俺はイレブンのエースで4番、そしてモテモテの男、品川(しながわ)だ。  
今年のイレブンはマジで強い。前年度の秋季大会は念願の優勝を果たしている。  
まぁ、はっきり言って俺一人で試合を勝ち抜いてきたようなもんだ。  
人員不足によりサッカー部をショートやキャッチャーに置いている。  
そんなチームで優勝するあたりが、俺のすごいところだ。  
試合ではノーヒットを達成し、大会では.750 10本塁打を記録。  
まあ、出塁はされた。キャッチャーが球を捕ってくれないから、軽く投げざるを得なかった。  
でも、失点はない。  
そんな俺は、春季大会を迎えようとしていた。  
まぁ、2連覇も夢じゃないってマスコミが言ってるわけだし。  
あまりにも人気が高すぎて「シナガッシュ」とか言うあだ名も付けられたし。  
よし。大会に向けて練習だ!  
俺は、グラウンドへ向かった。  
 
グラウンドにはいつものメンバーがいた。  
「遅いでやんすよ。品川君。」  
「オッス。矢部。」  
「遅れた罰として、グラウンド3周でやんす!!」  
「・・・ちぇっ」  
走りながら俺は思う。  
・・・なぜこいつがキャプテンに選ばれたのか。それがどうも分からなかった。  
満田のヤローが俺に嫉妬したのか。  
最後の大会、一度もマウンドに上がれなかったからって。  
活躍しているのは俺だけだった。矢部は全然上手になってないのに。  
まだ、サッカー部の誰かの方がまともだ。  
そんなことを考えているうちに、陸上部を上回る速さで300メートルのグラウンドを駆け抜ける。  
 
俺にとってグラウンド3周なんて、朝飯前だ。  
ささっと走り終えてしまった。  
一度部室に戻り、俺愛用のグローブを取りに行く。と・・・  
「ぷにぷに・・・」  
・・・俺のほっぺたにぷにぷにするヤツ。あいつしかいない。  
「おい、みずき。なんだ?」  
「あら。あいそ無いわねぇ〜。品川君。ワタシのこと、嫌い〜?」  
「フッ・・・どうかな。」  
今日は少し、クールに決めてみた。  
まぁ、ぷにぷにされるのも悪くはない。  
ぷにぷには、俺だけにしかしない。こいつ、絶対俺に惚れてるぜ。  
悪い女じゃないしな。  
そういえば・・・みずきは女の子なのに、大学生の男達に混じって野球をしている。  
体力的にも不利なはずなのに。  
頑張ってるのかな。俺がいなけりゃ先発ピッチャーだろうに。  
でも、なぜかつらい表情は見たことがない。  
努力家なのか。自信家なのか。わかんないヤツだなぁ。  
「じゃ、グラウンドにいこっ♪」  
「よし。行こうぜ。」  
俺だって、男。ほんの一時でも、可愛い女の子といる時間は、しあわせな気分になる。  
 
「で、矢部。今日は何の練習するんだ?」  
「今日はみんなで打撃練習でやんす。品川君以外はほとんどヒットを打てない状態でやんす。今日はヒットを少しでも打てるように練習したいと思うでやんす。」  
・・・矢部も頑張ってるな。俺がキャプテンになっていたら、チームに何が必要かを考えずテキトーに練習メニューを決めていたはず。  
チームのために、みんなにどんな練習をさせるか。矢部はそれを考えている様な気がする。  
満田のヤローはそのことをわかっていたのか・・・?まさか、ね。  
「では、練習開始でやんす!あと、みずきちゃん。監督がみずきちゃんに話があるそうでやんす。」  
「へ?ワタシ?」  
みずきは戸惑いながら、監督の所へ走っていった。何だろうか。まぁたいしたことではないだろう。  
チームメイト達が、ピッチングマシンの所へ向かう。  
「品川君。オイラ達も行くでやんす。」  
・・・俺もなにか。矢部に、チームのために頑張っている矢部に何かできないか。  
なぜ俺がこんな事考えたのか。自分でも自覚しているほどの自己中なのにw  
「矢部。ピッチングマシンなんて、つまらないだろう。俺が打撃投手をやるよ。」  
「え・・・?いいでやんすか?」  
「ああ。たまには打撃投手もやってみたくなった。」  
「大歓迎でやんす。お願いするでやんす。」  
「ちょっとまてぇ!品川!ワイの相手をせぇ!」  
「な・・・何だよ、雪村。」  
「やんす。」  
「矢部。ワリィが、こいつ借りるわ。機械じゃ相手にならんわ。」  
「・・・分かったでやんす・・・チームメイトの頼みは断れないでやんす・・・。」  
「物わかりがエエなぁ。さて、品川。やるで!全力でこい!」  
・・・・・ったく。  
 
「おい。佐藤。ワリィが、ちょっとキャッチャーやってくれないか。」  
「あっ、品川先輩。僕で良ければ、任せてくださいよ。」  
バッターボックスに雪村が立つ。  
「さァ、こい!品川ぁ!」  
なぜこいつが挑んできたのか。  
・・・ホントにピッチングマシンじゃ相手にならないからなのか。  
それとも、いきがっている俺に一泡吹かせたかったのか。  
どちらにしろ、相手にならない。俺は力を抜いて投げる。  
シュッ  
「うぉぉぉ!ホームランやぁ!!!」  
バシィッ・・・  
イレブンの野球部員の中では、「うまい」部類に入る雪村。  
守備も打撃もなかなか悪くない。  
だが、俺とは比べるまでもない。  
「やるやないか!さあ次こい次!」  
「・・・ふん」  
シュッ  
スカッ  
バシィッ・・・  
 
何球投げただろうか・・・  
まだかすりもしない。  
だんだんと、日が落ちていく。  
「まだまだ!それとももうバテたのかぁ!」  
・・・気合いだけはあるな。  
流石にかわいそうになったので、ど真ん中のスローボールを投げてやった。  
カキイイイィィン!!  
「どうや・・・!やったで・・・!品川!お前の球を・・・打ってやったで!!!」  
「フッ。やられたな・・・」  
と、苦笑い。  
 
 
「悪かったな。佐藤。ムリに付き合わせてしまって。」  
「いえ。そんなことありませんよ!先輩。」  
「ハッハッハ!どうや品川!」  
「フン。良かったじゃないか。」  
「お前ってヤツはなぁ。もっと悔しがれや!ハッハッハ!」  
・・・・しつこいヤツだ。ちょっと下手に出るとすぐこうだ。  
「全員集合でやんす!」  
「今日の練習はこれまでにするでやんす!では、解散!」  
「あっしたー!」  
・・・・そういえば。みずきは監督に呼ばれてから戻ってきてない。  
なにかあったのか・・・?  
考え事をしつつ校門を出る。  
「やっほー!品川クーン!」  
いきなり誰かが飛び出してきた。って・・・!  
「あっ・・・!!絵里・・・!!!」  
「何。その驚き方。アタシのことが怖いの?」  
「あ・・・いや、そんなことはないけど・・・」  
「ふ〜ん?ま、それは置いといて、さ。久しぶりに、一緒に帰らない?」  
「・・・ああ。帰ろうか・・・」  
絵里。みんなからはエリリンって呼ばれている、野球部のマネージャーだ。  
部員にも好評のちょっとしたアイドルだった。  
絵里の話は、面白くて飽きない。  
時折見せる笑顔に、目を奪われる事もしばしば。  
年は一つ違うものの、絵里は同年代のように接してくる。  
「んじゃ〜また明日ね〜!品川クーン!」  
「じゃーな・・!!」  
そんな絵里に、俺は惚れている・・・  
絵里の後ろ姿を・・・見えなくなるまで、ずっと見ていた。  
シナガッシュ!!! part1  
--糸冬了--  
 

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