パラサイト・イヴ
「代わりの武器がいるんじゃない?」
ピアースの言う通り、M93Rだけでは心許ない。アヤは武器管理室の扉を叩いた。
「はぁい、せんぱい」
緊張感の抜け落ちた声でアヤを迎えたのは、火器管制官のジョディ=ブーケだった。ブラウンのロ
ングヘアーと穏やかな垂れ目が印象的な美女である。その日和見そうな雰囲気とは裏腹に、書きを扱
うその指使いの華麗さから「悪魔の女」と呼ばれているとかいないとか。
「砂漠に行くのなら、水は必需品です。でないとノドが乾いて、NMCのドライフードになっちゃう
かも」
彼女独特のペースで放たれる数々のブラックジョークは、一見痴話話に見えて重要なアドバイスだ
ったりもする。
「そうね……水もいいけど、火力が欲しいのよね」
そう言いながら、M4A1ライフルを手に取るアヤ。
「ところでせんぱい、BPは足りるんですか?」
しばし沈黙。
「足りないんですね……?」
こくり。
頭を足れるように頷くアヤ。
「規則ですから……いくらせんぱいでも、BPなしで武器は渡せないですよ。へたすると減給になっ
ちゃいます。せんぱいも始末書は間違いないですよ。それに、ハリケーンみたいなHALの説教も…
…」
独断先行を日常的に咎められているアヤだけに、HALこと、直属の上司エリック・ボールドウィ
ンの説教がどれほどの物かは用意に想像できた。
「わかりますよ……ね?」
痛いほど分かる。アヤは思わず自分をぎゅっ、と抱きしめた。96aのバストが腕に押し潰され、こ
ぼれた。HALの言葉責めを想像し、脅え戸惑う表情と相俟って、まるで初夜を迎えた生娘のようだ。
「せんぱい……」
常に微笑みを絶やさないジョディの、その影に隠れた苛虐性が目覚めようとしていた。
ジョディは自らの下腹部に手を伸ばす。濡れているのがショーツの上からはっきりと分かった。
「せんぱい、ちょっとこっちへ……」
常に柔和な微笑みを絶やさないジョディの、その質が変わっていた事に気付かなかったアヤ。淫欲
の女郎蜘蛛の巣と化した金網をくぐり、
「どうかしたの―――」
と、問いかけようと開いた唇を、唇によって塞がれた。
「―――ッ!?」
一瞬にして頭の中が真っ白になったアヤをカウンターに押し込みながら、ジョディは舌を突き入れ
た。10cmの身長差を活かし、アヤを上から押さえつけるようにしてのディープキス。濃密な。10秒…
…20秒……
「ん……むぅ、んん……っ!」
金網に押しつけられ、自分のよりも熱い唾液を流し込まれる。逃げ場のないそれは喉に流れ落ちて
いく。
アヤが息苦しくなる直前、絶妙のタイミングでジョディは唇を離した。
「何をしてぅ……んッ!」
名残惜しそうに伝わり引く糸を追って、再びジョディの唇がアヤの口内を犯す。
ピチャ……クチュ……
わざと音を立てながら舌を絡め、ジョディはその隙に掌をアヤの腰骨から臀部、秘裂までをつうっ
となぞった。
するとアヤの全身がびくん、と波打つ。
(ダメ……感じちゃ……)
キスで点いた種火を微弱な刺激で焚きつけられ、ひどく疼く。躰が熱くなっていくのを感じる。嫌。
攻めているのはジョディなのに。女同士なのに―――。
「は……ぁっ……」
唇を話すと、絡み合った二人の唾液がまるで別れを惜しむかのように糸を引き、
アヤの胸に粘る滴を落した。
それを見届けると、ジョディは今まで誰にも見せたことがない、淫魔のような笑みを浮かべながら
服を脱ぎ捨てた。
「やめて、ジョディ……今ならなかったことに……」
「やめる……? じょおだん!」
ジョディはわざとらしく大げさに声を上げると、アヤのシャツを捲り上げ、飾り気のないブラジャ
ーをずらした。96aの豊かなバストが拘束を解かれ、弾け飛んだ。
「だってせんぱいの乳首、びんびんに立ってるじゃないですか」
「だってそれはジョディが……」
そこまで言って気がついた。アヤは自分でジョディのキスと愛撫で感じていたことを認めてしまっ
たのだ。
「こまった顔の先輩って……かわいい」
さらに言われ、アヤは真っ赤になって顔を伏せてしまった.。
蛞蝓が這ったような痕を作りながら、ジョディはアヤの右胸を登った。
「ひゃう……」
挿入を指と舌で愛撫するジョディの表情は、銃を扱うときのそれよりもさらに恍惚としたいた。
念願成就。
もう、誰にも渡さない。
せんぱいは、必ずわたしのモノにしてみせる。
アヤの股間に指を滑らせ、秘部をまさぐる。パンツの上からの微弱な刺激が、アヤの感度をさらに
増幅させていく。
「まだ、やめてほしいって思ってますか……?」
言葉責めも抜かりなく巧みだ。アヤは羞恥心に震え、火照って上気した顔を腕で覆っていた。もっ
と責められたい。でも、求めたくない。
自分が求めたことではないと、必死で自分に嘘をつく。
「沈黙は、肯定と見なしますから」
顔を隠すために上がった腕を巧みに通し、ジョディは胸で止まっていたシャツを完全に脱がせた。
ブラジャーという支えを失っても、アヤの胸は重力に逆らって上を向いたままだった。固く固く尖
った乳首は、まるでそれ自体が意思を持って愛撫を渇望しているかのようだ。
「反則ですよ……それ」
それは愛しくもあり、嫉妬の対象でもあった。
自信がないわけじゃない。それでも、せんぱいと並ぶとどうしても見劣ってしまう。
ジョディはアヤのズボンのジッパーを下ろし、ショーツの裏側、恥丘の中へと指を滑らせた。
中で指を曲げて、秘肉を掻き分ける。
「あ……ああぁぁ……っ!」
抵抗なく指を受け入れるアヤ。
「まだまだ、これからですよぉ」
そう、彼女は床の上では間違いなく魔性の女だった。その指さばきは性別を問わず、常に相手をイ
カせてきたのだから。
「はぁ……あぅ、い……や、あ……」
アヤの喘ぎ声に混じる「イヤ」に、拒絶の意思は既にない。
ジョディはアヤの上にまたがり、両手と舌、全てでアヤのヴァギナを攻めはじめた。シックスナイ
ンの体勢だ。当然、ジョディの陰部もアヤの目の前にある。
「あ……っ」
(ジョディのここ……すごく濡れてる……)
まだ何もしていないのに、ジョディのそこはアヤ以上に濡れそぼっていた。
同性の秘部は禁断の果実。アヤの目の前にはそれがある。そしてジョディは至福の表情でアヤの果
実を貪っている。
……ずるいわ、あなたばかり。
アヤはジョディのそれにそっと触れた。
「ひゃう……!」
突然の刺激に、ジョディは仰け反りながら声を上げた。
「今度はわたしの番よ……」
ズ……クチュ……
「は、あ、あ、あぁぁ……ぁ」
アヤの指が、ジョディのヴァギナに指をゆっくりと挿さされていく。まだ触られてもいないのに愛
液が溢れていて、苦もなく入った。
ジョディは快感を全身で享受した。しかし負けじとアヤのクリトリスを剥き出し、指で舐る。
「ひあぁぁ……っ!」
武器管理室。そこに染みついた硝煙弾薬の匂いはもはやない。そこにあるのは、絡み合う二人の、
乱れた雌の臭いだけだった。
「あっ、はぁっ、はあぁぁ……あっい!」
最初は攻めもしていたアヤだったが、ジョディの指使いで頭が真っ白になり……
「ああっ! もうダメ! イクッ! イッちゃう!!」
快楽を貪る獣と化し、叫ぶように喘ぐ。
「いいですよ! せんぱい! 私の中でイって!」
女のツボが分かるのは女だけ。女が女を攻める時にだけ感じられる、至高のオルガスムを、愛しい
愛しいせんぱいに―――
「あっ……あっああぁ、 あっ……イッ、イッちゃ……あ……
ああぁぁぁぁっ―――――!」
ガチャ。
「アヤ、そろそろ出発してくれないとHALが怒って……ん」
淫欲の宴は寸止めに終わり、あとに残ったのは始末書が二枚。
ついでに、赤い染み付きの割れたサングラス。持ち主の行方は知れない。