そよ風高校の部室。そこでは先輩後輩の関係と思われる部員二人が本を片手に談笑していた。
「変化球っちゅうのは奥が深いんやで」
「阿畑先輩のことだから、スケベな本でも読んでるのかと思いましたよ」
「なんでやねん……といいつつ、ここにもう一冊」
「おおお!!」
ガチャ!!
怪しい話題が盛り上がってきたところで入ってきたのはマネージャーの芹沢茜だった。
「お、どうしたん、やっちゃん? そんなとこで。新しい練習の相談か何か?」
何も知らない茜はそう言って『やっちゃん』と呼んだ彼、阿畑やすしに近付いていく。
「あわわわわっ!! 何でもないで! さ、さいならっ!!」
阿畑は後輩の部員を連れ立って逃げるようにグラウンドへ出ていった。
「?」
部室には何が何やら分からないままの茜が残った。
しばらくして冷静になった茜は、先ほどまで二人が話していたあたりの荷物をごそごそとあさってみた。
(ははぁん、なるほどね……)
答えはあっさりと見つかった。パラパラとめくってみる茜。その想像以上の内容に絶句した。
「うっわ、サイテー……」
とはいいつつも目は本に釘付けだ。本の中には今までの人生で考えたこともないような世界が広がっていた。
(あかんて、こんなことしたら死んでまうで……。うっわ、このページもわけわからん。なんでこんな人数でやっとんのや)
いけないとは思いつつどんどんページをめくる茜。
(やっちゃん、こういうことしてくれる女の人のほうが好きなのかなぁ……)
のめりこむ間にどんどん時間が流れていった。
ガチャ!
いきなり部室のドアが開いた。茜は振り返る。開いたドアの先には阿畑がいた。
「やっちゃん! なんで戻ってきたんや!」
「ぐ、グラブを忘れただけやって。そんなに騒ぐな」
先ほどのことで茜と顔を合わせたくない阿畑はわざわざ時間をずらして戻ってきたのだが、
予想に反してまだ茜がいたため、ばつが悪い顔をする。
このとき、茜も本を見ていたことを見られたと思い、狼狽していた。淫らな女と思われ、
嫌われるかもしれないと思ったからだ。だが、自分のことで手一杯で相手のことを見る余裕がない阿畑は
全くそれに気付かない。それを見て取った茜はほっとした。だが、今度は別の感情が彼女を悩ます。
直前までそういう本を読んで昂ぶっていたせいか、阿畑の顔を見たら彼のことしか考えられなくなってしまったのだ。
(やっぱりあたし、やっちゃんのことが好きや! もう今のままなんて嫌!)
今まで抑えこんでいた気持ちが一気に大きな炎となって茜の頭を支配する。
「と、とにかくワイは戻るで。お前もマネージャーなんやから、さっさとグラウンド来いや」
グラブを持ち、出ていこうとする阿畑。その背中に茜が小声でつぶやいた。
「なぁ、やっちゃん?」
「な、なんや?」
「男の人って、やっぱりこういうのを見るのが好きなん?」
茜は本を阿畑の方に見せる。茜の顔を直視する勇気がなかったからか、阿畑は振り返らなかった。
しかし、今までの状況と後ろからの音で、茜の言う「こういうの」が何であるのかは分かった。
「ま、まぁ、ワイかて健全な男子なわけでやな……。そら興味がないと言えば嘘になるわな……」
歯切れの悪い阿畑。そんな阿畑の様子が滑稽で茜は吹き出してしまう。
「ぷっ…」
「な、なんで笑うねん! せっかく正直に答えてやったのに!」
一瞬ムカっときて反射的に振り返った阿畑だが、茜と目が合うと再び先ほどのことが恥ずかしくなり顔を背けてしまった。頬がやや赤い。
「だっておかしいやん。オッサンくさい顔したやっちゃんが、そんな高校生みたいなこと言うんやもん」
そう言って茜は再びクスクスと笑う。
「まったく、お前にはかなわんなぁ……。ま、ええわ。じゃ、ワイは行くで」
そう言って再び出ていこうとする阿畑だったが、またも茜の声がそれを阻止した。
「なぁ……」
「ん?」
さっきと明らかに声のトーンが違うことに気付いた阿畑はとっさに返事する。茜は言葉を続ける。
「なぁ……あたしじゃあかんかな?」
「あかんかな、って何のこっちゃ?」
意図が分からない阿畑が聞き返す。
「あたしじゃこの本にすら勝てないんかな? そんなに魅力ない…?」
「はぁ? お前、何を言っとんねん」
「あたし、ずっと、ずっとやっちゃんのこと想ってた。いつもやっちゃんのこと見てた。いつだってやっちゃんを応援してきた。でも、全然やっちゃんはあたしのこと見てくれへん。今日かてこんな本見てからに!」
「茜! ちょっと落ち着けや!」
茜が普通じゃないと見て取った阿畑は大声で制止しようとする。だが、一度噴き出した思いはなかなか鎮まらない。
「うるさい! 今までやってそうや。こっちの気持ちなんかお構いなしでちょっとかわいい子がいると見惚れてまうし、あたしが気合い入れて勝負服着てきてるのに全然気付いてくれへんし…っ…!」
最後のほうは言葉にならない。茜の瞳からは一筋の涙が流れていた。
「あたしはずっと、本気なんやで……」
「茜…」
阿畑は茜が好きだった。今までも何度か言おうとしたことがあったが、照れくささ、そして、
言ったことでこの関係が崩れるかもしれないという恐怖感から、言い出せなかったのだ。
茜の突然の告白が心底嬉しかった阿畑は咄嗟に茜を抱きしめて言った。
「アホか。ワイやってお前のことが好きに決まっとるやろ!」
「ふ、ふん! 今更そんなこと言って機嫌取ろうと思ったってあかんで。あたしは…」
言葉を続けようとした茜の唇を阿畑が塞ぐ。初めてとは思えないほど長いキス。阿畑の想いを伝えるには充分だった。
しばらくして唇を離すと、茜はじっと阿畑を見つめて聞いた。
「嘘や…ないんやね? 信じて……ええん…やね?」
阿畑はそれに力強く、
「おう」
と答えた。その声を聞いた途端、茜の顔がぱっと明るくなる。
「ありがと。ありがとう、やっちゃん……。嬉しい…」
茜はそう言うと、阿畑の胸に顔をうずめて泣いた。
しかし、それは悲しいから出た涙ではなく、嬉しくて出た涙だった。
しばらくして意を決したように阿畑が口を開いた。
「茜、ワイ、お前が欲しい。……ええか?」
「アホ…。そんなこと聞かなくても…答えは決まっとるやろ……」
涙でぐしゃぐしゃな顔を無理矢理微笑ませ、茜が答えた。
「ホンマにワイでええんやな? 後悔せんな? ワイは一度その気になったら止まらんからな?」
「後悔なんか、するわけないやんか……。ずっとこうなることを夢見てたんや……」
茜の言葉を確認した阿畑は、部室のドアを閉め、鍵をかけた。
「やっちゃん…。来て…」
「茜…」
阿畑はゆっくりと茜の服を脱がせていく。思っていたよりも大きな乳房、さらに茜の大事な部分が阿畑の前に晒される。
「お前、結構大きいんやな」
阿畑は無意識に呟く。
「そ、そう? んっ! あ、あかんて…っ!」
茜の声が急に上擦った。阿畑が胸を愛撫し始めたからだ。
「あっ…ん…んはぁ……」
最初は咄嗟に拒絶した茜だったが、徐々に快感を感じ、阿畑のされるがままになっていった。
「んっ…ふぅ……。やっちゃん……、気持ちええよ…ああ…」
段々胸が硬くなってきたことを感じた阿畑は、ここぞとばかりに先端の部分を口に含んだ。
「あかんっ! そこはっ! 感じすぎてまうっ……あひっ!」
茜が感じているのを見た阿畑は、執拗なほどに乳首を舌でコロコロと転がし、時に強く吸う。。
「あっ! あっ! あんっ! ダメっ! んはっ!」
しかし、阿畑は責めをやめない。茜は快感の中を漂っていた。
「ダメっ! ダメっ! ああんっ! くぅっ! あっあっ! ああああっ!」
びくびくと茜の体が震えて力が抜ける。軽く達したようだ。
「大丈夫か?」
「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」
茜は大きく息をつく。阿畑はニヤっと笑って言った。
「茜、えらい胸で感じてたみたいやなぁ?」
それに対して茜は怒ったように声をあげる。
「やっちゃんのアホッ! 激しすぎるわっ!」
しかし、阿畑は顔色一つ変えずに笑っている。
茜の怒りがは本当は恥ずかしさをカモフラージュするためのものだと気付いているからだ。
そして、茜の耳元でささやく。
「まぁまぁ。ええやんええやん。気持ち良かったやろ?」
「そ、そりゃ……(ぼそ)気持ち…良かったけど……」
後半はほとんど言葉にならないような声だ。茜はそっぽを向いたが、その顔は紅潮している。
そんな茜を見て、阿畑はより一層愛しく思うのだった。
「茜、かわいいで……」
二人は再び唇を重ねた。ファーストキスと違い、今度は舌を絡める。
「んふっ…くはぁ……んっ……」
茜は先ほどの絶頂の余韻に浸っているせいもあってか、阿畑のなすがままだ。
それを感じ取った阿畑は右手を茜の大事な部分へ伸ばす。
「!」
さすがに初めての異物感に驚いたのか、茜は反射的に唇を離す。
しかし、阿畑はそれを気にせず人差し指の先だけを茜の秘裂に挿入し、具合を確認する。
「濡れ濡れやな。これなら簡単に指が入りそうや」
そう言うと阿畑は人差し指を深く挿れ、膣の中でグリグリと動かす。
「あんっ! あかん…てっ……いいっ!」
暴れ回る人差し指に茜は感じまくってしまう。
「んっ! んくぅ……あっ! ああう…」
阿畑は責めを続ける。それどころか、どんどん動きを速めていく。
「ああっ! ダメぇ、おかしくなってまう……」
もう茜は何も考えられなくなっていた。指の動きに合わせて感じている。限界が近付いていた。
「くはぁ…ああっ! ダメっ! くるっ! きちゃう!」
(もうイってしまうっ!!)
そう思った刹那、阿畑の指が引き抜かれる。最後の最後で絶頂をおあずけにされた茜は
懇願するような目で阿畑を見つめた。だが阿畑は、そんな茜を見て再びニヤっと笑う。
「お前だけ気持ち良くなるなんて不公平やからな。ワイも限界や」
そう言うと、阿畑はズボンを下ろす。そこには大きく怒張した肉棒がそそり立っていた。
初めて見る本物の男のソレ。茜は釘付けになった。
「大きい……」
「そう、か?」
ふっと呟いた茜に、照れくさそうに阿畑が返事する。
「でも、あの本の写真のやつよりは小さいな」
そう言って茜はふふっ、と笑う。
「ア、アホっ! 人が気にしてることを!!」
「あ、気にしてたんや。やっちゃんかわいいとこあるなぁ♪」
茜は阿畑の一つ年下だが、こういうときはいつも茜のほうが一枚上手だ。
「まったく、かなわんなぁ……」
やれやれ、と阿畑は頭を掻いた。
「…なぁ?」
ちょっと恥ずかしげに茜が呼びかける。
「おう?」
反射的に答える阿畑。しかし、その次に出てきた茜の言葉は想像を超えるものだった。
「やっぱり、その…、男の人って、ソレをしゃぶったりしてもらうと嬉しいん?」
「な、何!?」
突然の質問に阿畑は面食らうが、茜は続ける。
「さっきの本にそう書いてあったで。…なぁ? どうなん? あの…な、
もししてほしいんやったら、その……、あたし…、……して…あげても……ええよ?」
「いや、でもな……」
「やっぱり、エッチな女の子は嫌いなん?」
茜は上目遣いで阿畑を見つめる。最初は躊躇していた阿畑だったが、その表情を見て欲望に抗えなくなった。
「いや…その…、た、頼むわ……」
「ふふ、まかしとき♪」
そう言うが早いか、茜は阿畑の亀頭を頬張った。そして、少ない知識を総動員して肉棒を刺激する。
「うっ! あ、茜っ! 気持ちええぞっ!」
「んっ! うむぅ……はむっ」
茜は一心不乱に奉仕する。そのテクニックは決して誉められたものではなかったが、
フェラチオをされるのが初めての阿畑にとってはそれでも大きすぎる刺激だった。
「ええぞっ! もうイってまうっ!!」
「あむぅ…。ええよ、あたしの口に出して。あたしに、んっ…飲ませて……んむっ!」
茜がそう言うと同時に、阿畑は限界に達し、茜の口内に精液を吐き出した。
茜はそれを嫌な顔一つせず飲み込んでいく。
「ごくっ、ごくっ…。ふぅっ…」
「すまん。不味かったやろ?」
己の欲望に暴走してしまった阿畑は申し訳なさそうに茜の顔を覗きこむ。しかし、茜はとびっきりの笑顔で応えた。
「ううん、少し苦かったけど、不味くなんてないで。やっちゃんのやもん、不味いわけないやんか」
「茜……」
そんな茜の健気さに心を動かされた阿畑は、無意識にぎゅっと茜を抱きしめた。
「やっちゃん…」
茜も阿畑を抱きしめる。
しばらく抱き合っていた二人だったが、ふと茜があることに気付き、体を離す。
「ふふっ、まだまだ元気みたいやな♪」
そう言って茜は阿畑の逸物を指でピンと弾く。
抱きしめたことで茜の胸の感触を感じた阿畑は、何時の間にか股間を再び大きくさせていたのだ。
しばらくは指で亀頭を弄くっていた茜だったが、少しするといよいよ意を決したかのように阿畑に言った。
「やっちゃん、お願い……。あたしを、やっちゃんの女にして…」
「……覚悟はええんやな?」
「う、うん。あ、あのな、やっちゃん……」
「分かっとる。優しくしたるさかい」
阿畑は優しく微笑んだ。それを見た茜は安心し、身を預けて一言だけ呟いた。
「うん。来て……」
それを合図に阿畑はゆっくりと腰を沈めていく。
「くっ…はぁっ! んっ!」
さすがに茜は苦しい素振りを見せる。それを見て、阿畑は一旦腰の動きを止める。
「おい、茜、大丈夫か?」
しかし、茜は気丈に笑って言った。
「うん……、大丈夫…やから…。だから…続けて…」
「分かった。でも、苦しかったら言うんやで?」
茜はこくんと頷く。阿畑は再び挿入を再開した。
ゆっくり、ゆっくりと腰を進め、数分後になんとか最奧に辿りついた。
「なんとか入ったな」
「『なんとか入ったな』ちゃうやろっ…! んっ、早く…っ……動かして……くぅ…」
「んなこといったって、お前きついやろ?」
「大丈夫やっ…て…。苦しかったら言うって、言ったやん……か…っ!」
「分かった。…ったく、無理してからに…」
そうやって口では呆れた風なことを言う阿畑だが、実際はそうではなかった。
茜が自分のために無理をしてくれることが嬉しかった。
「いくでっ!」
そう言ってピストン運動を始める阿畑。茜の痛みを少しでも和らげようと、同時に右手で胸を揉みしだく。
そのせいもあってか、しばらくすると茜の声が艶を帯びていった。
「や、ああっ! くぅっ!」
もう茜が大丈夫だと察した阿畑は肉棒をより深く突き入れる。
「あんっ! やっちゃん、やっちゃん! ええよっ! あっ、くはぁっ!」
「わ、ワイもっ! きっ、気持ちええでっ!」
茜の声でさらに興奮した阿畑はだんだんと腰の動きを速めていく。
「んはぁ…んっ! んくっ! くぁっ!」
深く、そして激しく突き上げる。
「きゃふぅ! すごいっ…、やっちゃん、激しすぎるぅ……んんっ!」
茜も阿畑に合わせて腰を振る。
「やっちゃん! やっちゃんっ! あっ、くはっ!」
「茜! 茜っ!」
叫ぶようにお互いを呼び合う。欲望に支配された阿畑は右手だけでなく左手も茜の胸を愛撫し始める。
既に両方の乳首はこれでもかとばかりに勃起していた。
「あっ…、くっ! あ、あたし、んふぅ! き、気持ち…良すぎるよぅっ……!」
茜の言葉が嘘ではないことを証明するかのように、茜の中の締め付けが今までに
ないほど強くなる。それは同時に阿畑の射精を促す結果となった。
「あかん、茜、ワイもうすぐ限界や…」
「ええよ、中に出してもっ! あっあっあっ! んっ!」
お互いに本能のままに交わる。もう理性は残っていない。
「くっ、出るっ! 茜、出すからなっ!」
「あたしもっ! もうっ……イくっ!! あっ! あはぁっ! んあっ! ああああああっ!!」
阿畑は茜の膣内にありったけの精液を注ぎこんだ。同時に茜も絶頂に達し、がくんと力なく崩れる。
「はぁっ…はぁっ…。あぅ……。ん…、やっちゃん、大好きや……」
「ワイもやで……。もう絶対離さんからな……」
そう言って阿畑は茜の頭を撫でるようにして髪をといた。
……その後……
カキーン!!
「また柵越えでやんす。最近、キャプテン打撃好調でやんすね」
「そうだね。ピッチャーなのに良く飛ぶよね。特に最近は打球上がるようになったしね」
カキーン!!
「あ、また柵越えでやんす」
あの日を境に阿畑の弾道が上がりましたとさ。
おしまい。