「レベッカ、まだ起きてたのか?」  
後ろから男の声がする。  
 
レベッカ―――そう呼ばれた少女はパジャマ姿でリビングのソファーに背を預けながらTVを見ていた。  
 
彼女は声の主の方も向かずにうん。とだけ答えた  
 
「今日は学校だろ?さっさと寝ないとまた遅刻するぞ」  
時計の針は午前3時30を指していた  
男は続ける  
「この間も遅刻して怒られたそうじゃないか…お前は仮にも先生なんだから、自覚してるのか?」  
 
「別にいいだろ、ちゃんと授業はしてるよ…」  
レベッカはちらっと声の主の方を見てそう言うとすぐにTV画面に視線を戻した  
 
「またそんな通販番組なんか見て…どうせ買わないんだから見ていても意味ないだろ…」  
「うるさいな〜何を見てようが私の勝手だろ?黙っててよ」  
レベッカはさも欝陶しそうにそう答えた。  
 
その態度に声の主はやれやれと言った感じで…  
「いいから早く寝ろよ、さもないと―――」  
 
不意に―――不敵な笑みを浮かべた…  
 
「さもないと何だよ…!?」レベッカは言葉の途中ではっ!と何かに感づき、男の方を振り返った。  
いつの間にかソファーのすぐ後ろにまで彼は近づいてきていた。  
 
とっさに立ち上がった。  
が―――彼に羽交い締めにされる形で捕まってしまった。  
「聞き分けの無い妹にはお仕置きが必要だよな?」  
彼はニヤッと笑うとレベッカをソファーの上に荒々しく押し倒した。  
 
そして―――  
「まっ…んむッ!」  
 
レベッカの唇に自分の唇を重ねキスをした。  
 
「んむっ!…んっ……んんッ…」  
それもただのキスではなかった、レベッカの口内に自分の舌を侵入させ舌と舌を絡める。  
―――大人のキスだ。  
 
レベッカは殆ど抵抗しなかった。  
いや―――できなかった。男はしっかりと体重をかけてレベッカを押さえ付けていたし、それに―――  
 
彼女は感じていた。  
キスだけで……  
目をつむり、頬を朱色に染めて―――次第に息遣いも荒くなっていく。  
 
彼は自分の唾液をレベッカの口内に流し込んだ  
「ん…っ…んんっ(コクン)」  
それを飲み込む。彼は何度も自分の唾液をレベッカの口内へと流し込む。その度にレベッカは健気に彼の唾液を飲み込んだ。  
 
「ん…ぷはッ……ぁ…」  
口を離すと名残惜しそうな声をあげる  
トロンとした目で彼を見つめる  
彼はレベッカの下腹部を撫で上げた  
「ひゃっ…!」  
レベッカはビクッと小さく身体を跳ね上げた  
 
彼は彼女の浮いた腰に左手を回し、脇腹と下腹部を滑るように愛撫する  
「…あっ!…ひゃ、あんっ…」  
ズボンの中に手を滑り込ませ、下着の上からそこを触ってみる。  
 
――――濡れていた  
 
彼はそれを確認すると手を引いてしまった。  
「あ………」  
レベッカは名残惜しそうに下腹部をもじもじと擦り合わせた…早く続きをして欲しかった。  
それを見た彼は…  
「続けて欲しいか?」  
そう言った  
 
「……………」  
レベッカは少し間を置いてから恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めてコクっと頷いて言った  
「………して…欲しい…」彼は再びニマッと不敵な笑みをすると  
「や〜めた」  
そう言うとレベッカから身体を離してしまった  
「………え?な、なんで…」  
「お仕置きだからな」  
ニヒヒっと笑うとソファーから立ち上がってしまったレベッカは懇願する  
「ま、まって……」  
ここまできてお預けだなんて酷すぎる…が―――  
「おやすみ、レベッカ」  
そう言うと彼は自分の部屋へ行ってしまった。  
 
「…………………」  
レベッカは暫くだまっていたが、やがて小さく、か細い声で言った…  
 
「修にいちゃんの…イジワル…――――」  
 
 
 
―――ここで目が覚めた。  
(…………………夢?)  
 
レベッカ宮本(通称ベッキー)は机に突っ伏していた。口の端からはよだれが垂れている。  
ゆっくりと頭を上げ、口元を手の甲で拭いた。  
 
まだ眠い……周りを見てみる。見覚えがある部屋の中だ―――  
(研究室…?)  
まだ完全に起ききってない頭で考えてみる。  
(あぁ、そうか…今日は職員会議があって…)  
 
朧げながら記憶が甦ってきた。  
 
今日は職員会議があって授業は午前中しかなかった。午後はダラダラと会議室で教師同士の中身の無い話し合いをして  
そのまま研究室に戻ってきて  
溜まってた仕事をしていて………どうやら眠ってしまったらしい。  
時計を見る。18時20分。  
会議が終わって研究室に戻ってきた時が大体15時だったから3時間程眠っていたらしい…――  
 
それにしても―――  
 
「なんて夢だよ…」  
 
「…なんで桃瀬が私のお兄ちゃんなんだよ」  
彼女が言う桃瀬とは彼女が担任の1年C組の桃瀬くるみの双子の兄、桃瀬修の事である。  
(その修が私のお兄ちゃんで…その…あんな事を……)  
思い返す。  
かぁぁっと顔が赤くなっていく。  
 
(修…兄ちゃん…)  
 
―――悪くないかも…  
修はカッコ良いし…面倒見がいい、それに一緒に居て安心するし気をつかわなくてもいい……  
ふと、考える。  
もしあのまま続けられたらどうなっていたのか?  
レベッカはまだ11歳だ。桃月学園に来る前はずっと勉強しかしてこなかった。それも自分が必要だと思った事しか習わなかった。  
故に性の知識はまったくと言っていい程無かった。  
修がもし続けていたらどうなっていたのか?想像がつかない。  
 
でも…  
(修なら…その…あぁゆう関係になっても……いい…かも…)  
自分の考えにさらに顔を赤くする。  
 
…………って、  
「何を考えてるんだー―――!」ギャピー  
無意味に大声で叫んだ。  
さっきまでの不純な考えを吹き飛ばすかの様に……  
 
「別に桃瀬の事を好きって訳じゃないんだ。たまたま見た夢が桃瀬だった訳で…その、夢だから…別にそんな気になっても……大体なんで私があ、あんなことされなきゃなんないんだよ!」  
誰も聞いちゃいないのに言い訳をする。それも動揺している為、よくわからない事を言ってわめき立てている。  
 
「……………」  
急に自分が滑稽に思えて大人しくなる。  
 
暫く沈黙していたがやがて小さく呟いた。  
「……別に桃瀬の事なんか好きじゃないもん。」  
 
―――嘘だ。  
本当は薄々気付いている。自分は修の事が好きなのかもしれないって…  
そうでも無ければあんな夢だって見ない。  
ただそれを認めたくないだけで…  
 
「好きじゃ…ないもん……」  
もう一度だけ呟く  
なんだか急に寂しい気持ちになった。  
 
「…………もう帰ろう」  
仕事をする気にはなれない…  
自分の鞄を持ち研究室から出ていく。  
研究室の扉を閉め、鍵をかける。  
そして職員玄関まで歩いてゆく……  
外はオレンジ色の綺麗な夕焼けだった。  
 
 
―――続く?  
 
 

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