最初は、ただの偶然だった。  
たまたま、ふとしたことでパワフルズの2軍の球場へ足を運んでみただけだった。  
野球はそこそこ知っているものの、そこまでは興味がなかった。  
 
カーン!!!  
パシッ!!  
ズバン!!  
 
ほとんどがテレビであまり見かけない選手ばかりだった。  
しかし、それでも高校野球とかアマチュアと比べればレベルが違うのだけは、  
その中からの雰囲気から伝わってきていた。  
8回裏、3-0で負けているパワフルズはツーアウト満塁のチャンスを迎える。  
そして、そのチャンスの打席に入った選手に数少ない観客の視線が集まっていた。  
 
「空、遅れてごめんよ!!」  
遠くから自分の名前が呼ぶのが聞こえ、そこで我に返る。  
人ごみを掻き分けて、見慣れた男が私のほうに駆け寄ってきていた。  
「…5分の遅刻よ」  
「ご、ごめん。目覚ましがならなくて」  
息を切らしながら、男は慌てて弁解をする。  
しかし、それも仕方ないかもしれない。  
「まあ、昨日は試合、長かったものね」  
彼は、パワフルズの1軍選手である。  
まだスタメンとして起用されてはいないものの、  
代打で出場することは多く、結果もきちんと残しているので、  
橋森監督の信頼も厚いという話も聞いている。  
そして、昨日も延長12回の裏、ツーアウトランナーなしで代打で登場し、  
初球をまばらながらもファンがいるライトスタンドへと運んだ。  
試合終了11:00。  
そして、現在がAM10:00。  
疲れが溜まっているのも無理はない。  
 
私はそんな状態でも彼が来てくれたと思うと、嬉しくなった。  
「さ、遅れた分、デートを楽しみましょ」  
膝に手をついている彼の手を引っ張っていく私。  
「おいおい、そんなに引っ張らなくたって…。  
 店は逃げたりしないんだし」  
「だ〜め。遅れたんだから、何か買って頂戴ね」  
「お、おい! 俺だって、1軍選手とはいえ、年棒には限りがあるんだからな!」  
「まあまあ。可愛い彼女の気を引けるなら、安い買い物でしょ?」  
「まったく…空にはかなわないな」  
まるで漫才のようなやり取りをしながら、ショッピングをする私たち。  
ベタベタな甘い恋愛ではなく、まるで気の合う友人のような付き合い方が、  
私たちにはお似合いだと思う。  
このデートで、少しでも彼の疲れを癒せるなら…。  
私は、この日、ある決心を固めていた。  
 
「大分買い込んだね」  
「そ、そうだね……」  
うれしそうにスキップする私とは対照的に辛そうな声を出している彼。  
「なによ、それぐらいでへばってるなんて…」  
「い、いやしかしこれは…買いすぎかと…」  
彼の腕には約7つほどの商品が抱えられている。  
ブランド物のズボンや新しいブーツ、その他もろもろ。  
それでも10キロは満たないと思うのだが、さすがに疲れてる彼にはきついらしい。  
「まったくしょうがないわね…」  
私の心臓が早く鳴り出し始めた。  
「そこで…休んでいかない?」  
指を差した先は、いかにも凝っている外装をしたホテル。  
ご丁寧に料金表を表に出してあるそれはただの宿泊用のホテルではなく…  
「えええええ!!」  
彼が思わず声をあげる。少し日に焼けた顔が赤くなっているのがわかった。  
「な、なにそんな声だしているのよ!!」  
彼を非難する私の声も、少し上ずっていてどことなくぎこちなかった。  
「だ、だってそこは…その…あ、アレのホテル…じゃない…か…」  
私は大きく深呼吸をし、少し自分を落ち着かせると次の言葉を話した。  
「私と…しない?」  
「え? す、するって、なにを?」  
「わ、わかるでしょ!! 女に恥をかかせないで!」  
もう限界である。早く答えを言って欲しい。正直、こんな恥ずかしいのはさっさと終わりたい。  
 
「ほ、本当にいいの?」  
しかし、彼の態度はどことなく釈然としない。  
私はついに我慢できず、さっさとその建物の中に入って行った。  
 
部屋を空けると、そこはいかにも、と言った部屋であった。  
ピンク色の証明に部屋の中央には話には聞いている回転ベッド。  
「な、中はこんな感じなんだな」  
私の背後で、結局私の後を追ってきて、そのまま成り行きでここまで来た彼が、  
商品を抱えたまま、部屋の中を見ると、感嘆の声を漏らした。  
「その荷物、下ろせばいいじゃない?」  
ごく当たり前の指摘を受け、彼は黙って荷物を下ろした。  
ふ〜っと重荷から開放された彼が息をつくが、  
私はそんなこともお構いなしに、自分の服を脱ぎ始めた。  
「ちょ、ちょっと! な、なにやってるんだよ!」  
「なにって? 見ての通り、脱いでるのよ。脱がなきゃ出来ないでしょ?」  
私は平全を装って答える。すると、彼は顔を真っ赤にして、  
「そ、そりゃそうだけど、物事には順序というものが…」  
とわけのわからないことを言い出し始めた。  
「まったく、男のクセに、怖気づいたの?」  
私は彼をわざとらしく鼻で笑うと、下着姿で彼に近づく。  
「!!」  
彼の視線が私の下着から見える胸やショーツのほうに移っているのがわかる。  
しかし、彼は逃げることもせず、私は彼と体を密着させた。  
彼の呼吸が大きくなっていて、心臓の鼓動が早くなっているのがわかる。  
私もそれは同じであった。  
私はつばを飲み込み、意志を固めると、そのまま左手を彼のズボンの股の付近を撫でた。  
 
「うっ!」  
彼の顔が歪む。  
「もう硬くなってるじゃない…」  
ズボン越しに、彼のモノが大きくなっているのがよくわかった。  
手をゆっくり上下に動かすだけで、彼が至極気持ちよさそうに顔をゆがめる。  
「ズボン越しじゃ、物足りないでしょ?」  
私はそう言うと、彼のベルトを外し、チャックを開ける。  
「お、おい! 空!」  
彼はこの思わぬ状況に大きな声を出すが、  
「なによ、こんなに大きくさせておいて、文句はなし、よ」  
私にこういわれると、黙り込んでしまった。  
そのまま、私は彼のトランクスのボタンも外し、彼のモノを外に出させる。  
男性器を見るのは初めてではないが、彼のモノは今まで見たものよりも、  
ずっと大きくて立派だった。  
「やはり、凄く大きい…」  
私は思わずため息を漏らし、指先で彼のソレをツイーっとなぞった。  
「うくっ!?」  
「気持ちいい? もっと気持ちよくしてあげるからね」  
私はそう言うと、前髪が邪魔にならないよう掻き揚げると、  
彼の前で膝をつき、大きくなった彼のモノを口に含んだ。  
「ん…んぐ…」  
大きいがために、口内に収めるのに苦労した。  
彼の味が私のそこに広がる。  
少し苦い、大人の男の味。  
私はさらにそれを味わい、そして彼を気持ちよくするために、舌を動かし始めた。  
 
「ん…ちゅぶ…んあ…ちゅぱ…」  
「そ、空…」  
「なひよ?」  
「その…気持ちいい…よ…うあ…」  
あまり経験のないフェラチオを彼に褒められ、  
私はますます得意げになる。  
舌だけでなく、手を使い、彼のものを扱く。  
唾液で濡れているためか、手の動きにあわせていやらしい音が聞こえてきた。  
じわ…  
「!!」  
私の下腹部に湿り気が帯びてきているのがわかる。  
(いやだ…もう濡れてきちゃった…)  
少しふしだらだと自分を責めるが、湧き上がる性欲を抑えきれず、  
私は思わず足をすり合わし、とりあえずの満足を得ようとする。  
しかし、それではやはり全然足りない。  
(いますぐ、彼のが欲しい…。彼のを私のに入れたい…)  
だが、今は彼を満足させ、その気にさせるのが先決である。  
私はひたすら体に湧き上がる渇きと疼きに耐えながら、彼のものを刺激し続けた。  
「そ、空!!! で、出るっっ!!!!!」  
突然、彼のモノが私の口内で跳ね、喉の奥にまで苦くてねばっこい精液を吐き出した。  
「う…けほっ!けほっ!!」  
その熱さと意外なまでに多かった量により、思わずむせてしまう私。  
「だ、大丈夫?」  
彼が私の声をかけるが、私は上を向き、ゆっくりと喉にその液体を通し、  
最後まで飲み干すと、  
「大丈夫。熱くておいしかったわ」  
と彼に笑顔を見せた。  
ふと、彼のモノを見ると、射精したあとで下を向いているものの、  
まだ太くて大きい状態であり、少し刺激を加えれば、すぐにでも元に戻りそうであった。  
 
「ねえ」  
「な、なに?」  
私は彼に声をかけると、そのままベッドのほうに歩き、  
そのままそこに横になった。  
「今度は私を気持ちよくして」  
「あ…う、そ、その…」  
しかし、あそこまでさせておきながら、彼はいまだに私を抱くのに躊躇していた。  
私は苛立ち、自分の穿いていた下着を脱ぐと、それを彼の顔面に投げつけた。  
「わっ!!!」  
彼はさすがは野球選手といわんばかりの反射神経でそれを掴むと、  
投げられたものをみて、さらに顔を赤くする。  
「そ、空…これって…あ―――!!!!!」  
一度、私のほうを見て、思わず彼は顔をすむけた。  
無理もない。私は下に何も身に着けていないのだ。  
「や、やっぱりコレは君の…そのパンティーだったんだね」  
「そうよ。そこにすこし染みが付いてるでしょ?……私、濡れちゃってるの」  
「え?」  
彼が再び自分の方を向く、私はそれを確認すると、  
両手を自分の股間に持っていき、指で自分のそこを弄くり始めた。  
くちゅくちゅ…  
「ほ、ほら…こんなに濡れて…ぁん…いやらしい音がしてるの…」  
「…」  
彼がつばを飲み込んだ。私はさらに追い討ちをかける。  
「お願い…あなたのせいでこうなったのよ? 責任、取ってよね?」  
上目遣いで、普段とは違う、甘い声で彼を誘う。  
さすがの彼も、これにはまいったのか、  
私の下着をそっと床に置くと、半脱ぎ状態だったズボンとトランクスをいっしょに下ろし、  
上に着ているものを脱ぎながら、私が待つベッドのほうに向かってきた。  
 
ギシ…  
ベットが音を立てて軋む。  
私の目の前に、あの人の顔…。  
視線を下に向けると、たくましい胸板があった。  
さすがは野球選手、といったところか。  
「空…」  
「あ…」  
突如、彼が首筋に唇を押し付けるようにキスをする。  
愛のしるしを刻み込むように私を味わう彼。  
「あ…だめよ…」  
「何を言ってるんだ。お前から誘っておいて」  
既に彼は一人の男となっていた。  
そのまま顔を下にずらし、私の胸の先端まで舌を這わせる。  
「ぁん…」  
思わず、声を漏らす私。  
「綺麗だ…」  
「やめてよ…そんなこと言われたら……恥ずかしいじゃない」  
嘘ではなかった。  
たとえお世辞であっても、自分の体を褒められると嬉しい。  
が、こんな状況で、女としての部分を褒められるというのはどうも恥ずかしくてしょうがない。  
 
ちゅ…  
「ひゃん!!」  
私の体にまるで電流が流れるように刺激が走る。  
彼が私のその敏感なところをまるで子供のように吸い付いてきたのだ。  
「いや…ちょっと……やめ…」  
「いいじゃないか。空が可愛くて仕方ないんだから」  
「も、もう…」  
今度は私が完全に黙り込まされてしまった。  
さっきとは立場が逆である。  
「本当に空は綺麗だ…」  
そうため息を漏らすように言いながら、胸を愛撫する彼。  
「あん…そんなこと言っても、1銭にもならない……わよ」  
「金にはならなくても、空を感じさせることは出来るさ」  
彼は私の憎まれ口にクスッと笑うと、  
空いている手を私の大事な場所へと持ってくる。  
指がかすかに膣内に進入してきて、私の体がすこしびくんと反応した。  
「ほら…。さっきから濡れてたけど、今はさらに濡れてる。  
 まるでお漏らしみたいだ」  
抜き取った指を私の眼前にちらつかせる。  
ねっとりとした液体が彼の指に大量に付着しており、  
彼が軽く動かすだけで、糸が引かれる。  
「や、やだ…」  
いかにも自分が淫らな女みたいで、さらに恥ずかしくなる。  
「ははは、まったく、空はかわいいね」  
いつもと態度が違う私を新鮮だと思ったのか、  
彼は私の頭を撫でながら、顔を自分の方に向かせると、唇を重ねてきた。  
 
「ん…ちゅ…んん…」  
私も抵抗することなく、彼と唇を重ね、さらに口の中に入ってきた舌を出迎え、  
それに私のを絡ませる。  
濃厚な大人のキス。  
今まさに、彼と愛し合っている自分が信じられなかった。  
胸の中になにかじんと込み上げるものが湧き上がり、思わず涙をこぼしそうになる。  
「…ねぇ」  
「何?」  
「優しくしてね」  
私は優しく微笑むと、そのままゆっくりと目をつぶった。  
彼を出迎える準備が出来たという、無言の合図である。  
「わかってるさ。お前を傷つけたりなんかしないさ」  
彼もそれを理解したのか、最後にもう一度私に軽くキスをすると、  
すでに回復し、はちきれんばかりに膨らんだ立派なモノを私のその部分へとあてがう。  
「挿れるよ?」  
私は無言で頷いた。  
 
じゅぷ…  
「ん…」  
私の入り口が押し広げられていく感触。  
ずぷぷぷ…  
「んんん…あふぅ…」  
亀頭が飲み込まれ、私の膣内が奥深くまで犯されていく。  
初めてではないのに、私は思わずシーツをぎゅっと握り締め、  
徐々に彼のものが私の中に収まる感触を味わっていた。  
「はぁはぁはぁ…」  
根元まで入りきると、私は肩で呼吸を整える。  
「…動くよ」  
「ええ…」  
再び大きく息を吸い、この後に備える。  
じゅぷ…じゅぷ…  
彼が腰を動かし始めた。  
「あぁ…あ…ぃぃ…気持ち…いい…よぉ…」  
ゆっくりとした動きであるが、私はそれでもかなりの快感を得ていた。  
彼は何も言わず、喘ぎ声を出しながら体をくねらせる私をそのまま突き続ける。  
徐々にペースをあげながら。  
じゅぷ・じゅぷ…  
いやらしい水のこすれ合う音の間隔が短くなる。  
ソレと同時に、私の中を駆け巡る快楽の嵐はより激しさを増していった。  
 
「ああああ!!だ、だめ…気持ちよすぎて…はぅううう!!!」  
私の声もより大きさを増す。  
ここがこういう目的のホテルでなかったら、  
ここまで開放的に大きな声で喘げなかったであろう。  
「空…俺、そろそろ…」  
「いいわよ!…私もそろそろイキそう!!!」  
「わかった…一緒にイこう・・・!!」  
互いに限界が近づき、彼は私の腰を抱えると、  
そのまま激しく自分の腰を打ちつけてきた。  
パンパンパン…  
乾いた肉のぶつかり合う音が部屋の中に響き渡る。  
互いの汗が飛び散り、私の胸も反復運動に合わせてふるふると震える。  
おそらく、それは彼にはさぞ官能的に見えるであろう。  
しかし、私はそれでもよかった。  
彼が私を抱くという行為を十分楽しんでくれるのなら、私はそれだけでうれしい。  
「空…空…そら!!!!」  
ビュクビュクビュク!!!  
私の名前を大声で何度か叫ぶと、  
腰を私の奥まで差し込むと、そのまま膣内に彼の精を解き放った。  
私の子宮をかれのそれが昇ってくる。  
熱いのが体の中を駆け巡る感触。  
「あ、熱い…あ、あ、あああああああ!!!!」  
それを受け、私の頭の中が真っ白になる。  
体がビクビクと痙攣し、まだ繋がったままの場所から大量の液を漏らしていくのがわかる。  
「ふぅ…」  
とたんに、疲れがたまっていた彼が私の胸へと倒れこんでくる。  
「ちょ、ちょっと…」  
「ごめん…悪いけど、少しだけこうさせてくれ。  
 空の胸の中がとても落ち着けるんだ」  
「も、もう…仕方ないな」  
多少、憎まれ口をたたくものの、私も思わず優しく微笑んだ。  
そして彼の頭を撫でながら、そのまま少し眠りに付いた。  
 
 
ズバン!!!  
「ットライーク!!!バッターアウト!!」  
パワフルズの8回裏の大チャンスはその審判の声とともに終わった。  
よろこんでベンチに戻っていく守り側の選手達。  
あ〜あ、と少ない観客達からもため息が漏れていた。  
(ふぅ…私と来たら、なんでこんなところにいるのかしら)  
ふと考えてみれば、なぜこんなところにきているのか、さっぱりわからなかった。  
少しばかり時間を無駄にしてしまった。  
私はそう考え、球場を後にしようとした。  
「お、おい!君!!!」  
審判がやや動揺した声をあげる。  
ふと、それにつられ、私は再びグランドのほうに目を向けた。  
「!!」  
すでに回は終わっている。  
攻守交替のはずなのに、その打者はいまだにバッターボックスでうなだれていた。  
その打者の方がかすかに震えている。  
(泣いて…いるの?)  
私の目に、その選手の悲しげな姿が酷く印象に残った。  
まるで、高校野球で最後に凡退した打者のように、彼はこのチャンスを生かせなかった  
自分が悔しい、そう見えた。  
「…選手か」  
スコアボードにあるその名前を見つけると、私はそれが忘れることが出来なくなった。  
 
 
ピーピーピー♪  
聞きなれた携帯の着信メロディーで私は目を覚ます。  
まだ眠っていた彼を起こさぬよう、そっとベットに寝かせ、  
なんとなくシーツで身を隠しながら、電話を取る。  
発信者は…どうやら自分の上司らしい。  
「もしもし…」  
「おお、君か。今、大丈夫かね」  
私はチラリと彼のほうを見る。  
しかし、彼はまだ夢の世界らしく、見ていて和むような寝顔をしていた。  
「…はい、大丈夫です」  
「そうか。実はだな……」  
 
ガチャ…ツーツーツー…  
電話が切れた後、私は少し放心状態であった。  
前から志願していた、海外への研修。  
それがようやく実現したのだ。  
うれしいはずなのに、私の心境は複雑だ。  
なぜなら…  
「ん…空、起きてたのか……」  
ようやく目を覚ました彼がおもむろにベットから立ち上がる。  
そして、自分がなにも身に着けていないことを思い出し、慌てて手で前を隠しながら、  
脱ぎ捨てたトランクスをとりあえず穿いた。  
あわてんぼうの彼らしい行動に、思わず顔が歪むが、私の顔は再び深刻になってしまった。  
「おや、どうした?」  
「ううん…なんでもない」  
彼に気づかれないよう、私はいつもの私らしく、いつもの笑顔を彼に返す。  
「そうか…。それじゃ、シャワー浴びてからチェックアウトしようか」  
「ええ、そうね。先に浴びてもいいわよ」  
「悪いな」  
 
彼がシャワールームに入っていく。  
蛇口のひねる音と、水が地面に降り注ぐ音が聞こえてくる。  
「私…どうすればいいのかしら」  
頭の中の考えはまとまらない。  
海外に行けば、2度と彼に合えないかもしれない。  
でも、長年の夢を簡単には捨てきれなかった。  
 
 
 
気づけば、季節は冬になっていた。  
新聞には野球の試合結果はすでにない。  
それもそのはず、今日はクリスマスである。  
カーテンを開けると、天気はいいものの、相変わらず寒そうだった。  
「…結局、考えがまとまらなかったなァ」  
海外研修の申し込みは今年の年末までであるが、私の考えはまだ決まっていなかった。  
ふぅとため息をつくと、私は着替えを始める。  
もちろん、彼に会うためだ。  
「…彼に話そう。彼と相談すれば、少しは楽になれるかも知れない」  
最後に、渡す予定の本をかばんに入れ、私は家を飛び出した。  
はたして、彼はなんと言うのであろう。  
期待と不安が私の心の中を支配していた。  
 

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