…あ、そういやさ」  
昼食時の職員室、早乙女と何気ない談笑をしていたベッキーが思い出したように切り出した。  
「結局、五十嵐先生って昔はどうだったんだ?」  
「へ?五十嵐先生ですか?」  
「うん。この前はお前が途中で裏につれてかれちゃったからさあ」  
もぐもぐ、とご飯をほおばりながら言うベッキー。  
そんな彼女を見て、少し困った顔になった早乙女は少し答えにくそうに言葉を吐き出す。  
「い…いやあ、あんまり人の過去は詮索しないほうがいいと思いますけど…」  
「あー、そういわずにさ、頼むよ。ホラ、同僚のことはちゃんと知っておきたいじゃん」  
「うーん…」  
地獄耳な五十嵐のことだ。ヘタなことを言ってバレたりしたらタダではすまないだろう。  
…いや、これは早乙女と五十嵐しかしらないことだが、確かに『タダではすまない』のだ。  
「勘弁してくださいよ…もしバレたら僕、絶対命ないじゃないですか」  
「だいじょぶ。こう見えても私は結構クチは固いほうなんだぞ?」  
箸をもってない方の手でえへん、とえらそうに胸をたたく。ちょっと可愛いと思った。  
しかし、これは絶対興味本位だ。間違いない。  
間違いないが…同僚のことをしっかり知っておきたいというのもあながち嘘でもない気がした。  
はあ、と一つ、ため息をついた早乙女は、周りを確認すると小声で切り出した。  
「…ちょっとだけですよ」  
「! うんうん」  
「五十嵐先生と僕が先輩後輩の関係なのは知ってますよね?で、学園祭のときに…」  
 
楽しそうね、お二人さん?」  
 
ぴし、という音がした気がした。  
二人揃ってギギギギ、という音がしそうなぎこちない動きで後ろを見ると。  
「二人だけでナイショ話なんてずるいわよねぇ?混ぜてくれないかしら?」  
笑顔。確かに笑顔なのだが妙な色のオーラを漂わせた五十嵐が立っていた。  
腕組みしているのがちょっと怖い。  
「え、えーと…五十嵐先生」  
「ごめんねえ。ベキ子ちゃんはちょっと黙っててね」  
「は、はひっ!」  
やんわりと、しかし有無を言わさぬ迫力を孕んだ五十嵐の声に、ベッキーは身をすくませるしか  
ないみたいだった。  
「さ、てとぉ…で、何を言おうとしてたのかな、早乙女くん?」  
「あ、あはは。そ、その…ええと…」  
嘘がつけない性格というのはいいことばかりではないらしい。  
言いよどんでいると五十嵐が満面の笑みで彼の肩にぽん、と手を置いた。  
「早乙女くん」  
「は、はい!」  
…もうこの人との付き合いはずいぶん長い。  
次のセリフもなんとなくわかる。…助けて、神様。  
「あとで裏ね」  
「…はい」  
 
放課後、指定された時間のちょっと前。  
5分前行動が基本の早乙女は、裏庭の大きな木の下に腰掛け、風になびく葉々を見ていた。  
「…はあ」  
正直、今月もう何度目の呼び出しか覚えていない。  
多分両手の指を足しても足りないだろう。  
『まあ、なんだ…がんばれよ』  
同情した感じのベッキーの顔がなんだかわびしかった。  
「がんばれ、かあ」  
すっくと立ちあがり、うーんと伸びをする。今日はずいぶんといい陽気だ。  
「う、うーん…はあ… あ」  
向こうから五十嵐が走ってくるのが見えた。  
今日はずいぶんとおめかししているのが早乙女でもわかる。  
早乙女のもとにたどりつくと、手を膝にのせて、大きく肩で息をつく。  
「はあ、はあ、はあ…ご、ごめんね。待った?」  
「い、いえ。全然待ってなんかないですよ。僕も今来たところです」  
「そう?…よかったぁ…」  
早乙女の言葉を聞き、心底安心したようにはにかむ。  
まるで恋人同士のような…いや、違う。  
 
二人は、本当に恋人同士なのだ。  
 
普段は絶対に見ることができない、五十嵐のかわいい顔。  
この顔を見られるのは自分だけという事実に、早乙女はなんとなくうれしくなった。  
あ、と何かに気づいたのか突然かぶりをかぶった五十嵐は、真っ赤な顔で早乙女をビシィ!と  
指さした。  
「ち、違うわよ!!今日はいつもどおり、オシオキなんだからね!!」  
「は、はいい!」  
突然大きな声をあげた五十嵐に思わず驚いて変な声をあげてしまう。  
そんな早乙女の様子を見て満足げに笑った五十嵐はいつもの調子に戻り、言葉を続けた。  
「まあ、いいわ。それじゃ、今日はねぇ…」  
「…あんまり無茶しないでくれるとうれしいんですけど…」  
早乙女の声など聞こえていないかのようにうーん、と何事か考えているようだ。  
しばらくしてふむ、と納得いくオシオキが思いついたのか、一人でなにやらうなづいた。  
「それじゃ、今日はまず、ね」  
「まず、ですか…」  
少し困った顔をした早乙女とは対照的に、五十嵐は心底楽しそうな顔だ。  
んふふ、と怪しげな微笑を浮かべ、ゆっくりと宣告した。  
「キス、30分」  
「さ、さんじゅっぷん!?」  
「うん。私のプライベートな過去をバラそうとしちゃったんだもん。これくらい当然でしょ」  
本当に当然だといわんばかりの五十嵐に、ある意味もう慣れてしまった早乙女は早くも  
反論を諦めることにした。どうせ、言ったって聞きはしないのだ。  
「はあ…わかりました。僕だって男ですからね。甘んじて受けましょう」  
「ん、よく言った。かっこいいぞ」  
くすくす、と微笑みながら両手を早乙女の両の頬にあてがう。  
早乙女はその両手を五十嵐の肩に。  
まるでそうするのが自然のように、二人は同時に目を閉じた。  
「…早乙女くん」  
「…はい?」  
文字通り、互いの顔が目と鼻の先という位置にきたところで五十嵐が突然ぽつりとつぶやいた。  
「大好きだよ」  
「え…んむ…」  
ちゅ、と二人の影が重なった。  
 
「ちゅ、ちゅ、ちゅう…れる、んぷ…ぷあ。ん、んふふ。早乙女くんの唇、やわらかあい…」  
「ん、はあ…五十嵐、先生…」  
裏庭の大きな木の下で、早乙女を押し倒したような体勢で夢中で唇をついばむ五十嵐は、本当に幸せ  
そうな声をあげた。  
ああ、本当に可愛いなあ…  
ぼうっとした頭で、早乙女は思う。  
「早乙女くぅん…好きなの…大好き…」  
「ん…僕も大好きです…」  
恋人同士になってわかったことだが、普段はかなりアレな五十嵐だが(そこも含めて好きになったん  
だけど)、二人きりになると異常なくらいな甘えん坊になる。しかもキス魔だ。  
そのくせ攻めたがりと、もう果てしなくかわいい。  
互いに家が遠いし、教師同士はマズいだろう、ってことで放課後この場所で(五十嵐ゾーンと恐れ  
られているのだ)、『あとで裏ね』が合言葉。  
限られた場所と時間でしかイチャイチャできないものだから、なおさらだ。  
 
「んー…ちゅ、ちゅう…んー…」  
「ん、あ…い、五十嵐先生、僕、もう…」  
早乙女がもうこらえきれない、という声をあげると、五十嵐はあのイタズラっぽい笑みを浮かべた。  
「ええー?もうシたくなっちゃったの?まだ10分もたってないよ?」  
「そ、そんなこといわれても…もう限界で…」  
くすくす、と女王さまのように見下ろすと、尊大な口調で切り出した。  
「ん、いいよ。でもねえ、これはオシオキだから…」  
「え…」  
「それ!」  
「うわ!?」  
どこから出したのか、太いロープで早乙女の両手を縛り上げた。  
「い、いたたた!?」  
「うん、今日はこれでいってみようか。んふふー、それじゃ、こんにちは〜♪」  
「ちょ、ちょっと…うわ!?」  
一気に早乙女のズボンをおろすと、そこにはもう立派なテントが立っていた。  
顔を真っ赤にして恥ずかしがる早乙女にかまわず、五十嵐はトランクス越しに早乙女自身の頭を指で  
ぐりぐり、強い刺激を与える。  
「ぐう!?あ、ああ…」  
「んー、もう。そんな可愛い声あげちゃってえ…」  
「く、くあ…あ、あああ…」  
言葉を続けながらも、指での刺激は続ける。  
しばらくするとその様子に五十嵐も興奮してきたのか、妖艶な笑みを浮かべると器用に亀頭のあたりの  
刺激を続けながら自らの服を一枚、二枚で脱いでいく。  
まるで出来のいいストリップだ。  
 
「せ、先生…そんな、いやらしすぎですよぉ…」  
「ふふ、そう?でも、ここまでよん♪」  
靴下を脱ぎ終え、ブラジャーとパンティーだけになった五十嵐が、意地悪い笑みを浮かべる。  
五十嵐の美しい白い肌の奥まで見られないもどかしさに、股間に妙な力が入った。  
「そ、そんな…うあ…」  
くしくしくしくし。くしくし!  
「あ、ああああ!」  
びゅ、びゅ、びゅく!!  
「あーあ、だらしなあい…指だけでイっちゃったの?」  
「あ、ああ…はあ…」  
「もう、しょうがないんだから…んー、ちゅ、ちゅ…」  
「え…あ、んむう…」  
キスの雨に体の力が抜けていくのを感じる。  
弄ばれているのにそれが気持ちいい。  
…僕、Mなのかなあ…。  
「ねえ、そろそろ入れたいんじゃない…?私のここに…」  
「!! あ、あの…!」  
やっぱり、何度シても慣れない。  
その…女性の秘部に指を導かれ、いやらしいくちゅくちゅ、という音と感触。  
出したばかりの肉棒が大きく反応した。  
「ねえ、入れたくないのー…?」  
「い、入れたい…入れたいです…!」  
その言葉に満足げに頷くと、もう一度唇にちゅ、と口付け。  
「いいよ、入れさせてあげる…でもねえ」  
「え?」  
また口付け。  
「唇はなしたら、そこでやめちゃうからね?」  
「え…ん、むうう!」  
「んー、おとなしくキスしなさい…!」  
ムリヤリ唇を奪い、舌を絡ませる。  
なおもバタバタする早乙女を押さえつけると、乱暴にパンティーとブラを脱ぎ捨て、  
一息に挿入した。  
 
「!! ん、む、むー!」  
「ん、ふう…ちゅ、ちゅ、ちゅくちゅく… あ、あふん…」  
じゅ、じゅ、じゅぷじゅぷ、ずぷ…  
気持ちいい。  
しかし声をあげたくても、唇を唇でふさがれている。  
かなりつらい。  
「ん、ん、ん、ん…んふう…あ、ん…」  
「んふ… ん、んー…」  
ずぷずぷ、じゅ、じゅぷ…ぬぷ。  
しばらく我慢していた早乙女だったが、はやくも限界が近づく。  
「あ、ふ、せん、せ…げん…ん、ふう、限界で…!」  
「ちゅ、ちゅう…あ、ん…いいよ…中に出して…!」  
キスを続けたまま結合している二人。  
しかもここは屋外だ。多分大丈夫とはいえ、もし誰か来たら…。  
そのスリルと背徳感が二人の性感をより高めていた。  
「あ、あん…ちゅ、ちゅう…ちゅ、ちゅく…あ、私、も…」  
「せん、せい…もう、出て…!」  
びくびくびくびく!  
びゅ、びゅうう!びゅくびゅく、びゅう!  
「あ、あああああああああああああああ!?」  
「んむ、くああああああああああ…!」  
最後の最後に唇を離し、絶頂の声をあげる。  
びくびくびく、と肉棒が五十嵐の中で何度も何度も痙攣し、精液を注ぐ。  
「あ、ああああ…」  
「は、はあ…」  
五十嵐がぼぅっとした目でよだれをたらし、感覚を堪能する。  
早乙女の上に覆いかぶさると、幸せそうにつぶやいた。  
「きもち、よかったあ…え、えへへ…」  
「あ、はあ…僕も、よかったです…」  
互いに目を合わせ、くすっと笑う。最後にもう一度、深く口付けた。  
時刻は夕方になっていた。  
 
「ねえ、早乙女くん」  
「はい?」  
一緒の帰り道。バイクを転がしながら、五十嵐は照れくさそうに言葉を続けた。  
「あの、さ。これから…私の家、こない?」  
「え。えええええ!?」  
「ちょ、ちょっと!大きい声ださないでよ!…い、いや、明日、休みだし、さ。ダメ?」  
…そんな顔で言われたら、ダメなんていえるわけないじゃないか。  
言葉のかわりに、反対側に回って腕を絡めた。  
「… あ…」  
「…いいですよ。…一杯、甘えさせて上げますから」  
「な!ちょ、何言ってるの!わ、私は別に甘えたくなんか…」  
「甘えたくない?」  
「… ………甘えたいです」  
「よろしい」  
夕焼けが妙に暑く感じた。  
本当に夕焼けのせいなのか、二人にはよくわかっていた。  
 
おしまい  
 

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