
 
静かに話す彼女に、その長い髪を撫でながらレオンが口を開いた。  
「即物的って言いたいのか?……でもそれは気持ちが欲しがるってことなんだろ?俺はいいと  
思うぜ。たとえそれが本能から来るものでもよ。ま、合意の上ならって話だが」  
「そうだな」  
 
レオンの胸の上に向き合うようにのりあげるとアルミラは小さく首を傾げた。  
「お前はどうなんだ?合意と言うが、私にあんな誘いをかけられてすぐ納得したのか?」  
「おいおい、ああいうことを言わせた挙句それを聞くか……?いつもうるさく言うくせに、  
本当に人の話を聞いてたのかねえ……」  
あんまりな質問にしかめっ面になる。  
本当は笑いだしそうになるのをごまかすためだ。  
「だからよ、まず気持ちがあってだな……言っとくけどお前が好きだっつう話だぞ?すると  
やっぱり相手の全部が欲しくなるだろ」  
「ああ」  
「そりゃ俺にだって見栄を張りたいって気持ちがある。最初はお前の話にほいほいのるのも  
みっともないと思ったんだが……」  
アルミラが意外だとでもいうように眉をあげた。  
それに彼は肩をすくめると天井を見上げたままその時の心境を語った。  
 
少し視線を下げるアルミラの顔がそこにある。  
OZでいた頃も、降格されてからの十五年という短くない日々も、彼女との距離をここまで  
縮められる日が来るとは思っていなかった。来るとしてもそれは果てしなく、永遠のように  
遠いだろうと思っていた。  
 
遅ればせながらじんわりと湧きあがってくる感動にレオンはしみじみと上にいる女の顔を  
眺めた。  
彼女はじっと自分を見つめて次の言葉を待っている。  
「神の野郎共の支配も解けたし、お前のことを無理に頭から締め出す必要もなくなったからな。  
つまり何が言いたいのかってえと……無駄に機会を逃す手もねえかと思い直したんだ。体の  
関係を持っちまえば多少は心も動くかも、とかな。下心満載だと我ながら思うが――そこに  
つけ込んでみようと思った」  
「……普通そういうことは黙っているものだと思うぞ?」  
レオンらしいあけすけさに思わず笑いをもらす。  
「さて――」  
「ん?」  
「明日から……ってもう今日だがこれからどうする?」  
「とりあえず今日一日くらいは休んでもいいんじゃねえか?人のせいにする気はねえが、  
ここんとこ俺達随分頑張ってただろ?……当分ここに世話になりたいとは思っているが」  
「フィール達は反対しないだろうな。村の復興を助けたいんだろう?」  
「お見通しか。まあ俺の気が済むってだけだが、ちったあ役に立つかと思ってよ。ただ……」  
「怪しまれるだろうな、やはり」  
村人に、だ。  
「だろ?ボウズになんて言ってもらえばいいのか見当がつかねえ」  
「正直に言ってもいいのではないか?幸いこの村では一人の死者も出していないし。私も  
装甲化した姿しか見られていないからその辺は誤魔化しようがあると思う」  
「実はガキどもに期待してるんだが……」  
「私も考えた。テオロギアを攻略している途中、何度も顔を合わせた子もいるし、口添えが  
期待できるんではないかと」  
寝台で肘をつき考え込んでいたが、不意にレオンが耳に噛みついてきた。  
 
「おい……止せ。もう朝だぞ」  
「いいだろ、まだ起きるにゃ早ええ」  
窓の外を見ると薄い布越しの景色は漆黒から藍色へと移行し、木々の輪郭をぼんやりと浮かび  
上がらせていた。  
「確かに早い……がフィールはもう起きている」  
早朝のため二人に気を遣っているのだろう。遠慮がちな物音が廊下の方から聞こえてきていた。  
ほら、と言いながらアルミラがレオンの上から起き上がる。  
「我々がいつまでも寝ているわけにはいくまい」  
     
「寝てるったって俺達一睡もしてねえじゃねえか。俺はいいけどよ。お前、体大丈夫か?」  
「お前な……そういう気遣いをするならなお疲れるようなことに誘うんじゃない」  
当然の抗議にレオンが苦笑いした。  
「あー……確かに」  
そういった折りも折り、控え目に扉を叩く音がした。  
思わず二人が動きを止め耳をそばだてる。  
 
「んー、まだやっぱり早いかな」  
「二人とも疲れてるだろうし、起きてくるまでそっとしておいてあげようよ」  
「でも目が覚めて誰もいなかったらきっとびっくりするよ」  
「とりあえず書置きしておこうか」  
「分かるかなあ。ね、お兄ちゃん。カテナの人って私たちと同じ字を使うの?」  
「うーん、それは分からないけど……話してて通じるし、大丈夫じゃないかな」  
 
そんな会話が漏れ聞こえてきて室内の二人は目を見合わせた。  
外の声と足音が遠ざかっていったのを確認してから口を開く。  
「昨夜休むのが早かったとはいえ、さすがに若いな。連日動き回っていたのは我々も一緒だと  
いうのに」  
 
村の人々もフィールがテオロギアまで行って子供達を助けたことを知っている。しばらく  
休んでいても何も言わないだろうに、本人が村のために働きたいのだろう。  
満身創痍にもかかわらず気力が充実しているのか、こんな朝早くからあちこちの片付けに行く  
らしい。  
 
疲れを訴えるアルミラにレオンが労わりの言葉をかけた。  
「そんなにだるいのか?もう少し休んでろよ」  
自分は平気らしいレオンの台詞に彼女は枕へ突っ伏した。  
ちらと彼を横目で見ながら責めるともなく呟く。  
「原因の半分はお前だぞ」  
「あぁ――?マジかよ」  
「あのな!お前、自分がどれだけ――」  
隣の男を指差し文句を言おうとしたが、その内容に羞恥をおぼえたらしく口をつぐんでしまう。  
そんな彼女にレオンは面白そうに問いかけた。  
「どれだけ……なんだって?」  
「なんでもない。……にやにやするな、気色悪い!」  
「にやにやするようなことを言うお前が悪いんだろ?……まったく殺されるね、お前の台詞に」  
彼はアルミラの薄い肩を掴み向こうへ押し倒すと、その上に体重をかけないようのりあがった。  
「折角だ。足腰を完全に立たなくしてやる。だから今日一日、ゆっくり休んでな」  
耳元に囁きながら、アルミラの耳朶にちゅ、と唇を落とした。  
レオンの顔が首筋へと動いてゆくと頭の上でため息が聞こえる。  
「ものは言いようだな」  
「だろ?」  
彼女の嘆息に悪戯っぽく笑うと、二人は視線と口付けを交わした――深く、深く。  
「ふ……っん、はぁ……でも……誘惑されるのは嫌いじゃない」  
「相手は誰でもいいなんて言うなよ?」  
片目を閉じてみせる男にアルミラはもう一度ため息をついた。  
する、とレオンの背に腕を回し引き寄せる。  
 
「お前は本当に馬鹿ばかり言う……」  
 
 
 
  〜おしまい〜  
 
 

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル