「…ただいま」  
恐る恐る玄関の扉を開ける。  
年季の入った古びた木製の扉を開けると、いとしい妹が心底怒った顔で腕組みして  
待ち構えていた。  
時刻は夜8時。まあ電気がついているからそれほど暗くはないのだが、しかし彼女の  
オーラが空気をずし、と重くしていた。  
靴も脱がず、ただ立ち尽くす。  
痛々しいほどの沈黙。  
ちら、と顔をうかがうが、ますます機嫌を悪くしたようだった。  
…コイツがこれだけ怒った顔を見たのは久々かもしれない。  
ただ、今回は完全にこちらに非が有る。何を言われても文句は言えない。  
「… ごめん」  
殴られても仕方がないと、覚悟を決めた彼…修が聞いたことばは、しかし意外に寂しく、  
そして優しかった。  
 
「…おかえり」  
「え?」  
拍子抜けした。どんな強いことばをぶつけられるかと身構えていたから。  
だから、短いそのことば…でも、万感の想いがこもったそのことばに驚いた。  
顔を伏せて、彼女はことばを搾り出した。  
「… おかえり、なさい」  
「え… お、おい。くるみ、お前…泣いてるのか?」  
修の声を聞くとくるみはゆっくりと顔を上げた。あとからあとから涙がこぼれていた。  
それを拭おうともせず、ただじっと修を見つめるくるみ。  
耳鳴りがしそうな沈黙のなかで、くるみの嗚咽だけが静かに響いた。  
「… …くるみ」  
耐え切れなくなった修は玄関を静かにあがり、くるみの名を呼んだ。  
返事はなかった。  
かわりに押し殺したような泣き声だけが返ってきた。  
「… ……」  
「…!」  
かけるべきことばは、修にはわからなかった。  
だから、ことばでなく彼女のこころに触れる方法を。  
すっと腕を伸ばすと、自らに引き寄せ、力強く抱きしめた。  
頭に手をまわし、優しくその栗色の髪を撫でる。  
それはちょうど、泣きじゃくる子供をあやす親がすることのようだった。  
 
「…  ごめん」  
ようやく彼が口にしたことばはあまりにも短く、簡単なものだった。  
だけど、これでいい。これじゃないといけない。  
思っていることだけを伝えるのが『伝わることば』なら、今はこれしかないから。  
しばらく黙っていたくるみだったが、しばらくするとおずおずと修の背中に手をまわした。  
「… この、この …ッ バカ兄貴… ッ」  
「… ……」  
「…心配、したんだからね… ホントに、すごく、すごく、心配したんだから…ッ」  
勝気な妹…世界で一番大切な女の子が、自分のせいで泣いている。  
それが修には本当に情けなかったし、申し訳なかった。  
だから、今はくるみを気が済むまで泣かせてやろうと思った。  
「…っ ひっ …ひぐ、ひっく… …兄貴…」  
そして、抱きしめてやること。  
今できることはそれしかないと。  
もう二度と泣かせはしないと。  
できるならこの腕から自分の気持ちが伝わればいいとも思った。  
…俺も、お前に会えなくて悲しかった。  
「ひぐ、ひっ …ひぐ、ぐす…お、にいちゃん…  おにいちゃぁん…」  
「…ごめん。ほんとうに、ごめん…くるみ」  
 
ようやく少し涙がとまってきたくるみの頬に手をすべらせ、自然なしぐさで顔を持ち上げた。  
「あ…」  
まだ涙で目がうるんでいたけど、顔は泣き止んだばかりで真っ赤だったけど。  
かまうことなく、すっと口付けた。  
数日ぶりのキス。  
あいかわらずくるみの髪はいい香りがして、唇はとても甘かった。  
きゅっと腕に力をこめると、くるみの体がふるるっと震えた。  
唇を離すと、もうさっきとは違う頬の赤さをしたくるみが恥ずかしそうにもういちどつぶやいた。  
「… おかえりなさい。…兄貴」  
「… ただいま、くるみ」  
 
「…あー、結構大きく取り上げられてるなあ」  
「そうだよ、ホントびっくりしたんだから」  
桃瀬家自慢のゆったりしたリビング。  
ひさしぶりのソファーの感触。なんかこう、モチモチしてて気持ちいい。  
修がこのあたりで配布されている新聞を見ると、『高校生男女、マラソン大会で行方不明』と  
でかでかと取り上げられていた。  
大げさにもヘリから撮影された森の写真が妙にリアルさを演出していた。  
そう。この間のマラソン大会の最中、(なぜか)自転車で疾走していた修と(なぜか)その後ろに  
乗っていた白鳥鈴音はそろって森の天然の落とし穴に突っ込んでしまい、身動きがとれなくなって  
しまったのだ。  
ケータイもなかったし、近辺に民家もない大ピンチ。メソウサが持ってきてくれた果物でなんとか  
飢えをしのぎ、ようやく救助されたのが昨日。  
ゆうべは警察のお世話になり、ちょっとした聴取やら取材があったが、ようやく家に帰ることが  
できたのがたった今。  
我ながらよく助かったと感心する。  
つい今まで両親にこってり絞られていたところだ。反論のしようがなかったけど、心配してくれていた  
のはわかった。ありがたいと思った。  
…何もいわないところを見るとどうやらさっきのキスシーンは見られなかったようだ。  
危ない危ない。  
たっぷり数時間も怒られると、怒り疲れたのか安心したのか、さっさと風呂に入って  
寝てしまったようだ。  
どうやら相当心配だったらしくまともに寝ていなかったらしい。  
 
キッチンでなにやら作っていたくるみも遅ればせながら文句をたれた。  
「私からも言わせてもらうけど、今度からはゼッタイこんなことしないでよね!」  
「はっはは、ああ、約束だ」  
くるみがぷー、と頬を膨らませてテーブルにぽん、とオムライスを置いた。  
腰に手をあてる仕草とチェックのエプロンがかわいらしいコントラスト。  
オムライスは彼女のお手製だ。エトワールで練習してるうちに得意料理になってしまったらしい。  
ふわっとした卵を口に含むと、甘い香りが口中に広がる。  
プロの技だといっても差し支えがないくらい、それは見事なものだった。  
「ん、うまい!」  
「あったりまえでしょ、私が作ったんだぞ?」  
こんな風に当たり前に家で幸せな時間を過ごすのも、ずいぶん久しぶりな気がした。  
…もっというなら、恋人と。  
修とくるみは恋人同士。  
実の兄と妹。許される関係でないのはわかっているけど。  
 
…いつからだっけかな、コイツとこんな関係になったの。  
まあ、あえていえば小さいときから。ずっと…本当にずっと一緒にいたし、他の子が初恋を  
経験する時期にもお互いしか目に入ってなかったし。  
そして、現実的なことを言えば高校生になってから。  
…くるみが泣きながら告白してきて。それをなだめて抱きしめて。  
 
それが、どうしようもなく可愛くて。  
この女の子が。生まれたときから一緒にいる、妹が。  
彼女が俺を大好きだといってくれたように、俺も彼女が大好きだと気づいた。  
 
優しく抱きしめて、初めてキスをして。  
そんで、そのまま…その、流れで…シちゃったんだけど。  
痛がって泣いていたけど『やめて』って言わなかったくるみがいとおしかった。  
…くるみの肌、いいにおいで…きれいだったな。  
「…兄貴、なーんかエッチなこと考えてるでしょ?」  
「! な、なにいって…っ」  
「わかるよ、兄貴のことだもん」  
咎める、というよりもからかっている感じ。くしし、と笑った。  
「〜〜〜〜〜 ……」  
むー、と照れた顔を浮かべる修を、くるみは楽しげに見つめていた。  
 
「ごちそーさま。あー、美味かっ…」  
「あーにきっ♪」  
「おわ!?」  
食べ終わった皿をかたしもせず、くるみが修に勢いよく抱きつく。  
後ろに倒れこむが、ソファーのやわらかさが背中と頭に気持ちよかった。  
「お、おい、ヤバいって!父さんと母さんが…」  
「二人とも一回寝たら朝まで絶対起きないの知ってるでしょ?だいじょぶだって」  
くるみがもう我慢できない、という風に言う。  
 
この関係は二人だけの秘密。  
 
実の兄妹が逢瀬を重ねている、なんて他人はおろか両親にだって言えるわけがない。  
だから普段学校でも二人はあまりことばを交わさないし、そのおかげであの玲にすら  
感づかれていない(と思う)。  
しかし、修はまだしもくるみは学校で話せないということにすごく不満がある。  
休日には長い時間一緒にいられるからいいものの、平日イチャイチャできるのは朝のわずかな  
時間と夕方以降、両親の目がとどかないところでだけ。  
それだけに、その反動なのかくるみの甘えっぷりはすさまじい。  
ぎゅーっと胸を押し付けて修の胸に顔をすりすり。  
「ん、ふふ… おにいちゃん…」  
「… くるみ…」  
甘えるときと感情が昂ぶったとき、くるみは修を『おにいちゃん』と呼ぶ。小さいころは  
修の後ろをちょこちょこ付いてきたくるみ。  
そのときのことを思い出しているのかは修にはわからなかったが、なんだかその呼び方が  
くすぐったい。  
「おにいちゃん…」  
修の体を離すもんかと言わんばかりに力いっぱいだきしめ、熱を感じる。  
くるみはコレが好きだった。  
別にナニをするでもなく、ただ抱きついているだけ。たまに髪を触ってくれたりするのが  
気持ちいい。思い出したようにしてくれるキスも大好きだった。  
 
「んー…」  
すりすり。  
「くるみ… …」  
「ん、んー…」  
すりすりすりすり。  
「…気持ちいいか?」  
「ん、すごくきもちーよ」  
胸に顔をうずめていたくるみだったが、とろけきった笑顔をむける。  
最高に幸せそうだった。  
…か、可愛い。  
「きゃ… !?」  
思わず自分からもくるみの体を引き寄せ、優しく抱きしめる。  
くるみの肩に、首筋に軽く口付けて、耳元で小さくささやいた。  
「可愛いよ、くるみ」  
「… あ、あう」  
顔を真っ赤にして、ぼふ!と頭から煙を噴出す。自分からアプローチをかけるのは  
大の得意だが、こう、相手からされるのはちょっと苦手だった。  
こち、こち、こち、こち、と時計の針が動いているのが聞こえる。  
聞こえる音はそれしかなかったけど、それがなんだか心地よかった。  
もうどれくらい時間が経ったかもよくわからない。  
結構長いことこうしていた気もするし、あんまり長くない気もする。  
小さくひとつ溜息をついてゆっくり目を閉じる。  
 
「… …はふ」  
「ん?どうした?」  
「んーん、なんでもないよ」  
「…ヘンなやつ」  
「ヘンなやつでいいですよー」  
なんだか不思議。全身で触れ合っているだけでおにいちゃんの気持ちがわかる気がする。  
この『世界』に、いるのは修とくるみだけ。  
外では触れ合えない、家の中…この空間だけの恋人。  
それでもよかった。もとから人様に言える関係じゃないのはわかってるし。  
ただ、せめてその時間だけでもずっと一緒にいたかった。  
 
修がすっと体を上げた。  
「あ…」  
くるみが寂しそうな顔を浮かべる。  
安心させるように修はやわらかい笑顔を向けると、くるみの髪を撫でながら優しく声をかけた。  
「…風呂、入らなきゃな」  
「へ?」  
「…いや、さ。俺ももう少しこうしてたいけどそろそろ風呂入らないと」  
「あ…そうか。もうそんな時間なんだ」  
時計を見るともう11時。  
もう1時間はこうしていたらしい。  
修もくるみも12時には寝るから確かにそろそろ入らないといけない時間だ。  
 
すっと立ち上がって、自分の皿をかたしてからジュースを持ってきた修は、二人分の  
コップにそそぐと片方をくるみに渡してことばを続けた。  
「くるみ、先に入っちゃえよ。あとでまた、な?」  
「え… う、うん…」  
ちびりちびり、とジュースを飲みながらくるみは煮え切らない返事を返す。  
いやだ。いやだ。  
もっと一緒にいたい。触れ合っていたい。  
数日ぶりにやっとあえたのに、少しの間でも離れ離れになるなんていやだ。  
そう思ったくるみは半ば無意識にことばを繰り出した。  
「あ、あのさ、兄貴」  
「ん?なんだ?」  
顔を伏せて体をもじもじさせる。  
なんなんだ、と修が思うと同時にくるみが恥ずかしそうに切り出した。  
「い…いっしょに、入らない?」  
 
空気が止まった。  
 
…え?一緒にお風呂?  
えーと、要するにあのせまい空間に俺とくるみが二人で  
 
はだかで  
 
はだ  
 
「… …… …  え ええええ!?」  
思いっきり驚いた声をあげる。  
思わず体勢をくずしてソファーに倒れこんだ。  
「ちょちょちょちょ、ちょっと待てって!お前…そりゃヤバいよ!絶対ヤバい!」  
「うー。何がよ。…もうお互い、相手の体なんて見飽きるくらい見てるじゃない」  
「う… そ、それとこれとは別問題だ!」  
確かにくるみのいうとおりだ。  
もう何回か体を重ね合わせているし今更躊躇することもないといえばないんだが…  
ただ、一緒にお風呂、っていうのは何故かまずい気がした。  
それは多分、良識的な問題で。  
「だ、だから。もう子供じゃないんだから。な?」  
「… 子供でいいもん」  
「くるみ!」  
「やだよ… さびしい、んだもん。やっとおにいちゃんが帰ってきたのに…私、すごく  
心配だったのに…」  
次第に声は萎んで、目じりに涙が浮かぶ。  
そんなくるみを見て、思わず息がつまらせた。  
 
言っていることは簡単だ。ただ愚直なまでに修と一緒にいたい、といっているだけ。  
修も同じ考えだったし、それに。  
…ついさっき、もうくるみを泣かせないと誓ったばかりじゃないか。  
要するに、この状況で言えるセリフはこれだけってこと。  
「…あー、わかった、わかったよ。今日だけだぞ?」  
それを聞くいたくるみは、ぱああ、と顔を晴れさせた。  
やっぱり、こいつは笑っている顔が一番かわいい。  
「うんうん!それじゃ、はやく入ろ!」  
うきうきと着替えを取りに行くくるみを見て、修は頭をかかえてどうやって理性を保ったものか  
渋い顔をして考えていた。  
 
湯気が立ち上り、しゃー、というシャワーの音が響く。  
風呂場のなんともいえない、甘いような落ち着くような匂いが修は嫌いではなかった。  
ちゃぷん、と顔の下半分までお湯に浸けて一日の疲れを癒そうとリラックス状態の修だったが、  
目前のシャワーを使っている人物のせいで心中まったく穏やかではない。  
というか、穏やかにさせてくれ。  
「〜〜♪、〜♪」  
くるみだ。気分よさそうに鼻歌なんか歌って、シャワーで体を洗っている。  
さっきから必死に意識からはずそうとするが、目の前にちらついてしょうがない。  
…その、くるみの…お尻が。  
ぷりん、としていてやわらかそう。頭から流れるシャワーのお湯がつつー、と流れてきて、  
たったそれだけのことが何故かすごくいやらしい。  
少し体をひねるだけで大きめな胸が揺れるのが背中ごしでも見えるし、お尻も小さく揺れる。  
…や、やばい。  
ここで襲い掛かったりしたらただのスケベ魔人だ。  
無理やり呼吸を整えてゆっくり目を閉じる。  
息を吐くとこぽこぽ、と泡が吹き出した。  
「…見てもいいのに」  
「ぶばっ!?」  
思いもよらない声に思わずお湯を飲み込んでしまった。  
ばっと声のしたほうを見るとくるみがくすくす、というような笑顔を浮かべていた。  
うまいこと体をひねってこう、キワドイところが見えないような体勢。コノヤロウ。  
「ふふ。ねえ、見たい?…兄貴だったらいくら見られてもいいんだけどなあ」  
「バ、バカ!べ、別に…」  
別に、なんだ。  
見たくないわけじゃない。いや、むしろ見たい。思いっきり見たい。  
しかし、ここで見てしまったら理性を保つのはほぼ無理だ。  
こう、だいぶ『ご無沙汰』だしくるみが誘ってるのはわかってるけど、やっぱり風呂場っていうのは  
人道的に考えてまずい気がする。…気がする。  
…いやまあ、もう半分以上ただ恥ずかしいだけなのはわかってるんだが。  
い、いやしかし。うーむ…  
 
ちゃぷん  
 
「…へ」  
「…んー、やっぱ二人はちょっとせまいね」  
「うわわわわわわわわ!?な、なんだよ!?」  
「ん?返事なくて寂しいから」  
ざばっと派手な音を立てて驚いた。  
修があれこれ考えているうちに浴槽に入ってきたくるみは本当に少しばかりせまそうに  
体を無理やり入れようとしている。  
いや、それはいい。  
いいんだが、なんで真正面から入ってくんだよ!見えてるじゃん!!  
「あ、ああ、お、俺、体洗うから!!」  
「あ、こら!もっとちゃんとあったまりなさい!」  
逃げるような修を後ろからがっちりホールドし、無理やり浴槽に引き戻す。  
またざぱっと派手な音がした。  
「わっぷ… ぷは!く、くるみ、お前なあ!」  
「むー。かわいい恋人がせっかくイイコトしてあげようとしてんのにそれはないでしょー!」  
「い、いいから!わかったから離せ!離してくれ!」  
そこまでいってようやく気づく。  
背中にダイレクトに伝わるやわらかい二つの感触。  
その二つほどではないが、ぷにぷにしているおなかの感触。  
…で、もうちょっと下の…  
ぐあ。  
 
「〜〜〜〜〜 …」  
「そうそう。ちゃんとあったまらないと、湯冷めしちゃうよ」  
ちゃぷん。  
くるみが後ろから修を抱きしめたまま、ゆったりとした時間が流れる。  
修のドキドキしてる心臓の鼓動がそのまま伝わってくる。  
…兄貴ったら、無理してんなあ。  
くすくす、とまた小さい笑いがこぼれた。  
顔をこれ以上ないくらい真っ赤にしてすねたような修。  
でもくるみを泣かせたことの修なりのお詫びなのか、ここまでワガママに付き合ってくれる。  
それがくるみには嬉しかった。  
 
「…じゃ、そろそろ体洗おっか?」  
「お、おう。…って、おい。その言い方だとお前が…」  
「私が洗うよ?」  
「やっぱりかよ!」  
頭痛がしてきた。  
正直、これ以上理性が持ちそうもなかったが、体洗ってそのまま風呂から出てしまえば  
ギリギリ耐えられないこともない。  
…なんの試練だ、これは。  
とりあえずシャワーの前にどっかと腰をおろし、もう好きにしてくれと言わんばかりの体勢。  
「〜〜♪」  
くるみはまた鼻歌なんか歌っている。  
わしゃわしゃ、とタオルをこする音。石鹸を塗りこんでいるようだ。  
すー、と大きく息を吸い込み。はー、と大きく息を吐いた。  
もう、ナニがあってもおどろかねぇ。  
くるみが何をしてきても、心を無にして…  
 
むにゅん  
 
「〜〜〜〜〜!!」  
「ん、しょ。ん、しょ…」  
「く、くる…」  
ずり、ずりと自分の胸を懸命に修の背中にこすりつけるくるみ。  
お約束といえばお約束ではあるが、この状態の修にとっては劇薬以外の何物でもなかった。  
泡だった石鹸が彼女特有のやわらかな肌をなめらかにコーティングしていやらしいことこの上ない。  
…そのやわらかい感触のまんなかへんに妙に硬い二つのしこりを感じる。これ、多分…  
「…っ …… …っ」  
「〜♪ 〜♪」  
動くに動けない。  
頭の中がショートしているのもあるが、後ろからくるみの腕ががっちり、修の首にまわされて  
いるのだ。  
ぐるぐる目をまわしている修と対照的に楽しげに鼻歌を歌っていたくるみは、唐突に修の耳元で  
ぽつりとつぶやいた。  
「あーにき… …」  
「… …な、なんだ?」  
「…ねえ… …しようよぉ…」  
ストレートな誘惑。  
こういうときのくるみはとても高校生とは思えないオトナの声を出す。  
とろけそうに魅力的なその声が、修の理性を奪い去っていく。  
「ねーえ… もう私、こんなになっちゃってるんだよ…」  
修の右腕をくすぐるような手つきですっとつかむと、自らの秘所に戸惑うことなく導いた。  
くちゅ、と熱くやわらかい感覚。  
 
「あ…お、おい…」  
「ん…は、はあ… ね、熱いでしょ…? はあ、は…兄貴のこと考えて、こうなってるんだよ…?  
ほら、ここも… ん…!! こ、んなに…」  
くりっと顔を出した突起に修の指をこすりつける。  
あとからあとから溢れ出す愛液が、その手をびしょびしょに濡らしていく。  
「く、… く、くるみ…やっぱり、こういうのは… …」  
「ん、ふふふ… あ… はあ、はあ… ナニいってんのよ…兄貴だってこんなにしてるじゃない…」  
つー、と修の首筋を舐めながら修自身に左手を伸ばす。  
「う、あ…! や、やめ… …」  
「こぉんなに硬くしちゃってぇ… んふふ、我慢しなくてもいいんだよ…?」  
くにゅくにゅくにゅ。  
くるみの巧みな指先が修自身を強烈に刺激する。  
先端をくにくにと弄ぶと修の体がびくびくっと揺れた。  
「…! あ、くあ… く、るみ…」  
「ふふ、えいえい!ほら、イっちゃえ!」  
くにくに!  
力強く握ってさらに刺激を加える。  
修の右手の指を自らの秘所のさらに奥へ、奥へすべりこませ、くるみ自身も快楽をむさぼる。  
肩越しに言葉にならない声をあげていた修の唇を自らの唇でふさぐと、鼻息がこそばゆかった。  
 
「… ん、んー… ん、ん…んんー…」  
「ん、ちゅ… んー、ぷ …ちゅ、ちゅ…」  
「ん …んん …!!」  
びくびくびくびく!!  
「きゃう!」  
びゅ、びゅっと修自身から白く濁った欲望が吹き出した。  
思わず驚いた声をあげたくるみだが、それが仕方ないくらいのすごい量だった。  
「ぐ …あ、ああ…!」  
びゅ、びゅびゅ!  
いまだ治まることをしらない放出を続け、体から力が抜けていく。  
一滴も逃すまいと、くるみは左手にソレを塗りたくった。  
「ん… はあ… お、にいちゃん… すごい…」  
ようやくおさまった放出に修はぐったりとくるみに体を預ける。  
荒く息をつきながら、ちらりとくるみに目をやると、彼女も目をとろんとさせていた。  
汗とも風呂のお湯とも判別がつかなかったが、したたる水が彼女をより艶っぽく見せていた。  
「あは … おいしそう…」  
ぽつりとつぶやくと、ためらうことなく左手についたソレを舌でちろちろ、舐めとっていく。  
子犬がエサの残りをそうするように、丹念に。  
「く、くるみ… そんなの、やめ…」  
「んー…やーだ。これ、もう私のだもん」  
いたずらっ子のように笑顔をうかべ、じゅじゅっと音をさせてすすりきる。  
呆然と眺めていた修がゆっくりと体を離し、くるみを見ると全身をピンク色に染めて本当に  
おいしそうな顔をしていた。  
 
「… ん、ん…」  
ごくん。  
舌で丹念に転がし、飲み下した。  
その顔は恍惚に染まり、口からこぼれるよだれが修の理性を完全に奪い去った。  
「え、へへ …おいし、かったぁ」  
「… !」  
「きゃ…!?」  
正面からくるみを押し倒し、顔を向かい合わせる。  
修の目にもう迷いはなかった。  
ここまで我慢し続けた反動からか、その目はどうしようもないくらい本気だった。  
「… お前が悪いんだからな」  
「…うん。…いいよ、好きにして。滅茶苦茶にして」  
「くるみ…」  
ようやくソノ気になった修を嬉しく思いながら、くるみは妖しい笑顔を向けた。  
すっともういちど口付ける。  
今度は、修から。  
自分の白濁液がくるみの口に残っているかもしれないとか、関係ない。  
ただただくるみが欲しい。  
くるみを自分の思うとおりにしたい。  
…くるみに、俺を刻み込みたい。  
それだけを考えて、夢中で舌を滑り込ませた。  
 
「んー、ちゅ、ちゅ、ぢゅぷ… れる… んー…」  
「ん、ん、ちゅ、はあ … ん、ちゅ…」  
くるみの上にのしかかり、互いの唾液を交換し続けている。  
手は互いに互いの秘所を刺激し合い、感覚を高め続けていた。  
桐のいい匂いのする大きな風呂場に、淫靡な水音がひたすら続いていた。  
「んー、ぷは… お、おにいちゃぁん… 気持ちいいよぅ…」  
「ん… 俺も、いいよ…」  
唇を離すと、今度はくるみの乳房に舌を這わせる。  
れる、と一舐めするだけでくるみの体が大きく震えた。  
先端を舌でころころ転がし、ちゅううっと思い切り吸い上げる。  
「ひゃああああああああ!?」  
「ちゅ、ちゅううう… ちゅ、ちゅう …」  
くるみは、胸が弱い。お尻も弱い。秘所も弱いし、そもそも肌を修に触られるのが弱い。  
要するに全身が性感帯な彼女にとっては、修の指がどこに触れても昂ぶってしまうのだった。  
乳首を吸い上げながら、左手の指先でおへそのあたりをつつーっと撫でる修に、振るえる声が  
出てしまう。  
「… や、やあああああん…」  
くるみの声に呼応するように秘所からだらだらと愛液が流れ出す。  
一番刺激してほしいところをわざとさわらない修。  
そんなイジワルが嬉しかったけど、今は少し切なかった。  
「ね、ねえ…おにいちゃあん… さわってよぅ…」  
「ん、ちゅ… はは、くるみはエッチだな」  
「う、うー… 言わないでよ…」  
顔を真っ赤にしてイヤイヤ、というように顔を隠す。  
それがたまらなく可愛らしい。  
つーっと指をはわせ、突然くるみの秘部に指を突っ込んだ。  
 
「…っ ! あ、あは、はああ… そ、そう!そこ、いいの…!」  
「ん、ちゅううう…」  
なおも乳首を舐めながら吸いながら、指でくにくにと好き勝手にいじりまわす。  
その顔にはもう快楽を貪りたい欲望しか映っていなかった。  
「あ、はあ、は、は、はあああああ… き、きもち、いい…!」  
指の動きが激しくなるにつれてくるみの反応も強くなっていく。  
不意打ち気味に、その突起をくりっと指でひねってやると大きく目を見開いて  
体を大きくのけぞらせた。  
「…! や、やだ… い、イく、 イく…イっちゃうよぉぉ!!」  
びくびくびく!!  
突然の急所への刺激に耐え切れず、すぐさま果ててしまったくるみに、修は優しい笑顔を  
向けた。  
「…かわいかったよ、くるみ」  
「… うにゅう…」  
疲れたように、また恥ずかしそうに顔をそらすくるみだったが、まだ修は満足していない。  
…おにいちゃんも、気持ちよくしてあげなきゃ。  
ついっと顔を向けて、小さくつぶやいた。  
「おにいちゃん…  もっと、シよう…?」  
「え… い、いいよ。俺、さっきイったばっかりだし…」  
突然頬を赤らめる修だが、体は正直だ。  
「ん… そのわりに、ソレ、すごく元気そうじゃない?」  
ぴっとソレを指差すと、天を突かんばかりに大きく屹立していた。  
うぐ、と言葉につまった修だが、続けられずに黙り込んでしまう。  
…しょうがないなあ、と心の中でだけ苦笑して、くるみは浴槽に両手をついた。  
「え … ……お、おい、くるみ!」  
「ほら… 好きにしていいって言ったでしょ…?」  
ぷりんとしたお尻を突き出し、小さく左右に振ってみせる。  
大きくて、やわらかそうで、おいしそうなくるみのお尻。  
 
修が実はお尻好きなのは知っている。  
…前に部屋に(勝手に)はいったときにみつけたエッチ本が…その…  
と、とにかく。  
彼の望むことならなんでもしてあげたい。悦ばせてあげたい。  
ちょっと恥ずかしいけど、おにいちゃんのためなら。  
「…ほら、いいよ?」  
「う… くるみ…」  
恐る恐る柔らかな肉に手を伸ばす。  
ぺた、と手のひらを思い切り広げてもまだ少し余る大きな桃尻。  
ぐにぐに、と揉みしだくとくるみの体にまだ体験したことのない強い快感が襲った。  
「あ、あああ… なに、これ…すごくヘンな感じ…」  
「くるみ… 」  
両手で刺激を加えると、修の手の動きにあわせてくるみのお尻が姿を変えていく。  
こらえきれなくなった修は、ぷりんぷりんと揺れる尻肉に舌をはわせた。  
「ひゃ、ひゃう!?」  
「ん、れろ… ちゅ、ちゅ…」  
「お、おにいちゃ… そ、そんなに、ダメぇ…」  
予想外の攻撃に思わず足から力が抜けそうになる。  
それでも兄のためと懸命にこらえるが、より強く刺激する修にこらえきれなくなり、  
膝から崩れ落ちた。  
「きゃ…!」  
「… う、わ…」  
浴槽に手をついたまま膝をつき、お尻を突き出す格好になったくるみは、修の目にとても  
扇情的に見えた。  
あふれたお湯をまた少し浴びてぬら、と光るお尻を優しくさすり、小さく声をかけた。  
「… もう、ダメだ… 挿入ちゃう、ぞ…?」  
我慢がきかなくなった修は大きく自己主張する自身をとりだし、くるみの尻肉を大きく左右に  
割ると、ひくひくとうごめく小さな菊門が見えた。  
 
「え …え!? そ、そっち!?ちょ、ちょっとまって…」  
くるみの声が聞こえたが、やや暴走気味の修には届かない。  
軽く舌を入れて刺激してやると、先ほどとは比べ物にならない強い感覚がくるみに襲い掛かる。  
頭から足にかけて電流が走ったような感覚に、くるみは息をつまらせた。  
「いっ …… あ、あああああああああ…」  
「ん、ちゅ… もう、いいかな…」  
体から力が抜け、大きく肩で息をついているくるみのお尻をつかむと、その小さな菊門に一気に  
自身を突き入れた。  
背中からぞくぞくぞくっとした感覚を感じ、くるみは大きく体をのけぞらせた。  
「あ、ああああああああああああ!!」  
「ぐ…っ し、締まる… !」  
修自身を包み込むかのような肉が、きゅきゅっと収縮してソレを刺激する。  
引き抜こうとしてもくるみの肉がからみつき、離すまいと強い抵抗を見せた。  
ず、ず、じゅ、じゅぷ、じゅぷ、じゅぷ、ずぷ!  
「は、あ、あ、あ、あ、ああああああ…」  
「は、は、…   くるみ、くるみぃ…」  
本来、モノを出す器官に恋人自身が入り込んでいる。  
その事実は修にも、またくるみにも背徳感に似た感覚を覚えさせた。  
「や、あ、あ… な、に、これぇ… 痛いのに…いたいのに、きもち、いいの…ああ!?」  
「くる、み…俺も、 気持ち、いい…」  
ずぷ、ずぷ、と肉と肉がこすれあう音。  
激しく腰を動かすと、互いに痛みとも快感ともつかない感覚が走った。  
その間にも修の手はくるみのお尻をくにくにと力強く揉みしだき、赤い跡を作る。  
と、突然前の穴の突起に手を伸ばし、指でコスコスと激しく擦り立てた。  
 
「あ、あ、ああああああん!! そ、…ど、どっちもなんてぇ…!」  
いまだかつてない快感に大きく口を開けてよだれをだらだらとこぼし、力の抜けた声をあげる。  
その声とともに裏門の収縮がより強まり、修自身をぎゅっと包み込む。  
「く…! くる、み…また、強く…!」  
激しい腰の運動に疲れてきていた修だったが、その快感にまた勝手に腰が動き出してしまう。  
生まれてから今まででもっとも強い快楽。  
互いに動物のように快感を貪る。  
「あ、あああ…き、もち、いい… きもち…きもち、いいよぅ… !!」  
もはや痛みは全く無い。  
大きく声をあげ、意識を保つのに必死なくるみは、互いの限界が近いことを感じ取っていた。  
修の腰の動きもますます激しくなり、スパートをかける。  
じゅ、じゅ、じゅ、という音の間隔が次第に短くなっていく。  
「く、くるみ… 俺、もう…!」  
「出して… ナカに、ナカに…思いっきり出してぇぇぇぇぇ!!」  
ぽたぽたっと秘所から液を垂れ流しながら本能のままに叫ぶ。  
そんなくるみの腰をぐっとつかみ、腰の動きを止め、放出の一瞬の間を二人で感じた。  
「… ……っ っ」  
「… く …っ」  
びゅ、どぴゅどぴゅぅ!びゅ、びゅくびゅく、びゅく!  
「あ、ああああああああああああああああ!?」  
くるみの直腸に修の欲望が叩きつけられる。  
熱い。  
修の熱。修自身の熱。  
それを体内に直接感じながら、くるみはずるっと体を崩した。  
「は、はあ、はあ、はあ、はあ…」  
「くあ… は、はあ、はあ…」  
どろ、とくるみのすぼみから白い液が噴出した。  
互いに激しく荒い息をつく。しゃべることすらままならなかったが、小さな微笑みを互いに見せ合った。  
かたん、と桐の桶が倒れた音が聞こえた。  
 
「… お、お尻も…き、きもち、よかった」  
「え   …そ、そうか」  
「うん… …でも、今度からはちゃんと私に言ってからにしてね?」  
「あー … ごめん…」  
ちゃぷん。  
行為を終えた二人は、また二人で仲良く同じ風呂に入っていた。  
今度は修がくるみを後ろから抱きしめるカタチだ。  
まだ少し疲れが残っていたが、それがお湯の温度の心地よさをより感じさせていた。  
はあ、と互いに深呼吸。  
いまは、触れ合っているだけで幸せだった。  
「…ねえ、兄貴」  
「 …  ん?」  
「ずっと、いっしょにいてね?」  
すっとくるみが肩越しに顔を覗かせる。  
その顔には不安が色濃くあらわれていた。  
…兄妹では結婚はできない。当たり前のことだ。  
だから、それだから不安なんだろう。結婚という確かな絆を築けない関係の二人。  
いつか、誰か自分よりもっと魅力的な女の人があらわれたら…  
そんな顔。  
…答えは、決まってる。  
 
「あ …」  
ぎゅ。  
後ろから優しく包み込み、小さく声をかけた。  
「…当たり前だ」  
「 … うん」  
そのたくましい腕に手を添えて、嬉しそうに目を閉じるくるみ。  
それに応えるように、くるみも。  
「…私も」  
「ん?」  
「私も、絶対お嫁になんか行かない」  
「… うん」  
「行かないからね」  
「ああ」  
決して許されない、二人の関係。  
神さまにケンカを売ってるといってもいい関係。  
この会話を両親が聞いたらどんな顔をするだろう。  
…いずれ、話さなければならないときが必ず来る。そのとき、自分たちは自分たちの意思を貫けるだろうか。  
でも。  
「くるみ」  
「… なあに?」  
「大好きだ。ずっと、お前を大好きでいるからな」  
「… …私も。大好きだよ。私もずっと兄貴を大好きでいる」  
絶対、離さない。絶対、離れない。  
神さまを敵にまわしても、俺はコイツを愛してる。私は、おにいちゃんを愛してる。  
何があっても、世界が終わるとしても、ずっと、ずっと一緒にいる。  
この誓いが二人の絆。  
この絆さえあれば、どこまでもいける。  
くるみを抱きしめる腕に力をこめた。腕に添えられたくるみの手が、暖かかった。  
桐の淡い匂いがした。  
「… え」  
くるみの手をとって、一度だけ口付けた。  
 
 
おまけ  
 
「…あ」  
「え?」  
「… …兄貴の、また大きくなってる…」  
「…  ぐあ」  
「ねえ、知ってる?」  
「な …なにを?」  
「その… お風呂のなかですると、赤ちゃんできないんだって」  
「… そうなのか?」  
「うん…らしいよ。… ね、する?…しようよ」  
「…くるみ!」  
「きゃあ!もう、兄貴のエッチ!」  
…どうやら桃瀬家の夜はまだまだ終わらないらしい。  
 
 

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