クリスマス・イブのNY。カーネギーホールの入り口前に  
豪奢なロールスロイスが停まった。ドアマンがドアを開けると  
いかにも、と言った感じの御曹司が降りて来た。続いて、車内から  
華奢な足が覗いた。  
 波打つ稲穂の様なブロンドの髪に透ける様に白い肌、すっと通った鼻梁  
水晶玉の様に澄んだ瞳にそれを縁取る長い睫、ふっくらとした官能的な唇。  
周りにいる全ての男性の目線を集める佳人の名はアヤ・ブレア。  
しかしせっかくのイブを恋人と楽しく過ごそうとしているのに、  
その表情はどこか切なげで色っぽい。  
「どうしたんだい、ぼーっとして。」  
先ほどの御曹司が声をかける。ふと、我に返るアヤ。  
「ううん…何でも無いの」  
「君が観たいって言ったオペラじゃないか。いい席を取ってもらったんだ。」  
相手を気遣い、自分に言い聞かせるかの様に答える。  
「そうよね…せっかくのクリスマス・イブだもの。  
楽しまなくっちゃね。」  
その言葉に安心した男は、先に立ってアヤを劇場へとエスコートしていく。  
「おっと、もう始まるみたいだ。さあ、急ごう。」  
返事をするかわりに笑顔を作ってみせたアヤだったが、  
開幕ベルの鳴る音も耳に入っていない様だった。  
 
前から4列目、中央の席。演劇や舞台物を観る際には一番良いと  
言われている位置だ。お陰で舞台にいる女優や俳優の表情も  
よく見える。  
先ほどから纏わり付いてくる思考を落ち着かせ、アヤは舞台に集中する  
ことにした。  
 時は中世。ある国の王子が一人の美しい娘に恋をし、妻にしたいと  
王に許しを請う。しかしその娘と関わった男は次々と怪死しており、  
王は猛烈に反対する。それどころか娘を魔女と決め付け、火炙りの刑に  
処そうとする―  
よくある悲恋ものだ。普段のアヤなら興味を引かないジャンルだが、  
出演者である一人の女優の名が彼女の気をひいたのだった。  
 
            メリッサ・ピアス  
 
最近頭角をあらわしてきた新進気鋭の女優だ。舞台で見ると大柄だが、  
清楚で儚げな美貌は同性である自分からしても十分魅力的であった。  
―が、それを生かすも殺すも作品次第だとアヤは感じた。  
「やっぱり自分が興味の無い話だとだめね…」  
そう心の中で呟くと、アヤは視線をメリッサに戻す。  
舞台がクライマックスを迎えようとした刹那、メリッサと目が合った。  
その時、体がドクン、と脈打つのを感じた。何かに呼ばれる様な不思議な  
感覚。  
しかしこれが悪夢の始まりだということにアヤは気づいていなかった。  
 
 いよいよこの舞台の見所ともいえる、娘が唄う場面にさしかかった。紅い唇が形よく開き、美しく切ない唄声が会場の隅々に響き渡る。  
それに伴い、アヤは自分の体がますます激しく脈打ち、火照ってくるのを感じた。そしてそれはどんどん激しくなってゆく。  
そして体中の脈が破裂するかと思った瞬間、パン!と周りの空気が弾けた。  
 
         「人の歌声にしては尋常では無い…」  
 
不審に思い、声の主に目をやって、アヤはギョッとした。褐色だったメリッサの目が、緑色に変わっていたのだ。  
しかもその目は不自然なまでに鮮やかに輝き、メリッサには無い妖艶な雰囲気さえ醸し出していた。  
異様なまでの変貌のし様に気を取られていると、隣から悲鳴が聞こえてきた。ハッとして隣に目をやると、  
アヤの目ににわかには信じがたい光景が飛び込んで来た。  
「人…が燃えている…?」  
間もなく、半狂乱の悲鳴は四方から聞こえてくる様になり、見渡すと自分以外の人間の体が発火していた。  
まだ発火していない人間は我先にと出口へ急ぐ。しかし…何故自分だけが無事なのか?どうして人が発火するのか?  
目の前で起きた未曾有の惨劇に思考は鈍り、何をすべきかさえわからなくなっていた所に頭上から悲鳴が降って来た。  
2階客席にいた観客が発火したはずみで落下して来たのだ。正視出来ぬほど凄まじい形相に、体が自然と危険を察知する。  
間一髪のところでそれをかわしたアヤに、刑事としての冷静な思考が呼び戻って来た。  
ナイトドレスに隠れている太ももに取り付けてある拳銃を取り出し、舞台の上で悠然と微笑んでいる一人の女を見据える。  
と、そこに間の抜けた声が響く。  
「こ、これは演出にしては随分大袈裟な…!」  
一緒にいた男の声だった。どうやら自分の近くにいたためか無事の様だ。  
内心ホッとしながら、アヤは男に体当たりし、逃げる様うながした。  
女の戦いが今まさに始まろうとしていた―  
 
男が逃げたことを確認したアヤは、ベレッタM84Fを構えながら  
舞台へとにじり寄った。目の前にいる人間の姿をした犯人から身を守れるか  
疑問ではあったが、それでも装備しないよりはマシだった。  
「観客達に何をしたの!?」  
舞台にいる女は艶然とした笑みを口元に浮かべながら問いに答えた。  
「ついにミトコンドリアが解放される日が来たのだ。そしてお前は私と共にある運命」  
「な、何を言って…お前は何者なの?」  
銃と構えながらアヤは舞台に上った。  
「EVE…お前は普通の人間とは違うチカラを持っているはず…」  
女―EVEは突きつけられた銃口に怯む様子も見せずアヤに近寄ると、手を目の前の  
真っ白な肌に軽くかざした。刹那、体中が熱くなり、大きく脈打った。  
その衝動でアヤは思わず態勢を崩してしまう。  
何…?この感じ…さっきメリッサと目が合った時と同じ―  
戸惑うアヤをEVEは何なく抱き寄せた。必死で抵抗するが、女とは思えぬ程の力で抱かれており、  
びくともしない。必死に抵抗する脆弱な人間を間近で見つめながら、EVEはアヤの耳元で囁いた。  
「だから言っただろう?お前は私と共にある運命だと」  
未だその言葉の真意を飲み込めず、呆然としているアヤの顎を指で持ち上げると、  
ぷっくりとした唇にキスをした。  
 
「な、何す……んうっ」  
歯を食いしばり、必死に抵抗するがヒトとは思えぬ程強い力でメリッサの舌はアヤの口をこじ開けた。  
甘く長い舌と同時に唾液が侵入してくる。必死で逃げようと舌を丸めようとするがメリッサの長い舌によって  
アヤの舌は口中で逃げ場を失い、メリッサに捉えられた。蛞蝓が獲物を食す時の様にゆっくりと絡みつき、  
くちゅくちゅと音を立てる。その音がホール全体に響いている様な気がしてふりほどこうとした時、自分の  
身体に異変を感じた。  
「ふうっ…んっ、ぁん…」(そんな!私、今感じてる!?)  
長い睫毛をしばたかせ、メリッサを見つめる。メリッサは「だから言っただろう?」と  
言わんばかりに目を細め、さらに舌を入れて来た。最初はあれほど拒んでいたアヤの舌が今度は自分から  
絡みついて来た。唾液が混ざりあい、舌と舌が絡み合う音がさらに響く。  
そろそろ苦しくなって来たか、というところでメリッサは唇を離した。分かたれた唇と唇のあいだに細く  
銀色の橋がかかる。呆然としているアヤに怒りの表情が戻る。「メリッサ…いえ、EVE…!」  
唇に細い糸を残したまま、柳の様にしなやかな眉を逆立て、キッとメリッサを睨む。瑞々しい色っぽさと凛とした  
美しさが同居するアヤの表情がメリッサの―EVEの嗜虐欲をそそる。アヤの耳元でEVEは囁いた。  
「まだわからぬか?お前は私と同じ力を―私と同じミトコンドリアを有する者なのだ。」  
「ミト…コンドリア!?一体それが今何の関係があると言うの?」  
―ミトコンドリア―学生の頃、一度耳にした単語だ。そのミトコンドリアがどの様な働きをし、  
どの様な力を有しているのかなど瞬時に思い出せなかった。  
「わからぬのならこれから教えてやろう。夜はまだ始まったばかりだ」  
そう言うと、EVEは体内のミトコンドリアにシグナルを送った。  
 
(か、身体が熱い―!)  
そのシグナルは当然EVEと同じミトコンドリアを有するアヤにも届いていた。みるみる  
EVEの肌の一部がスライム状になり、アヤの四肢を完全に拘束していく。その光景は  
蜘蛛の巣に蝶が引っかかり、もがいている様だった。何とか逃れようとするアヤを  
哀れむ様に、EVEはアヤのナイトドレスのヒモを解いた。華奢な身体から上半身だけ  
するりとドレスが落ち、ストラップレスの黒いブラジャーが露わになる。予想だにして  
いなかった出来事に、アヤは必死で抵抗した。  
「ちょっ…何するの!?ふざけるのはやめて!!」  
しかしその声も虚しく、EVEは勝ち誇った笑みを浮かべながら、背中のホックに手を伸ばしてきた。  
ぱさり、と微かな音がし、EVEの目の前に形の良い、白蝋の如き滑らかなアヤの胸が現れた。  
非常に大きい、と言う訳ではないが、ツンと上を向いたハリのある胸。もともと薄紅色の乳首は  
羞恥心のためかさらに赤みを帯び、すでに硬くなっていた。  
「恥ずかしい…やめっ…あうっ!?」  
細く華奢なEVEの指がアヤの乳首を弾いた。  
「やはり、な。ミトコンドリアの反応が違う。私にはわかる…お前の身体が、お前のミトコンドリアが  
悦びの声を上げ、快楽を享受しようとしているのが。今、お前は目覚めたのだ。」  
「何を言ってるの?私は普通の人げ…あうっ!はあっ、ああんっ!!」  
アヤの言葉を遮る様に、EVEは片方の手でアヤの胸を揉み、もう片方の手で  
乳首をつまむ。異なる二つの刺激がアヤを襲い、意識が遠のいてゆく。EVEの指が自分の  
胸を刺激するたび、体中の細胞がブルブルと震える様な感じさえする。そして。  
EVEの舌がアヤの胸の上を這った。  
 
                 「はああああんっ!!」  
 
電流が駆け抜ける様な、炎が一気に燃え上がる様な強烈な刺激に思わず身体をのけぞらせ、  
びくん、びくんと痙攣してしまった。刹那、ホールにカタっという音が響いた。自分の身を唯一守れる武器、  
ベレッタM84Fが手から離れてしまったのだ。それに気づいたEVEはちらと目をやっただけで、すぐに視線を  
アヤに戻し、口角を歪めて笑った。  
「どうやらミトコンドリアもようやくわかって来た様だな…完全な覚醒は近いか…」  
EVEの白い手が、ナイトドレスに入っているスリットへと伸びて来る。  
「お願い…。もう、これ以上は…」  
身を守る手段を失ったアヤの脳裏に ”絶望” の文字が浮かんだ。  
 
これでもかと言う程に嬲り、弱らせた獲物に止めを刺そうとする獣―Eveはまさに獣の様だった。  
片方の手でアヤの乳房を揉み、もう一方の手をアヤの太ももに這わせる。漆黒のナイトドレスから  
のぞく、雪の如く真っ白な肌。きめ細かく、すべすべとしたアヤの肌を愛おしむ様に、Eveは指で  
触れるか触れないかギリギリのタッチで指を這わせていく。  
「っくう、はあっ……んふうっ!」  
太ももの上を這う絶妙な感触に、鳥肌が立ちそうになり、漏らすまいとしても自然に声が出てしまう。  
その快感はただ単に愛撫されているだけのものではなく、Eveの指が撫でて行った部分の細胞が悦びのあまり  
ぶるぶると震えている様で、その度に身体が火照ってゆくのを感じる。必死に声を押し殺そうとするアヤに囁く。  
「ふ、口では拒絶しようとしていても、身体は受け入れてしまっている様だな。全く淫らな女だ。」  
「私が淫ら!?そんなんじゃな…あっ、ぃやあっ、くう…んん、、、」「その割には声に艶があるが?」  
最早アヤに、嗜虐的な言葉を囁くだけでEveはエクスタシーを感じていた。自分によって覚醒されたミトコンドリアと  
ヒトとしての良心が、勝てるはずも無いのに戦っている。しかも類稀な美貌を持つ女の中で。アヤがもがけばもがく程、  
その光景はEveに快感を与えた。アヤの中の細胞が発した熱が波となってEveの中に広がってゆく。  
もう少しの間焦らすつもりであったがEveは耐えられなくなった。下着の上から、筋をなぞる様に指を動かす。  
照明から来る熱と細胞が発する熱で2人の肌は上気し、珠の汗をかいている。  
「いやっ、そこはダメえ!!」「お前のミトコンドリアはさらに求めている様だがな?」  
意地悪く笑いながら、Eveはアヤの秘芯を指で強くこすった。何かに弾かれた様にアヤが仰け反る。  
「はあああああっ!!」大きく肩で息をし、何とか落ち着こうとるすと、自分の秘所がじんわりと熱くなって  
いるのを感じた。(許せない…沢山の人を殺めた女の愛撫に感じているなんて!!)  
アヤの中に自分への怒りが湧いていく。そんなアヤを嘲笑う様に、Eveはアヤの下着を下ろし始めた。  
「や…それ以上はやめて!お願い!!」  
自分の一番脆弱な部分を守る布。到底、Eveの前では意味をなすはずもなかったが、  
それでも、下着が無くなるのだけは避けたかった。が、無情にもそれはするりと足を滑り落ちていった。  
無理矢理足を開かされ、赤面しているアヤをEveは見下ろした。  
 
「あ、あ…」  
恐怖と恥ずかしさあまり顔をそむけているアヤにおかまいなしにEveはアヤのドレスを  
根元までめくりあげた。淡い金色の恥毛に覆われた神聖な場所。何人もの男がそこを  
通っていたとは思えぬほど、薄っすらと色づいた秘所。ほんのりと薄紅色の  
そこからは可憐な花びらが開き、夥しい量の蜜を溢れさせながら、来るべき快感を求めて  
ひくついている。ぬめぬめとした蜜にまみれた秘芯は充血し、もっと快感を得ようと膨らんでいく。  
妖しく、美しい女性器だった。自分にとって一番恥ずかしい部分をまじまじと見られていることに  
アヤは耐えられなかった。自分とEve以外は誰もいないのに、沢山の客席から視線を感じる。  
誰かに見られている―その羞恥が、アヤをわけのわからぬ快感へと導いてゆく。  
「お願い、そんなとこ見ないで――嫌っ!」  
徐々に理性を失いつつあることへの恐怖だった。しかしEveは目を細めつつ囁く。  
「嫌だと言っている割にはずいぶんと濡れているでは無いか。本当は―もっと欲しいのだろう?」  
「だから、もう、、」アヤの目には涙が浮かんでいた。  
 
              にゅるんっ…  
 
「ひゃああんっ!あ、あんっ!!」蛞蝓の様なEveの舌がアヤの入り口に侵入して来た。  
喉が妬けそうなほど甘く、すっぱい蜜を舐めとり、快感に餓えている秘芯を転がす。  
「ひゃんっ、はあっ…ああ、ん、んふうっ!!いやぁ… 」  そして。  
「ああうっ!!」侵入者は菊門にまで入って来た。新たな蜜が溢れ出し、ドレスに沁みを  
こしらえた。「いやあ…そんなとこまでっ!」  
微かな痛みと快感で目がとろんとなったアヤを、拘束していた細胞が解放した。  
やっと自由になれる―そう思ったのも束の間、今度は後ろから抱きかかえられて腹部をベルト状に  
なった細胞で固定され、再び足を広げられてしまった。誰もいない客席に、アヤの秘所が丸見えとなり、  
再び肌が紅潮する。首を傾け、Eveを見ると艶然と笑った。「観客は多い方が良いだろう?」  
そう言うと、指をアヤの秘所にあてがった。  
 

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