辺りを見渡す。  
皆いつもどおり各々で練習をしているが、中にはサッカー部の学生も混じっている。  
イレブン大のグラウンドは、元々スペースがあまり無く、常にいくつかの部と共有している状態である。  
だが、4年もこの状態ならば、慣れるのは当たり前だ。  
・・・・なぜだろう。  
こんなことを気にするのは今日が初めてだ。  
入部当初、こんな状況でプロに行けるのか正直、心配だった。  
あくまでも心配していただけだった。他には何も考えなかった。  
だが、今は違う。今では―――  
いや、こんなことを気にしていていても始まらないか。  
精神練習。今すべきことはそれだ。ぼんやりと座っていても、どうしようもない。  
この前の試合の様にはならない。この前の試合の様には。  
 
「おつかれー」  
「おつかれでやんす。今日は随分早くあがるけど、何かあるでやんすか?」  
「んー。バイトよバイト。今日は早く行こうと思って。」  
「そう言って、おいら達に隠れてデートしてるんじゃ―――」  
「なんだとこのメガネ!」  
「うわーんみずきちゃんに殺されるでやんすぅー」  
まったく何言ってんだか。  
つーか、殺されるはいくらなんでも言いすぎじゃない。やったとしても半殺しよ。  
さてと、行かなきゃ―――  
「みずきちゃん!」  
「何よ!もうー!」  
誰かと思えば軽井沢か。  
「僕たちに隠れてデートしてるって本当?!」  
矢部・・・・・今度本当に半殺しにしてやろうか。  
「んなわけないでしょう!本当にバイトよ!」  
「本当?」  
「本当!」  
「・・・・・・ははははは!やっぱり僕以外とは誰ともデートしないんだよね!(ニカッ」  
歯、光ってら・・・・  
「・・・・とりあえず、もう行くから!」  
ロッカールームまで振り向かずに突っ走っていく。  
 

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