「今日は6人も集まったね」  
「じゃ、勉強会、始めよっか」  
 
西沢の家では定期的に、こうして野球部の有志を募って勉強会が開かれている。  
文武両道を謳った校風のイレブン工科大学においては、プロ入りが有望な野球部員と言えども、  
イエローカードを貰ってしまうと後々致命傷になりかねないのだ。  
 
今回のメンバーは主催の西沢と矢部、野球部からは他に橘…いや、みずき。  
それに、本来はサッカー部に所属している軽井沢、石野、波佐見、紙山の4人には、  
野球部の練習に参加していた時に声をかけたら、あっさりと参加してくれることになった。  
 
総勢7人…大学生のひとり暮らしのアパートに詰め込むには無理のある人数。  
しかしこれも勉強の効率を考えてのこと。  
皆で小さい机を囲んで勉強すれば、ノートを写すのだって楽になるし…。  
 
「なー、ちょっと狭すぎないかー?」  
 
ジャンケントリオの1人が思わず不満を漏らす。  
 
「仕方がないでやんす。西沢くんの部屋は散らかっている分、スペースが…」  
「いっつも散らかっているのは、遊びにくる矢部くんのせいじゃないか!」  
 
賑やかな雰囲気の中、結局は野球部の女性リーダーが仕切り、  
ようやくまともな勉強をする空気が整えられた。  
 
カリカリ…カリカリ…  
 
「おーい、ここの答え教えてくれー」  
「ほいほい、そこの答えはBだよ」  
 
このように、あの軽井沢も割と?まじめに勉強に取り組んでいるようだ。  
 
「ねぇ、そろそろ休憩しない?」  
 
と、提案してきたのもみずきだった。  
主催の2人より、ずっと強引に場を仕切っている。  
しかし、この提案には誰も反対しなかった。  
 
「いいね、そうしよう」  
「そういえばオレ、お菓子持ってきたんだー」  
「ラッキーでやんす!今すぐ出すでやんす!」  
「落ち着けよ矢部」  
「ははは…じゃあオレ、皆の分のお茶を入れるよ」  
 
ホストの西沢がそう言って席を立ち、他の者は机の上の道具をしまい、  
お菓子の袋をたくさん並べて、早速開封して食べ始めた。  
 
西沢は来客用のカップを、食器棚の中から探していた。  
散らかっているのは矢部のせいと言ったものの、もっとピシッと食器棚も  
整頓できていればこんなに時間がかかることもなかっただろう…。  
 
ちょっとだけ反省しながら更に棚の奥を探る。  
皆のいる方から、休憩で緊張が途切れたメンバーの騒ぐ声が聞こえる。  
ちょっとストレスの溜まる作業をやっていた西沢の神経を逆撫でするようにも…  
 
 
「きゃー! ちょっと、何すんのよ!」  
「軽井沢くん、そのまま抑えているでやんす!」  
「みずきちゃん、可哀想だけど、今回は反省してもらわないとね…」  
 
…からかい合うようにはしゃぐみずき、矢部、軽井沢の声。  
うるさいな、大体夜だし近所迷惑だし…そう口に出しそうになって、こらえた。  
今のタイミングで怒鳴ったりしたら、まるで嫉妬しているみたいで恥ずかしいから。  
 
そう…勿論こんなことは誰にも言えないものの、  
西沢は、姉御肌でわがままなみずきにある種の好意を寄せていたのだ。  
他の野球部員らはこうしてふざけあったりもするけど、  
西沢は今のように、それには参加することもなく、興味のある素振りも見せなかった。  
ようするに奥手で、でも一人前に嫉妬はしたし、意地も張っていたのだ。  
 
 
「ほら、大人しくするでやんす!」  
「こらっ! 離しなさいよ! …んんっ!」  
 
抑えつけられて、抵抗するような物音。  
 
「んぐっ…ふぅぅんっ・・っく!」  
 
鼻からだけ激しく息が抜ける声。  
 
…あれ?  
 
「…おいっ!!」  
 
作業をやめて、慌てて皆の元へ駆けつけた西沢。  
 
しかし、自らが想像していたシーンには至っておらず、  
みずきのあんな姿やこんな姿を脳内に描いていたことに酷い罪悪感を覚えた。  
 
「…えと…隣の人、うるさいから。あまり騒がないようにね」  
 
ばつが悪そうに、本来言うべきだったセリフと違う言葉を見つけて、弱気に言ってやった。  
 
「だってみずきちゃんが悪いでやんす」  
「そーそー、みんなの分のドーナツを食べようとしたんだぜ」  
「西沢の分もな。だからこうして…」  
 
女王の口を塞いでいたものは、チョコでコーティングされたドーナツだった。  
どうやら軽井沢ら、止めに入った連中の方こそ、  
「抵抗むなしく」と言った様子だった。  
 
「大体どうしたんだよ、いきなりそんなに大声で怒鳴って」  
「西沢くんこそ近所迷惑でやんす」  
 
言われてみれば確かにそうだ。  
しかし、あれだけ騒いでいたくせに、これだけ冷静に返す軽井沢と矢部には  
西沢も内心ムッとした。…しかしここはぐっと我慢。  
勉強会のホストであり、野球部の一員であり…  
しかしそれ以前に、みずきが見ている前では極力冷静に振舞おうと思いとどまったのだ。  
 
「…はは、悪かったよ。でももう少し仲良くやってよ。ふざけてケガとかあっちゃ困るし」  
 
ケガの心配が理由なんて、我ながら酷いこじつけだと彼は思った。  
 
「(西沢くん…)」  
 
自分の体を気遣う言葉を額面通りに受け取り、みずきはちょっとだけうっとりしていた。  
が、しかし。  
 
「ひゅー、かっこいいなー」とジャンケントリオの1人が冷やかすと、  
「さっき凄い剣幕で怒鳴り込んできたのは、ひょっとして…」ともう1人。  
「ははーん、そういうことでやんすか…」といやらしい笑みを浮かべる矢部。  
 
「へぇ、そういうことか…」  
 
つまらなそうにぽつりと呟いたのは軽井沢だ。  
たしかに面白くはないだろう、彼がみずきを好いていることは野球・サッカー両部  
のみならず、学園中の皆の周知の事実なのだ。  
みずきのこととなると熱くなるのも彼らしい。  
春の花見の時、みずきの手作りクッキー争奪戦に人一倍執着していたのもこの男だ。  
 
「ち、違うよ。いいから、早く皆ちゃんと座って。お茶出すから」  
 
ただならぬ軽井沢のオーラも察知し、思わずホストは急いでお茶を濁そうとする。  
 
「部員同士のスキンシップってやつだよ…サッカーも野球も、チームワークが大事だろ?」  
 
挑発するような軽井沢の態度にムッとする。でもそれより、  
さっきから軽井沢がみずきを羽交い絞めにしていたことのほうが気になっていた。  
 
「…だって…みずきちゃんは女の子だし…あ、それにあまり気安く触らないほうが…」  
 
だんだん本音が出やすくなっているところを自分で軌道修正したつもりらしい。  
あくまで女王・みずきとしての力を恐れたような口ぶりに変えて。  
 
「んーっ…ふぬんっ…ふるふる…」  
 
そしていつも通り、そんな言い方をするとみずきは怒ってみせる。  
しかし、今は軽井沢に拘束されている上、口にもドーナツが咥えられたままである。  
心なしか、顔面が紅潮して、瞳が潤んでいるようにも見える…  
 
「ほーら、この通り。今のみずきちゃんなんてカゴの中の子猫みたいなもんさ」  
 
軽井沢はいつもの爽やかな笑みを浮かべているが、やっていることは酷い。  
 
「んっ…ぞくぞく…。ぶんぶんぶんっ!」  
 
自分の真後ろで自分を拘束している男に、こんなことを言われてしまって、  
みずきには背中から全身に、鳥肌がぶつぶつと広がっていくのがわかった。  
その悪寒にも抵抗するように、違う違うと激しく首を横に振る。  
 
「あのなぁ軽井沢、いい加減にしないと…」  
 
いけない、とうとう我を抑えられなくなっている。  
しかし、同時に軽井沢の方にも異変が起き始めていた。  
 
「はぁ…はぁ…みずき、かわいいよみずきっ…すりすり」  
 
羽交い絞めのまま、みずきの背中、髪、ついには頬…と、自分の頬をすり寄せる。  
彼の長髪とみずきのショートヘアが絡み合い、そして乱れ、  
淫靡な雰囲気を醸し出す。軽井沢の息が激しく乱れていく。  
 
「ゃ…んっ、んふぅっ…はぁっ…」  
 
背中から、頬から伝わる不慣れな男性の熱。  
また、男性からの不慣れな呼び捨て…いや、それより「かわいい」  
という言葉に反応したのだろうか、  
みずきの顔面の紅潮はより色濃くなり、みずきの息も次第に興奮のせいで  
荒々しくリズムを変えていく。  
 
「こうしてるとみずきちゃんもイイ声出すよなー」  
「本当に子猫みたいだぜ」  
「軽井沢ー、オレたちにも…」  
 
ジャンケントリオは軽井沢の態度に引くわけでもなく、興味津々である。  
 
「はぁっ…ま、まぁ待てよ。せっかく楽しんでるんだし」  
 
軽井沢が寄せる頬に、狭い稼動範囲内で逃げるみずきの首。  
案の定簡単に捕まり、みずきの左耳に軽井沢の唇があてられる。  
そしてそのまま、ふうっと優しい吐息が放たれる。  
 
「びくんっ! や…は、ふぅ…くぅぅ」  
 
思わず上半身を反らして軽井沢のふーふー攻撃に反応するみずき。  
 
気のせいかと思っていた瞳に浮かんでいたものは、  
たしかにキラキラと光り、そして一粒がぽろりとこぼれ落ちた。  
 
「軽井沢っ!!」  
 
みずきの背後に張り付く軽井沢に詰め寄る。  
もう体裁なんてどうにでもなれ、と思った。  
 
が、あっけなく西沢もぐいっ、と背後から拘束され、そのまま後ろに尻餅をつく。  
 
「ドント・ディスターブでやんす」  
「うっ…離せよ矢部くん! 大体キミは平気なのか、みずきちゃんがあんなことっ…」  
「いいぞ矢部、そのまま抑えてろ」  
「ガッテンでやんす!」  
 
「(に、西沢くん…)ふんっ…んー!んー!」  
 
部屋の中での唯一の味方があっけなく組み敷かれ、自力での抵抗を再び始めるみずき。  
掴まれた上半身を左右にくねらせ、自由に動く両足をバタバタとさせる。  
しかし、両足はむなしく宙を蹴るだけで、何の抵抗にもならなかった。  
 
「うぉぉぉぉぉぉ!」  
 
西沢の必死の抵抗で、矢部のマウントポジションが不安定になりつつあった。  
 
「ぬっ…やるでやんすね! マズいでやんす! 石野くん、他2名!」  
「ちぇっ、しょうがねえなあ」  
「がんばれよ、軽井沢ー」  
 
3人の応援を呼び、今度こそ西沢はなす術もなくなってしまった。  
 
「はっ…ぁぁぁん…」  
 
耳、首筋への吐息攻撃はねっとりと執拗に続けられ、  
みずきの体全体は熱っぽくなり、そしてじっとりと汗ばんでいた。  
 
「す、すごく艶っぽいでやんす…」  
「んっ…なんだ矢部、邪魔しにきたのか?」  
「まさかでやんす。ちょっとサポートにきたでやんすよ」  
「要らん」  
「あまり堅いこと言わないでやんす」  
 
そう言うと、矢部は軽井沢の制止も聞かずにみずきの正面側に回った。  
みずきの必死の抵抗キックが繰り出されるも、普段から彼女の暴力には  
慣れている矢部であったため、今更恐れることもない。  
 
それに、今の彼女のキックには全く力が入っていない。  
軽井沢に、確実に力を吸い取られているようだ。  
 
がしっ。  
 
「捕獲完了〜でやんす」  
 
矢部がメガネの形を崩していやらしく笑う。  
 
「で、どうするんだ?」  
「前々から気になっていたでやんす」  
 
「大体、いくら同じ野球部員の付き合いとは言えでやんすね…」  
 
矢部はあごでみずきの服装を指摘した。  
ユニフォームのままである。  
投手だけにあまり泥の汚れは目立っていないが…  
きっとアンダーシャツや下着は汗が染み付いているのだろう。  
 
「普通、シャワーくらい浴びて着替えてくるでやんすよ」  
「…っ」  
 
そう言えばそうだ。みずきは大急ぎで西沢の部屋へ向かうにあたり、  
練習が終わるなり、道具だけ用意して、すぐに自宅を飛び出したのだ。  
そして、ホストの帰宅より先に部屋に辿り着いたため、  
ホストの西沢も着替えることすらままならず、  
勉強会でも2人だけはユニフォーム姿のままだった。おそろいだ。  
 
目的は違うものの、みずきは大急ぎで部屋に向かってよかったと思っていた。  
しかしよもや、そんなユニフォーム姿で痴態を演じようとは…。  
 
「きっと服の下は汗の匂いがすごいでやんす」  
「どうしてこんな格好のまま来たんだろうなぁ…」  
「こうやって皆に嗅いで欲しかったんじゃないでやんすか?」  
 
「くぅッ…」  
 
恥辱に耐えかねて、みずきは顔を背け、視線も背ける。  
相変わらず顔はタコのように紅潮し、涙の跡もはっきりと確認できた。  
 
「でもオイラが気になっていると言ったのはそういうことじゃないでやんす」  
 
そう言うと矢部はおもむろに、みずきのベルトに手をかけた。  
 
「おい、早まるなよ矢部! まだ…」  
「大丈夫でやんす」  
 
不思議な落ち着きようで、制止しようとする軽井沢を逆に制止する。  
 
さすがに器用な手つきで簡単に他人のベルトを外し、  
ユニフォームパンツのジッパーに手をかける。  
 
「んーッ!!」  
 
じたばたと最後の抵抗を見せるみずき。  
しかし、運動部2人に拘束されては、女王といえども敵う道理などなかった。  
 
じじじ…  
 
ジッパーが下ろされ、するりと開けた先には、とても大学生のものとは思えない  
ファンタジックな柄の下着が垣間見えた。  
 
夜空の濃い紫色の地に、流れ星やら三日月やらが浮かんでいる。  
そんな柄の下着だ。キラキラとやかましい感じで、  
やはり女子大生のものとは思えない…。  
 
「みずきちゃん、やっぱり三日月が好きなんだ」  
「……」  
 
質問をする軽井沢の声にも全く反応しない。  
まだほんの一片ではあるものの、下着を見られていることに  
激しい羞恥と屈辱を覚えているようだ。  
 
顔を背けたまま、目を瞑ったまま、唇を強く結んだまま…  
彼女の表情が崩れることはない。  
 
「オイラ、フィギュアの女の子のパンツなら何度も見たでやんすけど、  
 本物の女の子のを一度見てみたかったのでやんす」  
「なんだ、そんなことか…」  
 
矢部の小さな野望に拍子抜けし、同時に安堵する軽井沢。  
 
「やっぱり本物の女の子もこんなかわいい柄のパンツを履いてるでやんすね」  
「いや、普通はもっと落ち着いたのを履くと思うけど…」  
 
2人の会話にも、みずきは悔しさをこらえるばかりだった。  
 
「じゃ、ちょっと嗅いでみてもいいでやんすか?」  
 
その一言に、固まっていたみずきが再び暴れ出した。  
 
「好きにしろ。でも最初にいただくのはこっちだからな」  
 
軽井沢と契約をかわし、矢部は開けたユニフォームパンツから、  
一部だけが見えているみずきの下着に顔を近づけた。  
 
「くんくん…」  
「んぁッ…んーッ!!」  
 
これ以上の屈辱はないと思えた。みずきは全力で腰をくねらせ、  
矢部の顔面の正面から、自らの正面をずらそうと試みた。  
 
「こら! 大人しくするでやん…ぶっ!」  
 
暴れるみずきの脚が、思わず矢部の頭を挟んでしまった。  
 
「いたたたたたでやんす!」  
 
みずきはしめたと思った。これなら攻撃できる。  
このまま締め付けて矢部をギブアップさせてやろう。  
 
なんとか頭を抜こうともがく矢部。  
逃がしはしないと、脱げかけたユニフォームパンツをもろともせず  
矢部を必死にホールドするみずき。  
 
軽井沢は加勢するでもなく、呆気にとられて、ぼーっとその様子を眺めている。  
 
「ふんぬーでやんすっ! がぶ!」  
 
矢部はみずきの腿の内側を噛んで脱出をはかろうとした。  
しかし、ユニフォームの生地は矢部の想像以上の厚みを持っていた。  
生地の美味しくない感触だけが矢部の口に残るが、  
それを噛んだまま、首を抜こうと再び強くもがいた。  
 
…するっ…ずずず。  
 
「あっ」  
「…っ!!」  
 
矢部の口によって引っ張られたみずきのユニフォームパンツがするりと滑り落ちる。  
膝のあたりまで降ろされたところで、矢部は我に帰る。  
 
「あ…みずきちゃんのパンツが丸見えでやんす」  
「〜っ!! じたばたじたばた!」  
 
今度は恥ずかしいというより怒った感じで、再びみずきキックが何発も繰り出された。  
 
「矢部…たいした芸当だ」  
「感心している場合じゃないでやんす! いてて!」  
「しょうがないな…みずきちゃん、ちょっと手荒だけど」  
 
軽井沢はずっと羽交い絞めをしたまま、  
体を床に向かって勢いよく倒した。  
当然、みずきも声を上げて床に倒れる。  
 
「今だ、矢部!」  
「OKでやんす!」  
 
一瞬の油断を突き、再び矢部はみずきの足を捕まえることに成功した。  
 
「さっきはわからなかったでやんすから…今度こそじっくり嗅ぐでやんす」  
 
とうとう観念したといった表情のみずきは、視線を宙に漂わせ、  
今度はうつろな表情で固まってしまった。  
 
「くんくん…」  
「どうだ?」  
「汗とは違う湿っぽい匂いもするでやんす」  
「それは汗とは違うんじゃないかな。味を見ればわかるよ」  
「っ!!」  
「そうでやんすか? じゃあ…」  
 
みずきはハッとしたが、時既に遅し、であった。  
 
「ぬるっ…つつつ…ぴちゃ、ぴちゃ」  
 
下着越しではあるが、はっきりとわかる矢部の気持ち悪い舌遣い、  
そして自分の体から奏でられる水音に、既にみずきは精神が参ってしまいそうな具合だ。  
 
「ふっ…ううんッ…」  
「妙に水っぽいでやんす。みずきちゃんお漏らししてるでやんす」  
「(ちっ…違…)」  
 
「ちろ、ちろ…つつ――」  
 
下着越しにわかる縦のラインに沿って、矢部の器用な舌が上下した。  
 
「いいか、矢部、早まるなよっ…」  
 
星空模様の下着の中心部のシミが、みるみるうちに広がっていく。  
矢部の執拗な舌責めに、確実にみずきの女は反応している。  
 
「じゃ、こっちもいただいちゃおうかな」  
 
みずきが矢部に気を取られている間、実は  
軽井沢は自分のバッグから練習用の長いスポーツタオルを取り出し、  
ちゃっかりそれで後ろ手にみずきの手首を縛り上げていたのだ。  
 
「(な、何をするつもり…)」  
「あっちのウォーミングアップは矢部に任せているから…そうだね」  
 
とは言うものの、まったく迷った様子もない手つきで、  
ユニフォームシャツのボタンに手をかけた。  
 
ひとつ、ふたつと外されるうち、シャツの中からむわっとした匂いが広がる。  
元々練習で汗を書いている上、今こうしてまた濡らしてしまってるから。  
 
「これがみずきちゃんの匂いなんだ…くすくす」  
 
こちらには動じず、強気な表情を作ってぷいとそっぽを向いた。  
しかし、今度は矢部の刺激によって再び表情が甘い息が漏れた。  
 
みっつ、よっつ…  
 
アンダーシャツ越しに2つの膨らみも露になった。  
というより、汗で透けて見えて、その頂の桜色までくっきりである。  
 
「練習中って、女の子はブラしてないんだ?」  
「(し、知らないわよ、そんなのっ…)んふ…」  
 
ボタンを全て外すのが面倒になった…というより、  
みずきの胸を見て、触りたい衝動に駆られた軽井沢は、シャツを脱がすのをやめ、  
そのまま大きな両手で2つの膨らみをわしづかみにした。  
 
「んッ…!」  
 
膨らみと言っても、元々幼児体系に近いみずきの、さらに鍛えられた肉体。  
ぺったんこと言っては失礼だが、決して大きくもなければ、やわらかくもない。  
 
まだ固さの残る胸をほぐすように、軽井沢ゆっくりと5本の指でマッサージをする。  
ぎゅ、ぎゅ…と。  
 
「んッ…はっ…」  
 
更にみずきの呼吸が乱れ出した。どうやら胸は弱いらしい。  
 
「え、小さいから気にしてるって? 気にしちゃだめだよ」  
「あンッ…くぅん…」  
 
体を反らしたりして抵抗を試みるも、すぐにムダだと思ってやめた。  
 
「こんなにぷりぷりしてて可愛いじゃないか。…ここも」  
 
軽井沢は人差し指のつめで引っかくようにして、膨れ上がっている乳首を愛撫した。  
 
「ひゃ…んぅッ!」  
 
みずきは情けない声を上げたが、それをかき消すようにうめくような声を搾り出す。  
 
「ふーん…乳首、弱いんだ。こんなにビンビンにして」  
 
意地悪な笑みを浮かべると、軽井沢は両方の手でさっきと同じように指を立て、  
つめを立て、引っかき、くりくりと捏ね回し、2本の指の間を転がした。  
 
「ひゃ…あは…くぅぅ、くふっ…」  
 
その度、みずきの上半身はいちいち大袈裟に反応し、切ない声を上げる。  
 
矢部の方もパンツの上からではあるが、みずきに盛り上がる突起を発見し、  
そこを重点的にちろちろと舌先で刺激した。  
 
「(ダ、ダメ…)んっ、んんーッ!」  
 
みずきは体の3点に電撃が走るような感覚を味わい続けている。  
唯一抵抗の手段となるはずだった両脚は、つま先までピンと伸びきり、  
ぶるぶると痙攣して、何かに耐えているようだった。  
 
「矢部、そろそろ楽にしてやろうぜ」  
「適当にやるでやんす」  
 
断続的にみずきを下着越しに刺激し続けた矢部の舌が離れた。  
みずきはホッとしたが、軽井沢の執拗な乳首責めは終わってはいない。  
堅くなった感触を、さっきから人差し指と親指で楽しんでいる。  
 
「くぅん……んんッ!?」  
 
その時、矢部が自分でじっくり濡らした場所に、そっと小指を立てる。  
とても柔らかく、まだ下着越しではあるが、どこまでも吸い込まれそうなほどに…  
 
「ふぁッ…!? やんっ、んぁぁぁ!」  
 
たったそれだけのこと。  
しかし瞬間、みずきの体は今まで以上に、それこそ弓のようにびくんと反り立った。  
 
ぴゅくぴゅくと下着のシミはシミの域を超え、明らかにじゅわじゅわと、  
スポンジから糊が染み出すように、何かが溢れている様子だった。  
 
「な、何だったでやんすか…?」  
「とっても気持ちよかった、ってことだろうさ」  
 
さっきのみずきの反動のせいで、軽井沢も矢部も、みずきと密着していた体を離していた。  
上下ともにユニフォームだけを半脱ぎにされた女の子が、後ろ手に縛られたまま倒れていて、  
下着の脇から流れる愛液で床をびしょびしょにしている。  
 
「小指をちょっと入れただけでやんすよ?」  
「みずきちゃんって野球バカだからなぁ…きっと自分で触ったこともないんじゃないの」  
「オイラたちのテクニックに長時間晒されて、体も限界だったと思うでやんす」  
「フッ…それもそうだな」  
 
「っ……」  
 
みずきはそのままくてーっと力を失ったまま、さっきまで全身が伸び切って張り詰めていた体は  
だらしなく弛緩していた。  
 
「どうするでやんす?」  
「とりあえず感想を聞いてみたいね」  
 
よくよく考えれば、今の今までドーナツを咥えていたのだ。  
抵抗するつもりなら、すぐにこれを吐き出して大声でも呼べばよかったのだ。  
しかし、男でさえかなりの大きさに思えるこのドーナツを、  
女の子が一口で頬張ろうとしたのだ。手を使わずに自力で吐くのは無理だったろう。  
 
「ドーナツ、おいしかった?」  
 
軽井沢が元の爽やかな笑みを取り戻し、みずきの眼前に座って訊く。  
みずきの視線は焦点を定めず、半ば放心しているような状態だった。  
 
「やれやれ…」  
 
軽井沢は、みずきの口から少しだけはみ出たドーナツを引き抜き、  
みずきはガハッと大きく咳き込んだ。  
 
「…もういいでしょ。勉強、続けましょ…」  
 
健気にこんな言葉が返ってきた。余程ショックだったのか、普段の怒鳴る気力さえ残っていないようだ。  
 
「感想を聞いているんだけど?」  
 
冷たい態度の軽井沢の声が、みずきの提案を遮る。  
 
「……」  
 
「別にオイラたち、みずきちゃんに中出ししたわけでもないでやんす」  
「そうそう、だからそんなに気に病まないでよ。ちょっとした気分転換ってことで…ね?」  
 
「…ふざけないでっ…!」  
 
震えた声でみずきが搾り出す。なかなかの迫力だ。  
しかし2人が臆することはない。今の彼女はカゴの中の子猫なのだ。  
 
「うんうん、いつもの怒ったみずきちゃんもかわいいよ」  
 
軽井沢はみずきの頭を起こし、みずきの表情をじっと凝視した。  
みずきは視線を合わせもせず、ずっと真横をにらみつけているだけだった。  
 
「あ、ドーナツのチョコが溶けて、口の周りがヒゲみたいに汚れてる…」  
 
軽井沢はためらいもせず、自らの舌を伸ばして、口の周りのチョコを舐め取る。  
みずきは顔を背けるが、やはり逃げられはしない。  
自分の口の周りが、他人の唾液でべとべとにされる…まさか?  
 
彼女は何かを思い出したように、急に口を真一文字に結んだ。  
 
「つれないなぁ…ぺろぺろ」  
 
閉じた口の周りも唾液でべとべとにする。耐え難い異物感。  
 
「どうして口を開けてくれないの?」  
 
結んだ口の入り口に舌を滑り込ませ、こじ開けんとする軽井沢。  
どうやら唇だけは頑なにガードしているしているらしい。  
 
「こうすればどうでやんすか?」  
 
矢部が突然、みずきの鼻をつまんだ。  
んっ、とみずきがうめき声を上げる。  
なるほど、このままでは息ができない。  
 
ただでさえ息が荒れているので、20秒と持たなかっただろうか、  
みずきはとうとう口を開いてしまった。  
その瞬間、さっきから待ち望んでいた軽井沢の唇が、小さな少女の口を完全に覆う。  
 
「…っぷ…んん…みずひひゃん…」  
「んっ…んんーッ!! んっ!」  
 
今までで一番激しい抵抗を見せる。案外ロマンチストであるみずきは、  
こちらの操だけは誰にも割らせないと、必死でいたのに…。  
 
「みずひ…ん…じゅる…」  
「がはッ…んやッ! やめへぇ…んふッ!!」  
 
矢部も見とれるディープディープキス。  
軽井沢の舌が舌を追い回し、お互いの唾液を絡めあうように、洪水の口の中をかき回す。  
 
みずきは初めて泣き声を上げて抵抗したようだが、その声すらも軽井沢の唇にふさがれていた。  
 
「(ファ、ファーストキスだったのに…)」  
 
大量の涙とともに崩れ落ちるみずき。  
みずきでなくとも、こんなシチュエーションで初めてを迎えては泣きたくもなる。  
 
「あーあ、泣かしちゃったでやんすね」  
「まいったなぁ、喜んでくれると思ったんだけど。まさか、嬉し涙?」  
 
茶化してみずきの反応をうかがうも、勿論返事はない。  
 
「軽井沢、ちょっと今のはやりすぎなんじゃないの」  
「そうだよ、下品だよ」  
「うるさいなー、大体お前たちだって共犯じゃ…」  
 
ジャケントリオからのブーイングにしかめっ面で対応する軽井沢。  
 
「そういえば西沢が大人しいけど…お前ら、ちゃんと抑えてたか?」  
「さっきからこの通り…そっぽを向いて一言もしゃべらないんだよ」  
「まるで子どもみたいだな。お前も一緒にやればいいのに」  
 
嫌だ、と言わんばかりにさらに向こうへ顔を向ける西沢。確かに子供みたいだ。  
 
「じゃあお前ら、後で1人ずつ交代で来いよ。みずきちゃんの相手をさせてやる」  
「え、いいのかよ。お前だってみずきちゃんのこと、好きなんじゃ…」  
「言っただろ、共犯だって。後でお前らに僻まれてチクられた、なんてゴメンだからな」  
 
「でも西沢とみずきが言うかもしれないぜー」  
「バカ。普通の女は言えないよ、嫁に行けなくなる。西沢はだな…」  
「軽井沢って結構酷いやつなんだな。じゃあ西沢も殺せるよ」  
「誰が殺すか。まぁ、とりあえず縛っておけ。いい方法が見つかるかもしれない」  
 
…結局、みずきは5人の相手をすることとなった。  
最後の方はもう何が何だか覚えていない。  
汗まみれの体に体液もまみれて、ものすごい異臭を放っている。  
 
もちろんもう、抵抗どころかぴくりとも動きはしない。  
 
「さて、そろそろ終わりにするかな」  
「一応みずきはシャワーでも浴びさせたほうがいいよなー。臭いし」  
「それが男の務めでやんす。オイラ運ぶでやんす」  
 
「ところで、これはどうしよう」  
 
そう言って取ってあるのが、みずきがたまに部員を殴ったりするのに使う  
怪しげな長い棒…精神注入棒だか、何だか知らないが。  
「一撃必殺」だの「一球入魂」だの、よくわからない四字熟語がたくさん書いてある。  
 
もうひとつ、邪魔になるからと外したペンダントだ。  
三日月型のレリーフがついている。噂ではとても大事なものらしく、  
気安く触るとみずきが本気で怒ってしまうというシロモノらしい。  
 
「そうだな…最後にちょっと西沢で遊んでやろうか」  
 
こちらも丁寧に縛られている。もはや抵抗したりはしないだろう。  
 
「じゃ、脱がそうぜー」  
 
げらげらと笑いながら、5人は西沢の下半身を観察する。  
みずきがいないだけマシか…西沢は静かに5人の行動を待った。  
 
「そーれ、一球入魂、っと!」  
「ペンダントのこのチクチクが気持ちいいんだろう?」  
 
……。  
 
西沢は情けない声を上げながらも、助けを請ったり、威嚇したりはしない。  
悲痛な声を上げて堪えたのは、自らの菊座に精神注入棒がまさに注入される痛み。  
 
ペンダントは男根にぐるぐると巻きつけられ、三日月の先端が  
西沢の先端に食い込み、実に痛々しい。  
が、彼らはこれを玩具をもてあそぶように平然とこなしている。  
 
いったいオレが何をしたというのだろう……  
 
こんな姿をみずきに見られたら。  
嫌、自らの情けない姿を見られるのも勿論死ぬほどの屈辱ではあるが、  
みずきの大事なペンダントと棒が、こんな風に…。  
 
「じゃ、あとはお二人でごゆっくりー」  
「楽しかったでやんす。みずきちゃんによろしく言っておくでやんす」  
「ペンダントと棒、ちゃんと洗って返せよ。あはは…」  
 
「そういえば、このままじゃ西沢にチクられるぜー」  
「どの道このままじゃみずきちゃんとも口が利けないだろうし、チクる気力もないだろ?」  
「その前に死んじゃうかもしれないなー」  
 
「オイラに名案があるでやんす。どうしてこういう常套手段を思いつかなかったでやんすか」  
「なんだ、矢部。携帯なんか取り出して…」  
「チクったらメールでみんなに写真を送ると脅すのでやんす」  
 
「あったまいー!」       ―― fin.  
 

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