「はぁ………」
と白いため息をつきながら、屋上で一人の男子生徒が手すりに頬杖をついてボーッとしていた。銀髪に眼鏡を掛けた端正な顔立ちの少年、犬神剣である。
だが今日は眼鏡をかけていない。何故かと言うと昨日、ある事故で眼鏡を壊してしまったのだ。
「参ったな。新しい眼鏡は来週までかかるし………南条にノートを見せてもらうしかないな。」
と独り言をつぶやいていると、後ろからチリンと鈴の音がした。 振り替えるとそこには一条が立っていた。
「おはようございます犬神さん。」
と相変わらずのじと目と無表情で挨拶をした。
「一条か。おはよう。こんなところで何をしてるんだ?」
と聞くと、一条は、 「宇宙人さんと交信してました。」と相変わらず訳の分からないことを言った。
「そ、そうか。で、交信はできたのか?」と、とりあえず一条に話をあわせることにした。
「いえ、宇宙人さん達はまだ起きていないようです。」
[そのころ宇宙船では……]
「艦長!大変です!起きてください!」
「何だぁ、騒がしい。」
「たった今、妙な電波を受信しました。」 「ほぅ、妙な電波とな。」と艦長は少し思案に更けた。
「どんな内容だ?」 「ハル!解析してくれ。」
「わかりました。ではいきます。」
人工知能ハルが内容を読みあげる。
「学級委員の一条です。アンニョンハセヨ。なお、このメッセージは自動的に消滅します。」……………暫く沈黙が漂う………… 「どのような意味なのでしょうか?」
「さっぱり分からん。」…………………… 「そ、そうか。残念だったな。」と犬神は、相変わらず訳の分からないことを言う一条への対応にこまっていると、突然一条が
「犬神さん、顔が赤いですね。熱があるかもしれませんよ。」
と言ってきた。
熱?そういえばさっきから体が妙にだるくて、頭も痛………………なんだ?一条の顔が歪んで…………
そして、犬神は一条の肩に倒れこんでしまった。
「おやおや、大変ですね。保険室へ運んであげましょう。」
一条はそう言うと、指をパチンとならした。すると、突然[一条祭り]と書かれた青いダンボールが現れ、一瞬にして一条と犬神を吸い込んでしまった。
ここは………どこだ?確か屋上で一条に会って…………そこから先が思いだせない。 意識がもうろうとする。額に何か暖かいものが当たっている。目を開けると、そこには自分のおでこを犬神のおでこに当てている一条がいた。
「おや、起きたみたいですね。体温計が壊れてしまっているので正確な体温はわかりませんが、相当熱があるみたいですよ。」
「一条……君が運んでくれたのか……ありがとう。」と犬神は礼を言うと一条は
「いえ、どういたしまして。」と返して、タオルを持ってきた。
一条は「体を拭いてあげましょう。」と言うと、いきなり犬神の上半身を脱がせ始めた。突然の一条の行動に犬神は戸惑い
「い、一条、そこまでしなくても。」
と朦朧としながら言うと、一条は
「遠慮は良くないですよ。それにそのままだと風邪が悪化してしまいます。」と返した
「そうか。ではお言葉に甘えるとしよう。」と犬神は観念して、一条の好意に甘えることにした。
一条は犬神の上半身を裸にし、タオルで汗を拭き始めた。手際よくこなす一条を見て、彼女が家庭的な女性になりたいと言うのもなんとなく分かる気がする。
拭き終ると、一条は犬神にシャツを着させ、冷たいタオルを持ってきて、犬神の額にのせてあげた。
朦朧としながらも、テキパキとこなす一条の姿に犬神はしばらくみとれていた。
暫くして、一通りやり終えた一条が、
「では授業があるのでこれで失礼します。安静にしてくださいね。」と言い、保険室を去ろうとしていた。
その時不意に、犬神は朦朧とする意識の中、一条の腕を弱々しく掴んだ。
「行かないでくれ。」何故そんなことを言ったのか、犬神本人にも分からなかった。ただ一緒にいて欲しかった。一人になりたくないだけなのか、それとも私は一条の事が………………。
犬神はいつもの冷利な表情と違い、弱々しい目つきで訴えてきた。眼鏡をかけてないせいもあり。一条には犬神がいつもより幼く見えた。
「分かりました。でも安静にしてくださいね。」と言い、一条は保険室にとどまることにした。
……この感覚は?
今まで経験したことのない感覚。得体のしれない感覚が、いつもと違う犬神の表情を見たときから、一条の中に現れ始めていた。
とりあえず一条は、犬神のためにできる限り手を尽すことにした。……得体のしれない感情をまぎらわすためにも………。
それから十分くらい経ち、授業のチャイムが鳴った。
犬神の熱は下がらず、むしろさらに高くなっている様であった。
一条は、犬神を少しでも元気付けようと、犬神の手を強く握り締めた。
犬神が苦しんでいるのに何もしてあげれないふがいない気持と、徐序に高まってくる犬神への感情………。
こんな時自分はどうすればよ良いのか。
考え抜いた末、彼女は犬神の苦しみを和らげるためにある方法を思い付いた。
「犬神さんの風邪、私が貰いましょう。」と言うと、一条は犬神の唇にキスをした。犬神を楽にしてあげたい。その気持だけが今の一条をつき動かしていた。暫くキスをしていると、ズボンの方に膨らみが出来ているのに気が付いた。
一条はチャックを開けると迷わず犬神の大きくなったそれを口に含んだ。
犬神は時々小さく声をあげていた。しかし意識がほとんどないため、自分が何をされているのかわかっていないようだ。
犬神のそれが脈打ち、一条の口内に射精した。「まだまだ足りませんね。」と言うと、今度は犬神の上にまたがり、犬神の物を自分の中に挿れ始めた。
半分くらいまで挿れると、激痛が走り一筋の血が流れた。しかし一条は止めようとしなかった。痛みが快感に変わるにつれ、激しくなっていく。そしてついに、犬神は無意識のうちに一条の中に射精してしまった。
夕方、目が覚めるとそこにはレベッカ宮本が立っていた。
「おっ、やっと起きたか。でもまだ熱があるみたいだからな無理するなよ。」とレベッカは言った。
「私は…ずっとここで寝ていたのですか?」と聞くと、レベッカは「一条に感謝しろよ。ずっとお前の看病をしてくれてたんだぞ。」と答えた。
「一条はどこに?」
と聞くと、
「具合が悪いって言って先に帰ったよ。後で礼を言っとけよ。」と笑顔で答えた。
「そうですね。」
犬神は少し微笑んだ。彼の脳裏にはまだ少し一条の姿が強く残っていた。