(はぁ…)  
 校舎の中に入り、室内の空気に当てられるとようやくあおいの気分も落ち着いてきた。  
張りつめていた神経もゆるみ、忙しなく早鐘を打ち続けていた心臓もゆるやかな拍動を  
取り戻してくる。  
 だが、それと同時に未だ身体の中へくわえ込んでいる物体への意識もまた強まってくるのだった。  
廊下を歩く人間の目が向けられると、自然とあおいの注意は股間の方に行ってしまう。  
(んうぅっ)  
 それが不随意に括約筋を反応させ、あおいの膣壁とバイブの接触面はきゅぅと締まる。  
いくら力をゆるめようとしても、その反応を止める事は出来なかった。むしろ、ゆるめようと  
考える事がかえって締め付けを強くしてしまうのだ。  
(み…みないでっ…)  
 心の中で叫ぶ。もちろんすれ違う生徒達が二人に目を向けるのは、はるかがあおいに肩を  
貸しているという事、つまり怪我人への注目という事なのだろうが、あおいは何かしらの  
不自然さを勘取られているとしか思えなかった。顔が羞恥心で真っ赤になってくる。反応  
すればするほど状況を悪化させていると思っても、止まらないのだ。  
「ついたよ、あおい」  
「…え…」  
 ほとんど真下に俯いていたあおいが顔を上げる。確かに、あおい達の目の前にあるのは  
保健室だった。  
 コンコンっ。  
「…あっ」  
 はるかがドアを叩くと、あおいは小さく声を漏らす。まず先にバイブを何とかしなくては  
ならないのに…  
「はい?」  
「失礼します」  
 しかし、部屋の中から返事が来るとはるかは躊躇無くドアを開けてしまった。仕方なしに、  
あおいもその後へ続く。  
「…早川さん、ケガなの?」  
「え、ええと」  
 保健の教諭であり野球部の顧問でもある加藤の質問に、あおいは詰まった。  
「加藤先生、実は…私達、エスの方をお願いしたいんですけれど…」  
 
(………?)  
 はるかの言葉はあおいにとって良く理解できなかった。  
「あら」  
 ところが加藤の方は納得顔になって、  
「…あなた達、そういうのだったの?」  
「は、はい、今、空いていますか?」  
 はるかとの間に会話が成立している。  
「空いているわよ」  
「じゃあ、失礼します」  
 そう言うと、はるかはまたあおいに肩を貸しながら歩こうとし始める。あおいは何が起こって  
いるのか問おうとも考えたが、  
「それで、七瀬さんが早川さんに肩を貸しているのはなんでなの?」  
「…い、いえ、少し練習している時にくらっとなって…」  
「だから、今日は休んだ方がいいと思ったんです」  
「そう」  
 加藤からの質問が続くと、一刻も早くこの場を離れたいという気持ちの方が強くなってしまった。  
大人しくはるかの連れていく方に従う事にする。  
 …かちゃっ  
 はるかは保健室の右奥の方に入っていくと、そこにあったドアを開けた。  
 カーテンが閉ざされて薄暗く、やや薬の匂いが強めの部屋だ。部屋の一面にずらりと棚が並んで  
いるのを見れば、色々な薬を閉まっておくための部屋なのは明らかである。ただ、やや不自然なのは  
部屋の真ん中に置かれているベッドだった。脚はアルミ製のパイプらしくそれほど丈夫そうでは  
なかったが、マットレスの上には純白のシーツと枕が清潔にメイクされている。  
「手、離すよ」  
「…うん」  
 はるかはあおいをベッドの近くまで連れて行ってから、肩をするっと抜いた。  
「あおい、寝て」  
「…ここで?」  
「そう」  
 抵抗があった。いつ加藤が入ってくるか分からない場所で身体を休める事になる。だが、いざ独りで  
立って見ると予想以上の消耗があおいの肉体を包んでいるようだった。  
 
「ユニフォーム、下は土で汚れているから脱いだ方がいいよ」  
「……うん」  
 あおいは休息の欲求に負けて、うなずいてしまった。  
 ぱちっ…するっ。  
 下履きを脱ぎ、ユニフォームを降ろす。ブルマは湿り気を帯びてはいたが、外から見てもすぐには  
気づかない程度の状態だった。  
「も、もう抜いてもいいんでしょ…これ…」  
「うん、私が抜くから、ベッドの上で横になって」  
「い、いいよ、ボクが自分でやるよっ…」  
「…でも、キャプテンが最後まで私が確かめるようにしてくれって言っていたから」  
「………」  
(一体…何を考えているんだろう…)  
 あおいは先行きの不安を感じたが、逆らう事は考えられなかった。弱みは二つある。まずは前の  
大会のあおいの背信。もう一つは、その背信の後に行われた乱暴があおいの知らぬ間に撮影されて  
いたという事…  
(…もし、はるかが何か変な風に報告したなら)  
 ネズミをいたぶるような辱めが待っているだろう。初めはあおいと断定されないような写真が  
出回ったり、あおいの下着が更衣室に置かれておくような事が行われ、やがては野球部の中でも  
正義感が薄いような人間に写真がどんどん出回っていく…  
 金銭の要求や野球に関する妨害行為まで至っていれば、まだ告発の勇気が生まれていたかも  
しれない。しかしキャプテンのやった事は、半ばあおいが同意してしまった一晩の陵辱、そして  
写真の所持、それから今日の恥辱的な練習だけだった。  
「あおい、脱がすよ」  
「………」  
 ベッドの上で、あおいは身を固くしながらぎゅっと目を閉じた。  
 お腹の辺りに指が掛かり、少しずつブルマが脱がされていく。それに合わせて潤った部分が  
ひんやりとした冷気を感じ、ダメだと分かっていても自然にバイブを締め付けてしまう。親友の  
目が監視している状態でのあからさまな肉体反応は、この上ない屈辱をあおいに与えていった。  
 
 ぬちゅ…  
 はるかがバイブを掴み、引き抜こうとしていく。ぐいぐいと引っ張る力を込めているのが分かる。  
(う…う!)  
 まるで抜いて欲しくないと言っているかのような身体の反応が恥ずかしくて仕方なかった。  
潤いの液体は十分なのに、内部で引っかかったようになかなか出ていかない。  
 …ちゅぽんっ…  
「あ…ぅ」  
「やっと、取れた…」  
「は、はるか」  
 言わないで、とうっすら目を開けながら口に出そうとした瞬間、  
「…はるっ…!?」  
 あおいはこわばった声を上げていた。眼前にははるかの顔が迫っていたのだ。  
 ちゅるっ。  
「んっ…んうううーっ!」  
 唇が触れあい、すぐさま舌がぬるりと侵入してくる。あおいは背筋がゾクッとざわめくのを感じた。  
「んー…んふんっ」  
 隣に加藤がいると分かっている以上、下手に大声も出せないし暴れることもできない。体力的には  
大きく劣っているはずのはるかに、あおいは為す術もなかった。  
 じゅる…ちゅくんっ…  
 はるかは舌を器用に操って、あおいの怯えすくんだ舌を柔らかく転がしていく。同時にあおいの胸を  
片方の手でわしづかみにすると、くいくいと速いタッチで揉む。  
 
「…んっ…はぅ…」  
 長い長いキスの後、あおいは全身の筋肉が弛緩しているような心地になってしまっていた。初めは  
激しい抵抗感があったのに、わずか数十秒の責めだけで霞が掛かるように気持ちが動いてしまっている。  
変だと思いつつも、拒絶する事が出来ない。  
「はるか、隣に先生がっ…」  
 しかし、あおいはどこかに滑り落ちていきそうな己の感情のブレを無視し、理性だけを振り絞って言った。  
「先生も、理解されていらっしゃるの…」  
「そ、そんなわけ」  
「この高校は女子校だったから、こういう事をする女の子も少なくなくて、加藤先生はそういう子達に  
理解をされていて…」  
「う、うそっ!」  
「嘘じゃないわ…」  
 カチ。  
 ヴヴヴヴヴーッ…!!  
「あっ…!!」  
 はるかが突然バイブのスイッチを全開にする。激しい振動音が外にまで響くのではないかと思うほど  
こだまする。あおいは思わず身を縮めた。  
「ほら、先生は何もおっしゃらないでしょ」  
 カチッ。  
「そ、そ、そんな」  
「あおいが九人きちんと終える事が出来なかったら、足りなかった分を私がしてあげるようにって、  
キャプテンは」  
 
「や、やめて、はるっ…」  
 くにっ。  
「あぅっ!」  
「あおい…ここを触られると、素敵な気分になるでしょう?」  
 くにゅ…くりっ  
「い…いや、いやっ」  
 はるかの指はあおいの密やかな花芯を押さえて、優しく押し潰していた。あおいは何度も首を  
振って否定する。キャプテンが無理矢理触ってきたときは痛みしか生まなかった場所なのだ。  
「あおい、もうこんなに立ってきた」  
「嘘…嘘っ、ボク、そんなのっ」  
 だが、バイブレーターの長い興奮が醒めやらぬあおいの身体は瞬時に性感帯を目覚めさせた  
ようだった。はるかの指摘通り、ほんの小さな一点だった部分がピンク色に充血してカチカチに  
膨れ上がっている。はるかは細やかな二本の指でそこをはさみ、勃起をあおいに自覚させようと  
するかのように幾度か包皮の上からしごいた。  
「いや…いやああ…」  
 あおいにとって未知とは言え、少女にとって最も理解しやすい快感だ。あおいの体は電流の  
ように鋭く走る官能を即座に学習して、そこに刺激が加わる度に体を跳ねさせるほど悶えるように  
なっていく。  
「ほらね…ほら…」  
 諭すような声だ。あおいは耳をつぐもうとしたが、どうしてもその声が意識から離れない。  
声に合わせて秘芯を触られると、相乗効果がヒクンヒクンとあおいの快楽を震わせる。まるで  
人魚の声だった。  
 
 ちゅぐっ。  
「あっ!」  
 さらに、やや乱暴に指が膣内へ突き込まれる。その乱暴さも、太い玩具で溶かされたヴァギナに  
とっては弾けるような刺激にしかならないようだった。はるかの指がぐりぐりと探るようなタッチで  
動き始めると、たちまちあおいの身体をじわじわと熱気のような感覚がたちのぼっていく。  
「は、はるっ、もう、許してっ…!」  
 グラウンドの上から未だ体にくすぶっていた火は、一度燃え上がると止まらない。体中から  
恥ずかしい部分に熱い物が集まってくる。  
 ビクンッ…ビクッ…ビクビクッ…  
「っ! っ! …………っ!!」  
 責められ始めてからたったの三十秒で、あおいは今日二度目のエクスタシーに達してしまった。  
「あおい…すごい、ぴゅっぴゅってなったよ…」  
「い…いやぁぁぁ…」  
 目を潤ませながら、あおいは悲痛な声を上げる。二箇所を同時に責められる官能、同性愛の行為、  
それも親友との行為、いずれもあおいに並ならぬショックを与えていたのだ。無論、それによって  
自分がいとも簡単に絶頂に導かれてしまったことも。  
「ふぅっ…」  
 はるかは満足そうに息を吐く。  
「着替え、持ってきてあげるから、少し寝たらシャワーを浴びてくるといいよ」  
「………うん…」  
 あおいはブルマを上げてぐっしょりとなった秘部を隠しつつ、呆然と答えた。  
 
 とんっ…  
 はるかはベッドから降りると、部屋を出ていく。保健室の方で加藤とはるかが話しているのが  
聞こえてきたが、それを気にする余裕もあおいには無かった。ブルマにじっとり染み込んだ水分が  
気持ち悪い以上に、敏感な部分がぴったりと覆われて快感めいたものが浮き上がってくる方が情けない。  
ややもするとはるかとのキスの記憶が戻ってきて、全身がどうしようもなく切なくなったりもする。  
(体が…おかしくなっちゃってる…)  
 
 あおいがようやく解放され、シャワーを独りで浴びて帰宅することが許されてからもその思いは  
消えることはなかった。  
 温かい水流の中に包まれても、身に染みついた汚れと快感のリズムはとても落ちそうになかった…  
 
 
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