あかつき大付属高校野球部一軍グラウンド。
授業も終わり野球部員達の元気な声が飛び交っている。
そしてここにも一人、一軍への試験を突破した野球部員が…。
「オイラは健全な高校生、今日も明日も野球漬けの毎日でやんす〜♪」
彼の名は矢部明雄、メガネでやんすでマニアな普通の高校生だ。
しかし、彼の背後に巨大な黒い影が迫る!
「――ハッ!! なんでやんすか、この押しつぶされそうな威圧感は!
後ろを見てはいけないとオイラの本能が言っているでやんす!」
「矢部様」
「…オ、オイラはなんにも聞こえてないでやんす!」
「矢部様!!」
「カ、カレンちゃんでやんすか、どうしたんでやんす?
ここは関係者以外立ち入り禁止…」
「進様を見かけないのですが…どこに隠したんですか!ムッハー!!」
「進君は風邪でやんす。ここ何日かは学校を休んでるでやんすよ」
「(風邪を引いている進様…ハァハァ)では守様は」
「猪狩君はどこかに失踪しちゃったでやんす。
『アフロになって帰ってくる』と意味不明の事をつぶやいていたんでやんすが…」
「(アフロの守様…ハァハァ)では主人公様は」
「主人公君なら交通事故で全治三ヶ月でやんす。
オイラの目の前でトラックにはねられたから間違いないでやんす」
「(入院している主人公様…ハァハァ
ってこれじゃあここに来る楽しみがゼロじゃありませんか!!
先輩方が卒業した今、あの三人以外は同じような顔をした部員とこのメガネだけ…
!? メガネ!?
これはまさしく正真正銘のメガネっ娘ではありませんか!!
危なかった…目の前にあるダイヤの原石を危うく見過ごすところでしたわ…)
ビゴオオオォォォォォンンンン…」
「な、なんでやんすか?!カレンちゃん、目がなんかヤバイでやんすよ!」
「いえ、なんでもありませんわ。
ところで唐突ですが、買い物をしていたらパワリンを買いすぎてしまいまして…
余らせるのももったいないですし、よろしかったら飲んでいただけませんか?(サッ)」
「本当に唐突でやんすね…。でもオイラパワリンは大好きでやんす!
喜んでいただくでやんす〜(ゴクッ)」
「飲みましたね(キラーン)」
「飲んだでやんすがそれがなにか…あ、あああ…体がしびれるでやんす〜!!」
「大丈夫ですか矢部様(ニヤリ)」
「な、何でやんすか…このパワリン、なんか変でやんす…」
「そりゃあ少々 アレ を入れさせて貰いましたから。
他にも アレ の あの部分 や アレ なんかも…」
「やんす!!!!!!」
「そんな事より、こんな所で倒れている殿方をほおってはおけませんので…
介抱して差し上げますわ!!!」
「―――ギャァァァアアアアアアアアアアアでやんすぅぅ!!!!」
―三ヶ月後―
「交通事故でのケガも完全回復したし、今日からまた甲子園目指して頑張るぞ!
おっ、あそこにいるのは矢部君だな。おーい、久しぶり〜!」
「主人公君久しぶりでやんす、ケガは治ったんでやんすね。
ところで…カレンちゃん見かけなかったでやんすか?」
「…え?いや、見てないけど…なにかあったのかい???」
「いや、なんでもないでやんす。
ではオイラは急いでいるのでまた後ででやんす(タッタッタッ…)」
「(カレンちゃん?なんだったんだろう?)あれ、なにやら背後に威圧感が…」
「ムッハー!主人公様、退院おめでとうございます!
ところで唐突ですが、矢部様を見かけませんでしたか?」
「あ、さっきあっちの方に走っていったけど…なにかあったの?」
「主人公様…申し訳ございません、
実は三ヶ月ほど前から矢部様と お つ き あ い させていただいているんです。
と言うわけで、どうかカレンの事はあきらめて下さい」
「!?」
「それでは急ぎますので失礼しますわ(ドドドドドド…)」
「 お つ き あ い ! ?
俺が居ない三ヶ月の間に何があったんだ…知りたい…
誰か教えてくれ!…クソッ!!…交通事故さえ無ければ―――!!」
おわり