文化祭当日。  
あかつき大付属高校はいつもの厳かさはなく、高校生特有のお祭りムードで盛り上がっていた。  
一般客が入る前の全校集会や、直前のミーティングも終わり、各クラスや各部はイベントや出店の最終チェックに余念がない。  
それは野球部の面々も同じである。  
集合時間になり、セッティングの終わった教室に部員が集まってくる。  
そこには、青海と矢部、そして猪狩兄弟の姿も当然の様にある。  
ただ、守の表情は、重苦しかった。  
「…兄さん、大丈夫?」  
傍らの進が異変に気づき、心配そうに守を見遣る。  
その声にはっとして、守は進の肩を叩く。  
「あ、ああ…大丈夫だ」  
「本当に大丈夫か猪狩ィ」  
すると、背後から背筋が寒くなるような声が聞こえた。  
青海のものである。  
振り返ればその顔にはいやらしい笑みが張り付いていることだろう。  
言葉とは違い、およそ心配などしている風ではない口調。  
吐き気がするような嫌悪感に守は振り向かずに下を向いた。  
青海は更に言葉を続ける。  
「体調でも悪いのか?…休んでもいいんだぜ?」  
「そう、別にやらなくてもいいんでやんすよ」  
矢部も青海に続く。  
「そっ…そんな…っ!」  
 
守の脳裏に、この間の陵辱がよぎる。  
その一部始終を記録したビデオ…。  
青海達は、自分が抵抗すればそれを進に見せると言う。  
そして、ついには昨日、女装はするから器具の挿入だけは止めてくれ、と屈辱の懇願をした守に  
『そうだ…いっそ進君も仲間にいれて、くんずほぐれずの兄弟ドンブリを喰らうのも…悪くないなあ』  
とまで言ってきた。  
自分の痴態を晒された挙げ句、弟まで手込めにされたら……!  
猪狩はもはや青海達の操り人形となるしかなかった。  
(くそっ…!)  
「それじゃ、今日の細かい動きは各リーダーに従って下さい」  
眼鏡をくっ、と押し上げ、指示を出す野球部マネージャーの澄香。  
皆がその声にがやがやと動き出す。  
「じゃあ、兄さん、僕も行きます。無理はしないで下さい」  
進は守を気遣いながら裏方の集まりへと合流していった。  
進が去り、一人になった瞬間、背後の淫猥な気配にさらわれる恐怖が、一気に守を支配する。  
 
「猪狩くん」  
ふと、守を呼ぶ声がした。顔を上げると、澄香がじっと守を見つめていた。  
そして、守の方に歩み寄ると、  
「猪狩くんはフロアの担当だったわよね」  
書類に目を遣りながら話す。  
「…私と一緒に来て」  
「何…?」  
澄香は確かにフロアの担当だが、てっきり青海に連れていかれると思っていた守は澄香の言葉に困惑した。  
振り返ると、青海達の姿は既にない。  
諦めたのか?いや、そんな筈は絶対にない。  
(ならば、何故四条を……もしや…!)  
守の頭に最悪の考えが浮かぶ。  
……澄香も、青海に……?  
「どうしたの?」  
澄香が訝しげに守を見る。  
「…ついてきて」  
「あ…待て!」  
廊下に出た澄香を守は慌てて呼び止めた。  
「何かしら」  
澄香は少し驚いた表情で振り向く。  
「四条、その、お前は…青海に…いや…その…」  
さすがに事を率直に問うのはためらわれ、守はおろおろと言葉を探す。  
しかし、澄香はため息の後で守に向かって言う。  
「私は貴方とは違うわ。早く行かないと、もっと酷くされるわよ。それとも…酷いのが好みなの?」  
「……!?」  
その言葉の意味が守にはしばらく解りかねたが、澄香の含みを持たせた微笑みに、青海の顔が重なって見えた瞬間、守は全身の血の気が引くのを感じた。  
「四条…キミは…」  
「早く行きましょう」  
澄香は冷たく微笑み、廊下を歩き出す。  
守は、澄香にあの行為を知られたという絶望に意識を奪われたまま、その後ろをふらふらと付いていったのだった。  
 
『地学準備室』と書かれた部屋。澄香はその扉を開ける。  
薄暗く、雑然と教材が積まれた埃臭い部屋に守を招き入れると、澄香はドアの鍵を閉めた。  
そして、部屋の隅に置かれた紙袋から、ウェイトレスの服を取り出した。  
「衣装は、持ってきたわ。あの倉庫に置きっぱなしにしてあったから」  
そしてそれを守に手渡す。  
「着替えなさい」  
強い口調だった。  
守は黙ったまま震える手で服を受け取り、ブレザーを脱ぎ、シャツのボタンに指をかける。  
「随分素直なのね。どうしたのかしら」  
くすくすと笑う澄香。  
守は澄香に見え隠れする青海の影に、下唇を噛みしめながら、一枚、また一枚と脱いでゆく。  
下着姿になり、上からウェイトレス服を着ようとしたとき、澄香が口を出した。  
「下着も脱ぐのよ」  
「えっ」  
彼女の前で下着を脱ぐ、つまり女性に下半身を晒すということ。  
羞恥を覚える守は、うつむきためらった。  
だが澄香は脱衣をせかすように、紙袋からある物を取り出して守に見せる。  
「だって脱がないとコレ、入れられないでしょう?」  
それはあの時服と一緒に渡されたバイブだった。  
鮮やかなピンク色と醜悪な形状。  
それを知的で美形な澄香が持っているのは、異様にいやらしく見える。  
澄香はその器具を守に突きつけて口端に笑みを浮かべる。  
 
「私じゃ嫌?青海くんに突っ込まれて悦んでたのに。…やっぱり男が好きなのかしら」  
「そんなことはっ!」  
青海にされた行為を持ち出され、守は強く否定した。  
自分があの行為を悦んでいたなどとは信じたくなかった。  
守は意を決して澄香に口を開く。  
「キミには…解らないさ…!僕がどれだけ苦しいか!青海なんかの手先に成り下がったキミには解らない!」  
「……っ」  
突然大声でまくし立てた守に、澄香は面食らった様子だった。  
「青海はどこだ」  
守は澄香に詰め寄る。しかし澄香は答えない。  
「本当はキミも…青海に何かされているんだろう?だったら……」  
 
「はいタイムアップ」  
「でやんす」  
「!!」  
突然、奥の地学学習室に繋がる扉が開き、……青海と矢部が姿を見せた。  
「パンイチで女子高生に迫る大企業の御曹司。なかなか面白いぜ猪狩。そのまま押し倒しちまえばよかったのによ」  
青海は大げさな手振りで茶化してみせる。  
「貴様ッ」  
守は青海を睨みつける。  
しかし、青海はそれを気にも留めず、澄香の方へと歩み寄る。  
 
「さあて澄香ちゃん、俺と約束した事、覚えてるかな?」  
くいっ、と顎を持ち上げ、澄香の整った顔を見つめる。  
澄香は震えながら口を開いた。  
「おっ、青海くんが来るまでに…猪狩くんに…ばっ…バイブを挿入して女装させておくこと……」  
「できなければ?」  
「猪狩くんと…同じ、は…辱めを受けます…」  
青海はその答えににやりと笑う。  
澄香は襲い来るものから逃げるようにぎゅっ、と目を瞑った。  
「な…何をっ!」  
澄香の変化に気づいた守は二人の方へ駆け寄ろうとしたが、矢部に押さえつけられ、動けない。  
そして、青海はポケットの中から小さなスイッチを取り出す。  
カチッ  
「あ、ふあぁぁあぁぁ!」  
小刻みなモーター音と共に澄香があられもない声を上げた。  
「四条!」  
守はどうにかして澄香の方へ行こうとしたが、矢部がそれを許さない。  
「離せっ!」  
「そうもいかないでやんす。仲間に入りたいのはわかるでやんすが、もう少し待つでやんすよ」  
守が矢部と格闘している間にも、澄香は青海にもたれ掛かりながらビクビクと体を震わせている。  
「あっ、あぁ、ああぁ…!」  
ついに澄香はその場に倒れ込む。  
青海は澄香のスカートをめくり、ショーツを剥ぐ。  
 
M字に開かれた澄香の足の間、膣と尻穴には、太く乱暴に動く玩具が挿入されている。  
もはやグシュグシュに濡れそぼった秘穴から蜜が流れ、クリトリスは快感に隆起している。  
それを笑いながら見ている青海。  
手で探ることはせず、玩具だけで澄香を追いつめていく。  
「意外にエロいんだな澄香ちゃんは」  
「やぁ…みっ……みないでぇ…あ、あぁぁん!」  
「兄貴のチンポでかき回されてるのとどっちがいいんだ?」  
「そんなぁ…そっ…んな……あっあ…あぁ!だめぇぇっ!い…いくぅ…!やぁあぁぁ…ぁっ!」  
「四条ぉ!」  
悦楽の叫びと共に澄香は果てた。  
荒い息のリズムと合わせるようにひく、ひくん、と体が小さく跳ねている。  
「兄貴とヤッてるとこでも想像したのか?感度がよくなってたみたいだぜ」  
ぐったりと床に伏す澄香を見おろし、青海はまたけらけらと笑った。  
その様子を見ているしかできなかった守は、何とか力づくで矢部から逃れ、青海にむかって拳を振り上げた。  
「…この…下衆野郎が!」  
「けっ」  
しかし、それをたやすく受け止めると、青海は逆に守のみぞおちに拳を叩きつける。  
「ぐぅ…」  
「お前は大人しくしてりゃいいんだよ、ケツマンコとクリチンポの淫乱野郎が」  
そして倒れ込んだ守の下着を剥ぐ。  
「どうせ、待ちきれなかったんだろ?……今『女』にして放り出してやるからな」  
 

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