「んで続きなんだけど……。さっきの小学生は逃げちゃうし」  
「じゃあこのどどめピンク色のキャンディーは何かなぁ」  
「どどめ……今じゃあまり使わない言葉だねってそんな色のキャンディーあったか?」  
「ぱく……ほやや?なんだか身体が熱く――」  
「はーい、OKでーす!」  
 ベッキー研究室改め演劇部映研合同作品撮影スタジオでは妖精姿のベッキーが縄で釣り上げられていた。  
麻生真尋監督のカットで麻里亜と柚子が滑車経由の縄を緩め、もう一人の役者である鈴音がベッキーを支えて下におろす。  
「麻生先生、まだ途中ですよ。っていつまでこっちに来てるんですか! 麻生もなんとか言ってくれ」  
「だって先生ちゃんと小学校終わってから来てるもん。ね、麻里亜ちゃん」  
「そうですよ〜。お姉ちゃんに来てもらって助かってるんですから」  
「そういう問題じゃなくて……来るたびに高校の制服を着てくるのもどうかと思うぞ……」  
「ところで白鳥さん、今のアドリブでしょ? アドリブはいいと思うけど宮本さんが簡単に返せそうなものにしたほうがいいと思うの」  
「ほーい」  
 ベッキーの頭にポンポンと手を置いて鈴音はキャンディーを舌の上で転がした。  
「白鳥、頭を撫でるのやめなって」  
「えーだって丁度いい位置にあるんだもん。触り心地もいいし。  
大丈夫だよ乙女の時みたいに背が伸びなくなるツボは押してないから。うりうり〜」  
「余計やめろ!」  
 にははと鈴音は笑って手から逃げようとするベッキーを執拗に追いかけ頭を撫で続けた。  
 
 今日の分の撮影は終わり、ベッキーは研究室に一人残っていた。  
さっきまでの喧噪はすでに遠く、痛いくらいに部屋の中は静かだ。  
「機材ずっと置きっぱなしだけど……まさか最後までここで撮影する気じゃないだろうなー」  
 それもいい。とベッキーは一人思う。行き当たりばったりの撮影に言いたいことは一つや二つや三つもあるが。  
心地よい疲労に身を任せ、机に突っ伏してうとうとしていると背後にあるドアが静かに開かれる音がした。  
「ん……誰?」  
「宮本せんせ〜」  
 そこにいたのは見間違うハズがない山よりも大きい白鳥鈴音だった。  
いつもの笑顔ではなく、困り顔でしゅんと鞄を前に持っている。はて、明日は槍でも降るか?  
「どうした白鳥、帰ったんじゃなかったのか」  
「うん、それが……」  
 鈴音はベッキーの前まで近寄る。座っているから更に顔を上げないと表情が見えない。  
というか鈴音は胸も大きいのでもう少しさがって見上げないとベッキーの視線では鼻から下の表情がまったく見えない。  
「あの、ちょっと困ったことが」  
「ん、なんだ? 丁度誰もいないから話してみろ」  
 そう言ってベッキーはお茶でも入れようと椅子から立ち上がったとき、鈴音は意を決して前に持っていった鞄をどけた。  
「これ……」  
「ぎょっ!」  
 
 放課後の一年C組で玲は半ば床に這いつくばるようにして何かを探していた。  
「あれー、おかしいなぁ。ちゃんとポーチに入れておいたハズなんだけど……」  
 度の入ってないメガネを中指で直してもう一度よく見回す。アレの大きさからしてそう遠くには落ちてないはず。  
「何してるんだ、橘」  
「え? ああ、なんだ犬神か。お前に作ってもらったアレ、ポーチに入れていたんだけどどこかにいってしまって」  
 少々焦っている玲に対して犬神はいつもの無表情で答えた。  
「ああ、アレか。橘には無断で悪いがアレはやっぱり危険だから廃棄させてもらった」  
 それを聞いて玲はがばっと立ち上がる。  
「ちょ、ちょっと。なんで勝手に捨てるのよ!」  
「たしかに橘から頼まれて俺も興味本位で知り合いに協力してもらって作ってみたが……  
橘の臨床実験で成功しているとはいえああいうのはやめておいたほうがいい。もっとまともな方法を考えるんだな」  
 犬神は玲に反論をさせないようすぐにその場を立ち去る。  
 玲は顔を真っ赤にして一人黙って立ちつくしていた。  
「そのまともな方法がベッキーに通用すると思ってんの……? わかってるくせに」  
 玲は目尻を拭った。  
 
「そ、それ……って?」  
「なんか撮影が終わってからずっと身体が熱くって、下駄箱でぐらっときたと思ったらこうなってた……」  
 とても考えられることではない。とベッキーは思う。  
いやたしかに予備知識として世の中にはそういう人間もいると聞いているし資料写真も見たことがあるが。  
「鈴音、これって生まれつき……じゃないよね」  
「今言ったけど、下駄箱で初体験だよ〜」  
 鈴音は背中を丸めて恥ずかしそうに顔を赤らめる。その腰元、ベッキーの身長だと文字通り目の前に。  
「これって、その……」  
「うん。おちんちんだよ」  
 短めのスカートを押し上げて、今や丸見えのパンツから大きくはみ出して  
上を向いているそれは紛れもなく女の子の鈴音にはあるはずのない男性器だった。  
おまけに鈴音の体躯に劣ることなく大きく太い。  
「これ、本物……?」  
 恐る恐るベッキーは鈴音の肉棒の裏スジを突っついてみた。  
「ひゃん!」  
 鈴音はびくんと背筋を震わせた。肉棒も呼応するかのようにビクビクと卑猥な動きをしている。  
ベッキーは慌てて指を引っ込めた。  
「ごめん!い、痛かった?」  
「ううん……ちょっとピリッてきて」  
 鈴音の呼吸が荒くなる。  
 
 ベッキーがいくら天才だと言っても仮に先天性なものでさえ多少アドバイス程度で、  
まして突然生えた男根を直す方法など知っているはずがない。  
「あのね宮本先生、私実は治る方法知ってるの」  
「え!? なんだそうなのか知ってるならいちいちこんなモノ見せつけるな!」」  
 ベッキーは顔を赤らめて見つめていた肉棒から目をそらした。  
「で、どんな方法なんだ」  
「それはねー。『一発ヌく』と治るらしいって♪」  
 いつの間にか元気が復活したのか、にこやかに下品な言葉を言い放つ。鈴音らしいといえばらしい。  
「はぁ!? 『ぬく』? 何それ? しかも『らしい』ってなによ!」  
「えーだって、乙女とえっちなビデオとか漫画で勉強してたら今と同じようなのがあって、  
そういう時は一発ヌいたら元に戻ってたよ〜」  
 むーんと額に人差し指をあてて首を傾げる。  
「あのなぁ白鳥、それは話の展開上のフィクションだ。本当にその『ぬく』をしても治る見込みはないぞ」  
「でもでも、『ヌく』とおちんちんの元気がなくなるからそのまま消えるってゆーのは割と正しい気がしない?」  
 鈴音は両手をバタバタさせてまくしたてた。  
おちんちんなんて恥ずかしい言葉を連呼して、本当に今の状況が分かっているのかとベッキーは頭を抱えた。  
 でもまあ、あまりにも単純な考え方だが方法の一つではある。  
「で、その『ヌく』っていうのはすぐにできることなのか?」  
 チラチラと視線をむっちりとした太股の付け根の上にある肉棒に向けながら鈴音に問う。  
ぶっちゃけこっちが恥ずかしくてたまらない。ベッキーはさっきから耳まで真っ赤だった。  
「うん、できるよ。射精すればいいんだって」  
「しゃ、射精!?」  
 
「うん、こう……手で擦って……んっ」  
 と、言うと鈴音はおもむろに自分の肉棒に右手を添えて前後にしごき始めた。  
「うわっ! ちょ、ちょっと待って! STOP!」  
 ただそのままを見ているだけでも恥ずかしいのに自慰まで始められては……。  
(『ぬく』ってオナニーの事だったんだ……)  
 それを知らずに何度も口にしていたのか。頭がくらくらする。  
「んっんっんっ、あんっ!おちんちん気持ちいいよう」  
 ベッキーの制止が聞こえないのか鈴音はなおも自慰を続けている。  
ベッキーだってこういう事に興味がない訳ではない。  
興味と羞恥心の間で、段々とベッキーの吐息が荒くなって顔が肉棒に近づいていた。  
 鈴音は薄目でそれを見て取って空いている手でベッキーの手を取った。  
「わっ!? し、白鳥!?」  
「ねぇ〜せんせぇ〜、先生の手でしてもらえたらきっとすぐに射精できると思うの。して」  
「してって、で、できる訳ないだろう! あ、ちょっと」  
 無理矢理肉棒に小さな手をあてがわれた。触れると更に肉棒の脈動が強く感じられた。  
それにとても熱くて固い。これが本当に身体の一部なのだろうか。  
「ね、こうして、前後にしごくんだよ〜。ほら、ほら」  
 しばらく鈴音にさせられるがままだったが、異常事態下の生徒のためだ! と覚悟を決めた。  
「こ、こう……?」  
「んっ! そ、そう。もう少し強く握って。んふっ、あっあっあっ」  
 顔を背け、横目に肉棒を見ながら手を前後する。ちょっとリズムを変えたり握る強さを変えると  
鈴音がいちいち可愛い反応をするものだから、少しずつ楽しくなってきていた。  
 
「白鳥、本当に気持ちいいの?」  
「う、うん、先生のちっちゃな手、んっあっ、すご、く、気持ちいい、ぁあっ! なんか根本からぐんぐん上がってきてる」  
 赤みを増した肉棒をベッキーにしごかれる度に背筋をぞくぞくとした快感がはいのぼってくる。  
その証拠に尿道からは先走り汁がベッキーの細い指を濡らし、秘裂の愛液が自分のパンツをぐっしょりと濡らした。  
 ベッキーはそれに気づきながらニチャニチャと音を立て熱い肉棒をしごくことをやめなかった。  
「なに……これ。ぬるぬるしてきたよ」  
 すっかり荒くなっている自分の息づかいには気が付かないまま鈴音を見上げる。  
「あくっ、はぁはぁ、んんんっ!あっあっ、先生、すごい、すごいぃ」  
鈴音は豊かな胸を大きく上下させとろんとした瞳で嬌声をあげるだけでベッキーの問いには答えなかった。  
あまりに肉棒から送り込まれる快感が気持ちよすぎて普段から脳天気な頭がさらにうまく働いていない。  
今にも射精してしまいそうだがもっとベッキーに触れていて欲しかった。ベッキーの熱い吐息が――。  
「先生ぇ〜」  
「ん、な、なに?」  
「おくちでしてぇ、ね。先生のその可愛い、んっ、お、おくちで鈴音のおちんちんくわえて」  
「そ、それは無理無理! こ、こんなこと見るのもやるのも初めてなのに!」  
「じゃあ……もうすぐだからもっと強く速めに擦ってぇ」  
「う、うん」  
 ちょっと悪いかなと思う。でもいくらなんでも口なんてできない。知識としては知ってるけど。怖いし。  
鈴音のだからまだ嫌悪感が押さえられてるようなものだ。  
「んんっんっあっあっあっ! せんせ、せんせぇ〜」  
「んっんっんっ、気持ち、いいんだ、ね、出る? もう出るの?」  
「うん、うん、ぬるぬるしておちんちん気持ち良すぎるよぉ。せんせ、もっと顔近づけて息吹きかけてぇ」  
 無理な願いとはいえ一度断った手前、二度目は断りにくい。  
言われるままに顔を近づけ弾む吐息を吹きかけた。すると一際大きく鈴音がびくんと痙攣したその瞬間  
「あ、あ、ああー! 精液出る出ちゃうぅー!」  
びゅるる! びゅるっ! びゅるっ!  
「きゃっ!」  
 膨らんだ亀頭から大量の白濁液がベッキーの顔にぶちまけられた。  
突然でベッキーは避けることもできず、整った顔中に、金髪の髪に、口の中にも入ってしまった。  
 
 勢いの弱くなった射精でなおもベッキーはどろどろした精液で顔を汚された。  
ベッキーの困惑顔をザーメンまみれにして鈴音は満足感に浸る。するとふいに  
「にがいぃ〜」  
 ふえっ、とベッキーは顔をゆがめるとぽろぽろ涙をこぼす。  
粘つく顔が気持ち悪い、髪にも染み込んで、口の中にも今まで感じたことのない味が広がる。  
頬や鼻筋から垂れた精液が口の中に入ってくる。呼吸をする度に生臭い匂いが鼻を抜ける。  
 混乱して口の中から精液を吐き出すことすら忘れてしまっていて、多少飲み込んでしまった。  
「せ、せんせ! ごめんなさいごめんなさい!」  
 鈴音はやっと我に返って膝を折りぐずぐずと泣くベッキーと視線を合わせた。  
流れる涙を両手で拭って、変な味がして閉じることが出来ない口から嗚咽を漏らし、鼻水まで垂らしている。  
まるで子供だ……いや、子供なんだ。先生とはいえ自分よりずっと年下の娘を相手に酷いことをしてしまった。  
 鈴音は愛らしいベッキーの髪を撫でた。自分の精液でべたつくけどそんなことは構わなかった。  
「せんせ、本当にごめんね」  
 鈴音はベッキーの涙をぺろりと舐めた。  
「んっ!? しらとり……」  
 そして次は頬についた精液を舐め取る。たしかに苦くて生臭い、それでも鈴音はぺろぺろと舐めた。  
「白鳥、やめ、やめて」  
 包み込まれるように優しく頭を押さえられて逃げられない。  
思い切り突き飛ばせばベッキーの弱い力でも離すことができるが、  
そんな乱暴なことはまだ少しなりとも冷静さが残っているベッキーにはできなかった。  
鈴音はさっきの快感を求めるのではなく優しさからこうしてくれているのだと分かっているから。  
「ん、ん、ん……ごめんね先生」  
 くすぐったいと同時に気持ちいい。鈴音の熱い鼻息がまだ興奮していることを表わしている。  
鈴音の唇と舌がベッキーの幼い唇に近づいたとき、ベッキーはそっと鈴音の胸を押した。  
「し、白鳥。ちょっと待って」  
「うん……」  
 もう少しでキスされてしまうところだった。  
顔についた精液は大体舐め取られたが今度は鈴音の唾液でぬるぬるする。  
 鈴音は少し残念そうな顔をしてベッキーを開放した。  
 
「まだ、治ってないな」  
「うん……」  
 膝をついて中腰になっている太股の間、スカートの下から、まだ元気にびくびくと痙攣する肉棒が見える。  
鈴音の言うとおり一発ヌいてみてもまだまだ元気らしい。やっぱり素直に病院に行ったほうがよかった。  
「まったく、ここまでしたっていうのに」  
 ベッキーは思わず口を滑らせてしまった。自分を辱めた鈴音に怒っているのも事実だ。  
でも大切な身体がこんな異常なことに晒されている本人を目の前に言うべき言葉ではなかった。  
 鈴音は気の毒になるくらい顔を沈ませた。ベッキーは今までに無いくらいに慌てる。  
だってこんなケースは聞いたことがない、もしかしたら一生このままなのかもしれないのだ。  
なのに、教師である立場の自分が生徒を不安にさせるようなことを言ってどうする!?  
「あ、あの、白鳥。今のは。その――」  
 言葉が見つからない。何を言っても角が立ちそうで、怖くて何も言えない。  
 鈴音の肩がわずかに震えている、いくらいつでも元気印の鈴音でも泣いているのだろう。  
こんなにも体の大きい鈴音がこんなにも小さなベッキーよりも縮こまって泣いている。  
ベッキーは罪悪感で胸が締め付けられた。  
「…………」  
 鈴音の肩に手を置こうとして、やめた。慰めることすらできないのか。  
周りから天才ともてはやされても、悩む少女一人救えない。なんて役立たずなんだ……。  
 底抜けの悔しさと情けなさからベッキーが涙をにじませたとき、ゆっくりと鈴音が顔を上げた。  
 瞳が潤んで目尻に涙をためている。何か言おうと口を開きかけて、目をそらす。  
ベッキーは極力優しい眼差しで鈴音を見守った。それ以外はできないしすることができない。  
「あの……」  
 やっと鈴音がか細い声を出した。  
「ん、なに?」  
 ベッキーは優しく問い返す。  
「あの……あの、私……」  
 鈴音は胸の前でぐっと右手を握りしめた。  
「私、先生のことが好き」  
 
「え……?」  
 ベッキーは目を見開いた。鈴音が何を言っているのか一瞬理解できなかった。  
「私は宮本先生が好きなの。あ、LIKEじゃなくてLOVEだよ」  
 鈴音はポケットからハンカチを出してベッキーの顔を拭い始める。  
ハンカチからはおひさまのような鈴音の暖かい匂いがした。  
「で、でも、その、わた、私達、教師と生徒……じゃなくて、女の子どうしだぞ!?」  
「分かってる。でも好きなんだもん。しょうがないもん」  
 幼い子供のような理屈で反論する。泣き出しそうな顔なのは変っていない。  
嘘でも冗談でも戯れでもない、真剣な告白とういのは見てとれた。  
「で、でも白鳥……きゃっ!」  
 鈴音はベッキーの顔を拭き終わると突然目の前の少女を両手で包んだ。  
小さなベッキーは軽々と抱え上げられそのままソファーにそっと下ろされる。  
そして、ベッキーの頭の横に両手をついて、吐息の温度が届く距離まで顔を近づけてきた。  
鈴音の長い栗色の髪がふわりとベッキーの頬を撫でた。  
「白鳥……」  
 ごくりと喉を鳴らす。  
「初めて宮本先生を見たときちっちゃくてとっても可愛いと思った。それからなんか気になるようになって、  
どうして私がC組じゃなかったのかとか宮本先生がB組の担任じゃなかったのかって何度も思った」  
 そういえば他のクラスの奴らがやたら自分に絡んでくるとは思っていた。それはとても嬉しいことだ。  
その中でも鈴音は特に頻度が高かったように思い返せばそう感じる  
 
「キャンプ教室は乙女と一緒のグループだったってあとで聞いて風邪でも行けばよかったって後悔したの」  
 そういえば巨体の鈴音がいなくてなんか景色が良く見えた。  
「合同体育は先生のクラスと一緒になれなかったけど、先生と一緒にサッカーできて楽しかった」  
 でもベッキーは鈴音に肩車されていただけでしかもサッカーボールが頭に当たった。  
「学園祭は恥ずかしくてデートに誘えなくて、でも早乙女先生に言われて学校の夜回りのときは、  
宮本先生いつもと感じが違くて新鮮で」  
 たしかにうちのクラスの奴らといて無闇にからかわれるよりも、  
やたら明るい鈴音とちょっとだけだったけど一緒にいたときの方が闇夜の中気持ちが軽かった。  
「秋のスポーツ大会は敵同士だったけど対戦できただけでも良かった」  
 ただでさえでかいのにバスケのときだともっとでかく感じたな。でも、それがすごく羨ましくて。  
大きいのにくるくる動き回る鈴音がまぶしく感じたときもあった。  
「諜報部の人形で先生と一緒に遊ぶのも」  
 いつも無理矢理誘われて、いつも散々な役柄だったけど楽しかった。  
「先生が小学校に行かされたのがとても寂しかったのも」  
 小学校も楽しかった。でも物足りなかったこともあった。  
「私、先生が好きだったってそのとき気が付いた。  
だから、演劇部と映研の合同作品を先生を主役に作るって聞いたときこれだって思ったの。  
いつもみたいに見てるだけじゃダメだから、麻生先輩に頼んで役者にしてもらえるって聞いたときは  
嬉しくて舞い上がった」  
 そう、だったのか……。そんなにも――そうだ、何かベッキーも鈴音に引っかかっていたことがある。  
ではなくてはひとつひとつ鈴音の言葉に心の中だけででも反応していなかっただろう。  
 ふっとベッキーの脳裏に浮かんだこと。それは  
 
 バスジャック事件。どっかのバカが登校に使うバスを占拠した、ベッキーはその犯人に腹が立ったと同時に  
一緒に乗り合わせた大勢の生徒達に危害がいかないように自分に注意を向けるよう必要以上に犯人を煽った。  
 同じことをした人間がもう一人いた。この鈴音だ。バカなにやってんだ下手に刺激して怪我したらどうする、と  
ひやひやしながらベッキーはさらに犯人を煽った。そうして最後に犯人を退治したのは鈴音だ。  
 鈴音に犯人を煽るなと込めて送った視線に返ってきたのは、一種決意を込めた鈴音の眼差し。  
アレはなんだったんだろうかと、ベッキーもそのときから多少鈴音のことが気になっていた。  
 さっきから細大まくし立てる鈴音の言葉にはその出来事はなかった。なぜ?  
「白鳥、どうしてバスジャックの時のことを言わない?」  
「え?」  
 ふいを突かれて鈴音は少し顔を離した。何か知らないが図星か。  
「おぼえているだろう? あれだけのことだ、そうそう忘れられないと思う。  
あのとき、私は犯人を煽るなって白鳥に目線で促した。でも白鳥は珍しく真剣な顔をしたと思ったら  
余計に脳天気に犯人を煽ったじゃないか。どうしてだ?」  
 そう言いながら、ベッキーはなんとなく鈴音の答えの想像がついた。鈴音は口を結んで視線を泳がせる。  
「べ、べつに……。あれは私の普通だよ」  
 今までの勢いはどこへやら。目をそらして恥ずかしそうにいう。ベッキーは鈴音の頬に触れた。  
「そうじゃないだろう。私があまりに犯人をバカにして刺激をするから、私を守ろうとして白鳥もふざけてたんだろう?」  
「ち、ちが――」  
「バカだよ、ほんと」鈴音の頬をふにっとつねった。  
「それを言っていればもっと簡単に私を籠絡できるだろうに……」  
「だ、だって。違うもん。そういうの。好きっていうのは助けられたとか助けたとか、そういうの関係ないから……」  
 鈴音はとうとうポロッと涙をベッキーの頬にこぼした。  
「先生には、普段の私を見て好きになって欲しいの」  
 ぐらっとする。気持ちの半分が鈴音に傾きかけている。  
 
「白鳥……」  
 恋なんてまだしたことがない。学校が面白くて、生徒とふざけ合うのが楽しくて、  
背丈相応の片思いだって気が向いたときにだけ読む恋愛小説の中の世界だ。  
 誰かを恋だの愛だのの視線で見るには天才として精神の一部が無駄に成熟しすぎている。  
「…………」鈴音は返事をしない。顔をそむけて震えている。  
 鈴音の性格を思えばわかる。いくら非常事態だからといってここまで無理矢理迫るのは  
鈴音にとっても苦痛なのだろう。一見あっけらかんとして脳天気なのは純粋さの裏返しだ。  
自分の気持ちを一方的にぶつけるのはその相手を傷つけることを知っているのかもしれない。  
「正直に言うと、私はどうすればいいのか分からないんだ」  
 鈴音がぴくんと震えた。ずっと顔を赤らめて、大きな胸が短い周期で上下している。呼吸が浅く、発汗も多い。  
まだ興奮状態が続いている。いやさっきよりも明らかに興奮している。  
もしかしたら男性器が生えた原因のモノには身体的に興奮状態が続く作用があるのかもしれない。  
「でも」  
 きっとこのままベッキーが断れば鈴音は素直に引き下がって一人でなんとかしようとするだろう。  
そういう娘だ。なにもベッキーだって外面だけでいつも見ている生徒達を判断していない。  
「でも……?」  
 やっと鈴音が恐る恐るベッキーに視線を合わせた。  
「鈴音が私を教師としてではなく一人の人間として好きだっていうのはわかった」  
 少し鈴音の顔がほころんだ。でもまだ不安の色は拭えない。  
「…………」  
 ベッキーは迷う。むちゃくちゃ迷う。この先の言葉を発したら後には戻れない。  
多分、いや絶対、自分にとって色んな初めてを鈴音に捧げることになるだろう。そのくらい今の状況なら誰でもわかる。  
 自分の答えを待ち必死に我慢する鈴音の顔を見るのはベッキーも辛い。  
鈴音がどんなに自分を想い続けててくれたのかも、自分にとって鈴音が他の生徒よりも  
同性であれほんの少し特別になったことも、小さなベッキーには重荷になりつつあった。  
「優しくするから。約束するから。先生」  
 
 鈴音はベッキーの髪を震える手で優しく撫で、頬の涙を拭った。いつのまにかベッキーは泣いていた。  
「先生のこと大切にするから。怖いことあったら先生を守るから。だから」  
 この娘が好きだ。体も心もちっちゃくてそれでも高校生や他の大人の教師相手に必死に頑張っているベッキーが好きだ。  
自分のことで不安にさせてしまったのはとても悲しい。でもそれを自分の手で慰めてあげたい。  
「白鳥……」  
 鈴音の言葉に背中を押されて、ベッキーは決心する。鈴音を助けなくてはいけないという義務感は今はいらない。  
自分が鈴音を受け入れるかどうか。自分自身以外を頼りにする心を、鈴音にゆだねた。  
「先生」  
 鈴音が顔を近づける。ベッキーもゆっくりと瞳を閉じて  
「んっ……」  
 ふっくらとした唇と唇が重なった。重ねただけでただそうしていた。  
二人ともまた不安が増してきたが徐々にそれよりもふわりと暖かい気持ちで胸がいっぱいになる。  
「んんっ」  
 ベッキーが苦しそうにうめき声をあげた。ずっと息を止めていたから酸素が足りない。  
それに気づいた鈴音はベッキーの唇を解放した。  
「ぷはっ」  
「あは、先生、無理に息を止めなくてもいいんですよ。多分」  
 ふーふーと胸に手をあてて呼吸を整えるベッキー。しかしぼそっと言った最後の言葉を見逃すはずがなかった。  
「『多分』ってなによ〜」  
「だって、私だってキスなんて初めてなんだもん」  
「わ、私だって……」ぷっ。くすくす。  
 顔を見合わせながら同時に笑い出す。二人にやっと笑顔が戻った。  
「先生……」  
「うん」  
 もう一度キス。今度は恥ずかしいけれど鼻で息をしてもっと長くキスをする。  
ただ受け入れているベッキーの幼い唇を鈴音は甘噛みしたり舌で優しく舐めたりする。  
「んふっ、ん、ん、ん」  
 頭がじんじんして熱くなる。怖さはあまりなかった。もっともっと気持ちよくなりたい甘い誘惑が  
ベッキーは鈴音に唇をおしつけさせた。  
(すごい、キスってこんなに気持ちいいんだ……)  
 
 鈴音も同じように感じていた。自分の唇に感じるベッキーを傷つけない程度にひたすら貪る。  
呼吸を整えるために口を離しては何度も何度もキスを重ねた。  
「はぁ、はぁ……せ、せんせ……」  
 唇を離すと涎の糸がつっと橋を渡した。ベッキーも顔を真っ赤にしてとろんとした瞳で鈴音を見つめ、薄い胸を上下させている。  
「んっ、はぁ……白鳥、私、なんか……」  
 もう頭だけじゃなく身体中が熱い。キスだけでこんなになってしまったら、この先どうなってしまうのだろう。  
気が付いたら鈴音がベッキーの服をたくし上げていた。ブラをするほどでもない胸が露わになる。  
「あっ! ちょっと、白鳥、ま、待って!」  
 慌てて服を直す。鈴音は眉をたわませて不満を漏らした。  
「えー、先生こうしないと続きができないよ」  
「だ、だって恥ずかしいじゃないか」  
「その恥ずかしいことをこれからするんだよう。んー、じゃあ……」  
 鈴音は自分の制服に手をかけると、わずかにためらいながら脱ぎはじめる。  
制服の前を開けるとブラに包まれた巨乳がぼろんと豊かにたわんだ。  
「でかっ」  
 思わずベッキーは目が点になってしまった。自分のまな板と見比べるまでもなく何か非常に落ち込んだ。  
「ううー、恥ずかしいよ。あんまり見ないで」  
 しっとりと汗ばんで桃色に上気した胸を腕で隠す。制服をすっかり脱いだ鈴音はとても魅力的だった。  
一般的に美しいと言われるような細身ではなく、女性らしい丸みの帯びた肉付きのいい肢体。  
「ちょっと触ってもいい?」  
「え、えーっと、うん」  
 ベッキーが上半身を起こすと鈴音はおずおずと胸を隠していた腕を解いた。  
近くで、生で見ると本当に大きい。ブラに包まれているとはいえ形も悪くないように思える。  
下からすくい上げるようにすると、ずっしりと見たままの重量が感じられた。  
「んっ!」  
「い、痛い?」  
「ううん、ちょっと先生の手が冷たかっただけ。大丈夫」  
 
 安心してベッキーは愛撫を続ける。  
愛撫といっても何をどうすればいいのかわからず、最初はただむにむにと乳房を揉んでいた。  
段々と鈴音がどう触られると甘い声を出すのかがわかってきて、ベッキーもにわかに鈴音の痴態に興奮してきた。  
それでもまだ脈動する男性器からは意識して目をそらす。膝立ちになってるから目立つことこの上ない。  
「んっ、んっ、んっ。せんせぇ……」  
「すごいよ白鳥、ぴくぴく震えて可愛い。そんなに気持ちいい?」  
「あんっ、やだもう。せんせのいじわるぅ」  
 真っ赤な顔ですねてみせる。それを見てベッキーはもっといじめてやりたくなった、普段からかわれているお返しだ。  
「白鳥、ブラも外して」  
「えぇー。じゃ、じゃあ先生も服脱いでよ。私だけなんてずるいよ」  
「う……わ、わかった」  
 天才といっても所詮は子供。スタイル云々というほど成長はしていない。  
鈴音の立派な胸を見てからでは余計に見られるのは恥ずかしい。  
「うう、恥ずかしい……」  
「そんなことないよ先生。とっても可愛い♪」  
 鈴音の胸はブラを取ってもほとんど型くずれすることない。桜色の乳首がぴんと固くなっていた。  
「それで、これからどうするの?」  
「触りっこしよ」  
「う、うん」  
 鈴音のそれなりに大きい手がベッキーの胸に触れた。ひやっと冷たくて同時に未知の感覚が神経を走った。  
「ひゃあん!」  
 思わず胸を押さえて縮こまる。鈴音は大丈夫と優しい声をかけてもう一度手を触れた。  
ベッキーも再び手に余り過ぎる鈴音の巨乳に手をのばした。  
「んっ、せんせ、もっと強く触ってもいいよ」  
「あっ、んっ、こ、このくらい? あっ、白鳥、触りすぎだって」  
「だってぇ、あんっ、せんせぇのおっぱい可愛いんだもん」  
 
 鈴音の指先がくりっと乳首に触れた。途端にぴりぴりっと胸から強い刺激がきて無意識に背中を反らす。  
「んああっ!」  
「せんせぇはここが弱いんだね。もっと触って欲しい?」  
「ば、ばか。いやっ、へ、へんな、こと……んんっ! もう〜」  
 反撃とばかりにベッキーも鈴音の乳首を同じように指の腹で転がした。胸全体と違って充血して固い手応え。  
「あんっ! そこ、もっといじって。んっんんぅ〜。せ、せんせ、乳首触っててあげるから、私の舐めて」  
「はぁ、はぁ、う、うん。ね、あんまり触られるとうまく動けないから、ちょっと」  
 ベッキーも鈴音も呼吸を荒くしてぴくぴくと小さく痙攣しながらお互いの乳房を触り合っている。  
初めての感覚に酔わされて、手だけならまだしも他が頭が熱に浮かされて自由にならない。  
「んっ、だ、だーめ。ほら、早くぅ」  
「んあっ! も、もう。……ん、ぺろ」  
「ひゃっ……くぅん。せんせ……の舌……あっんっ!」  
 右の乳首をひと舐めすると汗の味がした。鈴音の反応が嬉しくてぺろぺろと繰り返し舐めあげた。  
「あ、ん……そ、そう。もっと、せんせ、もっとぉ。きもち、いいよぅ」  
「んくっ、ぺろぺろ、はぁ、はぁ、し、白鳥、私のも。手が止まってる」  
「ご、ごめんなさい。おっぱい、き、気持ち良すぎて……んっああっ」  
 鈴音の両手で乳首をこね回されてぴくぴくと痙攣しながらベッキーも鈴音に愛撫を続ける。  
ぷちゅっと乳首に吸い付くと今度は鈴音が大きく声をあげた。  
同時に左の乳首も指で摘んだり、時折胸全体をすくい上げたり円を描いたりして感触を楽しんだ。  
「はぁっ、んくぅ! せんせぇ上手すぎるよぉ。あっあっあっ。ね、せんせ、わ、私のお、おちんちんも、なんか……」  
「え? んっんっ」  
 鈴音に乳首を触られながらベッキーは口での愛撫を中断して下に目を向けると  
肉棒が大きくなって反り返り亀頭が濡れていた。さっき射精する直前のときと同じだ。  
「さ、触ってなくても気持ちいいんだ……」  
「うん、な、なんか、また」  
 切なそうな顔でベッキーを見つめる。またベッキーを泣かせてしまうのは怖い。でもこのままだと……。  
「いいよ」  
「え?」  
 
「気にしないで出していいよ」  
「せんせぇ……」  
 じわっと涙が滲んでベッキーの顔が見えなくなってしまう。ごしごしとわざと乱暴に涙を拭った。  
「キスして、白鳥」  
「うん、んっ……」  
 ベッキーは少し背伸びして、鈴音は背中を丸めてキスをする。そのままお互い愛撫を再開した。  
「んふっ! んんっ、ちゅうぅ、んちゅっ、あむ」  
「はっ、はふっ、んむうぅ! んっんっんっ! し、白鳥ぃ」  
 たっぷりと唾液を交換してからベッキーは鈴音の胸にむしゃぶりついた。  
十分に火照ってほぐされているから最初より強く揉み合っていてもぞくぞくと快感が背筋を駆け上ってくる。  
「んっぷ、ちゅうぅ、ん、んっ」  
「ああんっ! おっぱいが! んあんんっ! あっあっああっ!」  
「わ、私、も、乳首、びりびりって、んあっ! ちゅうう、んふんっ! あむ、ちゅるる!」  
 相手の強い愛撫で身体に力が入り思わずその相手にも強くしてしまう。  
そんな相互的な繰り返しでどんどん快感が高ぶっていった。  
「いいっ、いいよう! あくぅんん! せんせ、せんせ! 出るよ、また射精しちゃうよぉ! んぁあっ」  
「んちゅうぅ! んはっ、うん、出して、いっぱい出していいよ。んっんっ、私もきもちいい……!」  
 ぎゅううっと鈴音がベッキーの乳首を押しつぶす。  
今までにない強い刺激に脳を突かれたベッキーがたまらず鈴音の巨胸を搾るように握りしめ乳首を噛んだ。  
「んぅううっ! 白鳥ぃ!」  
「ひあっ! イ、イクッ、出るぅ! おちんちんからせーえき出ちゃうぅうううう!」  
びゅぶぶっ! びゅるるる! びゅくびゅくっ!  
「ああ、ああー! さ、さっきより……んんんぅ〜! せんせ、せーえき、すごいぃ!」  
 鈴音はがくがくと震えてたくましい肉棒から遠慮なくザーメンを吐き出した。  
「んはっ、はぁ、はぁ、んっ、こんないっぱい、出てる……。白鳥、えっちなんだから。顔にも、んっ」  
 尿道から噴水のように多量に噴出された白濁液がぐったりと下を向いていたベッキーの顔に、  
はだけていた互いの胸に打ち付けられ、熱いくらいの温度を感じた。  
「ん、白鳥の精液、熱い……」  
 また口に入ってしまった生臭いザーメンをベッキーは少し舌で転がしてから飲み込んだ。  
自分でも驚くことに嫌悪感はほとんどなくなっていた。  
 
「せんせぇ〜……」  
 くたっと鈴音が快感の余韻に浸ってベッキーに寄りかかってきた。やっぱり見た目分は重い。  
「ごめんね、また、私だけ気持ちよく、なっちゃって……」  
「いいってば。もとは鈴音のコレを治すために始めたことだし。それに、……白鳥のなら私も嫌じゃない」  
 言ってから恥ずかしくなり鈴音の肩に赤い顔を埋めた。  
息を整え柔らかく微笑む鈴音にベッキーも笑顔でこたえる。もう十何回目のキス。今度は鈴音の舌が口の中に入ってきた。  
徐々に激しさを増すキスにベッキーは困惑しながらも真似をして鈴音の味を楽しんだ。  
 ゆっくりと鈴音に押し倒され、見つめ合う。あまりじっとしているといつもの癖で冷静になりそうで恥ずかしい。  
「その、白鳥はなんだかこういうことに慣れてるみたいだな」  
「そっかなー? さっきも言ったけど、乙女とビデオとかで勉強したんだよ」でも、と付け加える。  
「好きな人とするとこんなに気持ちいいなんて知らなかった」  
「バカ……」  
 ぷいっとベッキーはそっぽを向いた。  
「えへへ。今度は先生を気持ちよくしてあげるね」  
「あっ!」  
 頭を下にずらして小さな突起を口に含む。未成熟な胸は脂肪さえほとんど付いていないが感度は確認済みである。  
「んふぅ、んっ! あっあっ。白鳥ぃ、んくっ、はぁ、あっ……。ん……え? だ、ダメそこはぁ!」  
 胸の刺激に悶えている内にガードの緩くなった股間に鈴音の手が這わされていた。  
鈴音の手との温度差で自分の股間がどんなに熱くなっていたか生々しく感じられる。  
「せんせのここ、すっごく熱くなってる。それに濡れてるよ、わかる?」  
 今更足を閉じても鈴音の手をより強く押しつけるだけの格好になってしまう。  
恥ずかしくて死にそうなのに、そこを上下に擦られる度にびくんびくんと腰が跳ね上がる。  
「あっあっああー! 白鳥、や、やめ、んああうぅ! し、刺激が、つよ、んんぅ〜!」  
「はぁ、はぁ、んむ、ぺろ。せんせ、もっと可愛い声出してぇ」  
 胸と秘裂から同時にの刺激を与えられ、ベッキーは金髪を振り乱して悶えた。  
湿り気を帯びたパンツを強めに押さえるとぷちゅっと愛液が滲み出てくる。  
「んぁうぅ!」  
 鈴音は胸から口を離し、秘所への愛撫を続けながらベッキーの足の間へ位置を取った。  
 
 小さな股間に顔を近づけると、むっとする汗とそれ以外の匂いがした。  
指を離して下着の濡れている部分に口づけをする。  
「ひゃん! し、白鳥、口でなんて、そこだめ、き、汚いよぉ」  
 背後に逃げようとしても鈴音がガッチリと腰を固定して動けない。  
「せんせに汚いとこなんてないよ。んっ、ちゅうぅ!」  
「いや、あっ! だめ、ゆ、指より……んんんっ!」  
 割れ目に沿ってそこをゆっくり味わうように舌を上下させる。酸っぱい味に嫌な感じはしない。大好きなベッキーの味だ。  
「れろぉ、んぷ、んっんっんっ、せんせの味……。せんせ、気持ちいい? んんっ!」  
「はぁん! だめ、だめぇ! あっあっ、あぁあ! ふぅううん!」  
 下着越しでも鈴音の舌のぬめりと熱さが感じられる。キスよりも胸よりも強く刺すような刺激を  
ベッキーの飲み込みの良い脳はあっというまに快感として処理してしまう。  
淫らに感じる姿をひどく恥じるベッキーの心とは裏腹に身体は無意識に腰を鈴音に押しつけてしまった。  
「んぷっ! せ、せんせ、イク? イッちゃうの? もっと気持ちよくしてあげるからイッっていいよ。んっんっんっ!」  
 鈴音はもっとベッキーに感じて欲しいと下着をずらす。指と舌でほぐされた幼い割れ目は  
愛液にまみれわずかに開いて秘唇をのぞかせていた。湯気が出そうなくらい熱い割れ目に舌を差し込む。  
「んああっ! な、なに? ああん! 入って、入ってくるぅ! あっあっあっ! ひぅう!」  
 自分以外の何かが身体の中に入ってくる恐怖は一瞬にして快楽に塗りつぶされた。  
おぞましさと紙一重のぬめる挿入感。外側からは唇が秘唇全体を粘膜でゆるゆると擦る。  
「あっあっあっ! だめだめぇ! な、なんかくる、んんあっ! ううんぅ!」  
「んっ、イッて、せんせ、私のおくちで気持ちよくなってぇ、んぷっ、んっんっんっ!」  
 とどめとばかりに乳首にも手を伸ばし、舌を出来るだけ膣の奥まで差し込んで唇全体で吸い上げた。  
「くぅうううっ! くる、なんかくるぅう! しらと……ぁああああああっ!」  
 ソファの端を思い切り掴んでベッキーは髪を振り乱し部屋の外にも声が漏れる程絶叫した。  
今まで高められていたものが一気にはじけて、身体全体を弓なりに反らせ何度も何度も大きく痙攣し続ける。  
 
 初めての絶頂に息も絶え絶え、そこから降りてくるまでに少し時間が掛かった。  
その間鈴音はずっとベッキーの髪を撫でていた。焦点の合っていなかった瞳がやっと鈴音を捉える。  
「しらとり……いまの……わたし……」  
「せんせ、今のがイクってことだよ。気持ちよかったでしょ?」  
 よくわからない。ただ送り込まれる刺激に翻弄されていただけな気がする。  
ボーッとした頭で何度かさっきの絶頂を反芻してみて、もう一度感じてみたいと思ったのは恥ずかしくて言えなかった。  
 あらためて鈴音はベッキーの足の間に入り、自分のスカートと下着を脱いだ。  
脱いだ下着と秘裂の間に濃い粘液の糸が引いているのが見えた。肉棒は見るまでもなく屹立している。  
 ベッキーのスカートに手をかけられほんの少し震えたのを鈴音は見逃さない。一度手を止める。  
 散々快楽漬けにされてとろける頭でも不安はまだあった。今ならまだ引き返せるとどこかで言っている。  
そもそもあんな大きいのは自分のサイズに合うはずがない。  
「…………」  
 迷いを払拭するため、ベッキーは脱がされやすいように自分から腰を浮かせた。  
「せんせ」  
 するすると脱がされて、とうとうお互い靴下以外は何も着けいない状態になってしまった。  
「白鳥……その、優しくして……ね」  
「うん。最初は痛いらしいけど、我慢してねせんせ」  
「うん……」  
 『らしい』ってなんだとはツッコまなかった。二人とも初体験だ。  
今までの鈴音の言動を見ていれば無理はしない、ハズ……。  
「じゃあいくね」  
「い、いちいち言うな」  
「えへへ」  
 赤ちゃんみたいに寝っ転がって両足を大きく開いているだけで熱を出しそうなくらい恥ずかしいのに。  
と、亀頭が秘裂にあてがわれた。不安と恐怖を押し殺してベッキーは口を開く。  
「白鳥、違う、もうちょっと下……」  
「あ、ごめんなさい。え……と」  
 さっき目の前で見ていたのとは違くて上から見下ろしているから鈴音は少し焦った。  
先を擦りながら位置を移動する。それだけでびくびくとベッキーの腰が震える。  
 
「そ、そこ……」  
 横を向いて口を手で押さえながら位置を示した。ベッキーも協力してくれていることに鈴音は心底安堵する。  
「んっ……あれ」  
 ゆっくり腰を進めても押し返されるだけで、なかなか入らない。やっぱりさっき見た本当に小さな穴には  
こんな大きいモノは無理なのだろうかと、思ったがもう少し頑張る。  
ベッキーは不安そうにこっちを見ているが何も言わず我慢してくれているのだ。  
 割れ目と秘裂に指を添えて左右に拡げてもう一度亀頭を押し込んだ。  
「んんっ! し、白鳥!」  
 なんとか先っぽだけが入った。キツイ、歯を食いしばるベッキーに心の中であやまりながらぐいぐいと腰を進める。  
「い、いたい、いたぁい!」  
「せんせ……ベッキー。もうちょっとだから……」  
 我慢すると決めたのに無意識に鈴音の胸を弱々しく押すベッキーに対して鈴音も必死だった。  
髪を撫でてあげたいが上に逃げないようにベッキーの腰を掴んでいるだけで精一杯。  
おまけにベッキーの中が痛いくらいにキツすぎてなかなか奥に進めない。これ以上の痛みは与えないように、少しずつ……。  
「ベッキー、奥まで入ったよ」  
「くぅ……ん、ん、うん……」  
 根本まで挿れることはできなかったがベッキーの小さな膣の最奥まで入りきった。  
身体の一部分のはずなのにまるで全身に無理矢理何かを挿れられたかのように苦しい。  
「ベッキーの中すごいキツイ、よ。はぁ……おちんちんをぎゅうって締め付けてくる」  
「い、痛いし、苦しい……んくっ……はぁ、はぁ」  
「少しじっとしてるから、体の力抜いて深呼吸して」  
「う、うん……。ん、はぁ……はぁ……」  
 言われたとおりにすると苦しさだけは少しずつやわらいでいった。破瓜の痛みと異物が入っている感触は拭えない。  
「ベッキー、動いていい?」  
 鈴音が紅潮した顔で聞いてくる。眉根を寄せて艶っぽい声、ベッキーの中に入って感じてくれている。  
鈴音と繋がったという満足感に痛みをこらえて、こくんと頷いた。  
 
 抜き差しされる痛みもベッキーの身体をおもんばかってゆっくりと動いてくれているうちに少しずつと痛みもなくなっていった。  
「あっ、んっ、ベッキーの中、気持ちいいよ。んっんっんっ! おちんちん気持ちいいよぉ!」  
「んっ、くっ、うあっ! あっあっあっ。白鳥、しらとりぃ……」  
 まだ痛みがあるのに突き上げられると勝手に声が出てしまう。恥ずかしいのに止められない。  
軋むソファの音が、自分の吐息が、鈴音の愛らしい喘ぎ声が、耳からもベッキーの脳をとろけさせる。  
「くっ! んあっ、あっ、また、な、なんか、んっんっんぅう!」  
 子宮口を突かれるとびくびくと腰のあたりが激しく震えてきた。  
「白鳥……! あっあっあっ! なんか、だめ、わた、私、へんにぃ……! んあっんああっ!」  
「ベッキー、鈴音って、呼んで、ね。ベッキー、ベッキー!」  
「あっくぅうん! す、鈴音、すずねぇ! あんっ! あっあっんっ!」  
 ベッキーは鈴音の突きあげるままにがくんがくんと身体を踊らせて痛みを押さえ始めた快感に酔いしれた。  
「鈴音、もっと、激しくしても、んぅ! い、いいよ」  
「う、うん! ベッキー、気持ちいい? 私のおちんちん気持ちいい?」  
 ぐいいっと子宮口を突き上げられる。思わず肺の酸素を全て吐き出して声をあげてしまう。  
「はぁああん! そ、そんなに。気持ちいいよ、鈴音のおちんちんがぐいぐいって、あっあっ、気持ち、いい!」  
 快感の波がまた徐々に盛り上がっていく。さっきのように一人でイッてしまうのが怖くて、鈴音の腕を強く掴んだ。  
研究室の中で二人の声と肌と肌を打ち付け合う音が響く。鈴音はもう遠慮無しにベッキーのキツくぬめる膣内を激しく何度も蹂躙し続けた。  
「ベッキー、うっあっ! ベッキー……も、もう、出るよ、おちんちん、から……ベッキーのおまんこに出る、よ!」  
「ああっあんっあんっ! 鈴音ぇ、鈴音ぇ、い、一緒に、イクッ、イッてぇ! あぁっあっ! 鈴音ぇ!」  
「うん、うん、ベッキー、一緒に、一緒にぃ! んああああっ!」  
「鈴音ぇ! んくぅっ! ひゃううううぅっ! イッ、イクぅうううう!」  
びゅるるるんっ! びゅぶぶぶっ! びゅるびゅるん!  
 ぎゅうううっと今までにない強さで膣が締め付けられ、鈴音は思いきりベッキーの初潮も迎えていない膣内に大量に射精した。  
 
 子宮口に亀頭でキスして直接子宮に精子を注入される度ベッキーは背骨が折れるほど背筋を反らした。  
「ふぁっ……。あつっ、お、おなかが熱い。せーえきが、私の身体に入ってきてるよぉ……」  
 ずくずくと打ち寄せる快感に限度はなく、それに正直に身を任せ身体を痙攣させる。  
「ベッキー……んぅうう。まだ、まだせぇーえき出てるよぅ。んっく、んっんっ」  
 鈴音は身体を硬直させて全てをベッキーに注ぎ込もうと腰をより密着させながら色のある声で喘いだ。  
二人はいつやむとも知れない快感の中で一体感を感じ合っていた。  
 
 やがておぼろげな感覚の中、鈴音は自分を受け入れてくれた愛おしいベッキーにキスをしたいと思った。  
一生懸命背を丸めても有り余る身長差で覆い被さって繋がったまま状態では無理である。  
 心地よい余韻に浸っていたベッキーがまだとろけた表情で鈴音を窺う。  
うーんうーんと必死に顔を近づけようとしている鈴音を見ているうちに小さく吹き出してしまった。  
「あ、せんせ……気づいてたの?」  
「だ、だって、ぷくく。こんな状態でわからないはずないじゃないか」  
 まだ下半身は繋がっているから鈴音の動きはダイレクトに体内に感じるし、巨乳が顔を付いたり離れたりするから。  
鈴音は真っ赤になってすねてみせた。そうして顔をそむけられるといよいよ表情がわからない。  
まったく、年上のくせに。別に自分が天才じゃなくても鈴音に対する見方はあまり変らない気がする。  
「鈴音、こっちに顔むけて。寂しいよ」  
「……本当?」  
「うん。また鈴音とキスしたい。でもこのままじゃ残念だけど無理」  
「……うん。わかった」  
 すぐに機嫌を良くして鈴音は上半身を起こしてゆっくりと肉棒を引き抜く。  
じっとしていたときは馴染んでいたのにまた動かされると異物感に少しアソコが痛んでベッキーは「んっ!」と身体を震えさせた。  
抜いた後の膣口と肉棒には愛液と破瓜の血がぬめり付いていて、小さな膣口はちょっと見ていられないくらい口を開けている。  
「せんせ、ごめんね。……痛かったでしょ?」  
 わかっていたことだが、こうして目の前にするとより罪悪感が胸を突く。  
「バカ。あやまるな」  
 痛みから目尻に涙を溜めて気丈にベッキーは笑顔を作った。  
 
「私が鈴音としたいと思ったんだ。悪いことなんて何もない」  
「うん。私もせんせの初めてもらってすごく嬉しい♪」  
 すっごく恥ずかしい言葉でも今ならすらすらと口から出てくる。まるで恋人みたい……。  
(恋人なのか、もう……)  
 無性にこそばゆい。頬が自然と緩む。教師と生徒でも同性でも好きという気持ちはこんなにも心地の良いものなのか。  
しかしそこは天才レベッカ宮本。教師と生徒、女同士、大きい年の差と身長差でまだ心に多少抵抗があった。まだ子供だし。  
(ん、今は考えない考えない……)  
 ベッキーは改めて位置を合わせてきた鈴音に自分から口づけした。  
「んっ、せんせ……」  
「んむっ、んっ、ちゅっ、鈴音、ベッキーって呼んでくれないの?」  
 ちょっと甘えた声で言う。会話をする間も惜しむようにキスを続ける。  
「でも、急に呼び方変えたら、んふっ、んっ、みんなに、変に思われるかも、ちゅっ、ちゅう」  
「大丈夫だよ。みんな好き勝手、ちゅっ、よ、呼んでる、し。んむぅ、鈴音には、恋人なんだから、んっ、れろ、呼んでほしい」  
 呼んで欲しいと言ったのに呼ばせないように舌を自分から差し入れて絡ませる。  
舌同士の柔らかさや味は身体への愛撫にも劣らない快感だった。  
 つっと糸を引いて鈴音が口を話した。  
「ベッキー。ベッキーベッキー」  
「あはっ、何度も呼ぶな」  
 苦笑いして再び鈴音を頬を寄せようとしたとき、ふと鈴音は顔を曇らせた。こういうときは綺麗な顔立ちが年相応に見える。  
「ベッキー、あのね……」  
「ん?」  
「…………。なんでもない」  
「……うん。鈴音。好き」  
 おんなじだ。鈴音も、自分と同じに不安なんだ。不安なのに、お互いにひどく安堵感をおぼえて、  
ベッキーと鈴音は狭いソファで抱きしめ合い、睦言を口づけをいつまでも交わし続けた。  
 ここまできて初めて鈴音に自分から好きと言えたことに、言われたことに、ベッキーも鈴音もまた泣きそうになった。  
 
 もうすっかり日が落ちている研究室のソファで二人は気持ちの良い疲労に身を任せ裸で抱き合っていた。  
うとうとしながら――鈴音に到ってはもうすやすやと寝ていた――恥ずかしい記憶を繰り返していると、何か別の違和感を感じた。  
ぴったりと寄り添い合って鈴音の肉付きの良く柔らかい身体は暖かく、ゆっくりとした呼吸で押しては引く感触が嬉しい。  
しかし何かおかしい。あるものがないような。なぞなぞにもなっていないな、と自分でツッコんでみる。  
「ま、まさか……」  
 ベッキーを包み込んでいる腕をゆっくりと離し、少し距離を開けて、見た。  
「す、すずね、鈴音!」  
 ゆさゆさと揺さ振っても糸目な鈴音はむにゃむにゃと口を動かすだけで起きようとはしなかった。  
こいつは遅刻居眠りも常習犯だ。ちょっとやそっとじゃ起きない。  
「もう食べられないニャー」などとベタベタなことを言っている。  
(あーもう! イライラするけど可愛いなぁ!)  
 耳元で大きい声を出すのは可哀想なので裸のままソファから部屋を横切り、  
代わりに何故か研究室に常備されているハリセンを手にして  
「おーきーろーっ!」  
 スパーンと心地よい音を立てて脳天に叩き込んだ。音の割には遥かに痛みは無いから安心して思いっきり叩ける。  
「ふにゃっ?」  
 運良く一発で起きた鈴音は二度寝しようとしてベッキーにほっぺたを左右に引っ張られた。  
「鈴音! 寝るな! 見てみろ! ほら!」  
 興奮して単語を連発しておまけに声もうわずっている。もーなんなのベッキー、と事態を飲み込めない鈴音は指さす方向を見て、珍しく目を丸くした。  
「え……、あれ? もしかして……」  
「無くなってるんだよ! おちんちんが!」  
 鈴音の股間は先ほどまでの物々しさは無くなり、すっかりスッキリしていた。  
嬉しさのあまりベッキーは大声でおちんちんと叫んでいるのにも気が付かない。  
まだ寝ぼけている頭の鈴音にじわじわと熱いものがこみ上げてきた。  
 ベッキーがそっと手を握ってくれた。その手を握り返して小さな恋人に抱きついた。  
「ベッキー、あ、ありが……とう。ありがとう」  
 小さな肩に熱い雫を感じる。よしよしと鈴音の髪を撫でるベッキーも鼻をぐずぐずと鳴らしていた。  
 
 今日の撮影も大成功だった。と、麻生姉妹だけは思っていた。実際は映研部員も演劇部員も振り回されっぱなしだ。  
二人で夕飯を食べて3年B組熱血教師ドラマを見ながら姉は授業のやり方を、妹は映画のネタを参考にしていた。  
ふと、真尋は今日の撮影を思い出して麻里亜に振り返った。  
「ねえ麻里亜ちゃん。演劇部の脚本のことなんだけど、なにか変更あったのかしら?」  
「変更? 円ちゃんからはなにも聞いてないけれど。どうして、姉さん」  
 ん〜、と腕を組んで悩む姉。自分から聞いておいてすぐには思い出せない。致命的なことにここにはツッコミ役がいない。  
「あ、そうだ! 今日の白鳥さんのアドリブのことよ。えっと、ピンク色のキャンディーなんてあったのかしら?  
たしかキャンディーは麻里亜ちゃんが用意していたのよね。赤と青と黄色の」  
「そうよ。実は今日清掃員のおじさんに開けてない袋のキャンディーが捨ててあったって貰ったの。  
綺麗な色のキャンディーだったから一緒の瓶にいれてみたんだけど、そういえばみんなに言っておくの忘れてたわ」  
 悪びれた様子もなくのほほんと麻里亜は言った。  
口が開いていないから誰も手を付けていないだろうし色合いも綺麗になるから自分ではグッドアイデアなのだ。  
「そうね、じゃあ演劇部の部員さんに頼んでピンク色のキャンディーの効果も増やしてもらいましょう」  
「姉さんそれいいわ! そうそう、台本の中に大人になったり子供になったりできるキャンディーだったらいいって台詞があったでしょ?  
それを実際にできるってことにしてみたらどうかしら」  
 テレビのことはすっかり忘れて次々とグッドアイデアが『採用されて』いく。  
 ……致命的なことにここにはツッコミ役がいない。  
 
 やっと落ち着いた二人はこそこそと学校のシャワー室を使い、すっきりしたところで各々元の服に着替えた。  
服を着てから自分たちが素っ裸でナニをしたのか思いだして二人して赤面した。  
「やっぱりあのキャンディーが原因かもな」  
 ベッキーは机の椅子に、鈴音はソファに座ってお茶を飲んでいた。  
 結論づけるのは早計だが鈴音の普段の行動や今日の行動を比べても問題のある部分はない、  
もし今日口にした物が原因ならば、たまたま学校以外で買い食いした覚えがないことと、  
発生した時間的なことから他に被害者がいた話を聞いてもおかしくはないのに鈴音以外では  
今のところ誰もそういう話を噂としてすら持ってこない。ベッキーは台本を読み返しながら考えた。  
「やっぱり最後までピンク色のキャンディーのことはないな。鈴音は本当に何も聞いていないんだよな」  
「うん。瓶に入ってて綺麗だなーって思ったから食べてみたんだよ」  
「そういうときは一度麻生先生達に聞き直してからやってくれよ。今度からは……」  
 いつもの投げやりな口調ではなく、苦笑いをして鈴音を諭した。  
「まぁなんにしろ治って良かった。明日……いや、今から麻生の家に電話して  
あのキャンディーを食べないよう言っておかなきゃ」  
「……ベッキー、そのう……」  
 ともかくあんなことを二度も起こしてはいけないとベッキーが電話をかけに外に出ようとして、  
服の裾を鈴音に握られた。少し不安そうな鈴音の表情。もう今日は何度もそういう意外な一面を見せてもらっている。  
「どうした? とりあえず麻生達に連絡しておかないと――」  
「ベッキー、その、あの、好きだから、私」  
「? どうしたんだ改めて。恥ずかしいじゃないか」  
「好きだから、ここに来たの。こういうことがあったのは、その」  
 もじもじと両の人差し指を合わせる鈴音の手を取る。  
「わかってる。きっかけだったんだろ。別に鈴音にあんなのが付いてなくても私の気持ちは変らないよ」  
 鈴音の手を引いて、研究室を出た。  
 
 
 それから……。  
 鈴音がベッキーを「宮本先生」から「ベッキー」と、ベッキーが鈴音を「白鳥」から「鈴音」と呼び方が変った以外は  
周りで何か変化は無かった。相も変わらずB組はバカばっかだしC組は普段は地味で時々突出して目立った。  
強いて変化という変化と言えば、放課後のベッキー研究室での今まで玲の指定席だったところに鈴音がよくいるようになったことだ。  
鈴音は玲と違っていつもうるさくベッキーに甘えてきたが不思議と仕事は順調に進んだのでベッキーも邪険にすることはなかった。  
 玲もまたベッキーのそばにいた生徒の一人だったが最近はあまり話しかけてこないから少し寂しい気がする。  
それでも鈴音がいるから全然大丈夫だ。  
「ねぇ〜ベッキー」  
「なによ鈴音。まだちょっとかかるから待ってて」  
 論文に向かうベッキーに鈴音は後ろから覆い被さって猫のようにひっついて甘えた。  
ベッキーはそのままの体勢で鈴音を引き剥がすことなく仕事を続けた。むしろこの方が進みが早い。  
 あれから鈴音と同じ事例は起っていない。麻里亜に聞いたところピンク色のキャンディーは瓶に入っていた物で全部。  
その全部を回収してベッキーは成分を調べている最中だ。今のところ鈴音が経験した以外に害のある成分は検知されていない。  
もしまた同じことが起こっても発散させれば治るという漫画のような治療方法は自ら検証済みだし、それほど心配することではないだろう。  
「あのさ、鈴音」  
 キーボードを打ち視線をディスプレイに向けたまま起用に鈴音に話しかける。  
「ん〜? なぁ〜にぃ〜」  
「どうして鈴音は最初に私のところに来たんだ? 親なり病院なりあるじゃないか」  
 当たり前の疑問を口にする。それも以前鈴音の口からすでに答えを聞いていることだ。好きだから。  
「……怖くなったとき、ベッキーの顔が一番最初に浮かんだの。ベッキーならきっとなんとかしれくれるって思った」  
 鈴音の口調は柔らかい。  
「でも、結果的には良かったけど、もし」  
 鈴音は振り向いたベッキーの唇を人差し指で塞いだ。  
「いいの。もし治らなかったとしても。ベッキーがあそこまで協力してくれなかったとしても。きっと話だけでも聞いてくれると思ったの」  
 それだけでも私は良かったから……と。  
 ベッキーのお眼鏡は間違っていなかったようだ。  
 
「もし……その、鈴音が私のこと、そう思ってくれてるとか知らなくて、もしそういう女の子同士でも……  
ってことがあるとして。私はこういうこと鈴音は乙女と、だと思ってたぞ」  
 うん、と鈴音は顔を俯かせる。何かまた悪いことを言ってしまっただろうかとベッキーは心配する。  
「断ったんだ」  
「え?」  
「実は、前に乙女に告白されたの。でも、断ったの」  
 喉元から出かけた疑問はなんとか口で押さえた。そこから聞くのは野暮というものだ。  
答えは今こうして目の前にいる鈴音以外にない。  
今でも鈴音と乙女はとりわけ仲の良い親友だ、わざわざ辛い記憶をこれ以上想い出させることはないだろう。  
「もうちょっとで論文終わるから。今日は帰りにどこか寄っていこう」  
「やった! あ、でも……えーと。……じゃあ〜ん♪」  
 仰々しい自前の効果音と共に鈴音の鞄から出てきた物は……。  
「なっ! なんでそのキャンディー持ってるんだ!?」  
 見間違えるハズがない、あのときのピンク色のキャンディーだった。  
アレは全てベッキーが回収して今は家にあるハズ。似た色のキャンディーで驚かせたいだけか?  
「ちがいまーす。正真正銘、同じキャンディーだよ♪」  
「な、なんで?」  
 ベッキーはあのときのことを想い出し狼狽して赤面する。  
「他のキャンディーと違っておいしかったから撮影のあと少し貰っておいたの」  
 つまり、これを出したってことは、その……。  
「ど、どうするつもり……?」途端に動悸が激しくなり、口の中がカラカラになる。  
 もし鈴音の持っているストックが無くなっても、成分は調査しているから複製することは可能だ。  
「もう一回……する?」  
 同じく頬を朱に染めた鈴音がキャンディーを口の前まで運んできた。  
「…………うん」  
 ベッキーは甘い期待に胸を膨らませ、艶のある微笑みを返した。  
 
「大×小」 終わり。  
 

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