2003年のプロ野球は、  
セ・リーグ優勝の猪狩カイザースが、パ・リーグ優勝のダイエーホークスを4連勝で下し、  
球団新生1年目からの日本一という結果で、その幕を閉じた。  
各球団とも秋季キャンプに入り、来季へ向けての準備を始めていた…。  
 
「おい、みずき!、ちょっといいかぁ~?」  
今年、ここキャットハンズにドラフト1位で入団した女性投手、橘みずき。  
今シーズン、9勝4敗8セーブと、ルーキーとしてはまずまずの成績を残している。  
チーム自体は後一歩及ばず、2位という結果に終わったが、彼女のチームに対する貢献は 
大きかったといえる。  
グラウンドで投げ込みをしていたみずきを、キャットハンズ監督・世渡は大声で呼んだ。  
タッタッタッ…  
急ぎ足でみずきがこちらに駆け寄ってくる。  
「…ふぅ。なんですか、監督?」  
軽く息を弾ませながら、みずきが用件を尋ねる。  
「お前、明日のことは聞いてるな?」  
「えっと…選手会の新人研修のことですか?」  
「そうそう。ルーキーは原則全員参加だから、忘れずに行くんだぞ」  
「はい。わかってます」  
「よし、それだけだ。戻っていいぞ」  
「はい。失礼します」  
ぺこりと頭を下げて、また小走りでグラウンドへと戻っていく。  
 
プロ野球選手会では毎年、シーズン終了後に今年入団したルーキーたちを対象にした、新人 
研修会を開いている。  
通常なら日帰りで、選手の権利とか、契約更改の知識などを学ぶわけだが、  
今年は特別に、猪狩コンツェルンが費用を援助する形で、1泊2日の温泉つき研修という豪 
華なものとなっていた。  
 
「ここかぁ~…」  
チームごとにバスに分乗して、会場となる旅館へと到着した。  
立派な建物だが、看板には大きく、『IKARI』のマークがついている。  
確か選手会は球団とは独立した組織だと聞いていたがこういうのを見ると結構疑問が残る。  
「パシフィック、キャットハンズの橘みずきです」  
「確認致しました。どうぞ」  
係に案内されて部屋へと向かう。  
みずきは荷物を置き、服を着替えると、会場であるホールへと向かった。  
 
すでにホールには、今年入団したルーキーたちがぞくぞくと集まっていた。  
「お、あいつは…」  
「キャットハンズの橘みずきだろ?女だと思ってナメてたけどなかなかやるよな」  
「俺なんか結局あいつからヒット一本も打てなかったよ」  
日本で二人目の女性プロ選手として、先輩のあおいほどではないが、みずきは  
それなりに名を知られていた。なかなかの成績だったこともそれを後押ししている。  
「えっと…私の席は…っと」  
渡された座席表を見ながら自分の席を探す。  
「CH-1、CH-1…あ、ここだ」  
やっと自分の席を見つけ、そこに座る。  
そのとき、思いがけず隣に座っていた選手と足が触れてしまった  
 
「あ、すいません…」  
みずきは軽く頭を下げる。  
「え?」  
謝られた選手がみずきのほうに顔を向ける。  
「あ…友沢さん!?」  
隣の相手は、今年、名門帝王実業からカイザースに入団し、  
打率3割、HR30本、盗塁30個という成績でセ・リーグ新人王に輝いた、友沢亮だった。  
「っと…橘さんだっけ?」  
「うん。オープン戦以来…かな?」  
「ああ、そうだね」  
「新人王おめでとう」  
「…どうも。でもアンタも惜しかったじゃん。優勝してたらそっちの新人王だったろ?」  
「へへ、そうだったかもね」  
オープン戦で二人は対戦したことがあるが、その時は友沢が2打数2安打と完勝している。  
「日本シリーズ、出たかったな」  
「来年出れるだろ。日本一は譲らないけどな」  
「今度は負けないわよ」  
「フン、言ってろ」  
「こらそこ!うるさいぞ!」  
選手会長、古田から注意され、二人は縮こまった。  
 

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