一日のくりかえし。
たとえばそれは、
メビウスの輪のようでもあるし、
三界六道の輪廻のようでもあるし、
アルバースの"構造的構成"のようでもある―――
*
「ん……はぁ…」
熱を帯びた、甘美な吐息が漏れる。
―――締め切った部屋。
真っ暗な部屋の中で、枕元のスタンドライトだけが私達の肢体をぼんやりと照らす。
そんな環境下、加えて真夏であるにも関わらず、クーラーは付けていない。
だけど―――40℃近い室内でも、首元にははっきりと、姉さんの熱い吐息を感じる。
「あ…っ」
吐息の熱さが、舌の、より直接的な、ねっとりとした熱さに取って代わる。
姉さんの舌はそのまま、首元から鎖骨へ、鎖骨から胸の谷間へ。
そこで十分に焦らしてから、舌を左の乳房に蛞蝓のようにゆっくりと這わせ、右手で右の乳房を包み込むように、優しく揉みしだく。
「んぁ…んッ……は……」
身体の芯から溶けてしまいそうな、丹念な愛撫。
ロースピードではあるけど、私の官能は徐々に、確実に高まっていく。
夢見心地で快感に浸っている内に、舌はお腹を伝って臍へ。
そのまま窪みを舐め回すと同時に、姉さんは右胸に残しておいた右手で、乳房の先端をキュッと軽く摘み上げた。
「ひゃぁん!」
突然の不意打ちに、思わず大きな声が出てしまう。
すると姉さんは気を良くしたのか、顔を上げて―――勿論、右手での愛撫は絶やさない―――にっこりと微笑んだ。
「……麻里亜ちゃん、かわいい」
天使のような笑み。
我が姉ながら、つい見惚れてしまう。
「もっと…声出して……聞かせて…ね?」
だけど、見惚れている暇なんてある訳がない。
姉さんはそう言うと、舌を私の秘所に這わせ、強く啜り上げた。
「んッ!?…あぁんっ!」
ビクン、と跳ね上がる身体。
姉さんは上目使いで私を見上げると、そのまま舐め回し、啜り上げ、を繰り返した。
「ひゃん!あっ!んぁ、んんっ!」
ぬめりとした姉さんの舌。
絶えず動き回る姉さんの手。
姉さんの、体温。
姉さん、の―――
「―――ッ!」
今日の私は少しばかり、アグレッシヴであるようだ。
私は衝動に駆られて姉さんの肩を掴むと、そのまま上下を入れ換えるようにして、ベッドに姉さんを押し倒した。
「…!?……麻里―――んッ!?」
言葉なんて、いらない。
私はそう云わんばかりに、間髪入れずに自分のそれで姉さんの唇を塞ぐ。
そしてまた同じ様に、自分のそれを姉さんの秘所に宛い、擦り付けるように、激しく、前後運動を繰り返した。
「は、あ、あっ、んっ!あ、ま、りあ、ちゃん、んんぁっ!」
私を呼ぶ姉さんの声。
姉さんの、温もり。
欲しい。
―――ぜんぶが、ほしい。
私は姉さんを抱き締め、動きのストロークを早める。
「あっ!は、ぁ、っん!あっ!はっ、あん!ん…わ、たし、あっ!はっ、も、う…イッ、んっ!あ、ぁっ!ぁあんっ!」
「はっ、は…姉さん、わ、たしも…もう…!…ね?…いっ、しょに、い、こう…?」
もう何も考えられない。
頭にあるのは、
「ねえさんがすき」
それだけ。
それだけだった。
*
「……ねぇ、麻里亜ちゃん」
スタンドの明かりすらも消えた、真っ暗な部屋の中。
私と姉さんは、汗でびっしょり濡れた身体をベッドに横たえていた。
「………なに?」
繰り返すが、部屋は完全な暗闇である。
私達の声以外には何の物音もしないし、すぐ隣に居る姉さんの顔も見えない。
「…………おやすみ、なさい」
数秒の沈黙の後、姉さんは静かに言った。
何の衒いも、穢れも、棘も無い、完璧なまでに安らかな声で。
明日になったらまた、
学校へ行って、
授業を受けて、
部活をやって。
家に帰ったら、
姉さんとテレビを見て、
姉さんとご飯を食べて、
姉さんとお風呂に入って、
そしてまた、お互いを求め合い、
最後にこうして、泥の様に眠る。
今日も、明日も、これからもずっと。
人生は、一日の繋がりなのだから。
「……おやすみなさい」
私は出来るだけ自然に、自らの、私達の一日の終わりを告げた。
「明日」という名の、「今日」に向けて。
*
一日のくりかえし。
たとえば、それは―――