『諜報部の功績』  
 
とある土曜日。  
1年B組のダイエットスパイこと綿貫響はカメラを持って学校をうろついていた。  
もちろん土曜日なので、部活のある生徒だけが校庭やら教室で色々活動をしている。  
「何かいいネタないかな〜……。いい加減デスクワークも飽きてきたし……」  
綿貫が所属する諜報部は名前だけの部活で、殆どの活動は事務処理しかなく、その上、活動の内容が  
 
不鮮明なので、「ソレらしき活動の痕跡が無ければ廃部」という状態になっているのである。  
「痕跡ったって学校で諜報活動をする意味ないし……。はぁ…」  
と、部の存在そのものを否定する文句を吐きながら廊下を歩いている次第である。  
そう、別にその辺の情報を集めて公開するなら広報の仕事。まったく無意味。秘密を見つける事こそ諜報部の仕事……。  
 
とにかく平日よりも時間はタップリあるので、学校中を歩き回る。  
「秘密なんてそう簡単に見つかるものでも無いのになー」  
トボトボと何処の部活も使っていない階の廊下を歩いていく。  
――誰かの気配がする…――  
単に直感だけだったが、歩くのを止めて耳を凝らすことでそれは確実なものとなった。  
ただ、その音は………  
 
時は1時間前。  
今日は土曜日。  
演劇部と映画研究部は合同作品を作るということで、人の少ない休日に撮影をすることにしていた。  
ただし、互いに対立しながら……。  
1年D組の芹沢茜も演劇部員であり、出演者である。  
そしてその向かいに居るのは、A組来栖柚子。  
ただ、普通と違うのは二人とも着ぐるみを着ているからである。  
「映研ドジラーッ!覚悟は出来てるだろうなー!」  
「そっちこそっ!覚悟は出来てますよねー?」  
演劇部と映画研究部はもともと仲が悪いのだが、「対戦ものなら本当に仲が悪いやつらにやらせたほう  
 
が迫力が出るんじゃないですか?どうせ大怪我もしないんだし」という至って単純な理由によってこの二  
 
人が選ばれたのである。  
撮影開始と同時に互いにポカポカ殴りあう。そしてカtット。またスタートで殴りあう。の繰り返し。  
「もう少し戦いっぽくならないですかね〜?」  
「でもねぇ。二人がああだからね……」  
「あれじゃ子供の喧嘩だよ」  
一生懸命に戦っている「つもり」の二人をよそに演劇部と映研の部員たちが話し合う。  
なんだかんだでまったく進まないので、打開策を作ろうと昼休みついでに休憩を取ることになったのである。  
 
―屋上にて―  
「ごめんね。来栖ちゃん。遅れちゃって……」  
「いいんですよ芹沢さん。私も今来たところですし」  
屋上で弁当を広げる二人。そう。着ぐるみだと対立している二人も、素にかえると仲がいいのだ。お互い  
 
に気づいていないのだが……。  
「遅れちゃったお詫びに……。ジャーン!」  
「え!?ジュース?貰っちゃっていいんですか?」  
「いいよいいよ。お詫びだし。二本買っちゃったから飲んでもらわないと」  
微笑ましい光景。それもどんどん危ない方向に向かっていく。向かっていくのは分かっているけれど、許  
 
されない関係。そして望んでいるのに踏み出せない。そんな関係。  
二人は色々と話をしながら弁当を食べる。  
ハタから見れば友達どころか恋人同士に見える。だけれどソレはかなわない……。  
「来栖ちゃん……。あのさ……」  
「え?何ですか?」  
 
少しの沈黙……  
「女の子同士って恋人になれるのかな?」  
「え…?えええええっ!?」  
思い切った質問だった。唐突に質問を投げかける芹沢と、それを受けて急に赤くなる来栖。  
二人の関係の話ではなく、そういう話に純粋に反応した赤さだ。  
「そ、それは…その…どういう…?」  
混乱をしながらその質問の意味を尋ねる。  
「えと……何となく……来栖ちゃんはどう思うかなって……」  
「わ、私は…アリだと思いますけど……でも……」  
「でも…?」  
「そういうのって幸せになれない気がして……」  
直接聞かなくて良かった。芹沢はその答えを聞いて少しうつむいた。そして、  
「そっかー。…あ、ゴメン…ちょっとトイレ行って来る」  
わざと明るく振舞って、逃げるように一つ下の階のトイレへ入った。  
 
一人女子トイレの個室で芹沢は座っている。  
「来栖ちゃん……」  
来栖は芹沢のことを言ったわけではなかったのだが、それは間接的に断ったようなものだ。  
もちろん付き合って欲しいなんて言わなくて良かったのだけど、今の答えは女である芹沢が告白をしても  
 
受け入れられない。ということが分かる答えだった。  
来栖だって今の問いがそのような意味だとは思いもよらないだろう。しかし……  
「……なんで…だろ…」  
芹沢本人にも好きという気持ちがいつ出来たか分からない。でもそれは、駄目だって思ったし、言った所  
 
で嫌がられると思った。だから悔しかった。  
気持ちは治まらないまらない。憎いほど治まらない。だから、今は自分の心の中だけで……。  
そう思って芹沢は無意識のうちに自分を、自分の指で慰めていた。少しは気が紛らわせるように……。  
 
誰だろう…?  
土曜日に教室に用事がある生徒なんて居ないだろう。  
それに、こうやって聞こえてくる音は……  
「ぁっ…んぁ……っっ!」  
思い浮かぶことは一つだけ。誰かが隠れて恥ずかしいことをしている。十分な秘密になりうることをしている。  
コレを見事につかめば諜報部の仕事として成り立つ。瀬戸際じゃ何も文句は言えない。  
「よし…っ」  
綿貫は小さく頷いてこそこそと女子トイレの領域に侵入していく。少しだけ聞こえていたあえぎ声は少しずつ大きくなる。  
もちろんカメラの電源は入っている。だから、声の主さえ分かれば音声を抽出するだけで弱みになる。  
「く…くる…すちゃ…ん」  
中で自分を慰めているものは確かにそう言った。  
クルスチャン?クリスチャンの間違いじゃない?  
しかし、自慰の間にクリスチャンと言う人が居るはずも無く……。  
くるす…か。  
その人物の名前を自慰の間に言うものは綿貫の知る間で一人。  
ただ……その……。相手が芹沢だということで、カメラを向けることが躊躇された。  
もし、芹沢にばれるような事があったら、絶対にタダじゃすまない気がした。  
「グヘヘヘ〜。綿貫〜私のオナニー見たからには覚悟は出来てんだろうな〜?」  
「あ〜〜〜〜れ〜〜〜〜〜」  
なんて言いながら首輪を付けて学園内を歩きまわされかねない。  
あぁ……芹沢が見たとおりのサドならそうなりかねない。  
しかし、「それでスパイんんて名乗っていいのか?お前はスパイ。代償に怯えるな!」と、猫部長が頭の中に浮かんだ。  
それならば任務はこなさねばなるまい。  
決めたならばすぐに作戦は練らねばならない。正面からカメラを向ければ簡単に撮れるだろうが、バレる可能性がある。ならば、隣の個室から撮影すれば、バレ難いだろう。  
直感でそう感じたならば行動するまでだ。  
 
「あっ…あぁあっ……」  
だんだん大きくなる艶声をよそに、綿貫はゆっくりと隣の個室に入る。  
桃月学園は私立であるので、洋式も完備してある。今芹沢が入っているのも洋式だし、綿貫が入った個室も洋式である。  
だからこそ、便器の上に乗れば安定して撮影できるっ!  
が……  
 
 …ギシッ……  
 
もっとダイエットするべきだったのだ。  
「……!?」  
その便座の軋む音が艶声しか響いていない虚空に響けば、その声も相殺される。違う意味で。  
「だ、誰…?」  
芹沢が急いで下着をはいた音がした。  
そんなの……そんなの酷いよ神様……  
「カメラ…綿貫か!?」  
そう、個室に移動しながらも、一応は手を伸ばして撮影していたのだ。だからこそバレた。  
もう、観念した。人生も諦めた。……と思う。だからこそ隣の個室から顔をのぞかせた。  
「あははー……。バレちゃった〜?」  
「バレんに決まってるだろ。そんな音出せば」  
芹沢はいつもの調子で話す。しかし、すぐに、  
「その……撮ったのか?」  
声を小さくして、聞いてきた。  
あれ?怒らないのか?ならこっちから攻撃すれば……。  
「うん、撮った」  
「……来栖ちゃんには言わないでくれ……」  
小さく、確かにそんなことを言った。  
 
それが綿貫の何かしらのスイッチを入れた。  
苛めたい衝動に駆られた。  
「なら、続きを教室でしてくれる?」  
満面の勝ち誇った笑みで、一言そう言った。  
言ってしまった。  
言ってしまいましたか?  
「えぁ?わ、綿貫……?」  
「聞こえなかった?教室で、今していた続きをしてって言ってるのよ」  
精一杯の強がりで言ってみた。もし、今弱気になればそのまま逆襲されそうだった。  
芹沢はしばらく考え込んで――5秒くらいだったが――こう返した。  
「……分かった。分かったから、その……」  
「言いたいことは分かるわ。教室に行ってから聞くから」  
少し女王様気分。別に鞭でどうのこうのしたい訳じゃないけれど、相手より優位に立って少し恥ずかしい思いをさせるのが何となく気分がいいのだ。世間じゃそれをサ  
 
ドと言うみたいだが、今の綿貫にはそんな思考は無かった。  
 
とにかく話は決まった。  
芹沢が教室で自慰をする。  
綿貫はそれを撮影する。  
それだけの事。  
教室に移動した二人は静かだったが、芹沢の一言で静寂は打ち破られた。  
「なぁ。本当にするのか……?」  
「当たり前じゃない。それより、さっきの話の続きしてよ」  
「あ?何だってする必要があるんだよ」  
「私の思い違いかもしれないでしょ?相談くらいには乗ってあげられるかなってね」  
「こんな事してまでそういうこと言うか」  
「だって来栖ちゃんの事考えてオナニーしてたんでしょ?」  
「…あ、だから…それは……」  
言葉を濁す。大体考えていた通り。  
二人の関係は周りの人間なら大体分かっている。素のときは仲がいいこと。お互いに所属している部活を教えちゃいけないこと。  
「来栖の事、好きなんでしょ?」  
「…あぁ」  
何も正確に答えない芹沢に、一問一答で話をする。  
「で、断られた……?」  
「告白はしてない……。けどさ……」  
「それ以上は聞かない。言うと辛いだけでしょ?」  
芹沢は、さっきの思いを起こそうとしなかった綿貫に、それだけは感謝した。  
「……じゃあ早速だけど、始めてくれる?」  
そこまで気を使っている綿貫に逆らえもしなくて、芹沢は壁際の机に座り、下着の上から摺り始めた。  
ちなみにスパッツは、撮影中暑苦しいからすでに脱いでいる。  
しかし、なぜ芹沢がいかに綿貫に逆らいがたくても自慰を始めたかというと……それは、色々とあるのだ。  
「…あぅ…ん…」  
先ほどまでしていただけあって、すぐに下着が湿っているのが見て分かった。  
その上、その影響で芹沢自体も敏感である。  
「……はぁ…」  
綿貫は片手にカメラを持ちながらそれを見届ける。  
自分でもしないわけじゃないけれど、他人のを直接見るのは新鮮な気分だった。  
「芹沢、気持ちいいの?」  
「うそついたって…仕方ないだろ…はぅ…」  
観念したのか、綿貫の問いに素直に答える。  
そんないつも強気な芹沢がここまで素直になると、綿貫の苛め精神に火がつく。  
「ね、胸は弄らないの?」  
 
「そ、そんなの私の勝手だろ?」  
「いつも弄ってないならなおさらやってみればいいじゃないの。ほら早く脱いで」  
綿貫も女だ。自分以外の人間の体型も多少気になるところがある。  
「嫌だって言ったらどうするんだよ」  
「ん?もう少し強めに言ったほうが良かった?」  
そう言って、手に持っているカメラを振る。  
「ひ、卑怯だぞ!綿貫っ!」  
「別にコレが無くたって、来栖は諜報部員でもあるし、芹沢のことも多少融通が利くかもしれないし……」  
「く……覚えてろ……」  
羞恥と憎しみを込めて綿貫をにらみ、そのまま制服を脱ぐ。もちろん中にも一枚着ていたのだが、  
「芹沢。もしかしてノーブラ?」  
「うるせえ!着ぐるみ着るときは熱いから脱いでるんだよ!ほっとけ!」  
「じゃあスカートも脱ごうね」  
「は?何でだよ」  
「別に〜?脱いで欲しいからお願いしてるんだけど」  
また逆らったところで結果は同じだろう。芹沢は諦めてスカートも脱ぎ捨てる。  
「なあ綿貫」  
「なに?」  
「上はこのままでいいのか?」  
「その格好の方が裸よりいいかも……」  
今芹沢は、両方とも白のパンティーに肌着という格好。肌着からは小さな突起と乳房の形が見て取れた。  
「な、なんだよその変な趣味」  
「全部脱がなくていいんだから芹沢だって楽でしょ?ほら始めて」  
せかされて、仕方なく胸も弄り始める。  
いつの間にか綿貫が芹沢の衣服を持っていたが気にしないで続ける。  
「…ぅあ…なんかいつもと違う……」  
人に見られているという恥ずかしさもあるのか、芹沢の顔は紅潮していた。  
「人に見られて興奮してるの?」  
「ちがっ……ふぁっ……」  
否定するが手が止まらない。右手は胸の突起を弄り、左手は秘所を擦っている。  
「嘘ついちゃだめだって」  
「だって……っっ!」  
座った姿勢を保てないのか、芹沢はそのまま後ろの壁にもたれかかる。  
教室に響き渡る喘ぎ声。しかし、それも我慢している声だということはすぐに分かる。  
そして、快感を得始めると同時に来栖の事が頭に浮かぶ。どうしても頭から付いて離れないのだ。  
その上、声を抑えていた理性も、快感と想う相手に占領され、少しづつ崩れ始める……。  
 
「芹沢さんどうしちゃったんだろ〜」  
20分近くも戻ってこない芹沢を案じて、来栖は二人分の弁当箱を持って廊下を歩いていた。  
もちろん、向かう先は芹沢の居るはずのトイレ。  
「芹沢さん……いますか……?」  
静かな階で大声を出すのはためらわれたので、少し押さえ気味の声で聞いてみた。  
「いないのかなあー」  
急な用事でも出来たのかな?お弁当も忘れるくらいだし。と思い込んで、トイレの出口へ戻った。  
その時、  
「ああぁっ!!!!」  
誰かの叫び声が聞こえた。  
「え?誰か居るの?」  
明らかにすぐ近くの教室からだ。しかし、叫び声となると逆に怖くなった。なんといっても誰も居ないはずの階である。声が聞こえるはずがない。  
ペタペタと教室に近づけばそれはすぐに明らかにされた。  
扉が勝手に開いたのだ。  
そこには笑顔でカメラを持って、「いらっしゃい」と言う綿貫の姿があった。  
「わ、綿貫さん!?あの……今の叫び声は?」  
綿貫がここに居ることも気になったが、とりあえず一番気になることを聞いてみる。  
「ああ、今の声は……」  
「駄目だ!言うな!綿貫ー!」  
自分の指で達して力の抜けた声で精一杯抵抗する芹沢。しかし、逆にそれは来栖を心配させることにもなる。  
「せ、芹沢さんの声……芹沢さん大丈夫ですか!?……あ……」  
綿貫の横をすり抜けて教室へ入って唖然。当然だろう、机の上で下着姿で足を広げて脱力していれば何かあるだろうと想う。しかし、香水などじゃない「女の匂い」が  
 
何をしていたかを確実なものにした。  
「くる、す…ちゃん……」  
「せりざわ…さん……?」  
未だ呆然とする来栖に後ろから手がまとわり付いた。もちろん綿貫の手である。  
「わ、綿貫さん!芹沢さんに何をしたんですか!」  
「いやいや、私は何もしていないよ003号」  
「嘘つかないで下さい。芹沢さんは……」  
「私はきっかけを作っただけよ。原因は芹沢なんだから」  
「???」  
完全に混乱する来栖の手を引っ張って芹沢のところまで連れて行く。  
「綿貫……どうするつもりだ……」  
まだ力の抜けている芹沢が隣に来た綿貫に問う。  
「芹沢の願いをここで叶えてあげようかなって」  
「……へ?」  
 
芹沢も困惑顔。  
「さっきオナニーしてるときに来栖の名前叫んでたじゃないの」  
「ばっ……!」「え……?」  
二人が同時に反応をする。  
先に切り出したのは来栖。  
「せりざわさん……いまの……」  
芹沢は顔を赤くして俯かせる。来栖だって芹沢が自分のことを考えて自慰してたなんて想うまい。  
しかしながら、その一点で来栖柚子の人生のうちの迷いが一つ溶けた。  
来栖の目から涙がこぼれた。それを今度は芹沢が予想外の顔で見つめる。  
綿貫は知っていたのだ。諜報部で来栖と歩き回っている時だって、芹沢の話をすれば急に明るくなった。そんな様子を見れば結果は分かっていた。分かっていたか  
 
らこそ、教室の隅でカメラを回しながら見守ることにした。  
「なんで、ないてんだよ……」  
戸惑いながら芹沢が恐る恐る聞く。  
「だって、芹沢さんが私のこと想ってくれてるなんて」  
ただ、それだけだった。二人とも片思いだと思っていただけ。そして、それ故に女同士で付き合えるのか疑問符があがっていた。芹沢だって悩んでいたから聞いのだ  
 
し、来栖だってまだ迷っている段階で聞かれたら、好きな相手に嫌われないようにそう答えるだろう。  
「私も芹沢さんのこと好きだったし……」  
涙を流して分かっているつもりだったけれど、今、目の前ではっきりと言われて、来栖が芹沢のことが好きだ。ということを確定事項にしたのだ。  
無言で見つめ合う。  
30秒くらい、もっと短いかもしれない。けれど、この状況が、時間を長く感じさせた。  
そこに、我慢が出来なくなった綿貫が遠くから割って入った。  
「芹沢、来栖を抱いてあげなさいよ。あんなに泣いてるんだから」  
その一言を頭の中でもう一度再生して、芹沢が聞く。  
「来栖ちゃん、いいの?」  
もちろん答えは、  
「はい」  
その小さな一言には精一杯の喜びが入っていた。  
芹沢は一度軽く達したせいか、来栖を押し倒して唇を重ねた。  
「……ん」  
来栖は戸惑っていたが、芹沢のリードで安心したのか大人しくキスを受ける。  
「服、脱がすね」  
芹沢がボタンに手をかけると、来栖は恥ずかしそうに答える。  
「あの……自分でしますから……///」  
「だーめ、柚子の面倒は私が見る」  
面倒を見るなんていわれたのと、いきなり下の名前で呼ばれたというWパンチで一気に赤くなる。  
 
「ありゃ?下の名前はまずかった?」  
「ううん。大丈夫ですよ、茜さん」  
芹沢も言われて少し戸惑ったが、制服を脱がせ、下着も脱がす。  
「柚子、もう上は何も着てないね」  
わざと来栖を赤くさせる。愛おしい。全部が欲しい。そんな思いで今度は深くキスをした。舌を絡ませると、来栖は芹沢の後についてくる。芹沢が歯茎を舐めていけば芹沢の歯茎を舐めていく。  
その間に芹沢の指はゆっくりと来栖の体を這い、感じる場所を探し回る。  
へそ辺りに到達すると、来栖はピクッと小さく震えた。  
「ひぁ……」  
自分でも感じるなんて思っていなかった場所で感じている。そんな新鮮な感覚が来栖を襲う。  
銀の糸を引きながら唇を離すと、今度は首から下へと滑っていく。  
来栖は目を瞑り、体をすべる快感を受け入れる。  
「んっ…はぅ……」  
そんな来栖の反応をうかがって、芹沢は指を胸の突起に当て、軽く押しつぶす。  
とたんに、来栖の体がピクッと反応する。  
「柚子は感じやすいんだね」  
「うー……優しくしてくださいね……」  
「任せろって……」  
強い刺激は痛がるだろうと判断して、芹沢は胸の突起を口に含む。  
「……!」  
ただ、口に含んでも、突起自体は責めない。舌でゆっくりと乳輪をなぞっていく。  
少しずつ内側へ。一週回るたびに来栖が吐息を漏らす。  
「あ……ぁん!」  
でも絶対に突起には触れない。もう少し焦らす。  
「せ…せりざわさん……おねがいっ…」  
いっぱいいっぱいなのか、下の名前で呼ぶことも忘れている。それを待っていたかのごとく、芹沢は唇で突起をはさんでそれをさらに歯で締め上げる。  
「…っっっああああっ!」  
来栖はイッたのか、顔を仰け反らせて体をピクピク震えさせている。慣れていないのにコレだけ焦られれれば、こうならざるを得ない。  
芹沢は肌着を脱いで果てた来栖の耳元で話しかける。  
「これで、私もさっきイッたから一回ずつ。次は二人で一緒にね」  
あまり知識がない来栖にはどうやるのか分からない。芹沢は横に転がると、ハテナ顔の来栖に指示をする。  
「そのまま、私の顔のほうにお尻を向けてまたがって。……そう」  
芹沢の目の前に来栖の尻がある。下着は見るだけでも十分湿っているのが分かった。多分私のもこんな風なんだろうな。と思いながら、来栖の下着を下ろす。  
自分の秘所を見つめる芹沢に、  
「そ、そんなに見ないでください……は、恥ずかしいです……///」  
もうこれ以上ないくらいの赤さで言う。しかし、そんなのは聞けない。  
「柚子も私の下げて」  
 
来栖の言うことをわざと聞かないふりをして、指示する。来栖は言うとおりに下着を下ろす。  
芹沢は自分の下着が下ろされたのを確かめると、不意に来栖の秘所に舌をつけた。  
「えっ!?せ、芹沢さん!汚いですよ!」  
指でするのだろうと思っていたのか、尻を引こうと必死になる来栖。それを一生懸命にひきつけて舐める芹沢。  
相手の秘所を舐めるというのは、相手の排泄器官を舐めることだ。自分が思いを寄せる相手じゃなければそうそうできることじゃない。  
だからこそ、芹沢はお互いが愛し合っていることを確かめたくて、この方法をとったのだ。  
一生懸命自分の汚い場所を舐めている芹沢。それを見ると、芹沢の想いが伝わってくる。  
……来栖も芹沢の秘所に舌を這わせた。躊躇いなんてなかった。好きな相手だ。出来ないことは何もない。  
来栖は一生懸命舐める。相手を気持ちよくさせようと一心に。たどたどしいが、そこには芹沢と同じ想いが伝わってくる。  
「そのまま、続けて……」  
「はい……ぴちゃっ…」  
「柚子、凄い溢れてくるよ」  
「茜さんだって…」  
茜さんで落ち着いたらしい。どうでもいいことだが……。  
芹沢は指でしっかり来栖の秘所が塗れている事を確かめると、ゆっくり一本だけ指を挿入した。  
「あ、中に……」  
一本でも締め付けられるのが分かった。来栖も中に異物があるとしか思わないらしい。なら大丈夫だ。  
ゆっくりと指を前後に動かし始める。そして、舌はその下にある豆を刺激する。  
もちろん来栖も真似て、指を一本入れて、豆に舌を這わせる。相変わらずたどたどしかったが、それが逆に芹沢に快感を与えた。  
「はぁっ……なんか、気持ちいい……」  
「……中に茜さんのが動いて……はぅ…」  
限界が近いのは見て分かる。お互いに果てたばかりならなおさらだ。  
「だめだ……わたし…もう……もう……」  
「あかねさん……私もっ……」  
「あああああああああああっ!」  
「ひああああああああっっっ!!」  
来栖の方が若干早かった、しかしイッた瞬間に指がおくまで入り込んで芹沢も頂点に誘導された。  
そしてもう一人。少し遠くで果てた人が……。  
 
二人は果てた後、横に並んで寝転んでいた。裸で、抱き合ったままの姿で。もちろん抱き合ったなんて言えるか分からない。だけれど、二人にとっては今までの行為が、二人を繋げる行為に違いはなかった。  
「来栖ちゃん」  
芹沢の呼び方はいつもの通りに戻っていた。  
「なんですか?茜さん」  
「付き合わない……?」  
「え……?」  
「嫌だったらいいんだ。無理にとは……」  
言いかけて横を見ると、笑顔で明るいいつもの来栖の顔があった。  
「はいっ!喜んで!」  
もちろん、世間は許さないだろう。世間の前に、友人にもバレちゃいけない。だからこそ、みんなの前では、芹沢さん。来栖ちゃん。で呼ぼうと決めた。  
結婚できなくてもいい。どうしてもしたいなら海外に行けばいい。それだけの話。でも、絶対にそれまではバレちゃいけない。  
だからこそ……。  
 
 
少し遠くで二人の様子をみて自慰をしていた綿貫が起き上がる。  
目の前には影二つ。  
「綿貫。私の秘密握ったんだから次はお前の番な」  
怪しい笑顔で言う芹沢。  
「え?え?」  
「気づいてたか?教室に来る前にカメラの電源消えてたの」  
そう、長く歩き回り、カメラもまわし続けたため、電池は残っていなかったのだ。そして、トイレの個室に近づくときにはすでに切れていた。というわけ。  
「ちょ、ちょっとまって、二人とも……」  
「私は、お礼ですよ?」  
「私は復讐もかねるけどな。口止めとしてこっちも秘密は握らないとな」  
「あ、そうですね!じゃあ芹沢さんにお任せします」  
「あは……あはははは……」  
 
 
 
こういいながらも二人は感謝している。否、これからずっと感謝し続けるだろう。  
二人を近づけてくれた偶然に。  
そして、遠回りながらも気遣ってくれた名も無きスパイに。  
タップリのお礼を込めて……  
 
 

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