「もう、もういいのではないですか、あの人達の願いをこんなにしてまで小波くん達に背負わせるなんて間違ってます」
だっっっっ がらららら ぴしゃ!!
「ふむ、やはり気付いておったか・・・」
死した者達の無念を集め、それと同調する者に対して呪いをぶつけ、この世界から消す。呪い、禁呪。
それは過去に置いて最大、最強として幾人もの人を葬り去ってきた呪文。
しかし過去に置いて幾人もの英雄には、この呪いが神によって掛けられたと伝えられる神呪
「全ての怨嗟を返す者」
それはそう呼ばれた。
呪文、魔術、全てを越え、人の身で神が使うモノの中で唯一使える只1つの魔法。
過去の怨念を解き放つために唯一、神が与えた贈り物。
それは、成し遂げられなかった者達をあの世に導ける道標。
しかし、其れが叶わなかったとき、望みが成し遂げられなかったときには、術者と、それを成す代行者の消滅。
輪廻の輪より離れ、この世でない世界で永遠という牢獄に縛られてしまう。
その記述を見たとき、私はハッとした、目の前で、愛する人とかけがえのない友人達、全てを失った、あの事故。
後一歩、後一歩で閉ざされた道。
「ここまできたのじゃ、もう、止められん」
そう、ずっと待った。ほとんど廃部になった野球部。人口の少ないこの島で甲子園などは不可能だと分かっていた。
けれど待った、きっと神様は微笑んでくれると信じていたから。
そして60年、奇跡は起こった。
小波という少年、昔の愛する人と瓜二つの少年が、この島にやってきた。
ボートで、母親を失い、父親と二人で、この島に。似すぎていた、いや、そっくりそのままだった。
だから、信じて掛けたのだ。この呪いを。そして冷泉を使ってそそのかし、野球部を復活させた。
しかしこの呪いは、甲子園を優勝しなければ解けることはない、それがいかに厳しいモノであるかを知って、今の彼、小波の彼女、
我が娘、冷泉は止めるように言ったのだ。
・・・「解けぬよ、この呪いはな、怨念がのうなるまで解けはせんのじゃ」
すまないと思ってる、。 しかし・・・、
「私と彼の願いが、約束があるのじゃ。だから、謝っても済まされんことぐらいは分かる。が、これぐらいのわがままはゆるしてくれんかの」
そう、あの事故からずっと我慢してきた。何があっても耐えてきた。だって彼との約束があったから。
「しかしもうそれも終わる。」
(・・・・・・・・・・・・・)
「え?」
今懐かしい彼の声が聞こえたような気がする。
けど気のせい、振り向いても誰もいない。
けれども私は言った。
「約束は、果たせましたか?」
彼は言った
(うん、約束は、果たされたよ。)
満面の笑顔で、あの頃の笑顔でそういった。
カーーーーーーーーン。
白いボールと、帽子が宙を舞った。
〈Fin〉